不定積分とは何か
不定積分とは、下端が定数で上端が変数の積分であり、たんに原始関数を求めるだけの原始積分とは区別されるべきである。また、原始積分に含まれる原始積分定数と不定積分の下端が作りだす不定積分定数も区別されるべきである。積分は微分の逆演算とよく言われるが、これは数学的には間違いである。原始関数の集合と非積分関数の集合との対応関係は一対一ではなく、多対一であるから、逆写像の関係は成り立たない。微分と積分は分析と総合の関係にあり、導関数は元の関数の情報の一部しか持たないので、それだけで全体の情報を復元することはできない。

1. 不定積分に対する従来の説明
不定積分とは何か。これに対する私の答えを出す前に、まずは、従来、不定積分がどのように説明されてきたかを確認しよう。説明の仕方は説明者によってまちまちだが、私が観察するところ、以下のようのものが多い。
不定積分(indefinite integral)とは、微分することで所与の導関数が得られるという条件を満たすすべての関数またはその関数を求めることと定義され、原始積分(primitive integral)とも呼ばれる。また、その関数は、もとの導関数に対して原始関数(primitive function)あるいは、英語圏では、逆導関数(antiderivative)と呼ばれる。これに対して、導関数の方は、積分される関数という意味で、被積分関数と呼ばれる。
定数は微分するとゼロになるので、原始関数を復元する時には、導関数(被積分関数)ではゼロとなっている任意の積分定数 C を加えなければならない。すなわち、被積分関数 f(x) の原始関数を F(x) + C とすると、数式1 が成り立つ。
原始関数 F(x) + C を微分すると被積分関数 f(x) となり、被積分関数を積分するともとの原始関数となることから、微分と積分は逆演算の関係にあると言われることがある[1]。この逆演算の関係を明示するのが、以下の微分積分学の基本定理(fundamental theorem of calculus)であるというのだ。すなわち、f(x) を閉区間 [a, b] で定義された連続関数とし、F(x) を閉区間 [a, b] で連続で、開区間 (a, b) で微分可能な原始関数とする。この時開区間中のすべての x に対して、
という式が成り立つ。この基本定理に基づいて、下端が定数(a)で、上端が変数(x)の積分を不定積分と同一視する人もいる[2]。他方で、そうでない人もいて、この点に関しては、解説者によって意見が分かれる。
積分記号を使った原始関数の定義の方法は、その見解の相違に加えて、積分定数を付けるかどうかによって以下の四通りが考えられる。
数式5, 6 における下端の a を省略する表記方法もあるが、下端が定数であることには変わりがないので、式としては同じである。
2. 不定積分と原始積分は区別するべきである
以上のような従来の不定積分の説明に混乱があることは、積分記号を使った原始関数の定義の方法が複数あるところに表れている。もちろん、どれも微分すれば同じ被積分関数になるのだが、どれでもよいということはない。四つあるうち特に問題なのは、数式5 で、ウィキペディア日本語版でそのような記述がみられる[3]。
数式5 の積分を実行すると、
となるが、ここで -F(a) を積分定数 C とみなせば、たしかに、F(x)+C という形になる。しかし、これでは原始関数のすべてを表せない場合がある。例えば、余弦関数を積分する場合、
となるが、-sina は、a が何であれ、
というように変域が制限されるので、任意の積分定数を表すことはできない。
こうした混乱を防ぐためにも、私は不定積分と原始積分を区別することを提案したい。すなわち、原始積分はたんに原始関数を求めるだけの積分と定義する。
“P”という添え字は、原始積分であることを強調する記号で、もちろん省略してもよい。その場合、数式3 の定義と同じになる。
他方で、不定積分を下端が定数で上端が変数の積分と定義しよう。
下端が変数で上端が定数の積分や両方とも変数の積分も広義の不定積分と呼んでもよいが、微積分学の基本定理(数式2)ゆえに狭義の不定積分が最も重要である。
数式11 で、変数 x の代わりに定数 b を代入すれば、定積分となる。そこからわかるように、原始積分は不定積分においても定積分においても同様に使われる要素的な積分である。
3. 積分定数には二種類がある
従来、積分定数と呼ばれてきたものは、原始積分において加えられる定数であるが、これと不定積分の下端が作り出す定数は、概念的に区別されるべきである。そこで、前者を原始積分定数、後者を不定積分定数と名付けることにしよう。原始関数を微分する時、微分によってゼロになるのは原始積分定数であるが、微分積分学の基本定理で、微分によってゼロになるのは不定積分定数で、原始積分定数は、微分する前に相殺されて、ゼロとなっている。
二つの積分定数の違いを、グラフで確認しよう。以下の図1 は、
という微分方程式の解を方向場(direction field)として表したもので、三本の解曲線が例示されている。

