どうすれば労働者の待遇は良くなるのか
2008年6月8日に、将来に絶望した派遣社員、加藤智大が秋葉原で無差別殺傷事件を起こしたことで、派遣社員の劣悪な労働条件に世間の注目が集まった。事件後、舛添要一厚生労働相は、日雇い派遣を禁止する方針を打ち出し、2008年秋の臨時国会に、労働者派遣法改正案が提出される予定である。しかし、こうした法的規制で問題は本当に解決するのか。派遣社員を含めたすべての労働者の待遇を改善するにはどうすればよいのか、抜本的な解決策を探りたい。

1. 労働者派遣制度の本当の問題点は何か
2008年7月3日に総務省が発表した就業構造基本調査によると、2002年から2007年にかけての5年間で、正社員(正規雇用労働者)が3.6%減少したのに対して、労働者派遣事業所の派遣社員は、1.6%も増加した[1]。これは、労働者にとっては、憂うべき傾向である。派遣社員は、正社員と同じような仕事を同じ時間やっても、正社員ほど高い収入を得られないからである。

派遣社員は、直接企業に雇用されていないので、派遣先企業が支払う人件費を満額受け取れない。派遣元企業が労働者の派遣によって受け取るマージン率は、派遣先が派遣元に支払う金額の3割前後である。もちろん、派遣元企業の取り分の中には、保険料のように、労働者が負担すべき費用も含まれていることもあるが、派遣元企業が仲介することで、労働者から見れば、賃金が割安となり、雇用者側から見れば、人件費が割高になっているという事実は、否定できない。
人件費が高くなるにもかかわらず、企業が、あえて労働者を直接雇用せずに、派遣社員を間接的に雇用する理由は何であろうか。自社だけでは、適任の労働者をすぐに見つけられないからだろうか。そうではない。もしも派遣元企業の仕事が、たんに労働者を探して紹介することだけなら、派遣先企業は、派遣元企業に、少額の紹介料を1回払うだけですむはずであり、毎月派遣元企業に金を払う必要はない。企業が正規雇用に躊躇する本当の理由は、解雇のためのコストが途方もなく高いからである。
日本では、いまなお終身雇用制(厳密に言えば、定年雇用制)の慣行が続いている。企業は、新卒の若年労働者を採用し、原則として定年まで雇用し続ける。解雇には相応の理由が要求され、解雇する場合でも、転職先を紹介しなければならないのが普通である。そのため、日本企業は、不要になった労働者であっても、社内失業者、いわゆる「窓際族」として雇用し続けるということが多い。これは、企業にとっては大きなコストであり、このコストに比べれば、派遣元企業に支払う手数料は、安いものだというのが、派遣社員を受け入れている企業の認識である。
企業に人材派遣会社の利用をやめさせ、正社員を雇用させ、労働者に直接給料を支払わせるには、正社員を解雇するコストを大幅に下げる必要がある。もちろん、ゼロにするのが最も好ましい。しかしながら、こうした改革案を公約にする政治家はほとんどいない。辻広雅文氏は、ワーキングプアである派遣社員を救うには、正社員のクビを切りやすくする法制度改革が必要であることを認めつつも、そうした改革は、正社員たちが自分たちの既得権益を守ろうとするために、実現することはないだろうと言っている。
虐げられた人びと、ワーキングプアたちを救えという声は多く聞こえるが、正社員の雇用に手をつけるという視点は、世の中のどこにもない。それは、メデイアを含めて影響力のある人びとの多くが正社員という既得権者であるからだ。[3]
辻広雅文氏は、派遣社員が定年雇用性の犠牲者であるのに対して、正社員はその受益者であると考えているが、雇用の流動化は、本当に正社員に不利益をもたらすのであろうか。
2. 正社員も定年雇用制の犠牲者である
定年雇用制は、全世界で崩壊しつつある。日本では、依然として、この雇用慣行が守られているのだが、だからといって、日本の正社員は、海外の正社員よりも恵まれていると言えるだろうか。このことを検証するために、定年雇用制が完全に崩壊している米国とそうでない日本とで、労働者の待遇を比較してみよう。
2007年11月に、E2パブリッシング株式会社は、米国の提携先と共同で、日米のエレクトロニクス・エンジニアの給与を調査したところ、次のような結果を得た。

