9月 011997
 

超越論的哲学は、超越的哲学や経験的哲学とどう異なるのか。超越論的哲学における超越とは、どこからどこへと超越することなのか。理論理性と実践理性は別なのか。カントの構成主義を行為論として解釈し、その行為の目的を問いつつ、『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』の三批判書全体を、全体部分関係論としてのシステム論の視点から、再構築する。

目次
読書案内

カントの入門書や解説書は、山のようにある。私が学生時代に読んだ当時の定番は、

岩崎武雄:カント

であるが、最近のものとしては、

石川文康:カント入門

などがある。ユニークなアプローチをとっているカントの入門書としては、

坂部恵:カント

中島義道:カントの読み方

中島義道:カントの人間学

などがある。

入門書を読んで、ある程度問題意識を持ったら、カントの著作を直接読んでみよう。カントの名著は、哲学の古典中の古典なので、ドイツ語ができるなら、ドイツ語の原書を読んだほうがよい。まずは、主著である三批判書。

倫理学や法哲学に興味のある人は、

も読むべきだ。

カントの専門家を目指すなら、アカデミー版全集を読まなければならない。ありがたいことに、アカデミー版全集“Akademieausgabe von Immanuel Kants Gesammelten Werken”は、オンライン上で無料公開されている。

Abteilung 1: Werke

Abteilung 2: Briefwechsel

Abteilung 3: Handschriftlicher Nachlass

この全集の紙バージョンは、哲学専攻の博士課程がある大学の図書館なら、どこでも所蔵しているはずだ。私も大学院にいたころは、あの髭文字のドイツ語を読んでいた。結局「カントの専門家」にはならなかったけれども。

引用文献一覧

本書では、カント以外の著者の著作物からの引用は、以下のように、“著者名:タイトル(の一部)”で引用している。出版年、完全な書名、出版社名、著者・編集者名といった詳細な出典は以下の通り。

