不定積分とは何か
不定積分とは、下端が定数で上端が変数の積分であり、たんに原始関数を求めるだけの原始積分とは区別されるべきである。また、原始積分に含まれる原始積分定数と不定積分の下端が作りだす不定積分定数も区別されるべきである。積分は微分の逆演算とよく言われるが、これは数学的には間違いである。原始関数の集合と非積分関数の集合との対応関係は一対一ではなく、多対一であるから、逆写像の関係は成り立たない。微分と積分は分析と総合の関係にあり、導関数は元の関数の情報の一部しか持たないので、それだけで全体の情報を復元することはできない。
1. 不定積分に対する従来の説明
不定積分とは何か。これに対する私の答えを出す前に、まずは、従来、不定積分がどのように説明されてきたかを確認しよう。説明の仕方は説明者によってまちまちだが、私が観察するところ、以下のようのものが多い。
不定積分(indefinite integral)とは、微分することで所与の導関数が得られるという条件を満たすすべての関数またはその関数を求めることと定義され、原始積分(primitive integral)とも呼ばれる。また、その関数は、もとの導関数に対して原始関数(primitive function)あるいは、英語圏では、逆導関数(antiderivative)と呼ばれる。これに対して、導関数の方は、積分される関数という意味で、被積分関数と呼ばれる。
定数は微分するとゼロになるので、原始関数を復元する時には、導関数(被積分関数)ではゼロとなっている任意の積分定数 C を加えなければならない。すなわち、被積分関数 f(x) の原始関数を F(x) + C とすると、数式1 が成り立つ。
原始関数 F(x) + C を微分すると被積分関数 f(x) となり、被積分関数を積分するともとの原始関数となることから、微分と積分は逆演算の関係にあると言われることがある[1]。この逆演算の関係を明示するのが、以下の微分積分学の基本定理(fundamental theorem of calculus)であるというのだ。すなわち、f(x) を閉区間 [a, b] で定義された連続関数とし、F(x) を閉区間 [a, b] で連続で、開区間 (a, b) で微分可能な原始関数とする。この時開区間中のすべての x に対して、
という式が成り立つ。この基本定理に基づいて、下端が定数(a)で、上端が変数(x)の積分を不定積分と同一視する人もいる[2]。他方で、そうでない人もいて、この点に関しては、解説者によって意見が分かれる。
積分記号を使った原始関数の定義の方法は、その見解の相違に加えて、積分定数を付けるかどうかによって以下の四通りが考えられる。
数式5, 6 における下端の a を省略する表記方法もあるが、下端が定数であることには変わりがないので、式としては同じである。
2. 不定積分と原始積分は区別するべきである
以上のような従来の不定積分の説明に混乱があることは、積分記号を使った原始関数の定義の方法が複数あるところに表れている。もちろん、どれも微分すれば同じ被積分関数になるのだが、どれでもよいということはない。四つあるうち特に問題なのは、数式5 で、ウィキペディア日本語版でそのような記述がみられる[3]。
数式5 の積分を実行すると、
となるが、ここで -F(a) を積分定数 C とみなせば、たしかに、F(x)+C という形になる。しかし、これでは原始関数のすべてを表せない場合がある。例えば、余弦関数を積分する場合、
となるが、-sina は、a が何であれ、
というように変域が制限されるので、任意の積分定数を表すことはできない。
こうした混乱を防ぐためにも、私は不定積分と原始積分を区別することを提案したい。すなわち、原始積分はたんに原始関数を求めるだけの積分と定義する。
“P”という添え字は、原始積分であることを強調する記号で、もちろん省略してもよい。その場合、数式3 の定義と同じになる。
他方で、不定積分を下端が定数で上端が変数の積分と定義しよう。
下端が変数で上端が定数の積分や両方とも変数の積分も広義の不定積分と呼んでもよいが、微積分学の基本定理(数式2)ゆえに狭義の不定積分が最も重要である。
数式11 で、変数 x の代わりに定数 b を代入すれば、定積分となる。そこからわかるように、原始積分は不定積分においても定積分においても同様に使われる要素的な積分である。
3. 積分定数には二種類がある
従来、積分定数と呼ばれてきたものは、原始積分において加えられる定数であるが、これと不定積分の下端が作り出す定数は、概念的に区別されるべきである。そこで、前者を原始積分定数、後者を不定積分定数と名付けることにしよう。原始関数を微分する時、微分によってゼロになるのは原始積分定数であるが、微分積分学の基本定理で、微分によってゼロになるのは不定積分定数で、原始積分定数は、微分する前に相殺されて、ゼロとなっている。
二つの積分定数の違いを、グラフで確認しよう。以下の図1 は、
という微分方程式の解を方向場(direction field)として表したもので、三本の解曲線が例示されている。
で、原始積分定数だけが 4 ずつ異なっている。これに対して、不定積分定数は下端における値で、三本の解曲線では異なる値を取る。しかし、下端を 2、上端を 3 とすると、どの解曲線においてもその区間における積分(赤い線分の長さ)は同じであることが見て取れる。
4. 不定積分は微分の逆演算ではない
従来の説明でよく見かけるもう一つの間違いは、不定積分あるいは私が定義した意味での原始積分を微分の逆演算とみなすことである。数学における逆演算(inverse operation 逆操作)とは、逆写像(inverse mapping)を行う演算で、したがって、微分と積分が写像と逆写像の関係になっているかどうかが問題となる。
今、f は、集合 X の元を集合 Y の元にマッピングする写像であるとする。
この写像が全射(surjection)かつ単射(injection)の全単射 (bijection) 、すなわち、X から Y への一対一かつ上への写像であるなら、
という逆写像を持ち、写像と逆写像を合成すると、
という全称命題が成り立つ。例えば、f が 0 以外の数による割り算で、f -1 が 0 以外の数による掛け算なら、この全称命題が成り立つので、両者は逆演算の関係にあるということができる。
集合 X を原始関数の集合、集合 Y を被積分関数の集合とすると、f は微分、f -1 は積分に相当する写像ということになる。ある関数を積分してから微分すると元に戻るが、微分してから積分しても元の関数には戻らない。つまり、この全称命題(数式19)は成り立たないということである。これは、原始関数の集合と被積分関数の集合とが一対一対応ではなくて、多対一対応であることによる。
一対一対応は情報保存的(information-preserving)であるが、多対一対応は情報喪失的(information-losing)である。被積分関数を積分する時、原始積分なら原始積分定数、すなわち初期値の情報が、不定積分ならそれに加えて不定積分定数、すなわち下端の情報が必要である。これらの情報は、微分の際に失われている。しかし、もしもこれらの情報を得ることができるなら、微分してから積分しても元の関数を復元することができる。
微分と積分は、逆演算の関係にはないものの、分析と総合の一種であり、逆方向の認識作業であるということは言える。微分が全体を要素へと分解するのに対して、積分はそれらを全体へと再統合する。カントの分析判断と総合判断を引き合いに出すまでもなく、総合されたものは分析されたものよりも多くの情報を持つ。一般的に積分が微分よりも難しいのも、前者が後者よりも多くの情報を必要としているからであろう。
積分法は、古代ギリシャにおける取り尽くし法を起源とし、微分法とは独立に開発されたが、面積が未知の図形を面積が既知の要素へと分割することで全体面積の複雑性を縮減しようとする試みは、完全には成功しなかった。昔のシステム論者なら「全体は部分の総和以上である」というホーリズムの命題を唱えてあきらめたかもしれない。しかし、要素還元主義自体が間違っているわけではなく、全体を可視的な部分の総和以上にしている不可視の要素、すなわち関数の確定性を十分利用していなかっただけのことである。
積分の計算は、ジェームズ・グレゴリー、アイザック・バロー、アイザック・ニュートン、ゴットフリート・ライプニッツが、微分積分学の基本定理を完成させたことで、容易になった。図形の境界線を形成する関数を面積の変化率と認識し、面積をその変化率の蓄積と扱うことで面積計算を可能にしたのである。積分法は、面積のみならず、あらゆる変数と関数値の積の計算に応用されるようになった。微積分学は、全体を要素へと分解し、それらを再び全体へと組み立てるデカルト的な要素還元主義の成功例となったのである。
5. 参照情報
- ↑青本 和彦, 砂田 利一.『微分と積分1 - 岩波講座 現代数学への入門 1』 岩波書店 (October 5, 1995). p. 107.
- ↑黒田 成俊. 『微分積分 - 共立講座 21世紀の数学 1』 共立出版 (September 1, 2002). p. 145.
- ↑Wikipedia. “不定積分." 2012年5月24日 (木) 02:39.
- ↑Pbrks. “Slope field of the equation dy/dx=x^2-x-2." 6 June 2008. Licensed under CC-0.
ディスカッション
コメント一覧
微積分の根底をさぐる [単行本]
稲葉 三男 (著)
のパクリじゃないですか
このページに書いたことは、自分の頭で考えたことであり、私が読んだ文献には書かれていないことです。私は、御紹介いただきました『微積分の根底をさぐる』という本を読んでいないのですが、そこにはどのようなことが書かれているのでしょうか。
P.S. 修正しておきましたが、URL は直接書き込まずに、アンカータグとして入れてください。
パクリと言われたので、ほんとにそうなのかどうかを確認するために、『微積分の根底をさぐる』を入手して読んでみました。しかし、私がここで論じているのと同じことはどこにも見当たりません。強いて私と近い論調の箇所を引用するならば、以下の箇所でしょうか。
稲葉は、不定積分を求めることができない(被積分関数が初等関数ではない)楕円関数のようなケースもあるだから、微分の逆としての不定積分から定積分を導入するという教え方だけでは問題があると言っているのであって、不定積分とは何かに関して本稿で行っているような分析をしているわけではありません。だから、「パクリ」という非難は適切ではありません。
ちょい別の見方
微分というのは線形演算、つまり線形作用素をかける事と等価である。
線形作用素は、それが単射でないときには核、kernelを持ちそれは線型空間になる。
微分作用素の核は定数関数全体である。
だから、
dF/dx=f
は一次方程式
Diff*F=f
という事になり、この方程式をみたすFは、
Diff*G=f
を満たす特殊解Gを使って、
G+Kernel(Diff)
もしくは
{G+g|g∈Kernel(Diff)}
で表現される。
集合から集合への関数で考えれば Diff-1 は
Diff-1({f})={G+g|g∈Kernel(Diff)}
で、一点集合から線形空間への写像って見ることもできるな。
集合関数的な視点で見れば、不定積分は逆変換と言うことも可能だと思う。
たしかに、集合を要素として扱えば、そういうことも言えるでしょう。
こんにちは。記事を拝読させていただきました。以下の箇所で質問があります。
「三番目の積分を実行すると、
となるが、ここで -F(a) を積分定数 C とみなせば、たしかに、F(x)+C という形になる。しかし、これでは原始関数のすべてを表せない場合がある。例えば、余弦関数を積分する場合、
となるが、-cosa は、a が何であれ」
五行目,sinx-cosaではなくsinx-sinaになりませんか?