調査対象の平均年齢も平均職務年数も、日米ともほぼ同じであるが、平均年収に大きな違いがある。加えて、平均勤務時間は日本の方が米国よりも長いので、単位時間当たりとなるとさらに大きな差がつく。これは、米国のエンジニアが日本のエンジニアよりも優秀であるからではない。エレクトロニクスは日本が最も得意としている分野の一つであり、おそらく平均的なエンジニアの質は日本のほうが上だろう。それにもかかわらず、これだけ大きな待遇の差が生じる理由は何か。
平均転職回数の項目を見てみよう。日本のエンジニアが0.8回であるのに対して、米国のエンジニアは3.1回もある。米国のエンジニアは、待遇改善のために頻繁に転職するが、日本のエンジニアはそれができない。日本では、会社の業績が悪化すると、経営者が従業員にサービス残業や給料の削減を要求するが、従業員は、たいがい転職せずに、おとなしく要求を呑む。同じことを米国でやったら、従業員は、無能な経営者を見限って、もっとまともな会社に転職してしまう。日本のエンジニアの方が、米国のエンジニアよりも給料が安くて、労働時間が長いのはこのためであろう。
待遇を悪化させても転職しない日本の労働者は、中国人の目にも奇異に映るようだ。中村修二氏は、日本で起業した中国人の経営者の話をこう紹介している。
彼が言うわけですよ、日本で会社を経営するのは楽ですよと。業績が悪くなったら給料を減らせばよい。また悪くなったらさらに削る。こうしてどんどん給料を減らしていっても、社員はほとんど会社を辞めない。こんなに会社経営が楽な国はないって。中国で同じことをやったら、社員はあっという間に霧散して一人もいなくなる。米国だって同じ。だから、経営者は第一に社員の処遇を考えなければならない。処遇の改悪はぜったいにできないから、本業で業績を上げることを真剣に考え、取り組まざるを得ないわけです[5]
中村修二氏が主張するように、労働者たちが経営者に対して「待遇を改善しないと他の会社に行くぞ」と脅せられるようにならない限り、労働者の待遇はいつまでたっても良くならないだろう。にもかかわらず、日本の労働者は、なぜその手段に訴えないのか。
日本の企業社会では、正社員は、本人によほどの落ち度がない限り、解雇されることはない。こういう慣行があまねく行われている社会は、会社を辞める人に対して「よほどのことがあったにちがいない不適合者」というレッテルを貼る社会でもある。
もちろん、理論的には、本人には何の落ち度もなく、たんに自発的に退職したということもありうるのだが、日本企業では、再就職が難しくなるといけないからという温情から、本人の落ち度を隠して離職処理するということがしばしば行われている。再就職希望者を審査する人事部がそうした内情を最もよく知っている当事者ということもあって、いくら再就職希望者や元の職場が、本人に落ち度があったわけではないと言っても、信じてもらえない。日本企業が、中途採用よりも新卒採用を好む最大の理由は、新卒採用では、そうしたリスクがないからだ。
日本の正社員が、転職に消極的なもう一つの理由は、転職すると、新しい職場でいじめられる可能性があるからだ。新卒採用・定年退職・年功序列を特徴とする日本の典型的な職場においては、実年齢と入社後の年数と職場での地位が連動している。そうした先輩/同期/後輩の身分秩序が厳然と存在する職場に、実年齢と入社後の年数と職場での地位が相関しない中途採用の社員が入ってくると、格好のいじめの対象となる。蓋し、いじめとは、異物の排除によって秩序を再設定しようとするカタルシスである。
転職者に社会的不適合者というレッテルを貼る風潮が支配的であるなら、なおさらいじめの対象になりやすい。少数派に転落して、いじめられるのがいやなので、みんな転職に消極的になるのだが、転職が少ないがゆえに、ますます転職がしにくいというポジティブ・フィードバックが働く[6]ので、いっこうに雇用が流動化しないのが日本の現状である。