  • Adickes: Kants Lehr (1929). Kants Lehre von der doppelten Affektion unseres Ich als Schlüssel zu seiner Erkenntnistheorie. Mohr Siebeck. Erich Adickes (著).
  • Althusser: Pour Marx (1965). Francois Maspéro. Louis Althusser (著).
  • Auxter: Kant’s Moral Teleology (1982). Mercer University Press. Thomas Auxter (著).
  • Bergson: Essais sur les données immédiates de la conscience (1889). P.U.F. Henri Bergson (著).
  • Greene: The Hidden Reality (2011). The Hidden Reality: Parallel Universes and the Deep Laws of the Cosmos. Vintage. Brian Greene (著).
  • Descartes: Discours de la Méthode (1637). Oeuvres de Descartes. Vol. 6. Librairie J. Vrin. René Descartes (著), Adam et Tannery (編集).
  • Descartes: Les passion de l’ame (1649). Oeuvres de Descartes. Vol. 11. Librairie J. Vrin. René Descartes (著), Adam et Tannery (編集).
  • Descartes: Meditationes de prima philosophia (1641). Oeuvres de Descartes. Vol. 7. Librairie J. Vrin. René Descartes (著), Adam et Tannery (編集).
  • Descartes: Principia philosophiae (1644). Oeuvres de Descartes. Vol. 8. Librairie J. Vrin. René Descartes (著), Adam et Tannery (編集).
  • Dietzgen: Das Wesen der menschlichen Kopfarbeit (1903). Dietz, Berlin. Joseph Dietzgen (著).
  • Fichte: Grundlage des Naturrechts 2 (1797). Johann Gottlieb Fichte Gesamtausgabe Bd. 4, Grundlage des Naturrechts nach Principien der Wissenschaftslehre 2.Teil. Bayerische Akademie der Wissenschaften. Johan GottliebFichte (著), Reinhard Lauth (編集).
  • Frankena: Ethics (1973). Prentice-Hall Inc. William K Frankena (著).
  • Frege: Die Grundlagen der Arithmetik (1884). Die Grundlagen der Arithmetik, Eine logisch-mathematische Untersuchung über den Begriff der Zahl. Georg Olms Verlag. GottlobFrege (著).
  • Freud: Die Traumdeutung (1900). Sigmund Freud Studienausgabe, Bd.3. Fischer Verlag. Sigmund Freud (著).
  • Gadamer, Wahrheit und Methode (1960). Gesammelte Werke Bd.1 Wahrheit und Methode, Grundzuege einer philosophischen Hermeneutik. Mohr Siebeck. Hans-Georg Gadamer (著).
  • Geach: History of fallacy (1972). Logic Matters. University of California Press. Peter T Geach (著).
  • Gerold: Erscheinung bei Kant (1971). Walter de Guyter. Praus Gerold (著).
  • Habermas: Moralbewußtsein und kommunikatives Handeln (1983). Suhrkamp taschenbuch wissenschaft. Jürgen Habermas (著).
  • Hartmann: Ethik (1926). Walter de Gruyter. Nicolai Hartmann (著).
  • Hegel: Enzyklopädie (1827). Gesammelte Werke herausgegeben von der Rheinisch-Westfälischen Akademie der Wissenschaften, Bd.19 Enzyklopädie der philosophischen Wissenschaften im Grundrisse, 2.Aufl. Felix Meiner Verlag. Georg Wilhelm Friedrich Hegel (著).
  • Hegel: Phänomenologie des Geistes (1807). Felix Meiner Verlag. Georg Wilhelm Friedrich Hegel (著).
  • Hegel: Wissenschaft der Logik (1812). Gesammelte Werke herausgegeben von der Rheinisch-Westfälischen Akademie der Wissenschaften, Bd. 21. Felix Meiner Verlag. Georg Wilhelm Friedrich Hegel (著).
  • Heidegger: Kant und das Problem der Metaphysik (1927). Martin Heidegger Gesamtausgabe Bd.3. Vittorio Klostermann. Martin Heidegger (著).
  • Heidegger: Sein und Zeit (1927). Max Niemeyer Verlag. Martin Heidegger (著).
  • Hume: A Treatise of Human Nature (1739). Oxford Clarendon Press. David Hume (著), P.H.Nidditch (編集).
  • Husserl: Ideen 1 (1913). Husserliana, Edmund Husserl Gesammelte Werke, Bd. 3, Ideen zu einer reinen Phänomenologie und phänomenologischen Philosophie. Erstes Buch: Allgemeine Einführungin die reine Phänomenologie. Martinus NijhoffEdmund Husserl (著), Marly Biemel (編集).