御指摘ありがとうございます。私の不注意で、sina が、cosa になっていたので、三箇所の cosa を sina に置き換えました。但し、置換しても、他には影響はありません(正弦でも余弦でも値域は同じなので)。
こんにちは。不定積分に興味があったので記事を読みました。
不定積分と原始関数 F(x)+C の両者を等号記号で結ばれたもの S(x)=F(x)+C を使って不定積分を求める方法を見たとき、まるで不定積分が原始関数を表すものだと思って混乱しながら教科書を見たものです。どうして、等号記号が付くのだろうかと思った次第です。
不定積分 S(x) と原始関数 F(x)+C の差を表す関数 G(x):=S(x)-(F(x)+C) を考えることで、S(x)=F(x)+C の意味を考えます。dG(x)/dx=0 より G(x) が定数 C0 で表されるので、そのような定数 C0 を求めると C0=G(a)=S(a)-(F(a)+C)=-F(a)-C となって、これにより G(x)=-F(a)-C を得ます。S(x)=F(x)+C のときは G(x)=0 なので、G(x)=0 を満たす C は G(x)=-F(a)-C より C=-F(a) です。よって、S(x)=F(x)-F(a) です。つまり、S(x)=F(x)+C にある C は、任意の数を表すものと言うよりも、C に関する方程式です。
ただ、S(x)=F(x)+C の表記は混乱を招くところもあるので、積分定数に関して混乱を招かないように Eq.11 のように定義したことは面白いことだと思いました。この場合は、と置いて、恒等的に H(x)=0 になることを示すべく、dH(x)/dx=0 と H(a)=0 を示す必要があります。~続きあり~
定積分を求めるときに 2 つのアプローチ「微分の逆としての不定積分から定積分」、「微小な量の和の極限から定積分を求める」を書いたのち、「微分と積分の関係」を下に書きます。不定積分が原始関数と同一視されることは、たぶん、後者の定積分を求めるアプローチに関係することだと思います。微分と積分の関係のついては、屁理屈っぽいですが、集合を元として写像を考えることで、微分と積分との間に互いに逆写像の関係にあることが言えます。しかし、これは微分と積分が全単射ではないことを否定するものではありません。
微分の逆としての不定積分から定積分を求めるならば、不定積分の x による微分 dS(x)/dx=f(x) によって S(x) が f(x) の「原始関数のひとつ」になることから、何らかの定数 C を用いて S(x)=F(x)+C と書き表され、S(a)=F(a)+C から C を求めることで不定積分S(x) が得られるので、S(x) の x のところに定数 b を代入して定積分が得られます。
微小な量の和の極限から定積分を求めるならば、とおいて Sn を
(1)
と置くと Sn はの近似でありその極限は
(2)
ですが、この Sn について
(3)
となるように f(x) の原始関数 F(x) ( f(x) の原始関数ならば、なんでもよい) を用いて、yn, xを
(4)
と定めると、ラグランジュの平均値の定理よりを満たすが存在するためにを得て、これによって
(5)
を得るので、を得るべく (1), (2), (3), (5) を使うと を得ます:
(6)
微分と積分との関係性については、集合を元とする集合
(7) A:={{F(x)+c : c は任意の定数}}, B:={{f(x)}}
に対して、写像 φ を集合 A から集合 B への写像として写像 ψ を集合 B から集合 A への写像として、各 U∈A と 各 V∈B に対して
(8) φ(U):={dG(x)/dx : G(x)∈U}
(9) ψ(V):={H(x) : dH(x)/dx∈V}
と定めれば、φ が微分を表す写像で ψ が積分を表す写像で、互いに逆写像の関係にあります。~終わり~
HTMLで読みやすく表示されるように書き換えたので、ご了承ください。なお、上付き文字は、<sup>上付き文字</sup>、下付き文字は、<sub>下付き文字</sub>というようにタグ付けして、上付き文字上付き文字、あるいは、下付き文字下付き文字というように表すことができます。LaTeX で数式を入力するときは、Online LaTeX Equation Editor などで数式のソースコードを作成して、
というようにしてくれれば、わかりやすく表示されます。
ところで、本題ですが、monozuki さんが言っていることは、m2 さんの主張と同じなのでしょうか。
読みやすく表示されるように書き換えられたこと、および、LaTeX で書かれた数式を HTML で表示したり、上付き文字/下付き文字を表示したりする方法をご紹介されたことに感謝します。LaTeX を用いて数式を表示したかったので、大いに助かります。
本題のことですが、ご指摘のように、私がこの投稿の最後のところ ((7), (8), (9)) で行った微分と積分との関係についての主張は、m2 さんの主張と同じ主張です。
違いがあるとすればアプローチの方法で、m2 さんの方は、
で定められた写像 Diff に対して、{f(x)} の逆像 Diff-1({f(x)})
が
のように書き換えられることを示すことで、Diff{-1} によって被積分関数 f(x) のみの集合 {f(x)} から原始関数の集合 F(x)+C:={F(x)+c : c は任意の定数} に写されることが言えるので、この逆像を行う写像 Diff{-1} でもって微分の逆変換が(不定)積分であるものだと主張するもので、一方、私の方は、f(x) の原始関数全体を元に持つ集合 A:={{F(x)+c : c は任意の定数}} と被積分関数 f(x) のみの集合 {f(x)} を元に持つ集合 B:={{f(x)}} との間に、B の元 {f(x)} から A の元 {F(x)+c : c は任意の定数} に写す写像が存在すると言う意味で、微分の逆変換が積分であることを主張するものです。
ただ、この主張は永井さんの主張を否定するものではありません。と言いますのは、永井さんが定めた写像は私が定めた写像とは異なるもので、次の写像 Diff で定義されたものを使って主張されていると考えられるからです:
この写像に従えば、写像 Diff が多対一対応するために、微分と積分が逆演算の関係になりません。そして、もちろん、微分したのちに積分しても元の関数に戻らないことを否定するものではありません。
私がこの投稿で微分と積分との関係について言及したのは、f(x) の任意の原始関数 G(x) (=F(x)+c) に対して
(11)
が成り立つからです。これを用いることで、
を使った
が (11) より
を得て、さらに
の極限を取ると
(12)
が成り立つので、Sn
と F(b)-F(a) の差 Sn-(F(b)-F(a)) の絶対値 |Sn-(F(b)-F(a))| が
(13)
と計算されることにより、(12), (13) により求められる |Sn-(F(b)-F(a))| の極限値
をもとに Sn-(F(b)-F(a)) の極限値を求めると
(14)
だから、Snの極限値
(15)
と併せて を (14) と (15) を使って求めると次を得ます:
(16)
長くなりましたが、f(x) の任意の原始関数 G(x) (=F(x)+c) を使って
(11)
が成り立つことを使うことにより、
が求められます。これが、私が微分と積分の関係について、m2 さんのように主張した理由です。
ただ、積分と言えば、下端が定数 a で上端が変数 x の積分 のことを指す考えがあるので、別の言葉を使って微分の逆演算を表す必要があると思いました。積分は難しい…
私は本文で「下端が変数で上端が定数の積分や両方とも変数の積分も広義の不定積分と呼んでもよい」と書いたのですが、両方とも変数の積分については何も考察しませんでした。
(Cは任意定数)
こうした二変数不定積分の場合、monosukiさん的には、
とおいて、恒等的に H(x,y)=0 になることを示すべく、
を示す必要があるということになるのでしょうか。
こんばんは。monosuki です。
与えられた二変数関数 H(x, y)
が恒等的に H(x, y)=0 であることを示すためには、
(17)
(18)
の 2 つに加えて、ある特定の定数 a を用いて、次が成り立つことを示すことが必要だと考えます:
(19)
a0 を定数として、x0, y0 を共に a0ではない実数とします。H(x0, y0)=0 示します。これらを使って定義された関数 F0(x), G0(y)
の微分 が (17), (18) より
共に 0 になって F0(x), G0(y) が共に定数関数になることが言えるので、
によって次を得ます:
(20)
(19) より H(a0, a0)=0 だから、(20) と併せて H(x0, y0)=0 を得ます。なお、x0, y0 のいずれかが a0であったとしても、上と同様にして H(x0, y0)=0 を示すことができます。x0, y0 は任意なので、H(x, y)=0 が成り立ちます。
今までは、f(x) が任意の実数 x に対して連続であると仮定して H(x, y) を求めたのですが、そうでない場合には、f(x) が連続になるように定義域を狭めて、狭められた定義域から x, y の元を取って H(x, y)=0 になることを示します。
フォローありがとうございます。もう一つ確認したいことは、積分が微分の逆演算というのは、一変数関数について言われることであって、多変数関数については成り立ちませんですよね。実際、重積分では原始関数にあたるものは存在しません。
お役に立てたのなら嬉しく思います。
確かに、重積分された二変数関数の偏微分しても元の二変数関数には戻らないことがあるので、重積分は原始関数とは言えません。
実際、二変数関数 の重積分 S(x1, x2)
の偏微分 が元の関数 に戻りません。何故だとは思ったのですが、多変数関数の積分について、微分される変数以外のところにも依存して積分されたためだと考えます。
それは、不定積分には逆演算が可能でも、定積分には逆演算が不可能という意味でですか。重積分は定積分ですが、一変数関数でも、定積分すると、もはや関数ではありませんから、微分できなくなります。ある形状の図形の面積を求めることはできても、面積から図形の形状を復元することはできません。同様に、ある形状の物体の体積を求めることはできても、体積から物体の形状を復元することはできません。
結論から申し上げますと、定積分だから逆演算が不可能だと言う意味では述べていないと考えます。多変数関数だと、重積分するときに微分する変数以外に他の変数の影響があるので、偏微分した関数が元の被積分に戻らないことがあると言う主張です。裏返せば、積分と微分との逆演算性は、一変数関数だからこそ言えるところがあるでしょう。