日本には、転職の自由は、形式的にはあるが、実質的にはない。日本の企業の中にいる正社員は、いわば檻の中に閉じ込められた囚人のようなもので、どこにも逃げられない。経営者はそれがわかっているから、社員がいなくなることを心配せずに、サービス残業やら給料カットやら、無理難題を平気で正社員たちに押し付けられる。
このように虐げられているにもかかわらず、囚人たちは、檻の鉄格子を、自分たちから自由を奪い、自分たちの生活を惨めにしている桎梏としてではなく、自由経済の荒波から自分たちを守ってくれるありがたい防御壁と勘違いし、そこから脱出しようという気を全く持たない。そして、囚人たちを、檻の中から解放してやろうとすると、彼らは「俺たちを殺すつもりか」などと言って大騒ぎをし、鉄格子にしがみついて抵抗を試みる。辻広雅文氏の文にあったように、日本の正社員たちは、檻の中に監禁されていることを自分たちの「既得権益」であると思って、むしろその維持に懸命になっているのである。
実際には、敗者と言われる派遣社員のみならず、勝者と言われている正社員までもが、硬直的な正規雇用制度の犠牲者である。では、硬直的な正規雇用制度の真の受益者は、経営者かといえば、そうでもない。たしかに、有用な人材を長期的に保有し続けられるというメリットもあるが、それは、不要な人材を長期的に保有し続けなければいけないというデメリットと抱き合わせである。
かつて、硬直的な正規雇用制度にデメリット以上のメリットが期待できた時代があった。画一的製品を長期にわたって安定的に量産する工業社会では、生産者は均質な人材を長期にわたって安定的に確保する必要があった。工業社会は、増大する人口の最低限の需要を満たす上で適合的な社会の段階であるが、この段階を超えると、消費者は、商品の量ではなくて質を要求するようになる。この新しい段階の社会を私は情報社会と名付けている。日本を含めた先進国は、既に1970年代以降、この段階に入っている。情報社会は、短期間のうちに多品種の商品を少量生産するので、それに応じて、労働者も機動的に変化させなければならない。
情報社会化の進展により、終身雇用制は、世界的に崩壊しつつあるが、日本は相変わらず、古い雇用システムに固執している。グローバル化が進んでいる現代にあって、日本だけが硬直的な雇用システムを維持していることは、日本の国際競争力の維持という点で由々しき事態を惹き起こすことになる。
日本の技術者の中には、海外に活路を見出そうとする人が既に出ている。
すべての技術者が泣き寝入りしたわけではない。それを不服とし、自らの専門技能を生かすべく会社を辞めていった人たちがいた。多くの技術者の証言によれば、その大きな受け皿になったのが韓国メーカーだった。こうした人材を大量雇用することで、韓国メーカーは日本メーカーが蓄積してきた技術やノウハウを、短期間で習得することができたのだという。[7]
韓国の企業であるサムスン電子が、冷遇されている日本企業のエレクトロニクスの技術者を高い給与で引き抜き、短期間のうちに日本のテクノロジーを習得し、日本のすべてのエレクトロニクス企業を凌駕するほどの成功を収めたことはよく知られている。
日本の企業は、転職者に対する偏見が強く、経営者に理解があって、転職者を受け入れても、職場では異物としていじめられる傾向にある。しかし、海外の企業は、転職者への偏見を持たず、職場にも、中途採用を理由に同僚をいじめる習慣はない(例えば、韓国には終身雇用の慣習はほとんどない)。それゆえ、待遇に不満を持つ日本の正社員にとって、外国の企業は、理想的な転職先である。現在、韓国のみならず、台湾、中国、シンガポールといったアジア各国が日本の優秀な技術者の引き抜きに力を入れている。
日本企業が、今後も「正社員はどこにも逃げはしまい」と高をくくって、処遇の改善に努めないなら、技術者と技術の流出がさらに加速するだろう。世界の潮流に反して硬直的な雇用システムを墨守し続けることは亡国のシナリオである。国内の雇用を流動化し、有能な人材に逃げられる無能な経営者の企業がつぶれるようにしなければならない。もしそうしなければ、有能な人材が海外に逃げることで、日本自体がつぶれることになる。
3. 新しい時代にふさわしい雇用システムを作れ
