『エントロピーの理論』を出版しました

2019年6月10日

このページでは、私の著作『エントロピーの理論』の書誌情報、販売場所、概要、冒頭抜粋、改訂履歴をまとめます。誤字脱字の指摘、内容に関する質問などありましたら、このページのコメント・フォームに投稿してください。

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1. 短い概要

エントロピーはたんなる物理学の概念ではない。エントロピーの理論は、生命システム、意識システム、社会システムといったあらゆるシステムを貫く理論とすることが可能である。本書は、オートポイエーシス、超越論的自己関係性、コミュニケーション・メディア、ファルス、スケープゴート、貨幣のシステム論的分析を行いつつ、さらにエントロピー史観から人類史を概観する。

2. 長い概要

エントロピーはたんなる物理学の概念ではない。熱力学第二法則を非熱力学的分野に拡張することで、エントロピーの理論は、生命システム、意識システム、社会システムといったあらゆるシステムを貫く理論とすることが可能である。本書は、拡張されたエントロピーの概念で物理学の領域を超えた事象を説明しようとする哲学的な試みである。

どのような開いたシステムも、自らの低エントロピーな構造を維持するためには、環境のエントロピーを増大させなければならない。生命システムは、自己準拠的に自己自身を創作し、数を増やすことで全滅するリスクを低下させている。この点で、他の非生命システムとは異なる。生命のうち、自己保存のための選択が、不確定な情報エントロピーの縮減に基づくシステムは意識を持つ。

意識を持つシステムは、相互に相手の不確定性に依存する社会的エントロピーに晒される。この社会的エントロピーを縮減してくれる媒介的第三者が、コミュニケーション・メディア(文化システムにおける記号、経済システムにおける貨幣、司法システムにおける刑罰、政治システムにおける票)である。

コミュニケーション・メディアの起源は、系統発生的にはスケープゴートであり、個体発生的にはファルスである。境界上の両義的存在者の抹殺はシステムのエントロピーを縮減することに貢献する。その貢献ゆえに、いったん排除されたスケープゴートは媒介的第三者として機能する。また去勢以降、母子を結びつけるファルスも、その非存在ゆえに媒介的第三者として機能する。

本書は、最後に、エントロピーの経済学を概説した後、人類史のマイルストーンを振り返る。人類は、太陽活動が低迷し、物質的エントロピーが増大し、情報エントロピーが減少する時に、つまり革命を起こす必要があり、かつ起こす能力がある時に革命を起こす。このエントロピー史観の法則に基づいて、人類誕生から現代資本主義の成立にいたる歴史のシステム論的説明を試みる。

3. 本書解題

本書は、2003年にウェブ上で公開した『エントロピーの理論』の改訂版です。旧版は、もともとプレスプラン社から紙の本を出版する予定だった2003年5月時点での私のメルマガ記事のまとめのつもりで書いたものでした。実際に出版されたのは、本書とは異なる編集方針で上梓した『縦横無尽の知的冒険』なのですが、私は、不採用となった本書の方が価値があると考え、『縦横無尽の知的冒険』とは別の本として、ウェッブで無料公開することにしました。

2002年11月に、メルマガを本にするというプレスプラン社の企画を引き受けた時、体系的な本にするか、それともランダムに記事を配列したコラム集にするかをめぐって、出版社とずいぶん議論しました。コラム集ではウェブサイトと差別化できないので、本として出す意義はあまりないのではないかと私は考えたのですが、編集の権限は出版社側にあるので、結局コラム集と体系的な本の両方をそれぞれ別に世に出すことにしました。

もとより体系的な本といっても、所詮はメルマガ記事の寄せ集めですから、寄せ集め感が残るのはやむをえません。大学院生時代の論文をまとめた『社会システム論の構図』に対して、アマゾンで「じゃがいもを切って、肉を切ってカレーは作らない」壮大な下ごしらえというレビューがなされていますが、本書がたんなるじゃがいもと肉の寄せ集め以上になっているかどうかは微妙なところです。

なぜ私が体系性にこだわるかと言えば、それは、システム論はそれ自体がシステマティックでなければならないという信念を私が持っているからです。学問は、無矛盾的でなければならず、その意味では、すべての理論はシステマティックでなければなりません。とりわけ、純粋な理論そのものである哲学の場合は、そうです。

