書評編

読書備忘録。論文や書籍を書くための準備段階の草稿だが、書評としても機能するように書いている。

2月 162017
 
高木由臣『有性生殖論』

ゾウリムシの研究者、高木由臣は、2014年に出版した著書『有性生殖論』で、ゾウリムシのオートガミーを根拠に、有性生殖の機能を遺伝子の多様化に求める通説を否定し、有性生殖を、無性的一倍体化と無性的二倍体化を起源とする、蓄積した突然変異の有用性を検証する仕組みとする新説を提示している。高木の新説は正しいのかどうかを考えよう。

11月 042016
 
元少年A『絶歌』

1997年に神戸連続児童殺傷事件を起こした元少年Aが、2004年に社会復帰し、2015年に自らの犯行と半生を回想した本『絶歌』を出版した。1999年に「酒鬼薔薇聖斗のバタイユ的解釈」を行った私にとって、この本を読むことは解いた問題の答え合わせをするようなものだ。私の解釈は基本的には正しかったようだが、この本を読んで初めて知った新事実もたくさんあったので、今回改めて、『絶歌』を読みながら、歴史に残るあの猟奇殺人事件がなぜ起きたのかを考えてみたい。

8月 042016
 
奈良貴史『ヒトはなぜ難産なのか』

ヒトにとって出産は痛くて苦しくて、場合によっては命にかかわる危険な営みであるが、他の動物にとってはそうではない。奈良貴史著の『ヒトはなぜ難産なのか』によると、直立二足歩行と頭脳の巨大化のおかげで、ヒトの出産は難産になった。難産という代償を払ってもこうした形態変化が起きた理由は何かを進化論的に考えたい。加えて出産の医療化という近年の傾向が新たな問題を作り出していることも取り上げたい。

4月 142016
 
中室牧子『「学力」の経済学』

従来の日本の教育改革は、政策立案者の個人的体験に基づく人生論、精神論、感情論で行われることが多かった。中室牧子の『「学力」の経済学』は、教育を人的資本への投資とする経済的アプローチをとり、医療行政で行われているようなエビデンス(科学的根拠)に基づく政策立案を提案する。その方向は正しいが、中室が言っていることには同意できない点もあるので、それも併せて指摘することにしよう。

11月 012015
 
クレイトン・クリステンセン『イノベーターのジレンマ』

クリステンセンが1997年に出版した『イノベーターのジレンマ(邦訳名:イノベーションのジレンマ)』は、大企業に成長した優良企業は、いかに経営が良くても(むしろ経営が良いからこそ)イノベーションに失敗し、没落することを指摘し、企業におけるイノベーションの研究に大きな影響を与えた。このページでは、2003年の続編、『イノベーターの解決策(邦訳名:イノベーションへの解)』を参照しつつ、クリステンセンの理論がどこまで正しいのかを検証したい。

2月 112014
 
槌田敦『熱学外論』

槌田敦著の『熱学外論』という奇妙なタイトルは「熱学概論」の間違いではなくて、彼の父、槌田竜太郎が書いた『化学外論』を真似たもので、聖書の正典に対する外典のような位置付けであることを意識した書名である。異端の書であるがゆえに、間違いも少なくないが、傾聴するべき問題提起も多いので、この書で提示された「生命・環境を含む開放系の熱理論」を批判的に吟味してみたい。

3月 152010
 
舎人親王『日本書紀』

『日本書紀』は、もともと天武天皇が、自らの権力の継承が正当であること、自分の称号として定めた「天皇」が、雄略朝の時期から続く由緒あるものであることを国内外に誇示するために、編纂された。しかし、後に修史事業を受け継いだ藤原不比等は、聖徳太子という聖人を捏造し、蘇我氏を聖徳太子の子孫を滅ぼした悪役にし、その悪役を滅ぼした中大兄皇子と中臣鎌足を英雄にし、天皇親政の中央集権国家の建設という天武天皇の業績を、二人の業績にすり替えるべく、改竄を加えて、『日本書紀』を完成させた。

8月 232007
 
ウィルソン他『氷河期』

J.A. Chapman, S.A. Drury, R.C.L. Wilson の共著『氷河期-気候変動と生命』を読んで考えたことの覚書。現氷河期はいつから始まったのか、氷河期の氷期/間氷期のサイクルは何によって決まるのか、ヤンガードリアス事件は全地球的現象だったのか、熱塩循環が気候にもたらす影響は何であるのかなど。

7月 122006
 
安田喜憲『森の日本文化』

安田喜憲は理学博士であるが、環境考古学の視点から、人文科学の分野にも積極的な発言をしている。『森の日本文化―縄文から未来へ』もそうした本の一冊である。この本を手がかりに、邪馬台国や神武東征など、日本古代史の問題を再検討しよう。

