米国はもう覇権国ではないのか
米国はイラク戦争の失敗で世界の顰蹙をかった。米国はもはや、世界の指導者としての資格がないと感じる人が増えている。そういう感情に受けたのか、トッドの『帝国以後―アメリカ・システムの崩壊』は世界的なベストセラーとなった。はたして、トッドが言うように、米国の覇権は本当に崩壊したのだろうか。
1. 米国の経常赤字問題
ソ連の崩壊により、米国は唯一の超大国となった。しかし、トッドは、米国の慢性的で大規模な貿易赤字を理由に、米国が、10年遅れでソ連と同じ運命をたどっていると主張する。
終戦直後の過剰生産の自律的な国であったアメリカ合衆国は、いまや一つのシステムの中核となったが、そのシステムの中でアメリカの果たす使命は生産ではなくて消費なのである。[1]
トッドが、米国内の工業部門の衰退を強調したために、サービス部門を軽視した、脱工業化時代を理解しない古い発想という批判を浴びることになるわけだが、実は、米国は、貿易収支だけでなく、経常収支も慢性的に赤字であり、サービス産業が貿易収支の赤字を補っているわけではない。
一般的な傾向として、日本、ドイツ、フランスでは、経常収支が黒字で、資本収支が赤字であるのに対して、米国と英国では、経常収支が赤字で、資本収支が黒字である[2]。このことは、日独仏が、英米への直接投資や証券投資や資本移転などにより、経常収支の赤字をファイナンスしているということである。経常収支が赤字の英米が、イラクで、戦争というサービス産業に力を入れていることは、偶然ではない。
1990年代の後半のようなバブルが起きると、米国政府が何もしなくても、あるいは、せいぜい政府要人が「強いドルを望む」と発言しているだけで、日欧から民間ベースで資金が流入してくる。しかし、バブルが崩壊すると、政府が世界から資金を集めるような公共事業でもしなければ、経常収支の赤字を支える資本の流入が途絶え、ドルの暴落を惹き起こすことになる。
1991年の湾岸戦争では、この方法はうまくいったが、現在の「テロとの戦い」では、独仏が協力していないたために、うまくいっていない。2001年のアフガニスタン侵攻以来、ヨーロッパから米国への純資本流入は大きく減少し、ドルはユーロに対して、下がり続けている。米国経済は、日本をはじめとするアジアが米国債を買い支えることで、何とかもっているというのが現状である。
2. 米国は世界の平和を望んでいない
フランシス・フクヤマは、主著『歴史の終わり』で、共産主義の崩壊により、民主主義と資本主義が最終的に勝利し、もうこれ以上社会制度が発展することがなくなるから、歴史は終わったと喝破した[4]。しかし、実際には、冷戦の終わりで始まったのは、歴史の終わりではなくて、米国の終わりではないのかというのがトッドの考えである。
教育的・人口学的・民主主義的安定化の進行によって、世界がアメリカなしで生きられることを発見しつつあるそのときに、アメリカは世界なしでは生きられないことに気付きつつある。[5]
社会が高学歴化すると、晩婚化と教育費の高騰で、子供の数が減る。少子化は世界的なトレンドである。高学歴化は、民主主義を可能にし、また、人口増加に伴う資源の奪い合いも減るので、世界は平和になると予想される。しかし、世界が民主主義化され、平和になって、一番困るのは、米国である。ちょうど、社会からトラブルがなくなると、トラブルを解消するのが仕事である弁護士が困るように、国際社会が平和で民主主義的になると、世界の平和と民主主義を守ることが仕事である世界の警察、米国が困るのである。
冷戦終結後、米国は、新たな敵を作らなければならなかった。オサマ・ビンラディンやサダム・フセインは、もともと米国が育てた人材である。こうした平和の敵であるテロリストや民主主義の敵である独裁者は、米国の軍産複合体にとっては、なくてはならない人材である。米国には、国営企業がないので、デフレ対策の公共事業と言えば、戦争ぐらいしかないのだが、戦争するには、海外から資金を集めるための大義名分が必要なのである。
3. イラク戦争は石油のための戦争か
米国が、イラク戦争を行ったのは、石油の安定供給のためだとよく言われる。しかし、湾岸地方の油田の確保それ自体は米国経済にとって死活問題ではない。米国の貿易赤字に占める石油の割合は、18%程度で、しかも、輸入する石油の大半は、新大陸からのものである。日本が、国内で消費する石油の9割弱を中東に頼っているのに対して、米国のペルシャ湾岸諸国への石油の依存率は2割弱にすぎない。
アメリカ合衆国は同盟国の石油供給の安全を保障すると称するが、実のところは、ヨーロッパと日本に必要なエネルギー資源を統制することによって、この両国に有意的圧力を加える可能性を保持できると考えているのである。[6]
私は、以前「ブッシュはなぜ戦争を始めたのか」で、ブッシュは石油そのものが欲しくて戦争をしているわけではないと書いたが、トッドもそういう意見のようだ。ブッシュは、中国、日本、ヨーロッパという、米国の経常赤字を作り出す国々の重要な輸入相手である中東を支配し、原油の販売で経常赤字を削減しようとしたわけだが、この目論見は外れた。積極財政により、デフレを克服することはできたが、財源を十分確保できなかったので、米国は、今後厳しい経済運営を迫られることになる。