日本の雇用システムを情報社会の時代に適合的にするためには、労働者を弱者と規定して過剰に保護することなく、労働市場における売り手と買い手を完全に平等に扱う必要がある。
日本の民法は、雇用契約の解除に関して、労働者と使用者を対等に扱っている。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。[8]
だが、労働基準法は、労働者よりも使用者に大きな責務を与えている。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。[9]
また、労働契約法は、解雇には正当な事由がなければならないとしている。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。[10]
この労働契約法は、2008年3月1日から施行された新しい法律であるが、この法律が施行される以前から、整理解雇四要件に関する判例の積み重ねがあり、会社都合では容易には解雇できないようになっている。そこで、私は、肥大化した労働者の過剰保護を削減し、雇用契約の解除に関する法的規制を、労使が平等である民法第627条の規制にまで緩和することを提案したい。
雇用を流動化する上でのもう一つの障害は、労働組合である。労働組合を組織し、組合活動を行う権利は、日本国憲法第28条で保障されているので、労働組合の禁止は容易ではないが、日本国憲法といえども、時代に合わなくなった条項は変更すべきだろう。
労働組合は、工業社会の時代においては、労働者の待遇を向上させる上で、有効に機能した。しかし、情報社会では、均一な労働力の対価(労賃)を画一的に引き上げるということ自体が無意味なので、労働組合の存在意義は、なくなりつつある。実際、労働組合の組織率は年々低下し、平成18年現在、18.2%にまで低下している[11]。
派遣社員の待遇が悪いからといって、派遣社員が労働組合を結成し、ストライキをやって待遇の改善を要求しても、問題の解決には全くならない。労働者の待遇を強制的かつ一律に向上させると、雇用が減少するので、失業者が増え、貧困問題はいっそう悪化する。法律によって、派遣業を禁止したり、正社員化を義務付けたり、法定最低賃金を引き上げたりといった手段を用いた場合も同様の帰結をもたらすので好ましくない。労使の選択の自由を奪うことによってではなく、むしろ全く逆に、労使の選択の自由を拡大することによって、貧困問題を解決しなければならない。
労使の選択の自由を拡大し、雇用を流動化すると、有能な正社員の待遇が良くなる一方で、そうではない正社員(特定の職場だけでなくて、どの職場でも無能な正社員)の待遇は逆に悪化するのではないかと危惧する人もいるであろう。そのとおり、格差は、拡大する。だが、たとえ、格差が拡大しても、有能な人材が海外に流出することを阻止することを優先しなければならない。賃金が低すぎて、生活できない労働者に対しては、社会保険金の支給で最低限の生活ができるようにすればよいのだが、生産性の高い人材が国内に残らなければ、社会保険料の支払い手がいなくなってしまう。
終身雇用制が崩壊すると、企業は、終身雇用を前提に行ってきた社内研修や技術伝承に消極的になるのではないかと危惧する人もいるかもしれない。たしかに、金をかけて育てた若手従業員が、他の職場に転職したら、企業としては、人的資源への投資を回収できないということになる。それならば、社内研修や技術伝承を、終身雇用とのバーターで勤務時間内に行う無償のサービスから、勤務時間外に行う有料のサービスにすればよい。教育サービスを独立したビジネスにすれば、育てた人材が他の企業に転職しても、教育サービスの提供者は、不利益を被ることはない。
4. 参照情報
- 大内伸哉『君の働き方に未来はあるか?~労働法の限界と、これからの雇用社会~』光文社 (2014/1/20).
- 城繁幸『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』PHP研究所 (2010/1/16).
- 斎部浩成『日本型雇用の矛盾: 終身雇用・年功序列という常識はもはや非常識』2018/3/25.