哲学とは何かという問いに対する答えは、哲学者の数だけありますが、私は哲学が誕生した古代ギリシャの時代における本来の哲学のあり方が尊重されるべきだと考えています。古代ギリシャの哲学は、例えばアリストテレスの哲学がそうであるように、総合的な知であり、万学の女王でありました。

近代になって、専門的な科学が次々に哲学から独立し、哲学は抜け殻のような学問になりました。抜け殻の学問であっても、主体的に哲学に取り組んでいるのならまだしも、日本の講壇哲学は、哲学することすら放棄して、哲学史研究という歴史学のサブ領域に研究の対象を狭め、官僚的な専門分化という近代アカデミズムの環境に順応しているありさまです。

私が目指していた哲学は、万学の女王としての哲学であり、大学院在学中に、これをシステム論、エントロピーの理論という形で実現することを着想しました。もちろん現代では、知の総体がアリストテレスの時代よりもはるかに膨大な量になっており、総合的な知としての哲学の確立はより困難で、時間がかかります。本書でもって、「カレー」が完成したと言う気はなく、今後もシステム論の構築に向けて努力していく所存です。

今回の改訂にあたって、多くの加筆と修正を行いましたが、中でも節全体を入れ替えたのは、第9章第5節です。旧版の第9章は、デフレの放置が戦争の原因になっていることを指摘した上で、デフレ・スパイラルを防ぎ、平和を実現するために、第5節「マネーサプライはどう調節するべきか」で、数量調節型貨幣を導入し、デフレになると自動的に量的金融緩和が行われる仕組みを提案しました。中央銀行の裁量による緩和よりも、自動的に発動する緩和の方が望ましいと考えてのことです。

4. 改訂履歴

  • 1.0(2003年07月):: ウェブサイト「永井俊哉ドットコム」上に『エントロピーの理論』というタイトルで公開。
  • 1.1(2005年01月):: ブログ「永井俊哉ドットコム」で再公開。
  • 2.0(2019年06月):: 大幅に内容を修正して、電子書籍として出版。

5. 表紙画像

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『エントロピーの理論』表紙画像

6. 書誌情報

  • Title :: エントロピーの理論
    • Furigana :: エントロピーノリロン
    • Romaji :: Entropy no Riron
  • Author :: 永井俊哉
    • Furigana :: ナガイトシヤ
    • Romaji :: Toshiya Nagai
  • Author bio :: 著作家。インターネットを主な舞台に、新たな知の統合を目指す在野の研究者。専門はシステム論。1965年8月、京都生まれ。1988年3月、大阪大学文学部哲学科卒業。1990年3月、東京大学大学院倫理学専攻修士課程修了。1994年3月、一橋大学大学院社会学専攻博士後期課程単位修得満期退学。1997年9月、初めてウェブサイトを開設。電子書籍以外に、紙の本として『縦横無尽の知的冒険』(2003年7月, プレスプラン)、『ファリック・マザー幻想』(2008年12月, リーダーズノート)を出版。
  • Language :: jpn
  • Page :: 631ページ
  • Release Date :: 2019-06-09
  • Identifier (Publisher)
    • ISBN :: 9780463501139 (Smashwords, Inc.)
    • ASIN:: B07SSP3P2G (Nagai, Toshiya)
    • GGKEY :: URRFGWYLJ4W (Nagai, Toshiya)
    • 楽天商品番号 :: 1230003269626 (Nagai, Toshiya)
  • BISAC :: Book Industry Standards and Communications
    • Science / System Theory
    • Social Science / Sociology / General
    • Philosophy / Social
    • 社会科学 > 社会学 > 一般
    • 哲学 > 社会哲学
  • Tags :: キーワード
    • Japanese :: 哲学、歴史学、エントロピー、システム論、文明論、戦争論、コミュニケーション、複雑性、オートポイエーシス、スケープゴート、社会哲学
    • English :: philosophy, history, entropy, system theory, civilization, communication, complexity, autopoiesis, scapegoat, war

7. 販売場所

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