6月 172006
 
ジャック・ラカン『同一化』

ファルスがたんなるペニスではなく、無のシニフィアンであるというのは、どういう意味なのか。私たちが、自分自身を同一化しようとするファルスとは、どのような存在者なのか。1961-62年に行われたジャック・ラカンのセミネール『同一化』を手がかりに、トポロジカルに考えてみよう。

4月 132006
 
松村劭『戦争学』

戦争が別の手段をもってする政治の継続であるとするならば、どのようにして戦争を行うかは、その国の政治が平和時にどのように機能しているかとは無関係ではありえない。松村劭の『戦争学』と『新・戦争学』を参考に、古代から現代の戦争の歴史を振り返りながら、政治システムの構造変換の歴史を考えてみよう。

4月 022006
 
山脇正俊『近自然学』

山脇正俊(北海道工業大学客員教授)は、『近自然学』および『近自然工学』で、従来の人工的な河川工法や道路工法に対して、近自然的な工法を主張している。河川改修や道路建設はどうあるべきか、人間の自然に対する負荷は集中するべきか否かについて考えよう。

4月 022006
 
日経BP『燃料電池2006』

燃料電池は、自動車の次世代エンジンとして脚光を集めたが、最初の実用化は、携帯機器のバッテリーから始まりそうだ。理由は、携帯機器の既存のバッテリーは、電力単価が高く、寿命も短く、電池容量に限界があるから、比較的勝ち目があるからだ。日経BP社が編集した『燃料電池2006』には、最新の燃料電池技術が多数紹介されているが、その中で、私が個人的に興味を持ったものをいくつか紹介して、論評したい。

12月 232005
 

エントロピーの法則の著者として有名なジェレミー・リフキンは、水素エコノミー―エネルギー・ウェブの時代で、インターネット革命の成功をモデルに、石油の燃焼による動力発電から水素の利用による燃料電池発電への移行を説いている。彼 […]

11月 262005
 
小室直樹『日本人のためのイスラム原論』

イスラム教は、信者の数が、キリスト教についで世界で二番目に多い世界宗教である。にもかかわらず、なぜイスラム教は、仏教やキリスト教などの他の外来宗教とは異なって、日本で信者をほとんど確保することができないのか。小室直樹の『日本人のためのイスラム原論』を読みながら、考えよう。

10月 172005
 

日本がアメリカの政治的従属国であることはよく知られている。アメリカ主導の世界標準の押し付けを日本は拒否するべきなのか否か、『拒否できない日本』を読みながら、日本の将来の進路を考えよう。 1. 回収命令が出された問題作? […]

10月 162005
 

間接的アプローチとは、「20世紀のクラウゼヴィッツ」と評される、イギリスの著名な戦略研究家・戦史研究家、リデル・ハートが提唱した戦略である。日本のような戦争を放棄している国で軍事的戦略を勉強してもあまり意味はないが、リデ […]

9月 092005
 

アブダビは、ペルシャ湾南部に面するアラブ首長国連合(UAE)の首都である。日本人の中には、アラブ首長国連合という国名すら知らない人も少なくないが、アラブ首長国連合からの原油輸入量は、日本の全原油輸入量の24%を占め、国単 […]

8月 232005
 
梅原猛『日本冒険』

諏訪地方では、御柱祭りで、木落しという、死者がしばしば出る危険な行事が行われる。この古い祭りの本当の意味は何か。梅原猛の『日本冒険』を読みながら、柱や橋の語源をアイヌ語にまで求めつつ、縄文時代の死生観や宇宙観を考えてみよう。

8月 232005
 
篠田知和基『竜蛇神と機織姫』

竜宮伝説はしばしば機織姫の物語を伴う。なぜ機織姫が竜女になるのか。日本では、鶴女房が機織姫の話として有名である。浦島物語での亀の恩返しと鶴女房での鶴の恩返しには、どのような関係があるのか。『竜蛇神と機織姫―文明を織りなす昔話の女たち』を読みながら考えよう。

8月 232005
 
荒川紘『龍の起源』

龍(ドラゴン)神話は、洋の東西を問わず、どこにでもある。西洋では、竜は退治される存在でしかないが、なぜ東洋では龍が崇められるのか。竜信仰と蛇信仰は同じなのか。なぜ宇宙の開闢は、暗い水の中にいる龍退治から始まるのかといったことを考えながら荒川紘の『龍の起源』を読もう。