- ↑総務省「平成19年就業構造基本調査結果の概要(速報)」p.10
- ↑“Akihabara massacre" by Carpkazu. 8 June 2008. Licensed under CC-BY-SA.
- ↑辻広雅文「正社員のクビを切りやすくする改革は受け入れられるか」『ダイヤモンド・オンライン』2008年02月05日.
- ↑E2 パブリッシング株式会社. “米国と日本のエンジニアの平均年収に500万円の差「EE Times Japan」の給与/意識調査で明らかに” 2007年11月7日.
- ↑仲森智博「だから技術者は報われない」ITpro. 2008/05/23.
- ↑「転職が少ないがゆえに、ますます転職がしにくいというポジティブ・フィードバックが働く」という表現に対して、読者から「ポジティブ・フィードバック」は、「ネガティブ・フィードバック」の間違いではないかという指摘がメールでなされたが、ポジティブ・フィードバックとは、変動がその変動をさらに促進するループ作用のことで、変動の内容がポジティブかネガティブかということとは関係がない。つまり、「転職の減少が更なる転職の減少をもたらす」あるいは「転職の増加が更なる転職の増加をもたらす」ならば、これらのループ作用は、ポジティブ・フィードバックであるが、「転職の減少が逆に転職の増加をもたらす」あるいは「転職の増加が逆に転職の減少をもたらす」ならば、これらのループ作用は、ネガティブ・フィードバックである。
- ↑仲森智博「だから技術者は報われない」ITpro. 2008/05/23.
- ↑日本国.『民法』第3編 第627条 第1項.
- ↑日本国.『労働基準法』第20条 第1項.
- ↑日本国.『労働契約法』第16条.
- ↑厚生労働省「平成18年労働組合基礎調査結果の概況」平成18年12月.
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昭和の高度経済成長期のように経営側の報酬が労働者の10倍程度のかつての終身雇用・年功序列制度ならばどのような労働法制をとろうが問題ない。アメリカ式経営者は一般労働者の100倍以上の報酬を手にすることができる時代だ。
ところが日本は大きな組織ほど平均年齢40代後半、とても頭が大きい(=労働コストが大きい)組織になってしまった。
今まで滅私奉公してきた50代にとっては現在の高給もそれにともなう退職金も既得権益である。辞退しますなどというはずがない。現実として退職金は自分の子供への投資や今までの負債返済に充てられる。教育投資が必要ない定年退職者は退職金を減額するか、この国の将来を背負う子供たちに還元される制度にする必要がありそうだ。高度経済成長期と現代のどちらが過密でストレスのかかる仕事をしているか、高度経済成長期をすごしたご本人が忘れている。というよりも美化してはいないか。
一方、若年層に見られる終身雇用・年功序列回帰は現段階では不可能である。経済全体が成長せずむしろ負担が増える社会なのだから、前者を保障するかわりに後者を捨てなければならない。年齢が上がってもほとんど上がるに相当しない緩やかな昇給(ベア)と企業業績にリンクした賞与・手当。終身雇用を守りたいならば、しばらくは受け入れざるをえない。
同時に絶対匿名で源泉徴収や確定申告は当然、国会議員並みの資産公開するぐらいの大胆な発想の転換も求められる。2000万円の売り上げがあっても所得税対象額が50万円のカラクリがよくわかる。最近ビジネス系の雑誌で給与額の比較特集をよく見かける。ネットでもある程度収入がわかる時代だ。
役所や金融機関のみが労働者の個人の経済情報を独占する時代はもう終わり。
天下りの可能性がある公務員及び特殊法人と、他人の財布の中身を見ることができる金融関係者は実名で収入を公開。やましい気持ちがなければできるでしょう。
ご指摘の通りなのですが、日本型経営は日本の伝統文化を体現していると思っている人が案外多いように思えます。しかも、近年の不況で日本型経営への回帰を待望する声も上がっています。このような状況で、法律改正に踏み切るのは厳しいのではないでしょうか。