具体的な二変数関数の重積分の例を挙げることで、一変数関数のようには微分と積分との逆演算性が主張できないことを示します。f(x) を任意の x で連続な関数として、関数 の重積分を考えます。この関数は y に依存せず、x に依存する関数です。
を考えると、F(x) を f(x) の原始関数とすると、次のように表せます:
これを x で偏微分して
を得ますが、重積分 にあるように他の変数 y の影響を受けているので、 もそれに引きずられて元の原始関数にはなりません。これが、一変数関数との違いです。
微分してから積分する場合を考えてみましょう。xのみを変数として持つ一変数関数をxで微分してから積分する場合、復元できないのは定数だけで、それ以外は復元できます。ところが、xとyを変数とする二変数関数の場合、xで偏微分してから、yで偏微分する時(もしくは逆の順番でも)、定数のみならず、一変数しか含まない項が消えてしまいます。その後、積分する時、一変数しか含まない項を不定関数としてしか復元できないので、逆演算の関係が成り立ちません。積分してから微分する場合も、これと似た現象が起きるということでしょうか。
あぁ、質問の意図を把握しました! 多変数関数を積分したのちに微分(多変数関数を偏微分した関数をさらに別の変数で偏微分して、最終的に、変数ごとに各1回づつ偏微分された関数を求めること。)したら、微分後の積分のように、元の多変数関数に戻らないかどうかですね? 結論から言いますと、元の多変数関数に戻ります。一変数関数の場合と同じです。ただ、多変数関数には不定積分が定義されていないので、一変数関数でしたように、上端が変数で下端が定数の積分を考えます。
ここでは話を簡単にするため、二変数関数 f(x, y) の場合を考えます。他の多変数関数についても同様です。a, b を定数として、積分を S(x, y) を
で定義されるものとして、F(x, y) を
を満たす二変数関数とします。S(x, y) を求めると、
ですが、F(a, y) が y のみの関数で F(x, b) が x のみの関数で F(a, b) が定数だから、S(x, y) の微分 を求めると次を得ます:
この発言と
は、矛盾しているように見えるのですが、何が違うのですか。
先に、失敗した投稿を削除くださったことに感謝します。
私が8月6日に書いたこの投稿は、二変数関数を積分することにより生じた関数を『一方向にのみ偏微分』することです(ここでは、 の に関する偏微分 を求めること)。
これに対して、8月9日に書いたこの投稿は、二変数関数の積分で生じた関数を『一方向に偏微分して生じた二変数関数を、別の方向で偏微分する』(ここでは、S(x, y) の y に関する偏微分 を求めたあと、この関数を x に関する偏微分 を求めること) です。
要は、偏微分を 1 回行うか偏微分を 2 回行う かの違いですが、これらのことが矛盾を生じさせたようです。
確認したいのですが、他変数関数における微分とは、例えば f(x, y) の場合なら、その関数の微分は (または、 ) で定義されるものだと8月9日の投稿ではそのように解釈しましたが、これでいいでしょうか。なにぶん、8月6日の投稿では微分を偏微分だと解釈して投稿したものですからねぇ… 定義を確認する必要があると思って訊きました。
二変数で二回積分した以上、その逆演算としての微分も二変数で二回行うことは当然と考え、「二変数関数 の重積分 S(x1, x2) の偏微分 が元の関数 に戻りません」の「k=1,2」は「1または2」ではなくて「1かつ2」と解釈しました。それで、元の関数に戻らないのは、「不定積分には逆演算が可能でも、定積分には逆演算が不可能という意味でですか」と聞いた次第です。
久々の投稿です。
一変数関数を一回積分して微分を一回したように、二変数関数を二回積分した以上、逆演算として、偏微分を二回行うべきだとする主張を持つことを理解しました。二変数関数の二階微分なら、8月9日の投稿にあります。8月6日の投稿ではありません。
ともかく、混乱が生じたのは主に微分に対する認識なので、改めて、元となった8月5日に投稿された永井さんの主張に対して、私が投稿した8月9日の主張を元に、永井さんが言うところの微分に沿って答える必要があると思いました。そして、新たに微分を定義して、この微分が永井さんが言うところの微分にあたることを見ていきたいと思います。
先に、 を定数として、二変数関数 の積分 を
で定義します。二変数関数 は
を満たすものとします。既に の計算は8月9日の投稿にあるので、これを引用して、計算結果は以下の通りになります:
これを(永井さんが主張するところの意味で)微分すると、これも8月9日の投稿から引用したものですが、次を得ます:
積分をどのように定義するかにもよりますが、積分を から を満たす二変数関数 全体に写すような写像であるならば、一変数関数の積分と同様に、積分が微分の逆写像であると言えます。ただ、原始関数については、一変数関数のことのみに定義されたものであるならば、多変数関数については言及されていないので、重積分には存在しないと考えます。どのように原始関数を定義するかによります。
新たに微分を定義することで、永井さんが言うところの微分にあたることを見ていきます。微分 を
で定義します。
が成り立ち、さらに は
(21)
のようにも書けます。(21) の左辺が新たに私が定義した微分で、(21) の右辺が永井さんが考えるであろう微分です。
((((( 証明: これが言えるのは、コーシーの平均値の定理を2回使うことで
が
のように書き表されるからです。ここで、 は 、 で、 は で定義されるものです。コーシーの平均値の定理は、以下の関数に適用しました:
)))))
ところで、一変数関数にしても二変数関数にしても、積分した関数が微分で元の被積分関数に戻るかどうかを考えたのですが、
にある主張について、数式を用いてどのように表されるものかと気になったことはありました。ま、でも、不定積分がテーマだから、そんな質問はお門違いかも分かりません。
もしも微分と積分が相互に逆演算の関係にあるなら、積分してから微分して元に戻るだけでなく、微分してから積分しても元に戻らなければなりません。微分してから積分する場合、積分してから微分する場合と同じことが言えますか。xとyの二変数を含む関数をxとyで偏微分してから、yとxで重積分しようとすると、定数だけでなく、xまたはyしか含まない項が消えてしまっているので、元の関数を完全には復元できないでしょう。
結論から言いますと、一変数関数と同様に二変数関数においても、微分したあとに積分しても元の関数に戻るとは必ずしも言えませんね。従って、永井さんが言う意味での微分と積分でなら、両者が逆演算の関係にあるとは言えませんね。
そうですねぇ。二変数関数を微分して積分したとき、必ずしも元の関数に戻るとは言えないことをどうやって説明しましょうか。微分して積分した関数をさらに微分すれば、積分した関数を微分して元の積分前の関数に戻るのと同様にして、元の関数の微分に戻るものの、微分して元の関数の微分になるような関数が「微分して積分した関数」の他に存在する(例えば、「微分して積分した関数」に 1 を加える)ので、必ずしも、微分して積分したときに元の関数に戻るとは言えません。
実際に、微分と積分を表す写像 を
で定義して (ここに、 は二変数関数で は定数)、
を考えると
だが
なので、
となるような
を満たす関数 が存在します。
ところで、微分と積分が「分析と総合の一種であり、逆方向の認識作業であるということは言える。」と言う このサイトの「不定積分とは何か」 にある永井さんの主張は、数式を用いてどのように説明されるでしょうか。不定積分がテーマではありますが、微分と積分が逆演算の関係でない一方で「逆方向の認識作業である」と言えることに対して不思議に思えるんです。
「二変数関数を微分して積分したとき、必ずしも元の関数に戻るとは言えないことを」示すには、実例を一つ示せば十分でしょう。今、
とします。G(x) と H(y) は、それぞれ、x と y の任意関数で、Cx は任意定数とします。これを x と y で偏微分すると、
となります。つぎに、これを y と x で不定積分してみましょう(a, b は定数)。
(3) は (1) と同じではありませんので、元の関数には戻っていないことがわかります。G(x) と H(y) は、それぞれ、x と y のどのような関数であってもよく、一次関数である必要はありません。だから、(3) は (1) よりも外延が広いと言うことができます。本文で用いた区別をここでも使うなら、(1) が原始関数であるのに対して、(3) は原始積分ではない不定積分ということです。
一変数関数の場合、 不定積分と原始積分とが異なるといっても、それはしょせん積分定数の外延の違いにしかすぎませんでした。ところが、二変数関数の場合、両者の違いはもっと大きい。関数部分の復元すらできないので、重積分では、原始関数や不定積分を想定しないのだろうと思います。
ネットで「不定重積分(indefinite multiple integral)」で検索して見たところ、“Is there such a thing as an indefinite multiple integral? ”の質問に答える形で、私と同じような見解を出している人を見つけました。
最後に、monozukiさんは、「逆方向の認識作業」にこだわっているようなので、確認をしておきましょう。本文で断った通り、これは逆演算とは異なります。もう一度該当箇所を引用しましょう。
この後半を読めばわかる通り、私は分析と総合には非対称性があることを言っているのであって、その非対称性ゆえに逆演算の関係にはないということです。
古代ギリシアの哲学者は、全体を要素(ストイケイオン)へと分解し、それからまた全体を再構成するという手法で、説明を行ってきました。全体から部分へと向かう分析と、部分から全体へと向かう総合は、逆方向の認識と言えます。全体はたんなる部分の総和ではないので、総合は、分析よりも、与えられた情報以上の情報が必要であるという点で、両者の間には非対称性があると言えます。
確かに、微分して積分した二変数関数が必ずしも元の二変数関数に戻るとは限らないことを示すためには、実例をひとつ取って示せば十分ですね。
永井さんの8月30日に行われた証明とは別に、実例をひとつ取って示します。二変数関数
の微分が
だから、これを積分して ( は定数 )
を得て、元の二変数関数 に戻りません。すなわち、これは、「二変数関数を微分して積分したとき、必ずしも元の関数に戻るとは言え」ないような関数が存在することを示すものです。
『二変数関数を微分したら、定数だけでなく一変数関数も消える訳だから、その関数を積分しても、元の関数を完全には復元できないだろう。
』(8月28日にある永井さんの投稿の一部を要約したもの) の視点に立って、微分した関数が積分で元の関数に戻るかどうかについては、8月30日にある永井さんの投稿で説明されていることを参考にして説明します。
二変数関数
を微分
した関数を積分すると、 と置くことにより、