4. 米国の覇権は瓦解したのか
ヨーロッパと日本は、米国が支配者として世界を飛び回るために必要な両翼であり、現在一方の翼を失って、きりきり舞いになっている状態であるが、しかし地面に墜落するまでには、まだまだ時間がかかるだろうというのが私の見通しである。だから、私は、米国が覇者としての地位を失ったとするトッドの見解には与しない。
米国のヘゲモニーが終焉を迎えたかどうかを論じる前に、そもそも覇権国の条件は何なのかを考えなければならない。トッドは、人口や工業生産高や天然資源が多い国を大国と考え、覇権国を最大の大国と考えているようだが、これらは覇権国であるための必要条件でもなければ、十分条件でもない。
トッドは、人口学者らしく、人口を重視するのだが、米国以前の覇権国、すなわち、スペイン、オランダ、英国は、人口大国だっただろうか。国内でも、支配者階級は、決して社会の多数派ではなく、むしろ少数派であることが普通である。元や清の場合、支配民族が、被支配民族の漢民族と比べて、無視できるほど少なかったが、その治世は長く続いた。
工業生産高は、人口と比べれば、重要なファクターではあるが、工業生産高がたんに量的に大きいだけでは、覇権国にはなれない。重要なことは、その時代の最も重要で先端的な産業で主導権を握っているかどうかなのだ。
大航海時代に最も重要であった産業は繊維産業だった。スペインは、毛織物工業のおかげで「太陽の没することのない帝国」を築いたが、プロテスタントの抑圧が原因で、オランダが独立し、国内の毛織物工業が衰退して、没落した。スペインに代わって、オランダが毛織物工業を武器に世界の貿易を支配したが、英国が、産業革命による綿織物の大量生産に成功して、世界の支配者となった。その英国も、重工業化の波に乗り遅れたために、二度の世界大戦で勝利したにもかかわらず、急速に没落した。そして、英国に代わって、世界の覇者となったのは、世界で最初にモータリゼーションに成功した米国である。
今でも米国は、情報工学や遺伝工学といった、最も重要で先端的な産業の基幹技術を握っている。コンピュターの頭脳ともいうべきCPUでは、米国が主導権を握り、他の国は、より重要でないDRAMを作るとか、OSをはじめとする基幹ソフトは、米国がデ・ファクト・スタンダードを握り、他の国は派生的で泡沫的なソフトを作るといったぐあいに、量では測ることのできない、質的な差異が米国とそれ以外の国にある。
最後に、天然資源であるが、これも覇権国になるための条件では全くない。毛織物、綿織物、鉄道、自動車、情報機器といった、各時代の花形産業の原料を提供した国ほど、覇権国から縁遠い国はない。トッドが次のように言って、ロシアを持ち上げることに首をかしげるのは、私だけではないだろう。
ロシアの石油生産、とりわけガスの生産は、エネルギーの面でロシアを世界的行為者に押し上げる底のものなのだ。それにその広大な国土は膨大な量のその他の天然資源を保証していることを忘れてはならない。[7]
なるほど、石油危機のとき、OPECが注目されたことはあった。しかし産油国は、当時、豊富な資金を手にしたが、世界を支配するだけの知的資源を持たなかった。世界を支配するには、富・知・力の三つにおいて、他の国に対して優位に立たなければならない。そして、その中で一番重要なのは知的支配であろう。先端的な産業の分野で、米国を凌駕する国が現れれば、その時米国は覇権国の座から降りることになるだろう。
5. 参照情報
- エマニュエル・トッド『帝国以後 ― アメリカ・システムの崩壊』藤原書店 (2003/4/30).
- フランシス・フクヤマ『歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間』三笠書房; 新装版 (2005/5/1).
- フランシス・フクヤマ『歴史の終わり〈下〉「歴史の終わり」後の「新しい歴史」の始まり』三笠書房; 新装版 (2005/5/1).
- ↑エマニュエル・トッド『帝国以後 ― アメリカ・システムの崩壊』藤原書店 (2003/4/30). p. 99.
- ↑International Monetary Fund. International Financial Statistics Yearbook. Volume 57, 2004.
- ↑内閣府. “アメリカ:経常収支赤字のファイナンス 民間資金流入は減少、外国の公的部門からの流入は増加.” 今週の指標 No.444. 2003年7月7日.
- ↑Francis Fukuyama. The End of History and the Last Man. Penguin (1993/1/28).
- ↑エマニュエル・トッド『帝国以後 ― アメリカ・システムの崩壊』藤原書店 (2003/4/30). p. 37.
- ↑エマニュエル・トッド『帝国以後 ― アメリカ・システムの崩壊』藤原書店 (2003/4/30). p. 196.
- ↑エマニュエル・トッド『帝国以後 ― アメリカ・システムの崩壊』藤原書店 (2003/4/30). p. 217.
