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AIは人間の著作家を不要にするか

高度に発達したAI(人工知能)は、人間から労働を奪うと予想されています。ここでは、そうした一般的な話をする前に、フィクションを除く分野の著作業に主題を絞って人間と機械の関係について考えます。

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生成AIの台頭とライターの失業

大規模言語モデルに基づいて人工知能が高速かつ安価に生成する自然な文章は、どれぐらい職業的な著作家の脅威になっているのでしょうか。多くの人にとって身近な生成AIの文章は、グーグルで検索した時に表示される「AIによる概要(AI Overview)」です。人工知能が生成する概要を読むだけのゼロクリック検索が増え、検索結果をクリックして、人間が書いた文章を読む人が減り始めました。

もとより、ゼロクリック検索自体は、それ以前からありました。グーグルは、2012年から、わざわざページを訪れて確認するまでもない基本情報をナレッジパネルとして表示するようになり、2014年からは、ウェブページから抽出した回答文を自動で表示する強調スニペットを開始しました。しかし、AIによる概要の影響は、それらをはるかに上回ります。

2022年に年間10万ドル以上を稼いでいた100の有力ブログのうち半数が、2026年に検索からのトラフィックの85%以上を失っていると報告されています [1]。2022年は、ChatGPTが一般公開された年です。11月にリリースされた後、わずか2か月でユーザー数が1億人を超え、生成AIブームが起きました。グーグルがAIによる概要を始めたのは、2024年5月からですが、その影響は、2年以上たった2026年現在において既に出ているということです。

検索エンジンだけでなく、検索されるコンテンツもまた人工知能が生成するようになりました。以下のグラフを見てもわかるとおり、公開インターネット上において、AIが生成したコンテンツの割合は、ChatGPTの一般公開以降、急増し、2024年11月以降、人間が作ったコンテンツの割合と同じ水準になっています。

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公開インターネット上における人間が作成したコンテンツと人工知能が生成したコンテンツの割合。図の出所: Graphite. “More Articles Are Now Created by AI Than Humans.“ OCTOBER 2025.

無料コンテンツだけでなく、有料コンテンツまでもがAIによって生成されるようになりました。アマゾンのキンドルにおける新刊電子書籍のうち、AIと検出された割合は、2022年以前はほぼゼロでしたが、2023年には30%、2024年には45%、そして2025年には60%を突破しました。

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実線:AIが検出された書籍の加重シェア。点線:2022年以降の出版数の増加分がすべてAIによるものであると仮定した場合の推定AIシェア。図の出所: Reimers, Imke, and Joel Waldfogel. “AI and the Quantity and Usage of Creative Products: Have LLMs Boosted Creation of Valuable Books?” Working Paper Series. National Bureau of Economic Research, January 2026.

生成AIのおかげで、ライターに依頼する仕事が減っています。フリーランスのライターが仕事を見つける大手クラウドソーシングサイトにおいて、ライティング案件数は、2025年に前年比で32%と記録的な割合で減少したと報告されています[2]。

但し、このまま生成AIが人間のクリエーターを完全に駆逐することは、生成AIの発展をむしろ持続不可能にします。なぜなら、大規模言語モデルが、大規模言語モデルによって合成された著作物で再帰的に学習するとモデル崩壊が起きるからです[3]。生成AIのトレーニングに人間の著作物が必要である以上、人間のクリエーターを完全になくすことはできないのです。

生成AIが苦手な二つのジャンル

AIのおかげで多くのライターが収入を失うようになったとはいえ、すべての著作家がAIに取って代わられることはなさそうです。それは、需要面から見ても言えることです。グーグル検索で表示されるAIによる概要が典型的にそうであるように、AIが生成する文章で需要があるのは、レファレンス用途での情報が中心であるからです。辞書、事典、年鑑、地図帳、目録など、読むためというよりかは引くための本は、レファレンス・ブック(参考図書)と呼ばれます。現在、生成AIは、かつてレファレンス・ブックが果たしていた役割を担っています。

ここで、ネットが登場する前、どのような本に需要があったかを思い返しましょう。レファレンス・ブックには大きな需要があって、相応に売れていたのは事実です。しかし、それ以外の本の方が売れていました。一番人気があったのは娯楽のための本ですが、それを除外してもなお、レファレンス・ブックでは満たせない需要を満たす本が二種類ありました。一つは、常識とは異なる知見の本、もう一つは、個人的体験に基づく個性のある本です。

百科事典などのレファレンス・ブックには、学界の定説しか書かれていません。大規模言語モデルに基づく人工知能も、確率的に最もつながる可能性が高い文字を順番に予測して出力しているので、教科書的で常識的な文章しか生み出せません。それは常識を下回らないという点で価値がありますが、常識を上回らないという点で限界があります。

統計学的能力を持つ機械は、何が平均かを認識できても、平均から外れているものが平均以上か平均以下かという価値判断まではできません。もちろん、生成AIに傑作を描けと命じれば、美しい絵を描いてくれますが、それは所詮これまで描かれてきた傑作の平均であって、それを超える斬新な作風を案出してくれないのです。