を得ます。つまり、微分して積分した関数は、元の関数と比べて、元の関数にあった が微分によって除かれる代わりに、新たに、微分した の積分によって、 が加えられることになります。前者にある一変数関数と定数が任意に取れることに対して、後者は特定の一変数関数と定数しか取らないので、微分して積分した時に元の関数に戻らないような関数が存在することになります。ここに、
1) は二変数関数で、
2) は に関して微分可能な任意の の関数で
3) は に関して微分可能な任意の の関数で、
4) は定数
とします。
なぜ、多変数関数に関して原始関数や不定積分が想定されていないのかと思いましたが、そう言えば確かに、二変数関数は一変数関数と違って、微分で消える関数が定数だけではなく一変数関数もある訳ですから、重積分で関数の部分が復元できないことを根拠に原始関数などが想定されないとするならば、そう言うことになるだろうなぁ、と考えます。
永井さんが引用されたところにあるものを見ていきますと、偏微分方程式の解について書かれているようですね。その中で、引用されたところを解釈しますと、偏微分方程式の解を得るのに、境界値条件として、一変数関数の微分方程式の場合と違って任意の定数だけでなく微分で 0 になる任意の関数にも依存すると言う意味で一変数関数ほどには有用ではないものだろうとしながらも、多変数関数の偏微分方程式の解として不定重積分が、境界条件が指定されていない一般解に対応すると言う意味で、与えられた質問 “Is there such a thing as an indefinite multiple integral? ” (不定重積分のようなものがありますか) に対して肯定しているようです。
分析と総合については、古代ギリシャの哲学者が、全体を要素に分解した後に、全体を再構成するという手法を用いることで説明したように、微分と積分についても古代ギリシアの哲学者が用いたように説明できることだろうと理解しました。ただ、総合するときに分析する以上の情報が必要だと言う意味で両者の間に非対象性が存在するように、積分する時に微分する以上の情報が必要だと捉えました。分析が微分で、総合が微分することで被積分関数になる関数の全体なら、あきらかに後者の方が情報量が多いので、総合することで得た関数に適当な条件をつけて目的の関数を得るものだと理解しました。
例えば、
は微分することで を得るので、 は の総合によって得られた関数のひとつですが、 と言う条件によって関数が定まります。
再び、「こだわっている」と言われないように。そして、分析と総合についての更なる哲学的な側面を紹介したことに感謝します。
要は、分析と総合の間に情報の非対称性があるように、分析にあたる微分と総合にあたる積分との間に非対称性があるものだから、逆演算の関係にはないと言う考えでしょうか。加えて、「全体はたんなる部分の総和ではない」と言う永井さんの主張は、例えば関数 を用いて全体の総和が と書かれるとき、他に とおいて と書かれて 以外にも表せる関数があるために、総合が分析よりも情報が必要で、そのために分析と総合の間には非対称性があると言うことでしょうか。
変化量という部分知から全体知を必ずしも復元することができない以上、分析と総合、微分と積分の間には完全な可逆性はなく、演算結果には情報量という点での非対称性があるということです。
変化量と言う部分知を元に全体知を復元しようとしても、復元できない何らかの要素があるために、全体知が復元できないと言うことですね。それで、情報量の非対称性のために、分析と総合の間には非可逆性があると言うことですね。
微分と積分について言及するなら、元の関数を微分すると言う分析をすることで導関数が得られたとしても、その情報だけでは、総合するときに元の関数が復元できないと言うことを意味することだと解釈しました。
上に書いた言葉を数式で表すなら、元の関数 に微分を行う写像 を施して の導関数 が得られたとしても、
を満たす を探すことをもとに元の関数を見つけるときに、
を満たす関数 が
の他に存在するために、元の関数が復元できないことを意味するものだと捉えました。復元できないのは積分定数によるものだから、復元のためには他の情報が必要なものだと捉えました。
ちなみに、復元するときは、定数 と と を使って
と定義すれば、 が成り立ちます。これが、永井さんが指摘されるところの
のところだと考えます。
9月10日に私が投稿したものについて、少し補足します。
分析と総合についての写像について言及するならば、分析が微分を表す写像 で、総合が の逆像 のことだと考えています。分析と総合が非可逆的なのは、分析を表す写像が単射ではないからです。つまり、
を満たす関数 が複数存在します。この事によって、微分と言う部分知のみで元の関数が復元できません。写像 が単射ではないことから全単射ではないので、この事でもって、分析と総合は非可逆的であると言う主張があるものだと捉えています。
こんにちは。相変わらずのmonozukiです。単に疑問があって質問しただけですが、永井さんが定義した不定積分
を使うことで求められる定積分
は、従来の積分の定義、例えば高校生が学ぶ方法でしたら区分求積法、を使うことで求められる積分
とどのような関係があるでしょうか。
ここで、 を連続関数、 を の原始関数として、 を定数かつ を変数とします。
この点を問うたのは、そもそも積分が、リーマン積分(または区分求積法)ないしルベーグ積分を使って求められるものだと言う認識があるので、単純に、永井さんの定義とどのように結び付くかなぁ、と思って質問しただけです。他意はありません。
宜しくお願いします。
区分求積法でも、定数bを変数xにすれば、不定積分になります。区分求積法は、文字通り、面積や体積を求める方法で、高校教育では、面積を求める方法として教えられています。それでも、なぜ積分で面積を求めることができるのか、疑問に思う高校生が多いようです。それは、区分求積法に先立って、「積分は微分の逆演算」と教わるからなのだろうと思います。
高校生は、積分を学ぶ前に微分を学び、導関数を曲線の傾きを表す関数として教わります。次に、積分は微分の逆演算だと学びます。その後に、定積分で面積が求められると教わると、首をかしげます。「傾きを求める微分の逆演算で、なぜ面積が求められるのか」というわけです。
今、y=f(x) という曲線があって、この曲線を下端(a)から上端(x)まで積分した結果を F(x) としましょう。区分求積法からわかる通り、 F(x) は、曲線 f(x) と x 軸とで囲まれた領域のうち、a から x までの面積を表します。F(x) を微分すると、f(x) に戻りますが、微分の定義では、これは x における面積の変化率を表します。x が微小量増えた時、どれだけ面積が増えるかということです。そして、この面積の変化率をもう一度微分して、初めて曲線の傾きになります。
要するに、「傾きを求める方法」として教わる微分と「面積を求める方法」として教わる積分は、逆演算の関係にはなく、面積を求める関数を二回微分して初めて接線の傾きを表す関数になるということです。高校では、こうしたことは教えないし、だから高校生たちは混乱してしまうのです。
数学とともに物理も勉強している高校生に対しては、面積、面積の変化率、面積の変化率の変化率が、変位、速度、加速度に相当するということを、すなわち、v-t図(縦軸が速度、横軸を時間とする平面グラフ)において、t0 から t まで積分すると、t0 から t までの変位が求められ、それを t で微分すると、時点 t における速度が求まり、それをさらに t で微分すると、時点 t における加速度が求まるということも教えると、理解が深まると思います。
日本の高校では、微分と積分を物理では使ってはいけないことになっています。それで、高校生は、変位と速度と加速度が微積分の関係にあることも知らずに、公式を学びます。もしも文科省が「総合的な学習」を本気で推進する気持ちがあるなら、こうした科目間にある不毛な壁を取り払ってもらいたいものです。
正直、私も、「積分が微分の逆演算であること」を学んだ後に「不定積分を使って定積分を求める方法」について疑問を抱いたことがあります。「どうして、積分が微分の逆演算だと言えるだろうか。そして、微分の逆演算の積分を使うことで、どうして、面積が求められると言えるのか」と言う疑問です。
この問いに対しては、「微分方程式を使って、定積分に必要な不定積分を求めるため」だと考えます。つまり、
かつ
を満たす関数 の解を探すことで不定積分を求めようと言うものです。解が、区分求積法を使って定義された不定積分 のみで与えられることから、具体的な を求めるべく
を根拠にして の原始関数 と定数 を用いて書かれた
に含まれる を、 を根拠にすることにより求めているものだと考えます。
「積分が微分の逆演算であること」の部分は、 を満たすことから
と書くことができると言えるための布石だと考えます。つまり、「 によって の原始関数(または、積分)が だから、 に関する方程式と見ることで
と書くことができる」と言うことだと考えています。
区分求積法にあまり深入りすることなく不定積分が微分方程式を使うことで求められるメリットがある一方、この方法では、区分求積法と不定積分との関係が漠然としていて分からないために微分方程式を使って不定関数が求められることに「しっくり来ない」と言う側面があります。加えて、不定積分を求めるのに使われる「積分が微分の逆演算であること」の部分も、同様に「しっくり来ない」と思います。
もし、区分求積法と関連付けて定積分を求めるならば、被積分関数 とその原始関数 に対して
が成り立つことを使うことで求められます。実際、任意の に対して が十分に に近いときに
が成り立つので、閉区間 の分割 の幅
を狭めることで
が
に近くなるので(つまり
)、このとき
が成り立ちます。これが微分方程式を使わずに区分求積法と関連付けて定積分を求める方法です。
物理学を学ぶ人が微分/積分などの数学の知識と関連付けて学ぶ必要があるとする考えに対して完全に同意します。物理学を学べば自ずと微分/積分の知識が必要になる(力学、電磁気学など)ものだから、微分/積分と切り離して物理学のみを学ぶべきだとする考えは、文科省の人ならば、そうはならないはずです。だからこそ、永井さんがおっしゃったように、科目間の壁を取っ払って物理学などの知識が深化できればいいなぁって思うんです。仮に、文科省が本気で「総合的な学習」に取り組めばの話です。しかし、どうして、物理に微分/積分の知識を使ってはいけないことになっているのかと思います。
たぶん、物理の履修が微積分を教えるより前に始まるからでしょう。日本の学校のカリキュラムは硬直的で、数学を全部教えてから理科を始めるとか、まだ習っていない数学を物理の授業でそのつど教えるとかといった柔軟な対応ができません。
文部科学省の官僚には、東京大学卒を始め、京都大学卒や大阪大学卒などのエリートが少なからずいる訳ですから、柔軟なカリキュラムにすることの重要性を特に強く認識していると考えます。カリキュラムで習っていないならば、例えば「物理のための数学」と称して、物理学と並行してを学ぶことができないのかと思います。確かに学んでいないものを根拠に教えられませんし、学ぶ者のとって新たに学ぶ者が増えると言う意味では負担ですが、それでも力学などの物理学を学ぶのに微分/積分の知識が必要だと考えます。