で、原始積分定数だけが 4 ずつ異なっている。これに対して、不定積分定数は下端における値で、三本の解曲線では異なる値を取る。しかし、下端を 2、上端を 3 とすると、どの解曲線においてもその区間における積分(赤い線分の長さ)は同じであることが見て取れる。
4. 不定積分は微分の逆演算ではない
従来の説明でよく見かけるもう一つの間違いは、不定積分あるいは私が定義した意味での原始積分を微分の逆演算とみなすことである。数学における逆演算(inverse operation 逆操作)とは、逆写像(inverse mapping)を行う演算で、したがって、微分と積分が写像と逆写像の関係になっているかどうかが問題となる。
今、f は、集合 X の元を集合 Y の元にマッピングする写像であるとする。
この写像が全射(surjection)かつ単射(injection)の全単射 (bijection) 、すなわち、X から Y への一対一かつ上への写像であるなら、
という逆写像を持ち、写像と逆写像を合成すると、
という全称命題が成り立つ。例えば、f が 0 以外の数による割り算で、f -1 が 0 以外の数による掛け算なら、この全称命題が成り立つので、両者は逆演算の関係にあるということができる。
集合 X を原始関数の集合、集合 Y を被積分関数の集合とすると、f は微分、f -1 は積分に相当する写像ということになる。ある関数を積分してから微分すると元に戻るが、微分してから積分しても元の関数には戻らない。つまり、この全称命題(数式19)は成り立たないということである。これは、原始関数の集合と被積分関数の集合とが一対一対応ではなくて、多対一対応であることによる。
一対一対応は情報保存的(information-preserving)であるが、多対一対応は情報喪失的(information-losing)である。被積分関数を積分する時、原始積分なら原始積分定数、すなわち初期値の情報が、不定積分ならそれに加えて不定積分定数、すなわち下端の情報が必要である。これらの情報は、微分の際に失われている。しかし、もしもこれらの情報を得ることができるなら、微分してから積分しても元の関数を復元することができる。
微分と積分は、逆演算の関係にはないものの、分析と総合の一種であり、逆方向の認識作業であるということは言える。微分が全体を要素へと分解するのに対して、積分はそれらを全体へと再統合する。カントの分析判断と総合判断を引き合いに出すまでもなく、総合されたものは分析されたものよりも多くの情報を持つ。一般的に積分が微分よりも難しいのも、前者が後者よりも多くの情報を必要としているからであろう。
積分法は、古代ギリシャにおける取り尽くし法を起源とし、微分法とは独立に開発されたが、面積が未知の図形を面積が既知の要素へと分割することで全体面積の複雑性を縮減しようとする試みは、完全には成功しなかった。昔のシステム論者なら「全体は部分の総和以上である」というホーリズムの命題を唱えてあきらめたかもしれない。しかし、要素還元主義自体が間違っているわけではなく、全体を可視的な部分の総和以上にしている不可視の要素、すなわち関数の確定性を十分利用していなかっただけのことである。
積分の計算は、ジェームズ・グレゴリー、アイザック・バロー、アイザック・ニュートン、ゴットフリート・ライプニッツが、微分積分学の基本定理を完成させたことで、容易になった。図形の境界線を形成する関数を面積の変化率と認識し、面積をその変化率の蓄積と扱うことで面積計算を可能にしたのである。積分法は、面積のみならず、あらゆる変数と関数値の積の計算に応用されるようになった。微積分学は、全体を要素へと分解し、それらを再び全体へと組み立てるデカルト的な要素還元主義の成功例となったのである。
5. 参照情報
- ↑青本 和彦, 砂田 利一.『微分と積分1 - 岩波講座 現代数学への入門 1』 岩波書店 (October 5, 1995). p. 107.
- ↑黒田 成俊. 『微分積分 - 共立講座 21世紀の数学 1』 共立出版 (September 1, 2002). p. 145.
- ↑Wikipedia. “不定積分." 2012年5月24日 (木) 02:39.
- ↑Pbrks. “Slope field of the equation dy/dx=x^2-x-2." 6 June 2008. Licensed under CC-0.
ディスカッション
コメント一覧
不定積分
を求めたければ、
が