  • Husserl: Ideen 2 (1952). Husserliana, Edmund Husserl Gesammelte Werke, Bd. 4, Ideen zur einer reinen Phänomenologie und phänomenologischen Philosophie. Zweites Buch: Phänomenologische Untersuchungen zur KonstitutionMartinus Nijhoff. Edmund Husserl (著), Marly Biemel (編集).
  • Husserl: Logische Untersuchungen 1 (1900). Husserliana, Edmund Husserl Gesammelte Werke, Bd. 18, Logische Untersuchungen. Erster Teil. Prolegomena zur reinen Logik. Martinus NijhoffEdmund Husserl (著), Elmar Holstein (編集).
  • Husserl: Logische Untersuchungen 2 (1901). Husserliana, Edmund Husserl Gesammelte Werke, Bd. 19, Logische Untersuchungen. Zweiter Teil. Untersuchungen zur Phänomenologie und Theorie der Erkenntnis. Martinus Nijhoff. Edmund Husserl (著), Ursula Panzer (編集).
  • Leibniz: Discours de métaphysique (1686). GallimardGottfried Wilhelm Leibniz (著).
  • Leibniz: Monadologie (1714). Die Philosophischen Schriften von G.W.Leibniz, Bd. 6Weidmannsche Buchhandlung. Gottfried Wilhelm Leibniz (著), Gerhardt (編集).
  • Lock: An Essay Concerning Human Understanding (1690). Oxford. John Lock (著), P.H.Nidditch (編集).
  • Luhmann: Essays on Self Reference (1990). Columbia University Press. Niklas Luhmann (著).
  • Paton: Kant’s Metaphysic of Experience (1936). George Allen & Unwin LTD. Herbert James Paton (著).
  • Paton: The Categorical Imperative (1947). The Categorical Imperative,A Study of Kant’s Moral Philosophy. Hutchinson’s University Library. Herbert James Paton (著).
  • Reinhold: Beyträge (1801). Beyträge zur leichtern Übersicht des Zustandes der Philosophie beym Anfange des 19.Jahrhunderts. Hamburg. Karl Leonhard Reinhold (著).
  • Ross: The Right and the Good (1930). Hackett Pub Co Inc. W. D. Ross (著).
  • Scheler: Der Formalismus in der Ethik und die materiale Wertethik (1916). Max Scheler Gesammelte Werke, Bd. 2. Francke Verlag. Max Scheler (著), Maria Scheler (編集).
  • Scheler: Späte Schriften (1928). Max Scheler Gesammelte Werke, Bd. 9. Francke Verlag. MaxScheler (著), Manfred Frings (編集).
  • Scheler: Vom Umsturz der Werte (1916). Max Scheler Gesammelte Werke, Bd. 3. Francke Verlag. MaxScheler (著), Maria Scheler (編集).
  • Simmel: Philosophie des Geldes (1900). Duncker&Humblot. Georg Simmel (著).
  • Strawson: The Bounds of Sense (1966). The Bounds of Sense,An Essay on Kant’s Critique of Pure Reason. Metheun & Co Ltd. Peter Frederick Strawson (著).
  • Weber: Soziologische Grundbegriffe (1922). Gesammelte Aufsätze zur Wissenschaftslehre. Mohr Siebeck. Max Weber (著).
  • Weismann: Essays Upon Heredity. (1889). Clarendon Press, Oxford. August Weismann (著).
  • Wittgenstein: Philosophishe Untersuchungen (1951). Ludwig Wittgenstein Schriften Bd. 1. Suhrkamp. Ludwig Wittgenstein (著).
  • Wittgenstein: Tractatus Logico-Philosophicus (1921). Ludwig Wittgenstein Schriften Bd. 1. Suhrkamp. Ludwig Wittgenstein (著).
  • アリストテレス:形而上学 (1959). 形而上学〈上/下〉岩波文庫. 岩波書店. アリストテレス (著), 出 隆 (翻訳).
  • 岩崎武雄:カント『純粋理性批判』の研究 (1982). 岩崎武雄著作集第七巻. 新地書房.
  • 九鬼一人:新カント学派の価値哲学 (1989). 弘文堂.
  • 小林秀雄:無常といふこと (1942). 小林秀雄著作集. 創元社.
  • 佐藤康邦:ヘーゲルと目的論 (1991). テオレイン叢書. 昭和堂.
  • 高橋昭二:カントとヘーゲル (1987). 晃洋書房.
  • 高橋昭二:カントの弁証論 (1969). 創文社.
  • 田辺元:カントの目的論 (1924). 田邊元全集第三巻. 筑摩書房.
  • 中島義道:カントの時間構成の理論 (1995). 理想哲学選書 1. 理想社.
  • プラトン:パルメニデス (1975). プラトン全集4. 岩波書店. プラトン (著), 田中 美知太郎 (翻訳).
  • プラトン:国家 (1797). 国家〈上/下〉岩波文庫. 岩波書店. プラトン (著), 藤沢 令夫 (翻訳).
追記