「微分方程式を使って、定積分に必要な不定積分を求める方法」について、以前の投稿では「積分(原始関数を求めること)を求める動機」について分かりにくいところがあったので、その点をなくすべく、補足をしたいと思います。
不定積分を求めるのに微分方程式を使う理由は
1))) 区分求積法を使って定義された不定積分
が微分方程式
かつ
の解 のひとつとして与えられるからと言うものでした。
「どうして、不定積分を求めるのに積分(原始関数を求めること)を用いるのか」については、 の前半部分
のみを満たす解 が の原始関数 で与えられるからです。
の解 は、上述の の前半部分に加えて、 の後半部分を使うことで を得るので、 の解 は次で与えられます:
2)))
1))) にある不定積分 を求めると、 を満たす が唯一つ存在する (この証明の方針を 3))) に書きます) ので、1))) と 2))) を使うことで、不定積分が次で与えられます:
を満たす が唯一つ存在することの証明の方針:
3))) が を満たすとします。 と置いて、 を使って
かつ
を示すことにより、 の値に依らず を示すことです。
三流官庁と言われる文科省にも潜在的には能力のある人材が多数います。問題は、人材の質ではなくて、官僚というシステムにあります。「総合学習はなぜ失敗したのか」でも書いたことですが、総合学習を推進している文科省という官僚組織の在り方が、総合学習の理念と全く逆なのです。総合学習の理念は、教科や科目の垣根を越えて、先入見にとらわれずに、自らの頭で考えるところにあるのですが、縦割り、前例踏襲、上意下達といった総合学習の理念と逆のことをやっている官僚たちにやらせて、まともな総合学習が実現するはずがありません。従来からあるタコツボはそのままにして、「総合的な学習の時間」という新しいタコツボを作って、そこで意味不明な体験学習をさせるというお粗末な結果にしかならないのです。
潜在的に能力のある人材が多数いても、「官僚」と言うシステムに問題があるために、文科省が三流官庁と言われる訳ですか。残念なことに、そのシステムによって、十分に彼らの能力が発揮できないでいるんですね。
考えれば、科目別の学習が縦の繋がりで総合的な学習を横の繋がりとするなら、縦割りを重んじる官僚システムは横の繋がり(教科や科目の垣根を越えること)に不得手なところがあるかも知れません。
定積分の話をしますが、なぜ、定積分で面積が求められることに首を傾げるかと言えば、区分求積法を使った面積の導出と不定積分を求めることで得られる定積分との間に関連性が見えづらいからです。いきなり、被積分関数 の原始関数 と定数 を用いて
と書かれれば理解できなくて当然です。微分方程式のためだと思いますが、説明を変えればいいのにと思います。
本文で記したとおり、
と定義します。
一変数関数の場合、
を満たす S(x) は f(x) の原始関数であり、
を満たす S(x) は f(x) の不定積分で、一つしか存在しないと言えます。
しかし、多変数関数の場合は、そうではありません。例えば、
は、f(x, y)=1 の原始関数の一つで、
という条件を満たすにもかかわらず、不定積分
とは異なります。
そりゃ、多変数関数の場合だと一変数関数と違って変数が複数あるために自由度が上がって、そのために、一変数関数の場合のようには上手く事が運ばないからだということでしょう。つまり、二変数関数の微分と初期値だけでは、一変数関数と違って二変数関数がひとつには定まらないと言うことです。
二変数関数 の不定積分
を考えたとき、
が成り立ちますが、例えば、
と置けば、 にも拘わらず
が成り立ちます。
つまり、
を満たす二変数関数 が複数あると言うことです。
原因は、 が
を満たすからです。つまり、
を満たす二変数関数 が複数あるために、 を満たす二変数関数 がひとつに定まらないと言うことです。
一変数関数の不定積分の話をしようかと思います。高校の教科書では、
を満たすことを理由に が の原始関数であるとして、 の原始関数 と定数 を用いて
と書かれるものでした。しかし、これだと分かりにくい。
分かりやすく解釈できるように を書き換えると、
を満たす を求めること、のように書き換えられます。つまり、一変数関数における微分方程式を解くことで、不定積分を見つけると言うものです。
原始関数を用いたのは を満たす を探すためで、 を使って を見つけるためでしょう。
ただ、これでも分かりにくいと思うなら、他の方法を使って不定積分/低積分を求める必要があると言うことでしょう。定積分を求めるのにどの方法が分かりやすいのか分かりません。永井さんなら、 を の原始関数として、
で定義する方法を使うと言うことですし、私なら、 が に十分近いとき、 が に十分に近いことを使って、区分求積法を使うことで定積分を求める方法を使います。
ともあれ、高校生の反応も参考にしながら、不定積分の求め方を考えないといけませんね。
不定積分 を求めたければ、 が
を満たすから、 とおくことで
となって
を得ることが予想できるので (傾きの一致と初期値の一致から)、(3) を示すことで次を得ます:
私が思う不定積分の求め方について分かりやすいと思うものは上述の証明です。他に質問等がありましたら、宜しくお願いします。それでは…
高校生に原始関数と不定積分の違いを理解してもらおうとするなら、
[1]
といった概念的な定義を行うよりも、グラフを用いて両者が視覚的に何を意味するかを説明する方が、直観的に理解しやすいと思います。
(1) 原始関数(原始積分)の説明
微分で曲線の傾きが求められることが事前に説明されているとします。正弦関数を微分すると余弦関数となることから、余弦関数の原始関数は、以下のような正弦関数で表現されます。
[2]
C は任意定数です。Cがどんな実数でもよいことは、以下のグラフからわかります。
任意のxでの傾きは、C が何であれ、常に同じcosxです。それは、このグラフでは、正弦波を上下にどう移動しても、特定のXにおける傾きが常に同じことで説明されます。
(2) 不定積分の説明
余弦波の面積が正弦関数で表されることが区分求積法で事前に説明されているとします。区分求積法を理解した生徒は、xにおける面積の変化率がf(x)になることを理解することができます。
[3]
さらに、以下の余弦波のグラフにおいて、
下端aから上端x1までの積分、つまり赤色の面積は、0からx1までの積分より、0からaまでの積分(青色の面積)を引くことで求められることがわかります。それを数式で記せば、以下のようになります。
[4]
ここで、C=-sinaとおいたので、Cの絶対値が1を超えることはありません。面積はx軸より上が正で、下は負なので、aがいくら大きくても、合計すると絶対値が1以下になります。このように、任意定数といっても変域が制限されます。
(3) 原始積分と不定積分の違い
どちらの場合でも、形式的には
[4]
と書くことができます。でも、原始積分と不定積分ではCの変域が異なるので、こういう形でひとまとめにすることは問題があります。微分で傾きを求める時の原始関数のCと面積を求める時の不定積分におけるCがグラフでそれぞれ何を意味しているかを説明すれば、高校生でも原始関数と不定積分の違いが理解できると思います。
自由度が大きくて特定できないのなら、以下のように束縛条件を増やせばよいのではないですか。
返信ありがとうございます。
原始積分と不定積分を初めて学ぶ高校生にとって、確かに、両者の違いをグラフと言う視覚に訴える方法を用いて説明することで、直感的に理解しやすくなって、積分に取っつきやすく感じるだろうなぁと思います。
分かりやすい永井さんによる説明なので質問するまいと思いましたが、2つほど、永井さんが説明くださった原始積分と不定積分の違いについて質問しようと思います。
【1つ目の質問】「(1) 原始関数(原始積分)の説明」において、 ( は定数) で書かれれば上下移動によって に重なるとありますが、逆に、 ならば が上下移動によって に重なると考えて宜しいでしょうか。
【2つ目の質問】「(2) 不定積分の説明」にある は で、 は
で表されるものでしょうか。(原始積分と不定積分の違いについての質問終わり)
【2つ目の質問】から着想を得たのですが、被積分関数 とその原始関数 および積分定数 を用いて、下端が定数 で上端が変数 の の不定積分
について、【2つ目の質問】を元に定数 を用いて
と書くことができるとします。 とおくことで
だから、 を用いることで
となって、 を比較することで を得ます。つまり、 が任意の定数を取ると仮定すると、原始関数によっては を満たす が取れないこともあるので、原始積分と不定積分にある定数は異なります。
う~ん、確かに、私が定義した [1] の定義は概念的な定義ですねぇ。【1つ目の質問】に対して「是」とするなら、 によって が上下移動によって に重なると考えることができるので が の値に依らず一定になる訳で、この事によって だから を得ます。他に上手い説明があれば…
最後に。以前、総合学習が文科省にある官僚と言うシステムのために失敗したと言う主張がありました。どのようなシステムにすべきだと永井さんは考えますでしょうか。
1つ目の質問は、
の確認、つまり、任意の変数で導関数が一致するなら、それは形状が一致するということであり、S(a)=0 なら、同一の関数になるという確認ですね。
2つ目の質問に答えるためにも、[4]は、
と書いた方がよかったですね。こう書くことで「aからxまでの面積は、0からxまでの面積より0からaまでの面積を引くことで求められる」ことがはっきりします。
これまで詰め込み教育、調教型教育を行ってきた学校にクリエイティブな能力を持った子供を育成するための教育をせよと方針転換することは、軍事教練を行ってきた学校に芸術家の育成をせよというようなもので、無理なことなのです。明治時代に国民皆兵のために始まった公教育の制度は、ポスト工業社会の現在においては、すでに役割を終えており、廃止するべきだというのが私の提案です。
もちろん、これからも国民が基本的な学力を身につけることは必要ですが、政府は教育のプロセスには介入せずに、結果だけをチェックすればよい。すなわち、政府は、教育サービスは提供せず、学力試験だけを行い、合格者に報奨金を与えれば、教育は民間で行われるようになります。
クリエイティブな能力に関しては、目標設定をも民間に任せればいでしょう。企業に従業員数に応じた法定寄付の枠組みを設け、それを資金にコンクールが行われるようにするのです。企業側には欲しい人材を育成することができるというメリットがあります。
教育市場の参入障壁を下げれば、多様な事業者が参入し、多様な教育方法が試され、成果を出さない事業者は淘汰されるでしょう。こうした自由化が消費者に最高の教育サービスを提供さえることになると思います。