とおくことで

を得ることが予想できるので (傾きの一致と初期値の一致から)、(3) を示すことで次を得ます:

を満たすから、
となって
私が思う不定積分の求め方について分かりやすいと思うものは上述の証明です。他に質問等がありましたら、宜しくお願いします。それでは…
高校生に原始関数と不定積分の違いを理解してもらおうとするなら、
[1]
といった概念的な定義を行うよりも、グラフを用いて両者が視覚的に何を意味するかを説明する方が、直観的に理解しやすいと思います。
(1) 原始関数(原始積分)の説明
微分で曲線の傾きが求められることが事前に説明されているとします。正弦関数を微分すると余弦関数となることから、余弦関数の原始関数は、以下のような正弦関数で表現されます。
[2]
C は任意定数です。Cがどんな実数でもよいことは、以下のグラフからわかります。
任意のxでの傾きは、C が何であれ、常に同じcosxです。それは、このグラフでは、正弦波を上下にどう移動しても、特定のXにおける傾きが常に同じことで説明されます。
(2) 不定積分の説明
余弦波の面積が正弦関数で表されることが区分求積法で事前に説明されているとします。区分求積法を理解した生徒は、xにおける面積の変化率がf(x)になることを理解することができます。
[3]
さらに、以下の余弦波のグラフにおいて、
下端aから上端x1までの積分、つまり赤色の面積は、0からx1までの積分より、0からaまでの積分(青色の面積)を引くことで求められることがわかります。それを数式で記せば、以下のようになります。
[4]![\int_a^x cos\theta\, d\theta =\left [\, sin\theta\, \right ]_{a}^{x}=sinx-sina=sinx+C](https://s0.wp.com/latex.php?latex=%5Cint_a%5Ex+cos%5Ctheta%5C%2C+d%5Ctheta+%3D%5Cleft+%5B%5C%2C+sin%5Ctheta%5C%2C+%5Cright+%5D_%7Ba%7D%5E%7Bx%7D%3Dsinx-sina%3Dsinx%2BC+&bg=ffffff&fg=000&s=2&c=20201002)
ここで、C=-sinaとおいたので、Cの絶対値が1を超えることはありません。面積はx軸より上が正で、下は負なので、aがいくら大きくても、合計すると絶対値が1以下になります。このように、任意定数といっても変域が制限されます。
(3) 原始積分と不定積分の違い
どちらの場合でも、形式的には
[4]
と書くことができます。でも、原始積分と不定積分ではCの変域が異なるので、こういう形でひとまとめにすることは問題があります。微分で傾きを求める時の原始関数のCと面積を求める時の不定積分におけるCがグラフでそれぞれ何を意味しているかを説明すれば、高校生でも原始関数と不定積分の違いが理解できると思います。
自由度が大きくて特定できないのなら、以下のように束縛条件を増やせばよいのではないですか。
返信ありがとうございます。
原始積分と不定積分を初めて学ぶ高校生にとって、確かに、両者の違いをグラフと言う視覚に訴える方法を用いて説明することで、直感的に理解しやすくなって、積分に取っつきやすく感じるだろうなぁと思います。
分かりやすい永井さんによる説明なので質問するまいと思いましたが、2つほど、永井さんが説明くださった原始積分と不定積分の違いについて質問しようと思います。
【1つ目の質問】「(1) 原始関数(原始積分)の説明」において、
(
は定数) で書かれれば上下移動によって
に重なるとありますが、逆に、
ならば
が上下移動によって
に重なると考えて宜しいでしょうか。
【2つ目の質問】「(2) 不定積分の説明」にある
は
で、
は

で表されるものでしょうか。(原始積分と不定積分の違いについての質問終わり)
【2つ目の質問】から着想を得たのですが、被積分関数
とその原始関数
および積分定数
を用いて、下端が定数
で上端が変数
の
の不定積分