ディスカッション
コメント一覧
アメリカの強さを知的資源にみることに非常に納得がいきました。
世界中から最優秀な人材をスカウトし、それらの人材に人と予算を潤沢に提供し、その業績を「正当」に評価する。アメリカには知的な生産と流通の理想的的形態があるように見えます。
それが野球や映画などのエンターテインメントの分野でも同じことがいえる。
やはり、少々ブッシュが不出来でも、アメリカの支配はゆるがないという印象です。
アメリカの優位がしばらくはゆるがないということは、実感できます。
アメリカは現代のローマ帝国として、事実上の世界政府の中心かのごとく
振舞っているようです。
イラク戦争に至る道のりを振り返ったとき、頭に浮かんだのは日本の大東亜戦争
にいたったときの状況でした。
ハルノートや日本の在米資産の凍結など、アメリカは日本が戦争に突入しなければ
ならないように追い込んだとしか思えません。
イラクにおいてもその争点となった大量破壊兵器は結局発見されませんでした。
アメリカはやくざのいいがかりと同じで、完全には否定できない価値観(中国の門戸開放、民主主義、人権、大量破壊兵器など)を全面に押し立て攻めたてきます。
そして、絶対飲めないような条件を突きつけて相手を追い込む。
このような国に占領されて60年、日本はアメリカの属州状態です。
今後、アメリカと中国やEUとの争いが多発することが予想されますが、そのとき
日本はどのような立場をとるのか、果たして今の日本の現状からなんらかの独自の立場を貫き通すことは困難でしょう。そうなると、60年間のアメリカの軍事的、文化的占領下におかれたわれわれは、アメリカ的価値観に骨の髄まで汚染されているので、小さな黄色いアメリカ人もどきとして行動するしかないのかもしれません。
独裁とは、差別の上に成り立つもの。ということは、アメリカの強さの源は、自由、つまり差別を嫌う人たちによるところのものであったという、歴史の事実(リンカーンの時代の奴隷解放など。今でも黒人差別が選挙運動に大きな影をおとしていますね。)が証明するところです。
そんなアメリカが、独裁化に陥っているということは、必然的に弱体化の道を歩み始めている証といえましょうか。
自由を強力に支持する新しい大統領が求められているのもうなずけますね。
バラク・オバマが支持を伸ばしている理由も、こんなところにあるような気がします。強いアメリカは、自由でなくてはならないということを知っている人たちが大勢いるということのようです。
必ずいつかは、覇権が崩れます。
アメリカの一極支配はもう終わりを告げているのではないでしょうか?
今世紀最初に起きた同時多発テロからアフガン・イラク戦争
そしてサブプライム問題から波及した世界恐慌金融危機。
これから欧州はEUとしてまとまり、そしてアジアは中国という強大な国が
台頭して世界の一つのブロックとして役割を果たしていくのではないでしょうか?
今まさに世界は多極化の方向に向かっていると思います。
残念ながらアメリカと共に道を選んだ日本は今後、アメリカと同じく弱体化していくものと思えてならないのです。
これからまた世界中で覇権主義が唱えられる事は間違いないでしょう。
今後は今以上に領土問題、エネルギー問題、そして食糧問題が噴出してくるでしょう。
覇権国家だったオランダは、英国とともに、覇権に挑戦するフランスに対して同盟関係にあり、覇権国家だった英国は、米国とともに、覇権に挑戦するドイツに対して、同盟関係にあり、覇権国家だった米国は、日本とともに、覇権に挑戦するソ連に対して、同盟関係にありました。この「法則」が今後も続くかどうかはわかりませんが、没落する覇権国家と同盟関係にあるから、覇権国家にはなれないということはありません。
まず第一に、アメリカと中国は実態的に類似した奴隷制独裁国家である。アメリカは外見は民主主義だが実質はユダヤに支配された独裁国家だ。オバマが選挙に勝利したのはユダヤ、中国、朝鮮の資金と支配下の新聞、TVのB層煽動の結果だろう。日本の小泉郵政選挙と同じだ。アメリカの中国認識の浅薄さは筋金入りだ。大東亜戦争下の米中連携がしめしている。
シナが覇権を握る可能性は0.それどころか共産党体制は間もなく崩壊する
オバマは間もなく馬脚をあらわす。アフガン戦争を拡大して景気回復を図ろ
うとしてもその手は通用しない。
竹中、小泉、、、努力した人が報われる=儲けた金に税金をかけない
真の日本人、、、人が喜ぶ、幸せになることで報われる。人の喜びが我が
喜び。
この原点に返る事が何よりも求められる。
オバマ大統領はアフガニスタンにおける兵力増強を主張している。
この言葉どおりことは進まない。グリーンニューディールも70年前と同じ結果に終わる。
リンカン大統領を尊敬しているという。戦争(このときはCivil War)を通じて、格差で連帯感のないアメリカを一つにまとめたいと宣言しているに等しい。また、フランクリン=ローズヴェルト大統領のニューディール政策がアメリカ経済を回復させたとはオバマ氏自身も微塵も思っていないだろう。アメリカの本格的な経済回復はWWⅡの武器製造から始まるのだから。
9.11テロの時と同じ、あのプロパガンダが始まる。
「我々は戦うつもりはなかった。しかし、敵が先に攻撃を仕掛けてきた。」
歴史的には、ベトナム戦争のトンキン湾事件、日本の真珠湾攻撃、WWⅠにおけるドイツ無制限潜水艦作戦、フィリピンとキューバをぶん取るためのスペインとの戦争の契機メイン号事件とまず敵をつくり、アメリカ国民の民意を戦意に高めてから本格的な戦闘に突入するのがアメリカの戦争参加へのセオリー。
この過去の歴史から鑑みて、アメリカの思惑の中にアフガニスタンは遠交近攻(中国人でなくても知っている)の「遠交」的位置づけで、特にお隣イランはイラクをたたいてくれたこともあり親米的雰囲気が広まっている。悪の枢軸発言は大統領が代わって撤回されたようにみえる。何よりも原油の安定供給に欠かせない地域だ。特にイスラエルがらみの中東紛争への直接関与はイラク戦争と同じ結果をもたらす。
では「近攻」とはどこか?