9月21日に投稿された永井さんの投稿に対する質問に答えていなかったので、それに対して答えようと思います。答えなかったのは、単純に、コメント欄をよく見ずに質問を見落としたからです。すみません。
先に、二変数関数 f(x, y) を連続関数とします。同値条件は、以下で与えられると考えています:
まず、先に の部分を示します。つまり、(4) が成り立つと仮定して、(1), (2), (3) が成り立つことを示します。8月9日に私が投稿したところにある計算結果を使えば、 を満たす二変数関数 F(x, y) を使って、
と計算されます。だから、(1) の部分は
と
のために (1) が示されます。(2) の部分は (1) の計算と同様にして示されて、(3) の部分は (5) より
のために示されます。
今度は、 の部分を示します。つまり、(1), (2), (3) が成り立つと仮定して、(4) が成り立つことを示します。ここで、二変数関数 を (1), (2), (3) が成り立つ関数と仮定します。 と置くことで、任意の x, y に対して
だから は定数関数で、さらに、 より
だから、恒等的に が成り立ちます。よって、 です。
永井さんが 9月20日 に投稿されたものは、下端が真の意味で定数で上端が変数の関数の積分を考えることで、不定積分を考えると言うものでした。つまり、被積分関数 f(x) と f(x) の原始関数 F(x) に対して、ある定数 c (この定数は固定されたものです) を使って
のように書けることを区分求積法を使って示した後、図を使って、
を示すと言うものでした。この説明によって、「『下端が定数 a で上端が変数 x の不定積分』と言いながら、実際は下端にある a が動くために定数ではなく変数のように感じられて分かりにくいので、ひとつに固定した定数を下端に持つ積分を考えることで不定積分を求める」と言うことだと思います。
上の説明を見て思ったことは、「上の説明を活かすために、原始関数の定義を変えてもいいんじゃないか? 微分して被積分関数になる関数が原始関数だと言うのは分かりにくい。どうして、不定積分を求めるのに微分を用いるのか理解できない」と言うことです。
なので、いっそのこと、被積分関数 の原始関数 を、下端が定数で上端が変数の被積分関数 の積分で表されるものだと定義すればいいと思います。たとえば、定数 c (この定数は固定されたものです) を用いて
で定義される原始関数 とか。
(1) を用いることで、下端が定数 a で上端が x の不定積分が、図を使った説明を用いることで、
が示されます。ここで、実は、(2) の結果に対して通常の意味での f(x) の原始関数 F(x) ( すなわち、
を満たす F(x) ) を用いることで
を得るので(証明を後述します)、(2), (3) より
を得ます。結果的に、 の代わりに従来の原始関数 F(x) を用いることもできます。
(3) の証明について:
と置きます。
#
のとき、 と置いて平均値の定理を用いることで
を満たす が存在します。図を描いて説明するときは、(y, G(y)) と (c, G(c)) を直線で結んで上下に平行移動させることで、 の接線に重なるものが存在すると言うものです。
#
微分を用いたのは (5) の右辺を求めるためで、それを求めるべく (4) の微分 を求めると、 に関しては微分積分学の基本定理から、F(y) に関しては定義より、y の値に拠らず
を得ます。これから、 のときは が成り立ちます。y=c のときも当然、 です。よって、
#
(7) の y にそれぞれ x と a を代入して
を得るので、(8) から (9) を引くことで (3) を得ます。
永井さんによる9月23日の投稿の後半部分にある、望ましい教育システムについてです。
ポスト工業社会を迎えた現在では、明治時代に始まった調教型教育を持つ公教育制度は役割を終えたものだから、その制度を廃止して、教育での国の関与を最小限にして民間の教育サービスなどを活用することで、ポスト工業社会に資するような学力/創造性を子供に持たせようとするのが永井さんによる主張ですね。言わば、自分の頭で考えて創造する教育。
自分が創造/探求/冒険することに楽しさを見いだす人にとっては永井さんの主張はいい提案だと思います。ひと度楽しさを見いだせば、それを実現させるための知識を得るべく勉強するものです。たぶん、これが「ポスト工業社会」に必要なもののひとつだと考えます。
質問ですが、
1) 国が教育サービスに一切関わらない中で、国民に基本的な学力が身につけさせるにはどのような方法が必要だと考えますか。従来だと、学校教育で憲法を根拠に子供に教育を受けさせる義務があるとする主張を植え付けることで、大人になって子供を設けた時に自分の子供を学校に行かせるように仕向けているようです。(まぁ、憲法には公務員以外には遵守する義務がないと日本国憲法第99条にあるんですけどね。)
2) 学力試験をどの段階で実施するものでしょうか。その時の科目はどのような感じでしょうか。
言葉をどう定義するかは、その人の自由ですから、あえて異論は唱えませんが、私が
と定義したのは、言葉の本来の意味に即した定義をしたいと思ったからです。原始関数(primitive function)の“primitive”は「最初の、根源的な」という意味ですから、微分する前の最初の関数という意味で使うのが適当です。
これに対して、定積分(definite integral)と不定積分(indefinite integral)は、文字通り、定まっているか否かが問題で、上端と下端の両方が定まっている積分が定積分で、そうではない積分が不定積分とするのが適当と考えます。上端と下端のどれを変数とするかに関しては三通りの方法がありますが、特に「下端が定数で上端が変数の積分」を不定積分としたのは、それが微分積分学の基本定理(fundamental theorem of calculus):に登場する重要な積分だからです。
日本国憲法では、義務教育が無償で提供されなければならないと規定されています。
しかし、憲法は義務教育の期間を規定していません。だから、憲法を改正しなくても、義務教育の期間をゼロ歳から五歳にすることができます。幼児教育は成果報酬型に適さないので、教育に公的資金を投入せざるをえません。しかし、義務教育を残すことと公教育を残すことは同じではありません。バウチャー制度を導入することで、民間に任せつつも無償の義務教育を実現することができます。六歳から成人までは、準義務教育ということにして、無償にはしないけれども、これまで教育に投入してきた予算を合格の報奨金という形で提供すれば、法律で義務と定めるまでもなく、学習への十分なモチベーションを未成年の学習者に与えることになります。
英検、数検、漢検と同じように考えてください。今公教育で教えている全教科、全科目を個別に受験できるようにするということです。従来の公教育は、すべての子供を同じスピードで教育しようとしてきましたが、こうした均一な工業製品を作るような教育には無理があります。英語は得意だけれども、数学は苦手という子供もいれば、その逆の子供もいます。年齢とは無関係に、得意科目はどんどん先に進み、苦手科目はじっくり時間をかけて学ぶということが可能になります。
返信ありがとうございます。
敢えて私が原始関数の定義の変更に対して肯定的な考えを述べたのは、釈明にはなりますが、
1) ひとつ目の釈明:
f(x) を連続関数として、a, c を定数とします。
を得るのに使われる不定積分の関係
を示すのに、区分求積法を使った計算の方法が分からなかったからです。例えば、永井さんが9月20日に投稿したところに「余弦波の面積が正弦関数で表されることが区分求積法で事前に説明されているとします」があるので、区分求積法で説明されていることを前提に不定積分の説明をしているのかな、と思った訳です。
どうして、前提の部分が成り立つのかと言うのが、私が思い浮かんだ素朴な疑問です。どうやって高校生に
が成り立つことを区分求積法を使って示されるかと言うこと説明するかですね。区分求積法による面積の計算が難しいために「事前に説明されている」としたとのが理由だと推測しています。
仮に面積の計算に難しさを覚えるなら、計算せずに、F(x) が (2) の形で定義されているとした方がいいと思ったからです。「計算することで (2) を示すこと」から「(2) の形で F(x) が定義される」と変更したので、整合性を保つべく、F(x) を f(x) の原始関数と定義したのです。ただ、この定義でも、微分積分学の基本定理のために F(x) は従来の意味でも f(x) の原始関数です。
2) ふたつ目の釈明:
ネイピア数 e を
で定義されるものとします。 対して、f(x) の原始関数 F(x) をどう定義するかにもよりますが、ここで で定義すると、任意の c に対して
が成り立ちません。~釈明終わり~
原始関数の定義の変更に対して2つほど釈明しました。永井さんが示されたような、下端のみが定数で上端が変数の不定積分が原始関数に一致することを示すことで、下端も上端も変数の不定積分を求める方法は、初めて不定積分を学ぶ高校生にとって分かりやすいことだと思いました。~不定積分の話はここまで~
実際は法律に依るものですが、憲法を持ち出したのは、学校の教師などの公務員が法を使って強制的にでも国民に学校に行かせるべきだとする考えを生徒に植え付けることを示すためです。なので、それがない中で、どうやって行かせるのかなぁと思って質問した次第です。法律で義務と定めなくても学習への十分なモチベーションが上がって教育を受けたがるなら、学校に行かせるべきだとする法律を廃止したって別に構わないと思います。法で決めなくたって、教育を受けたがる/受けさせたがるはずですから。
言わば、準義務教育も含めて18歳まで教育を受けるものですね。で、義務教育の期間は、公的資金を投入しつつもバウチャー制を導入することで民間で教育を受ける機会を作り、準義務教育の期間は、教育を有償とする代わりに合格の報奨金を出すことでモチベーションを学習者に与える訳ですね。なるほど。で、自分の科目ごとの理解度に応じて、科目別に学ぶ速度が変えられる訳ですね。
最低限度の学力が身に付いたかどうかを調べるのに、それを測るために国より出される試験を使う訳ですかね。で、合格したら、義務教育相当の学力があると言うことですね。何か、文科省が出す高等学校卒業程度認定試験(高認)の試験のようですね。
義務教育で謂う所の義務とは、保護者に課せられた義務であって、学校や教師に課せられた義務ではありません。引用した日本国憲法第二十六条にあるとおり、第一項は国民が教育を受ける権利を、第二項は保護者が子供に教育を受けさせる義務を定めています。
高認よりも試験範囲が小さい試験を想定しています。日本の中等教育で「期末試験」や「中間試験」の名称で行っている定期試験のような試験です。実力試験のような、出題範囲が広い試験だと生徒は勉強しませんが、出題範囲が限定的なら、努力すれば合格できるという気持ちになるので、生徒たちは勉強します。