を用いて

とおくことで

を用いることで




を比較することで
を得ます。つまり、
が任意の定数を取ると仮定すると、原始関数によっては
を満たす
が取れないこともあるので、原始積分と不定積分にある定数は異なります。
について、【2つ目の質問】を元に定数
と書くことができるとします。
だから、
となって、
う~ん、確かに、私が定義した [1] の定義は概念的な定義ですねぇ。【1つ目の質問】に対して「是」とするなら、
によって
が上下移動によって
に重なると考えることができるので
が
の値に依らず一定になる訳で、この事によって
だから
を得ます。他に上手い説明があれば…
最後に。以前、総合学習が文科省にある官僚と言うシステムのために失敗したと言う主張がありました。どのようなシステムにすべきだと永井さんは考えますでしょうか。
1つ目の質問は、
の確認、つまり、任意の変数で導関数が一致するなら、それは形状が一致するということであり、S(a)=0 なら、同一の関数になるという確認ですね。
2つ目の質問に答えるためにも、[4]は、
と書いた方がよかったですね。こう書くことで「aからxまでの面積は、0からxまでの面積より0からaまでの面積を引くことで求められる」ことがはっきりします。
これまで詰め込み教育、調教型教育を行ってきた学校にクリエイティブな能力を持った子供を育成するための教育をせよと方針転換することは、軍事教練を行ってきた学校に芸術家の育成をせよというようなもので、無理なことなのです。明治時代に国民皆兵のために始まった公教育の制度は、ポスト工業社会の現在においては、すでに役割を終えており、廃止するべきだというのが私の提案です。
もちろん、これからも国民が基本的な学力を身につけることは必要ですが、政府は教育のプロセスには介入せずに、結果だけをチェックすればよい。すなわち、政府は、教育サービスは提供せず、学力試験だけを行い、合格者に報奨金を与えれば、教育は民間で行われるようになります。
クリエイティブな能力に関しては、目標設定をも民間に任せればいでしょう。企業に従業員数に応じた法定寄付の枠組みを設け、それを資金にコンクールが行われるようにするのです。企業側には欲しい人材を育成することができるというメリットがあります。
教育市場の参入障壁を下げれば、多様な事業者が参入し、多様な教育方法が試され、成果を出さない事業者は淘汰されるでしょう。こうした自由化が消費者に最高の教育サービスを提供さえることになると思います。
9月21日に投稿された永井さんの投稿に対する質問に答えていなかったので、それに対して答えようと思います。答えなかったのは、単純に、コメント欄をよく見ずに質問を見落としたからです。すみません。
先に、二変数関数 f(x, y) を連続関数とします。同値条件は、以下で与えられると考えています:




まず、先に
の部分を示します。つまり、(4) が成り立つと仮定して、(1), (2), (3) が成り立つことを示します。8月9日に私が投稿したところにある計算結果を使えば、
を満たす二変数関数 F(x, y) を使って、







![\displaystyle =\left[ \frac{\partial F(x, t)}{\partial x} \right]_{t=b}^{t=y}](https://s0.wp.com/latex.php?latex=%5Cdisplaystyle+++%3D%5Cleft%5B+%5Cfrac%7B%5Cpartial+F%28x%2C+t%29%7D%7B%5Cpartial+x%7D+%5Cright%5D_%7Bt%3Db%7D%5E%7Bt%3Dy%7D+&bg=ffffff&fg=000&s=1&c=20201002)


と計算されます。だから、(1) の部分は
と
のために (1) が示されます。(2) の部分は (1) の計算と同様にして示されて、(3) の部分は (5) より
のために示されます。
今度は、
の部分を示します。つまり、(1), (2), (3) が成り立つと仮定して、(4) が成り立つことを示します。ここで、二変数関数
を (1), (2), (3) が成り立つ関数と仮定します。
と置くことで、任意の x, y に対して

は定数関数で、さらに、
より

が成り立ちます。よって、
です。
だから
だから、恒等的に
永井さんが 9月20日 に投稿されたものは、下端が真の意味で定数で上端が変数の関数の積分を考えることで、不定積分を考えると言うものでした。つまり、被積分関数 f(x) と f(x) の原始関数 F(x) に対して、ある定数 c (この定数は固定されたものです) を使って