私は東アジアを想定していると思う。最も先制攻撃してくれそうな国。南下してソウルを火の海にしても、在日米軍基地でも、当然アメリカ本土に向けてもとにかく最初の引き金を引かせたい。すでにアメリカ工作員が潜入しているかもしれない。クリントン国務長官とは別に。私個人としては横田・横須賀にノドンを発射するのは最悪の事態につながるので事前に情報収集して回避してほしい。この国の人工衛星は技術的精度も低く、目的地よりも東側あるいは手前に着弾すれば日本経済が麻痺する。
問題はその背後に控える世界一兵力を持つ隣国。ここでいう兵力は頭数。洪水でスクラムを組んで人の堤防を築くあの国。世界一死刑執行の多いあの国。高い経済成長率と日本からのODAで近代兵器を整えて早く実戦で使いたいあの国。あと10年もすると兵士となる世代の人口が急減し、日本以上の高齢化を向かえるあの国である。
2010年は経済都市で万博が開催されるので、来年の軍事介入はない。つまり、今年か再来年の第2次ペニンシュラ戦争ということだ。
この戦闘・紛争に自衛隊は絶対関与してはならない。巻き込まれてはならない。自衛隊派遣要請は憲法第9条を理由に断固、専守防衛につとめてほしい。アメリカは日本も巻き込みたいのだから。
1950年に始まる第1次ペニンシュラ戦争も突然の南下と、ソ連ではなくあの国の介入を招いた。皮肉にも日本の経済成長の契機。あの国が戦争に関与したら直ちにODA供与を停止し、半島の統一に向けての経済的な援助を想定するべきである。それが1910年からの歴史への懺悔ともなるし、日本企業の市場開拓にもなる。日本語は押し付けてはならない。
当時と世界情勢が違うのは、やはり情報収集力。マイクロソフトもアップルもグーグルも情報のデジタル化によって瞬時に情報の検索、コピー、集約に貢献した。GPSも本領発揮。NSAに集約された情報はどのような形でオバマ大統領に届いているのだろうか?70年前、暗号が解読され筒抜けだった日本の政府、特に外務省及び防衛省の情報管理が徹底しているのか?あの国を含めた情報を元にオバマ氏はどのような最高司令官ぶりを発揮するのだろうか?グリーンニューディールを続ける限り覇権は遠のく。70年前と同様、凋落しつつあるアメリカの覇権はこのシナリオで回復する。
オバマ氏にアメリカ国民が期待すること。映画『インディペンデンス・デイ』の宇宙人をどの国に演じさせるか。少なくともアフガニスタンではアメリカの存在感を強められない。
もう一度念を押していいたい。日本の自衛隊は給油活動であろうが、人道的活動であろうが、お隣に何が起こっても、金だけ出して人を出さないといわれても、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぶ。ジャーナリスト以外は日本人は半島へ渡ってはならない。将来的にはその方が日本の国益にかなう。
広島平和記念公園の碑文を思い出してほしい。あの主語のない文を。
「(兵士だけでなく、無差別爆撃で犠牲になった戦争とは全く関係のない子供たちを含めた皆様、)安らかに眠ってください。(我々日本人は敵の挑発にのって戦火を拡大し、多くの市民が犠牲になったあの戦争を教訓に専守防衛を堅守し、自ら戦争に突入するという)過ちをくりかえしませぬから」
昨日(2009年2月16日)、クリントン国務長官が来日しました。なぜ、最初の訪問国に日本を選んだのかに関しては、いろいろな説明があるようですが、オバマ政権の喫緊の課題が、今後大量に発行する国債の買い手を見つけることにあるわけですから、そのための準備作業というのが本当の理由ではないでしょうか。現在、世界最大の米国債保有国は中国ですが、中国がこれからも米国債を購入し続けてくれるのかどうかは、不透明です。
もちろん、クリントンは、米国債のセールスレディーみたいな卑屈なことはしないでしょう。今回の訪問の主な議題は北朝鮮問題で、米国としては、北朝鮮という脅威に対して、日米同盟の重要さを、つまり日本が米国を買い支えることの重要性を日本に認識させたいということなのかもしれません。
Nagai氏の述べるようなクリントン国務長官来日の目的が「米国債の買い手」を見つける準備作業であるとすれば、ゆうちょ銀行の解禁検討とリンクしないか。