私が不定積分について言及したのは、積分定数の扱いについて永井さんと同様に頭を傾げたところがあったからです。すなわち、f(x) を被積分関数として F(x) をその関数の原始関数として、
と書かれる積分定数 C についてです。なぜ、左辺の x による微分が f(x) に一致するために左辺と右辺を等号で結ばないといけないのか? 恐らくは、高校生が抱いているであろう疑問のひとつです。
本投稿の Eq.11 で定義されたものを使って
を求める方法、あるいは、コメントで書かれたように、 を使って (1) を求めることで、不定積分の下端が作る定数と原始関数にある積分定数と区別する考えは面白いと思いました。
ところで、質問があります。
1) 区分求積法を用いることで が求められると主張できるのは、どのような理由に依るものでしょうか。
まぁ、確かに教育の義務は保護者に課せられたものではありますが。
ふと思ったことですが、在るべき教育システムについてのコメントのやり取りが複数回なされるならば、そのテーマに応じたところでコメントがなされるものだろうと思います。相応しい教育システムについて永井さんに私が問うたことで始まったことでありますが、それでも、僭越ながら、そのテーマがあるところでコメントされるものだろうかと思います。永井さんのようなブログの管理者でもない分際の私が言うのも気が引けますが。
2018年9月20日のコメント(2)の冒頭にある「余弦波の面積が正弦関数で表されることが区分求積法で事前に説明されているとします」という文は、(1)の冒頭にある「微分で曲線の傾きが求められることが事前に説明されているとします」に対応させて書いた文です。つまり、それは「積分で面積が求められることが区分求積法で事前に説明されていて、余弦波の場合も同様であるものとする」ということで、高校生の場合、わざわざそれを証明する必要はないと思います。
なお、私は、
ということは言っていません。そういう誤解が生じないように、2018年9月23日のコメントで、
というように変形して、面積解釈を説明したのです。なぜ下端を0にするかと言えば、それは高校で教える区分求積法では、下端を0にするのが普通だからです。
えぇ、確かに
の部分は永井さんが書いたものではなく、私が書いたものです。
投稿されたところにある言葉の確認をしたくて質問しました。永井さんが(2018年)10月2日に投稿されたところにある「積分で面積が求められることが区分求積法で事前に説明されていて、余弦波の場合も同様であるものとする」の「積分」の部分は、被積分関数 f(x) の逆導関数(あるいは、原始関数)を意味するものだと言うことでしょうか。
まぁ、いいや。不定積分も求め方について私なりに説明します。下端が定数 a で上端が x の被積分関数 f(x) の積分 を「f(x) の不定積分」とします。以下で定義された関数 S(x)
を x で微分すると、微分積分学の基本定理より
を得ます。(2) によって、f(x) の原始関数 F(x) の上下への平行移動によって S(x) に「重なります」。だから、S(x) と F(x) の差に注目すると
を得るので、S(a)=0 を使うことにより
を得ます。
そもそも、不定積分と積分定数を用いた原始関数(原始積分)を等号で結ぶ説明は、十分な説明がないままでは、混乱を招くものだと思います。
区分求積法で積分しても、任意定数としての積分定数は生じません(任意定数ではない定数ならありえます)。よって、それは私が定義した原始関数とは異なります。あえて言うなら、「原始関数から積分定数を取り除いた関数」といったところです。
永井さんが9月20日に投稿したところでだと f(x):=cos x の不定積分を考えていますが、他の関数ではどのように不定積分が説明されますか。
本文で余弦関数の積分を取り上げたから、2018年9月20日のコメントでもそれをそのまま使ったのですが、もちろん他の関数で説明してもよいです。特に高校生が相手なら、もっと簡単な関数、例えば奇数乗の関数で、原始関数と不定積分の違いを説明した方がよいでしょう。
奇数乗の関数といっても、一次関数では面積を求めるのに積分を使う必要がないので、三次関数を例にとります。三次関数なら、高校生が知っている公式を使って、区分求積法で面積を求めることができます。
今、f(x)=x3における0からtまでの面積を求めるため、0からtまで区間をn等分したとします。この時面積Sは、
となり、原始関数の関数部分と一致することが確認されます。
次にこれを用いて、三次関数の不定積分を求めます。
実数の範囲で考えるなら、Cはゼロ以下で、正ではありえません。つまり、Cは、任意定数である積分定数とは異なります。こう説明すれば、任意定数をとりうる原始関数とそうとは限らない不定積分の違いを理解してもらえると思います。
なお、付け加えると、区分求積法で求められる面積は、必ずしも原始関数の関数部分とは一致しません。f(x)=sinxにおける0からtまでの面積は、1-costですし、f(x)=exにおける0からtまでの面積は、et-1です。しかし、こうした定数は、定積分の計算で行う引き算によりどのみち消えるので、[F(t)]内に表記する際には無視してもよいということをあらかじめ断っておかなければなりません。
簡単な被積分関数 f(x) を例に f(x) の不定積分を考えたとき、F(x) を f(x) の原始関数として y を任意とするときに
が成り立つことを区分求積法で示したのち、面積の差を考えることで
が成り立つことを示すと言うことですね。
で、不定積分と任意の積分定数を用いて表される原始関数との違いについては、 の不定積分を一例に考えると
を得て、任意の実数 a で を得て、任意の実数を表すことができないので、実数の範囲で a を考えるときに f(x) の不定積分と任意の積分定数を含む f(x) の原始関数が一致しないと言うことですね。
仮に被積分関数 f(x) とその原始関数 F(x) において
だったとしても、ある定数
を用いることで
が成り立つので、結果として
を得ると言うことですね。
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永井さんによる不定積分と原始関数の違いの説明について、ふと、私が思ったこと:
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違いを述べ前に、まず以下の主張をします。これが成り立つことで、不定積分と原始関数の違いを説明することに役に立ちます。
【前置きの主張】
f(x) および g(x) を任意の x で連続とします。定数 a および f(x) の原始関数 F(x) と g(x) の原始関数 G(x) について
が成り立つならば
が主張できます。~主張終わり~
永井さんが不定積分を導出するために用いたのは、不定積分の形で表された原始関数だろうと考えます。そこで、f(y) を任意の y で連続な関数として とおいて、以下の方法を使って G(y) を求めたいと思います。これを求めたのち、不定積分を考えます。
G(y) を求めます。G(0)=0 かつ を満たすので、F(y) を f(y) の原始関数として H(y):=F(y)-F(0) と置くことで
が成り立ちます。上述のものに加えて f(y) が連続関数であることから、【前置きの主張】を用いることで、
を得ます。
下端が定数 a で上端が変数 x の f(t) の不定積分は、上で求めた G(y) を使って
で求められます。G(y) が F(y) に一致しようがするまいが、定数 F(0) の存在によって、いずれの場合でも G(x)-G(a)=F(x)-F(a) を得るので、不定積分が次のように書けます:
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不定積分と原始関数が異なるにも拘わらず、互いを等号の記号で結ぶ動機:
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不定積分と原始関数とを互いに等号記号で結ぶのは、不定積分を未知の関数と見なして原始関数を用いた解き方を用いることで、不定積分を求めようとする意図があるものだと考えています。
その解き方と類似した解き方を見るべく、後述の ☆例題 1) を解きます。次に、不定積分を満たす性質を書いたのち、その不定積分を「未知の関数」と見なすことにより、☆例題 1) に対する解答・★解答 1) にある前半部分の書き方を真似ることで、等号記号で結ぶ理由を考えます。
☆例題 1)
かつ
を満たす関数 は何か。
★解答 1)
によって、 は 2x の原始関数 と積分定数 C を用いて と書けます。
*
C を求めると と により C=2 を得るので、 と書けます。//
f(x) を任意の x で連続かつ F(x) を f(x) の原始関数として、a を定数とします。不定積分が満たす性質を書きます。以下で定義される不定積分 S(x)
は、
の性質を満たします。
不定積分と原始関数とを互いに等号記号で結ぶところの肝の部分はここからです。(1) にある S(x) を未知の関数と見なします。つまり、以下の問題を解くと言うことです:
☆不定積分の問題)
を満たす関数 S(x) は何か。
★不定積分の解答)
(3) をもとに ★解答 1) の前半で書いたように解答を書けば、f(x) の原始関数 F(x) と積分定数 C を用いて
と書けます。★解答 1) の後半で求めたように C を求めれば、S(a)=0 より C=-F(a) です。よって、S(x)=F(x)-F(a) です。~解答終わり~
不定積分と原始関数とを等号記号で結ぶ理由は、(1) で定義された不定積分 S(x) を、(3) を満たす関数と言うように変えていったからです。(1) と (3) を解くべく用いられた (4) を用いることで、
と書けます。これが、不定積分と原始関数とを等号記号で結ぶ理由です。
ただ、これだと、不定積分と原始関数の関係について混同させるので、混同させない方法が必要だと思います。その方法と言うのが、
☆不定積分に関する主張)
を満たす S(x) の解として与えられる G(x), H(x) について、G(x)=H(x) が成り立つ。
と言うことです。(5) が主張できると仮定することにより、以下で定義された関数
について、 が (5) の解 S(x) として与えられるために、(5) より が成り立つので、f(x) の不定積分が (6), (7) より
で与えられます。
次のように用語を定義するとします。
このように定義するなら、不定積分の計算を次のように説明することができます。
不定積分と原始関数を等号で結ぶ必要はなく、動機を問うとするなら、不定積分で典型原始関数を使う慣習に対してなされるべきでしょう。私は、それは、たんに計算が楽になるからというだけの理由によるものと考えます。原理主義的にこだわるなら、典型不定積分を用いるべきです。
そうですね。不定積分を求めるにも色々な方法があるので、典型不定積分で不定積分を求める方法がありますね。