私たちが日本的経営と呼んでいるものは、フォーディズムと呼ばれるアメリカ直輸入の経営手法です。フォーディズムは、その名の由来となったフォードをはじめとするアメリカ・ビッグスリーの現状を見ればわかるとおり、経営手法としては行き詰っています。ミクロ経済におけるフォーディズムは、マクロ経済におけるパターナリスティックな大きな政府に対応しています。デフレになると人々がパターナリスティックな打開策を求めるのは自然なことですが、パターナリズムは麻薬中毒患者への麻薬の投与と同様で、一時的な気休めにはなっても、長期的には問題をかえって深刻にしてしまいます。これに関しては、「フォーディズムとナチズム」と「サブプライム問題はなぜ起きたのか」をお読みください。
派遣業という悪徳ピンハネ業者を駆逐すれば、ピンハネ分だけ労働者の所得が増えるというだけの内容であれば、雇用流動を促すことと、その弊害になっている終身雇用の廃止には賛成できます。しかし、日米のエンジニア比較から雇用流動化と国外流出の阻止を展開するのは無理があると思いました。
たとえば日米エンジニアの比較表ですが、40代の終身雇用制度に飼いならされた世代で比較するのはフェアではないでしょう。そして、各種の条件で比較する以前の問題として、国内のエンジニアは絶対値的に安いということができます。日本の経営者はエンジニアを高く評価しません。中途の募集でも300~400万円台というふざけた金額が並んでいるのが現実です。そもそも他の業種での比較ならまだしも、エンジニアは国内でも比較的流動的な業種です。なので、終身雇用を廃して労働者競り市場になれば値上がりするのかといえば、恐らくNOです。また、エンジニアという人種自体が必ずしも給料を重視してはいません。たとえ今の倍の給料になるとしても興味のないものは作りたくないのです。
そう考えると、日米のエンジニア比較は、実は経営者の質やモラルの比較だといえるのではないでしょうか。エンジニアという人種の足元を見て金を出さない国か、労働の質や内容を評価して金を出してくれる国か、ということです。
また、雇用体系の改善で国外流出を防ぐという論調は苦しいと思いました。海外から引き抜かれるような人材は、元々終身雇用に抑止されず、国内でも高給を得て移動できる希少層です。大間のマグロも高級品は台湾に流れているそうです。今や人も物も価値を判断できないからみすみす流出しているだけではないと言えます。
以上は、私自身がエンジニアなので言えることです。自分の意見もそうですが、やはり氷山の一角をつまんで展開する理論は弱いと感じてしまいます。一般化したデータで理論を展開する必要があるでしょう。金融や営業など他の業種、幅広い世代で比較されていればもっとよかったと思います。
論文の着地点が海外流出の阻止というのも時代錯誤的でイマイチでした。国益や国民という括りで考えていること自体が社会主義的なのだと思います。社会主義の国益重視といえば、中国はエグさダントツですね。工場だけでは土地を貸してくれず、国内に開発拠点を義務付けてるんだとか。技術力やノウハウを盗むためだそうです。手法云々は別としても、国政の態度としては見習うべきところもあるように思います。結局論文のタイトルとは関係なくなってしまいますが、「人材の流出は止めようがないのだから、終身雇用なんてさっさとやめて日本企業も海外の有能な人材の流入に力を入れるべきだ。」くらいの方が建設的だと思います。そうなると「文字先行の英語教育などの過去の人材流出防止政策は流入を阻害するので全て廃止するべきだ。」とか変な方向に向かって支離滅裂になりそうですが。
最近このサイトを知って色々楽しく読ませていただいています。ありがとうございました。
この点でも、終身雇用制には大きな問題があります。日本の企業は、終身雇用制を維持するために、仕事がなくなったエンジニアを解雇せずに、他の、エンジニアリングとは関係のない業務に従事させて、人材の使い回しをします。よく言われることですが、日本の企業が正社員として雇うのは、スペシャリストではなくて、ジェネラリストです。その結果、給料よりも仕事の内容を重視していたエンジニアが、希望した仕事ができなくなり、希望する仕事をするために、他の企業に転職しようにも、リスクが大きくて、二の足を踏んでしまうということがしばしばあるからです。
私の主張とこの主張は、矛盾しないと思います。確かに、本稿では、終身雇用制の廃止が、海外の優秀な人材の採用を容易にすることにまで言及しませんでしたが、それは、私の日本語の文章を読むのは大部分日本人であろうという推測から、読者が興味を持たないテーマを除外したというだけのことです。だから、本稿のタイトルは、「どうすれば日本の労働者の待遇は良くなるのか」だと考えてください。
海外の有能な人材がどんな人間だか知ってるんですか?