2月4日から自民党で個人・法人向け融資を解禁する方向で調整に入ったと日本経済新聞が1面掲載。政府自民党及びゆうちょ銀行の融資、資金運用方法を危惧します。
対日本経済政策として、アメリカ本国における農業補助金廃止が懸念材料です。
小麦・トウモロコシ生産農家への補助金を中止することにより、アメリカ農家が経営上販売価格を上げざるを得ず、穀物飼料を中心とした食料価格が上昇します。収穫量減ならば更にシカゴ取引価格上昇。国単位として考えれば政府が関税をかけずとも食料を通じて資金調達可能。日本の食糧事情の現実です。
前回コメントの情報収集分析力及び軍事力・食料供給力と並んでアメリカ覇権崩壊はアメリカそのものの崩壊以外に考えられない。それは最も危険な覇権崩壊に。
郵政事業の民営化は、郵貯マネーを米国に献金するための陰謀だといった主張をネットでよく見かけますが、米国債を買い支えることが目的ならば、民営化しないほうがやりやすいのではないでしょうか。
旧郵便貯金時代はその資金の一部は「財政投融資」として5年以上の長期運用分については国会の議決が必要だった。年金資金も財投に含まれる。つまり足枷があった。融資先が特殊法人等に偏り、不公平だったから改革したのではないか。
2004年のアメリカの強い要望で民営化は進められてきた。陰謀というよりはまだ金融が破綻していない時期にサブプライムローンを担保にした金融工学を駆使したといわれる複雑な証券を足枷なしに買ってもらおうとしていたのが当初の予定。
繰り返し主張したい。今回のゆうちょ銀行の融資解禁はモラトリアムが必要である。世界経済の回復をみながら融資解禁にすればよい。ゆうちょ銀行は直接米国債を購入しない。ゆうちょ銀行の資金が民間金融機関に融資され、複雑なしくみの又貸しの中で米国債購入につながるシステムを想定される。資金はアメリカの富裕層の中にあり、日本から調達しなくても十分なのである。
歴史的教訓としては浜口雄幸内閣の金解禁が何をもたらしたかを考えれば理解できる。今回はGOLDではなくてYEN。解禁は「嵐に向けて窓を開け放つ」ことを意味する。
日本は資金で貢献するのではなく、新しい産業を創出する技術やシステムで貢献すればよい。ゆうちょ銀行に関しては保護主義と非難されようととにかくモラトリアム。「ゆうちょ銀行は全国に分散し、それぞれの融資担当者が審査に不慣れなもので数年間は融資できません。」とアメリカに伝える。
日本が保護主義ではない証にグリーンニューディールに貢献する。グリーンニューディールが成功するかしないかは日本の技術にかかっている。食料や資源の切り札をきられるまえに資金以外の方法でアメリカに協力するしかない。
前回も述べたように食料高や資源高にともなうハイパーインフレが起きれば、貯金も預金も不良債権もそして財政的な負債もすべてリセットされてしまう。もちろん日本の国民はハイパーインフレを望んでいない。
アメリカの覇権は日本をはじめ、アジアの協力でもうしばらく維持される。
英国訪問中の温家宝(ウェン・ジアバオ)首相は米国債について「購入を続けるのかどうか、どの程度購入するのかは、中国の需要と資産価値を保持できるかにかかっている」と発言、購入見直しに含みをもたせた。
と
クリントンは、米国債のセールスレディーみたいな卑屈なことはしないでしょう。今回の訪問の主な議題は北朝鮮問題で、米国としては、北朝鮮という脅威に対して、日米同盟の重要さを、つまり日本が米国を買い支えることの重要性を日本に認識させたいということなのかもしれません。
この2つの論説は、米国財務省証券を日中どちらか(或いは両方)に消化して貰わなければ、米国の今後の政策が成り立たない、と主張するものだと受け取りましたが、米国債の消化は、FRBが行うことも可能ではないのでしょうか?
また、当のFRB議長がそれを示唆する発言を2009年1月28日にしてると思います。
これは、わが国が第二次大戦中に行った、日銀の国債引受と同じことだと思います。
つまりアメリカは、今後国債消化に伴なう制約を一切受けずに、世界運営が可能になることを示していると思います。(日本にも中国にも気兼ねはしない)
このような世界が出現した場合、永井さんは日本がどうすべきであると考えますか?