8月 222005
 
ジークムント・フロイト『精神分析入門講義』

なぜ、私たちの心はしばしば病むのか。フロイトの『精神分析入門講義』を読みながら、考えよう。この本は、一般向けに書かれた入門書で、内容は深くないが、フロイトの理論全体を概観するには都合の良い本である。この本を読めば、神経症の本質がよく理解できる。

6月 182005
 
プラトン『国家』

プラトンは、主著『国家』で、正義とは何かを探求した。身体以外の所有物の否定、妻子共有制、民主主義を否定する哲人政治など、プラトンが思い描く理想郷は、現代の私たちには受け入れがたい共産主義的独裁体制なのだが、正義とは何かに関する彼の哲学的考察は、現代人が正しい国家を考える上でも、参考になる。

6月 172005
 
『新約聖書』

イエス・キリストは、なぜスケープゴートとして屠られなければならないのか。なぜ十字架は、キリスト教徒にとって、忌まわしい思い出ではなく、信仰の象徴たりうるのか。イエスの復活はどのように成されたのか。『新約聖書』を読みながら考えよう。

6月 162005
 
『旧約聖書』

ユダヤ人が1948年にイスラエルを建国して以来、中東では戦火とテロが絶えることがない。ユダヤ人は、なぜ平気でアラブ人から土地を奪うことができるのか。彼らの行為を正当化するユダヤ教の正典『旧約聖書』を読みながら、ユダヤ人たちの選民思想を検討しよう。

5月 302005
 
石田友雄『聖書を読みとく』

予備知識なしで『聖書』を読んでも、ほとんどの日本人には、その意味が理解できない。具体的な、わかりやすい話も出てくるが、その寓話を通して、どのようなメッセージが送られているのかまでを読み取らなければならない。『聖書を読みとく―天地創造からバベルの塔まで』を参考に、聖書の本質がどこにあるのかを考えよう。

4月 242005
 
島泰三『はだかの起原』

哺乳動物の毛皮には、温度調節、保湿、紫外線遮断などの機能があり、突然変異によって、毛皮を失った個体がたまたま生まれても、子孫を残さずに死滅する。では、なぜ人間は、他の霊長類とは異なって裸となりえたのか。島泰三が『はだかの起原―不適者は生きのびる』で提唱した新たな仮説の妥当性を検討しよう。

4月 222005
 
太安万侶『古事記』

『古事記』には、多くの異界訪問の神話が含まれている。あの世に逝ったり、蘇ったりするというのはどういうことなのか。禊はなぜ必要なのか。因幡のしろうさぎの物語が何を意味しているのか。こうした問題を考えながら読んでみよう。

4月 172005
 
筑紫申真『アマテラスの誕生』

アマテラスは、太陽の女神にして、天皇家の祖先であり、現在は伊勢神宮で祭られている。筑紫申真は、アマテラスの誕生で、アマテラスは、『記紀』が編集された頃、持統天皇をモデルにして作られた新しい神にすぎないと主張している。しかし、私は、アマテラス=卑弥呼説に基づいて、この説を批判したい。

4月 122005
 
福原泰平『ラカン』

「竹島の日」制定をきっかけに、韓国人の反日感情が燃え上がった。なぜ韓国の反日活動家は、これほどまでに日本人を嫌い、被害妄想を膨らませるのだろうか。福原泰平の『ラカン―鏡像段階』を手掛かりに考えてみよう。

3月 092005
 
岩田明『十六菊花紋の謎』

BC3500年ごろに世界最古の都市文明を築いたシュメール人は、BC2004年にウル第三王朝が滅亡した後、歴史の表舞台から消えたと言われていたが、実は、その後、日本列島に上陸し、弥生人になったという説がある。江戸時代に来日したエンゲルベルト・ケンペルが最初に唱え、戦前から熱心な支持者がいる日本人シュメール起源説は本当だろうか。岩田明が『十六菊花紋の謎―日本民族の源流を探る』で挙げる根拠を検討しながら考えてみよう。

3月 072005
 
梅原猛『水底の歌』

柿本人麻呂は、持統・文武両天皇に仕えた宮廷歌人であり、歌聖として崇められた。柿本人麻呂を神として祀った神社は全国に多数ある。そして、梅原猛の『水底の歌』によれば、このことは、柿本人麻呂が非業の死を遂げたということを暗示している。

3月 072005
 
ジークムント・フロイト『トーテムとタブー』

フロイトは、『トーテムとタブー』において、「個体発生は系統発生を繰り返す」というテーゼのもと、エディプス・コンプレックスの理論を用いてトーテムのタブーを説明しようとするのだが、トーテムは、プリミティブな社会において、本当に父親として表象されていたのだろうか。

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