f(x) を任意の x で連続な関数として、F(x) を f(x) の原始関数とします。a を定数として、x を変数とします。
私が2018年10月8日に投稿した“☆不定積分の問題)”
にあるように、微分方程式の解を求めることで不定積分を求める方法を用いました。今に思えば、確かに、
のように書かれた C に関する方程式を解くことで不定積分定数を求めることは、面積の差異で不定積分を求めるべきだとする主張とは合わないだろうと思いました。
ちなみに、(1) を解くことで
を得ます。(1) の解がひとつしか存在しないので、次を得ます。
☆★☆★☆
面積の差異で不定積分を求めるということ:
☆★☆★☆
f(x) を任意の x で連続な関数として、F(x) を f(x) の原始関数とします。a を定数として、x を変数とします。 を任意の実数とします。
面積の差異で不定積分を求めるべく、以下の条件を満たす関数 T(y) を考えます。この関数 T(y) は y 時点での面積を表すものです:
実際に、(5) を満たす T(y) が存在することは、以下で表されます:
関数 T(y) を求めると、(5) の関係式より
だから、T(y) は f(y) の任意の原始関数で表されます。つまり、f(y) の原始関数 F(y) と任意の積分定数 C を用いて、T(y) が以下のように表されます:
実際に (8) の
が (5) を満たすことは、(6) の が f(y) の原始関数のひとつで、定数 を用いて
と書けることから、
と計算されます。
不定積分を求めます。(5) の に x を代入して に a を代入することで、(5) は
と書けます。(5) の解が (8) で表されるので、ここで、 を採用することで、(11) は
のように書けます。
☆★☆★☆
私から永井さんに質問です:
☆★☆★☆
1) 不定積分を求めるときの原理主義的な観点で言えば、上端の典型不定積分から下端の典型不定積分を引くべきだとする考えですね。
2) 不定積分と原始関数を等号で結ぶことで原始関数に付随する定数を求める方法ではなく、典型不定積分によって不定積分を求めるべきだとする理由は何でしょうか。
3) 「不定積分とは何か」の投稿をするに至った動機はどのような理由によるものでしょうか。
4) 不定積分と原始積分が異なるにも拘わらず、同一視して説明されているのは何故だと考えますか。
不定積分を求める方法がある程度は出たと思うので、下のところにそれらを書こうかと思います。
☆★☆★☆
約束ごと:
☆★☆★☆
f(x) を任意の x で連続な関数として、F(x) を f(x) の原始関数とします。定数 a を下端に持ち、変数 x を上端に持つ f(t) の積分
を f(x) の不定積分とします。対して、f(x) の原始積分とは、任意の積分定数 C を用いて
で表される とします。つまり、f(x) の原始積分とは、f(x) の原始関数全体を表すものです。
☆★☆★☆
不定積分を求める方針:
☆★☆★☆
★全般) f(x) の不定積分
を求めます。
★1) f(x) の不定積分が f(x) の原始関数になることを用いた説明:
★1.1) f(x) の不定積分 が
を満たすことから、 が f(x) の原始関数となること。
★1.2) これによって、定数 を用いて
と書けます。
★1.3) は で求められるので、 を得ます。
★2) 永井さんによる不定積分の説明 1:
★2.1) f(x) の不定積分 を
で定義する方法。
★3) 永井さんによる不定積分の説明 2:
★3.1) 典型不定積分
を区分求積法で求めること。
★3.2) f(x) の不定積分 は、以下の方法で求められます:
★4) monozuki の方法 1:
★4.1) f(x) の不定積分 が
を満たすこと。
★4.2) (8) をもとに
を満たす方程式を作ると、解 S(x) が
で与えられること。
★4.3) 方程式 (9) を満たす解 S(x) がただひとつであるために (10) の解が一致するので、以下のように書けます:
★5) monozuki の方法 2:
★5.1) を任意の実数とします。次を満たす y に関する関数 T(y) を求めます:
★5.2) T(y) を求めます。(12) と微分積分学の基本定理により、T(y) は f(y) の任意の原始関数を解に持ちます。
★5.3) f(x) の不定積分 を求めます。(12) に を代入して、T(y) の解のひとつとして を採用して (12) に代入すると、次を得ます:
不定積分を求めることについての質問がありましたら宜しくお願いします。
そう説明した方が、面積を求める方法の説明としてわかりやすいからです。
原始関数、不定積分、定積分に対する従来の教え方に満足できなかったからです。
既に述べたとおり、典型原始関数を用いた方が、定積分の計算が楽になるというプラグマティックな理由によります。
回答ありがとうございます。
何個か永井さんに尋ねたのは、不定積分に対する永井さんのスタンスを知りたかったからです。
私自身の考えを言うならば、不定積分に対する従来のあんな教え方じゃ高校生にとって理解しにくいので、それをなくすべく、分かりやすい方法で書くべきだと思いました。私が投稿した動機はそれです。私の説明で理解しましたか? だけど、教科書含めてあんな分かりにくい説明に拘るなら、もう、説明はしないでおこうか思いました。
不定積分の説明については、後は永井さんに任せました。何せ、永井さんほどには私は不定積分について詳しくありませんから。阪大や東大に行かれた永井さんにとって見れば、不定積分の説明なんざ、お茶の子さいさいでしょう? 不定原始積分なりなんなりで各々にとって理解しやすいと思う方法でやればいいと思います。もちろん、数学的に理にかなう方法でです。ちなみに、不定積分じゃなくて定積分の説明ですが、私が分かりやすいと思ったのはこの方法です。
質問がありましたら宜しくお願いします。ありがとうございました。
積分のことについてもう書くまいと思いましたが、以前の投稿の焼き直しに見えるかも知れませんが、新たに投稿しようと思います。
その投稿と言うのが、各時刻ごとの瞬間速度が同じ複数の車の走行距離を考えることで、不定積分を考えると言うものです。以前、永井さんが指摘された物理と数学との関わりに関係することだと考えています。
問題)
時刻 a の時点から時刻 b の時点まで走った車の各時刻 t 時点 ( ) での車の瞬間速度を測ったら f(t) でした。 時刻 a 時点での車の走行距離メーターが示す走行距離を始点とするとき、時刻 b 時点での車の走行距離メーターが示す走行距離は、始点からどれほど進んだことになりますか。ただし、走行距離メーターは、車が前進するときには前進した距離の分だけ増えて、後退するときには後退した距離の分だけ減り、止まっているときには走行距離の増減がないものとします。また、a, b を定数かつ a<b とします。
解答)
問題にある車を車 X と名付け、l(t) を時刻 t 時点での車 X の走行距離メーターで示される走行距離とします。時刻 b 時点での走行距離メーターから時刻 a 時点でのメーターを引いたのが求める解なので、その解は l(b)-l(a) で与えられます。時刻 t 時点での車 X の瞬間速度 f(t) は l(t) を用いて次のように表せます:
l(b)-l(a) を求めるべく、時刻 a から時刻 b までの任意の時刻 t において車 X と全く同じ瞬間速度を持つ車 Y を考えます。G(t) を t 時点での車 Y の走行距離メーターにある走行距離を表す関数とすると、t 時点での車 Y の瞬間速度が で表されることに加えて、t 時点での車 X の瞬間速度 f(t) に等しいことから
で表されます。この G(t) を使うことで
(3) l(b)-l(a)=G(b)-G(a)
が成り立ちます。
《根拠は、時刻 t 時点での X, Y の両方の車の瞬間速度が、時刻 a から時刻 b に至るまで全く同じだからです。速度が同じなので、時刻 a から時刻 b まで走った車の走行距離が一致して、(2) のように表せます。》
【積分と車の走行距離との関連付け】:
(3) にある l(b)-l(a) が求めるには、(2) を満たすような関数 G(t) を考えることです。つまり、f(t) の原始関数を考えることです。この G(t) を考えることで、不定積分とこの問題が結びつけられると言うものです。
時刻 t 時点での車 の走行距離メーターにある走行距離を表す関数 が
で表されているとします。ここに、F(t) は f(t) の原始関数とします。 は共に (2) を満たすので、(3) より
かつ
が言えます。l(b)-l(a) を求めます。
* に関して:
(3) を求めると、次のように計算されます:
* に関して:
(3) を求めると、次のように計算されます:
よって、l(b)-l(a) は (6) または (7) の形で与えられます。
定積分については、(6) と (7) から次が成り立ちます:
不定積分に関しては、b の代わりに変数 x を入れることで、
が言えます。
※注意:
例えば のように f(0) が定義されないときには、(4) の右辺にあるところの積分にある下端の数字を変える必要があります。ただ、その場合でも、同様に (8) が得られます。
>33
大栗博司著『数学の言葉で世界を見たら』でも、
「積分から先に」を勧めておりますね。
☆ 微積分の基本定理
http://ooguri.caltech.edu/japanese/mathematics/theorems
重要なことは、微分の前に積分を学ぶことではなくて、不定積分の前に区分求積法を学んで、積分とは何かをまず確認したうえで、定積分と不定積分、微分と積分の関係を理解することであろうかと思います。
不定積分とは何なのかと言う精一杯の私のもがきに対して、永井俊哉さんがこのブログの冒頭で『不定積分とは、下端が定数で上端が変数の積分であり、たんに原始関数を求めるだけの原始積分とは区別されるべきである』としている訳です。不定積分と原始関数が出ましたが、
⚫不定積分が定数と変数を用いてで表されるものであるものに対して
⚫原始関数がP(Primitive Funcfionのことかな?)を用いてで表されるものだ
と理解しました。これらの区別により、例えば、の不定積分を求める際に、不定積分を巡る混乱を引き起こさずに済むと言う訳ですね。
『積分定数には二種類がある』とする永井さんの発言も印象的ですね。例えばの原始関数のひとつとしてがあると思いますが、既にご指摘のようにの不定積分には出ないものです。
多分、原始関数をそっくりそのままコピーしたものから全部ないし一部を取り出したものを不定積分と呼んでいるんでしょうかねぇ… 私は知りませんよ。
なるほど。微分した関数を積分したものが必ずしも微分する前の関数にならないと言う意味で『不定積分は微分の逆演算ではない』と永井さんはおっしゃっているんですね。分かりました。逆演算ではないにしろ、密接に関係するものみたいですね。