人間の研究者は、定説に対して異端の新説を提唱できます。それが謬説として消えるのか、次の時代の定説として受け入れられるのかは、事前に予測できません。人間にもわからないことですから、機械にもわかりません。それでも、多くの人は定説が確定するまで異説や新説に無関心ということはありません。人間が持つ好奇心が、この種のコンテンツの需要を生み出し、結果として、知のイノベーションを促してきました。

もう一つのレファレンス・ブックとは異なる需要を満たすジャンルが、個人的な体験談です。レァレンス・ブックの著者が極力主観性を排除しようとするのに対して、体験談では、逆に主観性が前面に押し出されます。個人的体験に基づいて異説を主張する随筆のような中間的なケースもありますが、純粋な体験談もあるので、独立したジャンルとみなすことにしましょう。

かつて個人的体験談を記したブログ記事がネット上に多数ありましたが、2014年頃からグーグルが、E-A-T、すなわち、専門性(Expertise)、権威性(Authoritativeness)、信頼性(Trustworthiness)を重視する権威主義的な評価基準を導入して、検索結果の上位から個人ブログを排除したため、個人ブログはすっかり廃れてしまいました。

当時のグーグルは、個人が発信する情報に価値を認めていなかったようですが、やがて、自分たちの誤りに気づくようになります。レディット(Reddit)のような個人的体験談が集まる掲示板に対象を絞って検索するユーザーが増え始めたのがきっかけでした。2022年に、グーグルは、経験(Experience)を追加した“E-E-A-T”へと品質評価ガイドラインを変更しました。

それまで、商品名で検索しても、グーグルの検索結果の上位に出てくるのは、メーカーの公式情報や大手ショッピングモールの宣伝文句ばかりでしたが、検索のユーザーが求めているのは、そうした情報だけではありません。実際にその商品を購入して、使ってみた個人がどのような感想を抱いたかといった非公式の情報に大きな需要があります。グーグルは、遅まきながら、この需要に気がついたのです。

AIによる概要の存在がグーグルの検索結果で大きくなるにつれて、個人的体験談の重要性はさらに高まりました。生成AIが体験談風の文章を作成しても、それは本当の人間の体験に基づいていないがゆえに、フィクション作品以上の価値を持ち得ません。個人的体験談は、人間の著作家が最も優位に立てるジャンルだといっても過言ではないのです。

では、フィクションならどうでしょうか。こちらは、AIの進出にとってハードルが低いジャンルです。なぜなら、フィクションは純粋な娯楽であり、ゲームなどと同様、おもしろければ何でもありの世界だからです。しばしばAIの問題として取り上げられるハルシネーションも、フィクションの分野では、逆に想像力の高さとして評価されます。本当かどうかが価値基準とならないがゆえに、非フィクションとは事情が大きく異なるのです。

実際のところ、2026年1月に、AIが生成した漫画がシーモアのランキング総合1位に躍り出たことがありました [4]。米国Amazonで自己出版されたフィクション分野の電子書籍を2026年1月まで調査した研究[5]によると、25%以上AI執筆と推定される電子書籍の全体に占める割合が20.0%、売上に占める割合が12.1%、収益に占める割合が11.3%で、全部人間が書いた本よりも売り上げも収益もタイトル単位で少ないという結果になりましたが、AI執筆の時間とコストが人間執筆の時間とコストと比べて著しく少ないことを考えると、フィクション分野の人間クリエイターにとっては、厳しい競争の時代が到来したと言えます。

著作家の今後のサバイバル戦術

フィクションは、しかしながら、本考察の対象外なので、話を非フィクションに戻しましょう。冒頭で、人気ブログが検索からのトラフィックを大幅に失っているとする報告を紹介しましたが、実は例外的に増やしたブログも少数ながらありました。それは体験談に大きな需要がある子育て分野のブログでした。それなら、自分も、ブログで個人的体験談を書こうと思う人もいるでしょうが、今から真似しても、すでにブランドを確立した人気ブログと同じようには成功しません。

グーグルは、検索結果の順位を決める上で、コンテンツの中身の良し悪しよりも、コンテンツを掲載しているドメインの権威(Site quality score)を優先するアルゴリズムを採用しているので、個人が新たにドメインを取得して、ブログを始めても、記事が検索結果の上位に来ることは期待できません。それより、レディットのような有名企業が運営するドメインのサイトに投稿した方が、確実に読まれます。

レディットは米国企業なので、投稿の原文は主として英語で書かれています。では、レディットに匹敵する日本人に最適な投稿プラットフォームは何でしょうか。おそらく、それはnoteでしょう。noteは、2025年時点で、会員数が一千万人、月間アクティブユーザー数が七千万人を超えている巨大プラットフォームです。グーグルは、noteのドメインを高く評価しているので、ここへの投稿は、検索結果の上位に表示されやすいのです。