米国人は資産を持っていますが、貯蓄を持っていません。そして資産価格がデフレにより暴落しています。これが問題なのです。
あの金解禁が金の流出とデフレを惹き起こしたのは、旧平価で解禁したからであって、平価を市場価値にまで切り下げていたら、そうはならなかったでしょう。濱口内閣の失敗から学ぶべきことは、世界的なデフレ時に通貨を切り上げることはするべきではないということです。円高を放置している今の日本政府と日銀は、その教訓から学ぶべきでしょう。
ゆうちょ銀行の預金は預金者のものであって、ゆうちょ銀行や日本政府のものではありません。預金者は、少しでも金利が高くなることを求めています。国内よりも海外のほうが利回りが高いなら、預金者は海外への融資を望むでしょう。これまで日本のマネーが海外に流出していたのは、日本の生産性が低くて、利回りが低いからです。日本への投資と融資を増やしたいならば、保護主義を捨てて、日本の生産性を向上させることが重要です。
中央銀行が国債を引き受けると、通貨価値が下落し、インフレやキャピタルフライトを惹き起こすので、無制限にはできません。ただし、米国通貨は、2009年2月現在、円を除く他の通貨よりも高くなっており、米国国内でもデフレが進行しているので、ある程度実施する余地はあるかと思います。実は、こうしたインフレ政策を取る必要性が最も高い国は、円高とデフレに苦しんでいる日本ですが、日本銀行における国債の引き受けは、財政法第5条によって禁止されています。
今回、「特別の事由」として、ある程度行うか、財政法第5条を改正するか、あるいは政府与党の一部が検討しているように、政府紙幣を発行するか、何らかの手段で、ベースマネーを増やすべきでしょう。こういうインフレ政策は、通貨価値をさせ、キャピタルフライトを惹き起こすという副作用を伴うとはいえ、世界の主要国が、同時にこれを行えば、こうした副作用を最小限に抑え、世界的なデフレから脱却することができるでしょう。
昨日の産経新聞に、こういう記事がありました。みんな考えていることは同じですね。
オバマが、将来財政赤字を削減することを宣言したのも、国債乱発による通貨下落とマネー流出を防ぎたいという意図からでしょう。
さっそくのご返答、ありがとうございました。
さて、国債の中央銀行引き受けは、日米両国とも障害を乗り越え行うであろうと考えております。
というか、すでに通貨の発行を中央銀行が独占する時代は、終わったのではないかと感じています。(政府紙幣か、それに類するものを発行すべきでは?)
オバマは莫大な国債の発行と消化、及びドルの価値の維持を、同時に行わなくてはならず、この二律背反は不徹底にならざるを得なかった、ルーズベルトのニューディール政策を思い起こさせます。
思うように回復しない経済と、イラクとアフガンを抱えた米国、過剰なまでの期待を背に登場したオバマが、どのような行動をとるか心配です。
(デフレ下での戦争の誘惑に勝てるのか?)
このような場合、従来型の戦争による回復を求めず、政府紙幣の供給による回復は出来ないでしょうか?政府が国債を発行したら債務は積み上がりますが、政府紙幣ならそのような心配もないと思います。
政府紙幣の日本への効用は、わが国の膨大な供給を消化する市場が消滅し立ちすくむ今、ヘリコプターマネーや社会保障費に充当してはどうでしょう?
特に日本における通貨の供給は、流動性の罠がますます発揮されると容易に想像されますので、社会保障費や消費税を軽減したり事実上撤廃すれば、その分需要の喚起となり、外需依存の悪弊から逃れる一助になりはしないでしょうか?
(米国に変り中国などに市場を見いだしても外交は益々厳しく難しいでしょう)
(当方は、ことさらに中国を敵視する立場では御座いません)
以上の方法では、インフレの恐怖を理由に拒否され易いとも存じますが、デフレ退治に手をこまねいていては、最悪戦争しか手段がないのでは…と愚考しております。
永井さんでしたら、現下のデフレ(既に15年超)をどう退治されますか?
私は、以下のようなポリシーミックスで景気循環に対処するべきではないかと考えています。
1.デフレ期における政策=減税+インフレ税
減税によって生じる歳入不足額を通貨の増発により補い、インフレ圧力をかけます。インフレにするということは、通貨の保有者から、通貨の減価分をインフレ税として徴収しているのと同じことになります。だから、減税によって減る負担が、インフレ税によって相殺されます。したがって、納税者の負担は変わりませんが、通常の徴税とは異なり、人々にインフレ期待を持たせ、デフレスパイラルを食い止めます。
2.インフレ期における政策=増税+デフレ補助金
増税によって生じる歳入超過額を通貨の回収により減らし、デフレ圧力をかけます。デフレにするということは、通貨の保有者から、通貨の増価分をデフレ補助金として給付しているのと同じことになります。だから、増税によって増える負担が、デフレ補助金によって相殺されます。したがって、納税者の負担は変わりませんが、通常の徴税とは異なり、人々にデフレ期待を持たせ、インフレスパイラルを食い止めます。
通常は、通貨の代わりに国債を増発したり回収したりするのですが、通貨の方が国債よりも流動性が高いので、インフレ効果もデフレ効果も大きいと思います。また長期的に経済が成長し続けるためには、回収する通貨よりも増発する通貨の方が多くなければならないので、発行した分をすべて償還しなければならない国債は、経済の成長を阻害します。経済が成長し続けるには、通貨は少しずつ死ななければなりません。さらに、国債には利子が付いているので、インフレ時に急激に膨らむ点も問題です。そこで、与党は利子なしの国債を発行することを考えているようですが、相続税免除を前提にした利子なし国債や政府紙幣よりも通常の日銀券の方がよいかと思います。
私は景気循環に合わせて歳出や歳入を増減することには反対です。歳出も歳入も、したがって納税者に対する負担と便益を常に一定に保ち、インフレ税/デフレ補助金の使い分けにより、マーケットに対してネガティブ・フィードバックを働かせるべきだと思います。こうすれば、ある世代の負担を次の世代に押し付けることなく、また公的セクタの肥大化によって生産性を低下させることなく、恐慌を防ぐとともに、バブルの過熱を防ぐことができます。
>相続税免除を前提にした利子なし国債や政府紙幣よりも通常の日銀券の方がよいかと思います。
申し添えるのを忘れておりましたが、現在の政府紙幣発行論者は、2種類の紙幣の並行流通を想定しておりません。
例えば、政府が1兆円と記載した紙を日銀に引き受けさせ(財政法等に抵触しない方法もあるようです)、政府は同価で引き換えた日銀券にて政策を実行するものです。(無利子無期限の国債とはまったく違います、政府紙幣と日銀券の等価物々交換)
1.デフレ期における政策=減税+インフレ税
減税によって生じる歳入不足額を通貨の増発により補い、インフレ圧力をかけます。インフレにするということは、通貨の保有者から、通貨の減価分をインフレ税として徴収しているのと同じことになります。だから、減税によって減る負担が、インフレ税によって相殺されます。したがって、納税者の負担は変わりませんが、通常の徴税とは異なり、人々にインフレ期待を持たせ、デフレスパイラルを食い止めます。
日本政府は減税らしき減税をした試しがないので論評は難しいのですが、国民性向を思うと反応が目に見える気もします。
減税による政府財政の逼迫と、通貨の増発に伴う国債残高増を嫌気するのではないでしょうか?