のように書けることを区分求積法を使って示した後、図を使って、
を示すと言うものでした。この説明によって、「『下端が定数 a で上端が変数 x の不定積分』と言いながら、実際は下端にある a が動くために定数ではなく変数のように感じられて分かりにくいので、ひとつに固定した定数を下端に持つ積分を考えることで不定積分を求める」と言うことだと思います。
上の説明を見て思ったことは、「上の説明を活かすために、原始関数の定義を変えてもいいんじゃないか? 微分して被積分関数になる関数が原始関数だと言うのは分かりにくい。どうして、不定積分を求めるのに微分を用いるのか理解できない」と言うことです。
なので、いっそのこと、被積分関数
の原始関数
を、下端が定数で上端が変数の被積分関数
の積分で表されるものだと定義すればいいと思います。たとえば、定数 c (この定数は固定されたものです) を用いて

とか。
で定義される原始関数
(1) を用いることで、下端が定数 a で上端が x の不定積分が、図を使った説明を用いることで、






の代わりに従来の原始関数 F(x) を用いることもできます。
が示されます。ここで、実は、(2) の結果に対して通常の意味での f(x) の原始関数 F(x) ( すなわち、
を満たす F(x) ) を用いることで
を得るので(証明を後述します)、(2), (3) より
を得ます。結果的に、
(3) の証明について:

のとき、
と置いて平均値の定理を用いることで

が存在します。図を描いて説明するときは、(y, G(y)) と (c, G(c)) を直線で結んで上下に平行移動させることで、
の接線に重なるものが存在すると言うものです。
を求めると、
に関しては微分積分学の基本定理から、F(y) に関しては定義より、y の値に拠らず

のときは
が成り立ちます。y=c のときも当然、
です。よって、



と置きます。
#
を満たす
#
微分を用いたのは (5) の右辺を求めるためで、それを求めるべく (4) の微分
を得ます。これから、
#
(7) の y にそれぞれ x と a を代入して
を得るので、(8) から (9) を引くことで (3) を得ます。
永井さんによる9月23日の投稿の後半部分にある、望ましい教育システムについてです。
ポスト工業社会を迎えた現在では、明治時代に始まった調教型教育を持つ公教育制度は役割を終えたものだから、その制度を廃止して、教育での国の関与を最小限にして民間の教育サービスなどを活用することで、ポスト工業社会に資するような学力/創造性を子供に持たせようとするのが永井さんによる主張ですね。言わば、自分の頭で考えて創造する教育。
自分が創造/探求/冒険することに楽しさを見いだす人にとっては永井さんの主張はいい提案だと思います。ひと度楽しさを見いだせば、それを実現させるための知識を得るべく勉強するものです。たぶん、これが「ポスト工業社会」に必要なもののひとつだと考えます。
質問ですが、
1) 国が教育サービスに一切関わらない中で、国民に基本的な学力が身につけさせるにはどのような方法が必要だと考えますか。従来だと、学校教育で憲法を根拠に子供に教育を受けさせる義務があるとする主張を植え付けることで、大人になって子供を設けた時に自分の子供を学校に行かせるように仕向けているようです。(まぁ、憲法には公務員以外には遵守する義務がないと日本国憲法第99条にあるんですけどね。)
2) 学力試験をどの段階で実施するものでしょうか。その時の科目はどのような感じでしょうか。
言葉をどう定義するかは、その人の自由ですから、あえて異論は唱えませんが、私が
と定義したのは、言葉の本来の意味に即した定義をしたいと思ったからです。原始関数(primitive function)の“primitive”は「最初の、根源的な」という意味ですから、微分する前の最初の関数という意味で使うのが適当です。
これに対して、定積分(definite integral)と不定積分(indefinite integral)は、文字通り、定まっているか否かが問題で、上端と下端の両方が定まっている積分が定積分で、そうではない積分が不定積分とするのが適当と考えます。上端と下端のどれを変数とするかに関しては三通りの方法がありますが、特に「下端が定数で上端が変数の積分」を不定積分としたのは、それが微分積分学の基本定理(fundamental theorem of calculus):
に登場する重要な積分だからです。
日本国憲法では、義務教育が無償で提供されなければならないと規定されています。
しかし、憲法は義務教育の期間を規定していません。だから、憲法を改正しなくても、義務教育の期間をゼロ歳から五歳にすることができます。幼児教育は成果報酬型に適さないので、教育に公的資金を投入せざるをえません。しかし、義務教育を残すことと公教育を残すことは同じではありません。バウチャー制度を導入することで、民間に任せつつも無償の義務教育を実現することができます。六歳から成人までは、準義務教育ということにして、無償にはしないけれども、これまで教育に投入してきた予算を合格の報奨金という形で提供すれば、法律で義務と定めるまでもなく、学習への十分なモチベーションを未成年の学習者に与えることになります。
英検、数検、漢検と同じように考えてください。今公教育で教えている全教科、全科目を個別に受験できるようにするということです。従来の公教育は、すべての子供を同じスピードで教育しようとしてきましたが、こうした均一な工業製品を作るような教育には無理があります。英語は得意だけれども、数学は苦手という子供もいれば、その逆の子供もいます。年齢とは無関係に、得意科目はどんどん先に進み、苦手科目はじっくり時間をかけて学ぶということが可能になります。
返信ありがとうございます。
敢えて私が原始関数の定義の変更に対して肯定的な考えを述べたのは、釈明にはなりますが、
1) ひとつ目の釈明:


f(x) を連続関数として、a, c を定数とします。
を得るのに使われる不定積分の関係
を示すのに、区分求積法を使った計算の方法が分からなかったからです。例えば、永井さんが9月20日に投稿したところに「余弦波の面積が正弦関数で表されることが区分求積法で事前に説明されているとします」があるので、区分求積法で説明されていることを前提に不定積分の説明をしているのかな、と思った訳です。
どうして、前提の部分が成り立つのかと言うのが、私が思い浮かんだ素朴な疑問です。どうやって高校生に

が成り立つことを区分求積法を使って示されるかと言うこと説明するかですね。区分求積法による面積の計算が難しいために「事前に説明されている」としたとのが理由だと推測しています。
仮に面積の計算に難しさを覚えるなら、計算せずに、F(x) が (2) の形で定義されているとした方がいいと思ったからです。「計算することで (2) を示すこと」から「(2) の形で F(x) が定義される」と変更したので、整合性を保つべく、F(x) を f(x) の原始関数と定義したのです。ただ、この定義でも、微分積分学の基本定理のために F(x) は従来の意味でも f(x) の原始関数です。
2) ふたつ目の釈明:

対して、f(x) の原始関数 F(x) をどう定義するかにもよりますが、ここで
で定義すると、任意の c に対して

ネイピア数 e を
で定義されるものとします。
が成り立ちません。~釈明終わり~
原始関数の定義の変更に対して2つほど釈明しました。永井さんが示されたような、下端のみが定数で上端が変数の不定積分が原始関数に一致することを示すことで、下端も上端も変数の不定積分を求める方法は、初めて不定積分を学ぶ高校生にとって分かりやすいことだと思いました。~不定積分の話はここまで~
実際は法律に依るものですが、憲法を持ち出したのは、学校の教師などの公務員が法を使って強制的にでも国民に学校に行かせるべきだとする考えを生徒に植え付けることを示すためです。なので、それがない中で、どうやって行かせるのかなぁと思って質問した次第です。法律で義務と定めなくても学習への十分なモチベーションが上がって教育を受けたがるなら、学校に行かせるべきだとする法律を廃止したって別に構わないと思います。法で決めなくたって、教育を受けたがる/受けさせたがるはずですから。
言わば、準義務教育も含めて18歳まで教育を受けるものですね。で、義務教育の期間は、公的資金を投入しつつもバウチャー制を導入することで民間で教育を受ける機会を作り、準義務教育の期間は、教育を有償とする代わりに合格の報奨金を出すことでモチベーションを学習者に与える訳ですね。なるほど。で、自分の科目ごとの理解度に応じて、科目別に学ぶ速度が変えられる訳ですね。
最低限度の学力が身に付いたかどうかを調べるのに、それを測るために国より出される試験を使う訳ですかね。で、合格したら、義務教育相当の学力があると言うことですね。何か、文科省が出す高等学校卒業程度認定試験(高認)の試験のようですね。