それだけではありません。ChatGPTに代表される生成AIでも引用されやすいのです。以下のグラフは、検索エンジン経由の流入と生成AI(チャットボット)経由の流入をプロットした散布図です。

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2025年1月~9月における検索エンジン経由の流入(横軸)と生成 AI 経由の流入(縦軸)。図の出所: note株式会社. “ゼロクリック時代の新GEO・AI SEO。AI経由の流入分析で解き明かす、要約後も人が訪れるコンテンツの条件とは?【ヴァリューズ × note共同調査】.” 2025年10月30日. 生成 AI には、グーグルのAIによる概要は含まれていない。

一般に、検索エンジン経由の流入が多い有力ドメイン(例えば、youtube.com)ほど、生成AI経由の流入も多いのですが、このトレンドから乖離した二種類のドメインがあります。赤線で囲った左上のnote.com(あるいはソースコード版note.comであるgithub.com)と右下のja.wikipedia.orgです。

ウィキペディア(wikipedia.org)の検索エンジン経由の流入が多い理由は明らかです。このオンライン百科事典では、匿名の編集者が常識を集大成していました。つまり、今日生成AIがやっていることを人力でやっていたのです。ゼロクリック検索以前は、グーグルの検索結果の上位に登場して、大いに利用されていたウィキペディアも、それだけに、生成AIにその役割を取って代わられやすいのです。

ウィキペディアは、「中立的な観点」、「検証可能性」、「独自研究は載せない」を「内容に関する三大方針」としています[6]。ここで謂う所の「検証可能性」とは、「信頼できる情報源」の参照で検証できるという意味です。「信頼できる情報源」とは、例えば、ニューヨーク・タイムズ(日本で言えば、朝日新聞)のような権威ある媒体のことです。

こうした方針を掲げるウィキペディアと対照的なのが、noteです。個性的な執筆者たちが、中立的な観点にとらわれることなく、独自研究を発表したり、個人的体験談を掲載したりできます。読者が、生成AIの作文に満足せずに、読もうとするのは、ウィキペディアやマスメディアが提供する《穏便に丸めて平均化したコンテンツ》ではなくて、noteなどのソーシャル・メディアを通じて個人が提供する《平均から離れた尖ったコンテンツ》ということです。

AIが普及しても生き残れる物書きを考える上で示唆的なのは、写真が普及しても生き残った絵描きたちです。写真の登場で、客観的で写実的な描画を得意とした職業的絵描きたちが消えた一方で、認知の主観的歪みを前面に押し出した絵描きたちは、芸術家として評価され、生き残りました。同様に、生成AIの登場で、没個性的な文章を書くレファレンス・ブックの書き手が消える一方で、認知の主観的歪みを前面に押し出した物書きは、人工知能の生成物では満たせない需要を満たすので、生き残ると予想されます。

以上の認識から、私の著作活動の方針を決めました。AIが苦手な二つのジャンルのうち、異端の新説は、これまで通り、私のウェブサイト、永井俊哉ドットコムで提唱することにして、個人的体験談の方は、noteで書くことにします。私は、2025年10月からnoteを始めたのですが、2026年9月現在、最も閲覧数が多かったのは、「ローカルにインストールした動画生成AIモデルを試してみた」でした。新しくパソコンを買って、ComfyUIによる動画作成に挑戦したことを綴っただけの記事ですが、noteでは、こうしたノウハウ系の記事が好んで読まれるようです。

私はこれまで知的生産の産物を永井俊哉ドットコムに掲載してきましたが、知的生産の方法についてはあまり語りませんでした。現在、私は、AI時代にふさわしい知的生産の技術を模索中で、その軌跡をnoteで連載しようと思っています。興味のある方は、ぜひnoteで私をフォローしてください。

参照情報

関連動画
関連著作
注釈一覧
  1. ↑Daniel Stanica. “The Great Blogging Collapse: What Happened to 100 Successful Blogs?.” DanielStanica.com. JUN 25, 2026.
  2. ↑Vollna. “Upwork Projects Analysis 2025: Trends and Requirements.“ 2025 Upwork Market Series. Part 1
  3. ↑Shumailov, Ilia, Zakhar Shumaylov, Yiren Zhao, Nicolas Papernot, Ross Anderson, and Yarin Gal. “AI Models Collapse When Trained on Recursively Generated Data.” Nature 631, no. 8022 (July 2024): 755–59.
  4. ↑Zoo/石橋和章. “ついにシーモアさんの総合1位がAI漫画に、、、ZOONさんが仕掛けてきました。 複雑。しかし、時代か、、、波乱の2026年になりそうです。.” X. 2026年1月2日. Cf. “AI-generated manga becomes top-ranked in Japan’s biggest e-book store.” AUTOMATON WEST. 2026-01-06 00:01.
  5. ↑Chakrabarty, Tuhin, Xinyue Liu, Jane C. Ginsburg, and Paramveer Dhillon. “Generative AI floods and dilutes the market for books.” arXiv, July 26, 2026.
  6. ↑ウィキペディア. “Wikipedia:中立的な観点.” 2026年1月8日.