つまり通貨の供給によるインフレ圧力を上回る、自己防衛(消費を減し貯蓄)に走るのではと危惧します。
バブル崩壊後のデフレスパイラルを止める為の政府日銀の施策は、おおむね通貨の供給増でしたが、増加したマネーは結局預金として滞留死蔵されています。
通貨供給の増加が意味ある政策の体をなさない証拠は、インフレらしきインフレが昨年の資源バブルインフレまで無かった事です。(資源バブルが続いたら物価のみ高騰する悪性インフレになる可能性が高かった)
外部環境に強要される避けがたいインフレでもなければ、現在の国民にインフレ期待を持たせる事こそが、至難でありましょう。
また仮にお説の通りであったとしても、国民が未来に不安しか持たず、政治や官僚やマスコミに不信のみ抱く現状では、どんな政策も効果を発揮せず無益かもしれません。(政府紙幣含む)
(政と官(公的セクタ)の透明化と生産性の向上は最も肝要で、まず医療と年金改革を喫緊の課題とし行政システムも集約簡素化へと改造し、政治家の定数削減も必要でしょう)
(政治と政治家の質は、国民の質と同義でありますので早急な向上は望めず、数を減して対応)
政府紙幣である意味と問題点
魅力ある財とサービスが政府紙幣の源泉で、資産たる紙幣は日銀券を償却できます。
今の世界で、日本が最も発行するに有利な地位を占めていると思われます。
が、私も含め政府紙幣論者の最大の弱点が、上記の政治家と国民のレベルです。
極論すれば、無制限に発行する事も可能な紙幣を私達は制御し得るのか?
政と官、程度の問題もクリア出来ないのにです。
クリア出来るなら政府紙幣など発行しなくて済むのでは?と問われれば答えに窮せざるを得ません。
時あたかも世界恐慌前夜とでも評しましょうか。
戦争に突入した昭和の日本を繰り返すか?
維新を成した江戸末期の日本になるのか?の境目なのかもしれません。
乱文長文にお付き合い頂き、有り難うございました。
日銀が政府に対して債権を持つということですか。これでは、発行した日銀券をすべて税として回収すると宣言しているのと同じことですから、インフレは起きません。
私が言っている通貨の増発は国債残高を増やしません。
日本銀行が行った量的金融緩和(長期国債買い切りオペ)は、銀行券発行残高を長期国債保有残高の上限としておりました。よく、日銀の量的金融緩和にはインフレ効果がなかったと批判をする人がいますが、日銀の量的金融緩和の目的が、財政ファイナンスではなくて、インフレなき資金供給であった以上、インフレが起きなかったことは当然でしょう。
円高とデフレが進行しているということは、実は人々が日本政府を信用しているということです。2009年2月現在円安が起きていますが、この原因の一つは、麻生内閣に対する信任の低下です。
アメリカの覇権衰退があっても安保条約や日本との貿易はまだ続くはずだと言うのが大半の日本人の考えではないかと思われる。ある意味ではアメリカ依存症であるのかそれともなければ戦後、右翼も左翼も対米従属を基本とした政策を遠まわしにアナウンスし続けたために日本人は洗脳されたのか?理由はともかくとして対米従属こそ国是であるようなことがまかりとうり日本の自立を阻んでいるのが現状ではないかと思われる。
①日米安保の継続は可能なのかどうか?
これはすでに破綻しているように思える陸上の主力部隊はアフガニスタンやイラクに引き抜いているので安保と言っても事実上空洞化状態になったといってもよい。アフガニスタンで戦線を維持したければ日本の米軍の兵力をアフガニスタンに送る必要がある。もしまだ米軍が日本に駐留していてもいずれは引き抜かれる運命にある。空洞化しつつあると言ったほうがいいかもしれない。
②アメリカは日本と今ででと同じく貿易を続けられるか?