あなたは海外で外国人に混じって仕事をしたことがあるんですか?
私は海外で仕事をしてつくづく思うのは、日本人の倫理観の高さと優秀さです。
世界中どんな国の人間でも平気で嘘をつくし、盗みもします。
幾ら知識があってもそんな泥棒同然の人間を日本に入れてどうなると思いますか?
日本の事しか知らない、日本人しか知らない人ほど国際化と叫ぶ。
海外で仕事をしている人ほど規制を強化すべきと言います。
欧米型の社会制度は日本には馴染まない。
正直者の日本人は詐欺氏のような外国人に叩きのめされるでしょう。
日本から流失した人材と技術で中韓は日本に追いついてきました。
間抜けな国際化を推進する政治家の責任は大きい。
少なくとも国家反逆罪と機密漏えい罪を整備して情報の流失を阻止してから外国人の雇用を考えてください。
こんなだから、経済一流、政治三流と諸外国から馬鹿にされるのです。
海外のエリート層は、非エリート層に比べて、相対的に犯罪率が低いです。もちろん、ゼロではありませんが、それは日本人でも同じことです。エリート層に限定した移民の推奨は、治安を著しく悪化させることにはならないでしょう。
これは、賛成です。外国人移入民とは関係なく、日本では、伝統的コミュニティが崩壊しつつあります。伝統的コミュニティが崩壊すると、道徳や世間体で治安を維持することができなくなるので、法で犯罪を防ぐしかありません。
私宛てのようなのでレスします。
泥棒同然とは外国人に随分な偏見があるようですね。
おまけに国家反逆罪と機密漏えい罪とは、スパイや何かの話であれば、そういった法律や国防の話にもなるでしょうが、本件とは全く関係ないように思います。
既に書きましたが、私は国益という視点自体に否定的です。
あえて国益について語るのであれば、そのような法律は何の意味もありません。理想論であれば結構ですが、現実的に考えれば鎖国でもするしかありません。
そもそも国益って何でしょう。
おそらく税収でしょう。企業は利益のためにより安い海外で製造するわけですが、それも国益には影響しますね。高くても国内で作らせなければいけません。鎖国しましょう。
または外交権力でしょう。有能な人材も国内の技術ノウハウも外国に見せられません。鎖国しましょう。ついでに軍隊も持ちましょう。それとももっとお金をバラ撒きましょうか。
いやいや、今の政党は技術までばら撒いてエコで売ろうとしてましたね。外国が力をつけたら日本のものは買ってくれませんから税収が落ちますね。本末転倒ですね。
でも政党だけ悪いわけじゃありません。それに賛同した国民が大量にいたのですから民意です。じゃあ国家反逆も機密漏えいも民意じゃないですか。日本にとって異端なのは私や海外在住者さんのようです。
無関係な上に現実味のない妄想を語ってもしょうがないですね。本件に沿って労働者で考えましょう。
中韓に引き抜かれた日本人は良待遇で満足しているのではないでしょうか。
日本の技術を他国に売ったのではなく、自分の能力を高く買ってくれたのが外国の企業だっただけの話です。
そもそも企業が努力して作り上げたものを国の技術だとか国益だとか考えるのがおかしいというのもあります。それは国のものではなく、その企業とそこで働いていた個人のものです。
中韓は国も企業も協力して努力して、有能な技術者を良待遇をエサに引き抜いて力をつけたわけで、某国のように拉致して不当に入手したわけではありません。何も問題ないと思います。
それが自由競争社会だとか職業選択の自由というものではないのでしょうか。
待遇に満足していれば他社にはいきません。
国が良ければ会社がダメでも国内の別の会社を探すでしょう。他国に行こうと思いません。
日本と企業が中韓に魅力で負けたというだけの話です。
法や規制で人を縛り付けることはできません。