2014年12月に、本書の改訂版が、電子書籍として出版されました。導入部分を全面的に書き換えた他、現代科学の観点から、第一章第三節の「超越論的弁証論」と第三章第二節の「客観的合目的性」のアップデートを行いました。他方で、本文と関連の薄い脚注を大幅に削除しました。モバイル端末で読む方には、こちらをお勧めします。なお、アマゾンのみならず、楽天でも、電子書籍版の『カントの超越論的哲学』が購入できます。

このページをフォローする
私が書いた本

  6 コメント

  1. 入門書の参考にさせていただきました。
    ありがとうございました。
    「論敵」が誤変換なのは一目で分かりますが、
    訂正したほうがよいと思いました。

  2. 訂正しました。御指摘ありがとうございます。

  3. いつもお世話になっています。ご迷惑でなければカントに関する次の諸点についてついでの折にでもご教示頂けないでしょうか。
    1.カントは「この世のことは統一された一つの精神があればこと足りる」と言った。
    2.カントは「人間は誰もが宇宙の中心に位置している」と言った。
    3.カントの定言命法とは「あなたの意志の格率が常に同時に普遍的な立法の原理として妥当しうるように行為せよ」を指す。
    4.カントの墓碑銘には「我が上なる星空と、我が内なる道徳法則、我はこの二つに畏敬の念を抱いてやまない」と刻まれている。
    5.上記1-4の文脈はカント倫理学の異なる表現と理解して宜しいか。
    6.上記1-4の文脈は永井さんの『一般システム学』における情報縮減の結論と一致すると受け取って宜しいのか。
    7.カントは政治哲学の書として『永遠平和のために』を著しているが、これはカント哲学を集大成した現実世界に向けた提案とみなしてよいのか。

  4. 1. カントは「この世のことは統一された一つの精神があればこと足りる」とは言っていません。
    2. カントは「人間は誰もが宇宙の中心に位置している」とは言っていません。これは、シェーラーの主張に近いでしょう。カントが言う超越論的主体は、経験的な人間とは異なります。
    3. カントの定言命法には、いくつかのバージョンがあります。
    4. そのようです。
    5. 理論理性と実践理性は区別して考えた方が良いでしょう。
    6. 一致するところもあれば、一致しないところもあると思います。
    7. 『永遠平和のために』は、『人倫の形而上学』の続きと見ればよいでしょう。

  5. カントに関する前回の質問にご教示をいただき厚くお礼申し上げます。それに関連する次の質問やコメントについても宜しくお願い申し上げます。
    『カントの超越論的哲学』のページ冒頭に「三批判書全体を、全体部分関係論としてのシステム論の視点から、再構築する」とありますが、この一文に注目しています。
    1.三批判書はそれぞれ認識上の真、倫理上の善、美学上の美つまり真善美に対応していると理解して宜しいか。
    2.カントによれば真の認識を通して善の実践に至る順序のようですが、これはむしろ逆でデカルトのように我から始めて外延的に展開されるべきと思われますが。
    3.超越論が認識を巡る理性の限界を指すとすればそれは認識論のみが対象と思われます。もっともカントは哲学とは「全ての哲学的認識のシステム」と言ったそうですが、これは同義反復です。つまり哲学は現実問題に何も応えていないように感じられます。
    4.この文脈において三批判書とシステム論の対応関係については重大な関心を寄せています。ここで熱力学や脳科学を巡る最新知見は示唆に富むと思われます。
    5.貴著作並びにサイト全体を拝読した結果として上記論題に対する接近は『人間原理とは何か』からの展開が最も妥当ではないかと私なりの印象を受けています。それはカント哲学と宇宙進化論と人間原理の緩やかで速やかな結合可能性を意味します。

  6. 1. そういう対応は、従来からよくなされています。ただし、『判断力批判』後半の崇高なものについての分析は、狭義の美とは異なるので、真・善・美・聖という四つの価値が論じられているという見方もできるかと思います。
    2. カントの場合、理論理性によってその認識を断念した物自体的理念が、実践理性によって要請されるわけですから、『純粋理性批判』の後に『実践理性批判』が出版されたことは不自然ではありません。なお、カントの哲学は徹頭徹尾自我の哲学です。また、経験的自我と超越論的自我を区別しなかったデカルトとの単純な比較はできません。
    3. カントの理論哲学は超越論的ですが、実践哲学は超越的です。そして、倫理学に関して限界を見出さなかったところに、私はカントの限界を見出しました。
    4. カントは、自分の哲学を経験科学によって説明されることを望まなかったでしょう。
    5. 私はまだまだ不勉強なので、このテーマについて機会があれば、もう一度よく勉強した上で、考え直したいと思います。

 返信する

以下のHTML タグと属性が利用できます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

/* ]]> */