この答えは「できない」と言ったほうがいい。アメリカでは保護主義が騒がれて外国製品は買わなくなるからと言う予想もあるがこれは正確ではない。おそらくサブプライム問題やこれと類似した問題がある。不動産や株式の証券化による含み損が巨大すぎてアメリカの保険機構は債務不履行に陥り経済は破綻する。もはや他国から製品を買える消費購買力はない!保護主義ではなくアメリカの経済破綻で貿易自体行われなくなる可能性も高い。
日本は経済と軍事の支援が受けられない状況になる危機が起こりうるだろう。周辺諸国との協調路線をとり中国やインドなどの経済の高成長国家との経済的関係を強化する方向性で行かないと今後の日本は危機にされされると同時に疲弊して孤立する羽目になる。中国との関係改善は最優先事項で行うべきだ。また世界の状況はアメリカが破綻後多極化するであろう。日本もその極の1つになれるし独立して自由な経済活動や外交ができ国益増進につながることはいうまでもない。今後の極となる国は「中国」「日本」「インド」「ロシア」「ユーロ」「東アフリカ」「中東」「ブラジル」このような世界が並列するようになるだろう。英米イスラエル中心体制のピラミッド型とは違いそれぞれの国が平等にルールを決められるのが日本にとってプラスである。
日本人は対米従属と言う夢から覚めて「多極化」と言う現実と向き合う必要がある。
世界システム論
アメリカでは珍しくカールマルクスの共産主義を根底とした哲学を元に政治経済の分析がされている。
アメリカ崩壊後の日本と世界
ウォーラーステイン自体、共産主義者ではないと思われるがその分析方法は興味がある。冷戦期のころは双極化した対立があったころに資本主義終焉した後には全世界が社会主義化および社会主義的な世界政府ができると予言している。しかしながらこれはソ連がアメリカに勝利するのではなく資本主義が発展、拡大の余地がなければ世界は資本主義システムから別のシステムに移行するとのことである。
私が気になったのは資本主義の拡大の余地がなくなればという所だ!もし中国やインドなどが経済発展しなければ資本主義の拡大は発展はなくシステムそのものが麻痺してしまう・・・
これはおそらく正しい意見である。資本主義は拡大していくことにより存続できるシステムである。それがなければ消滅するのは当然であろう。
このことをニューヨークにいる資本家たちが知らないわけがない。中国やインドなどの経済発展を誘発させて冷戦を終わらせたのは彼らの根回しがあると考えてもおかしくないのではないか?
中国インドの発展は長期にわたり持続するので自立的に発展段階に両国が突入すればアメリカが世界市場として存在しなくとも資本主義を維持または拡大できるのだ。
そのほかにも『ヘゲモニー(覇権国家)』というキーワードも気になる。ウォーラスティーン言う覇権国家は現在ではアメリカになるがそれまでにいたるまで覇権がヨーロッパの国々で移譲されてきたのだ。諸説はあるがウォーラスティーンによるとスペイン オランダ イギリス アメリカと覇権移転、または移譲された。スペインに関しては田中宇氏によると覇権国家ではなく単に世界に植民地というより拠点を作っただけでそれぞれの地域には帝国が並存して存在したため中国やインドなどではほとんど影響力がなく覇権国家のような強大な力は持ちえなかったという。ポルトガルに関しても似たようなものと考えてよいかもしれない。オランダ以降から覇権国家と呼べるのではないかとも最近言われている。
そのほかの点で気になるのは中核国家(覇権国家)準周辺、周辺といった定義である。アメリカを頂点としてその次に他の先進国、最後に途上国がその外側にあり経済的余剰が発生するとそれがアメリカに運ばれるシステムになっている。この部分に関しては同意できない部分がある。
世界中に軍事基地を作りそのことにより他国が潤うようにしたのは米国であるしアメリカは経済の余剰をアメリカに持ってきているが世界中の製品を買う国際市場にもなっており一方的な搾取ではないという点は見落としている。国家間の序列についての意見は正しく中心部はアメリカとイギリスとイスラエルがいてその黒幕がイギリスということが付け加えられればウォーラスティーンの分析が現在の状況を明らかにさせることができる。
アメリカの中心の体制については終焉を迎えつつあり新たな覇権国家は当分、現れないで世界は多極化の方向に向かうのが正しい現在に見方であろう。中国に関しては覇権国家になりたくないメッセージを感じる。
経済の量や質または軍事力を背景にしただけでは覇権国家としての地位を確立するのは難しい。中国もその点はわかっているし覇権自体ばば抜き的要素もある。
東アジアは経済や軍事面では20年以内で世界一位になるだろう。しかし国家や民族や宗教を超えた普遍的政治哲学やシステムがないところは弱点ともいえる。今後は東アジア共同体を作り時間をかけて民主的でよりよい政治システムを構築する過程で政治哲学やシステムを作り出されば世界を正しい方向性に導くものになるのではないか?
私もこの考えには賛成です。そして、オランダ、英国、米国という歴代の覇権国家に共通していることは、時代が要求する先端技術の開発で主導権を握っているということです[日本は米国に代わって世界を支配できるか]。過去の例から言うと、多極分立というのは過渡的な段階で、いずれ雌雄を決するときがくるのですが、それがどの国になるかはまだわかりません。