国も企業も人も、魅力でしか人を捕らえることはできません。
とりあえず情報や人材の流出の原因としては、私の意見はこんなところです。
そんなわけで、転職を止めることはできないと考えます。
続いて転職と機密漏えいについても考えてみましょう。
そもそも、技術やノウハウを持っていることが価値となり、それを武器に待遇の向上を目指すのが転職という行動なのではないでしょうか。
そうしてそれを武器に働くからには、転職先に技術やノウハウが漏れるというのは必然です。
海外在住者さんも何かしらの能力を買われて国外で働いているのはないでしょうか。その能力に国内で得たものは無く、今働いているところには何一つ漏らしていないのでしょうか。
もしそうなら、私にはその会社が何に魅力を感じてあなたを採用したのか見当がつきません。
そういうわけで、外国人だからどうということではなく、転職が起こる以上は情報の流入出を何らかの強制力で防ぐことは不可能だと思います。
そして、その転職した個人が持っている情報やノウハウの一部が勝手に国益という謎の範囲に含まれる以上、国益の流出を防ぐことも不可能だと言えます。
本件とは無関係ですが、一応聞かれたので答えますが、私は外国で働いたことはありません。
国内から海外の企業とやりとりしたことはあります。
安いから使えと言われて下請け先として仕事を流すわけですが、大抵は出来が悪くて使い物になりません。安かろう悪かろうというやつです。
説明しても何が悪いのか理解してもらえませんし、自分達で作り直したほうが早いのが現実です。まぁハズレを引いているだけかもしれませんし、全ての外国企業がそうだとは思っていません。
国内では何人かの外国人と仕事をしています。
彼らは優秀で、日本の文化にも日本人以上に興味・理解があります。
彼らがどういった素性の者かなんて当然把握しているわけもありませんから、海外在住者さんが不安がるようなスパイ的な何かの可能性は否定できません。
それが問題とも思いませんし、もしそれを疑うのであれば、相手が同じ日本人であっても安心できる理由にはなりません。
もしかしたら他社の産業スパイかもしれません。某国から帰化した在日スパイかも知れません。
疑心暗鬼に駆られていたら仕事なんてできませんね。
そうそう、スパイに関しては法律もあるし警察にも専門部署がありますね。
それらの無能を嘆くのはやはり本件とは無関係なので、また別の機会に。
遅れましたが、永井さん、レスありがとうございました。
連投ですみませんが、国内労働者の待遇改善についでです。
転職とか労働者の競り市場に向ける方向以外に待遇の改善はないのかを考えました。
そこで、以前カンブリア宮殿に出ていたメガネの21の話を思い出しました。
大雑把に言えば、内部留保を持たず、社員の給料と商品値引きに還元するというものです。
会社も個人も貯金し過ぎなんですね。
終身雇用の廃止だとか労働者の流動性を高めるというのは、能力の高い人間の待遇をあげる分にはよいですが、企業が貯めこんでいたら世界的にはよくなりませんね。
21のような経営手法であれば、仮に終身雇用であっても待遇を改善できる道というのはあるように思いました。
内部留保が増えているのは、デフレが原因でしょう。デフレになれば、キャッシュを投資に使うよりも、死蔵しておいた方が儲かるので、個人も企業も溜め込むようになります。これを防ぐには、ベースマネーを増やして、インフレにしなければいけません。日本共産党は、大企業の内部留保に課税することを提案していますが、それだと不公平だし、徴税コストが高くつきます。インフレにすれば、徴税コストゼロで、平等にインフレ税を徴収することができます。また、インフレになれば、キャッシュを死蔵するよりも、投資に使った方が有利になるので、投資、さらには雇用の増大をもたらすことになります。