クラウジウスはエントロピーをどう定義したか

クラウジウスは近代熱力学の創始者の一人であり、「エントロピー」という用語の発案者であるが、この言葉を創る前は「変換の等価値」という呼称を用いていた。今日物理学の専門用語として使われているエントロピーは、交換の対価という経済学的な発想から生まれた概念であった。そもそも熱力学自体が、蒸気機関の熱効率の向上という経済的な関心から生まれた物理学の分野であり、半分物理学であるが、半分経済学でもあるような学問なのである。クラウジウス自身、そのような問題意識はなかったとはいえ、今日、エントロピーという概念は、地球の資源問題や環境問題を考える上で重要にもなっている。
マッチ売りの少女はなぜ死んだのか

アンデルセンの童話に『マッチ売りの少女』という話がある。あの物語に出てくる少女がなぜ死んだかをめぐって、物理学者たちが、10年にわたって熱い論争を繰り広げたことがあった。はたして、少女は、エネルギーが足りなくて死んだのか、それともエントロピーが増大して死んだのか。