『システム論序説』を出版しました
私の著作『システム論序説』の解説動画、書誌情報、販売場所、概要、読者との質疑応答などを掲載します。本書に関してコメントがありましたら、このページの下にあるコメント・フォームに投稿してください。誤字脱字の指摘から内容に関する学問的質問に至るまで幅広く受け入れます。
第一哲学としての一般システム論
生物学者のルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィが提唱した一般システム理論は、世間では哲学とは見なされていない。しかし、もしもアリストテレスが謂う所の第一哲学が、アリストテレスの時代にそうであったような万学の女王であろうとするなら、一般論としてのシステム論は、現代における第一哲学の一つの候補になりうる。このページでは、第一哲学としての一般システム論の構想を示すとともに、それがなぜ必要であるかを論じる。
芸能人とはいかなる存在か
2004年から、日本のマスメディアに韓流ブームがおきた。国粋的な日本人の中には、眉を顰める人もいるが、もともと日本の芸能界には在日コリアンが多いし、外国人が芸能界でもてはやされるというのは自然な現象である。そもそも芸能人とはいかなる存在なのか、カタルシス理論の観点から分析しよう。
私たちはどのようなシステムか
私たちは、生命システムであると同時に意識を持ったシステムでもあり、その意識システムは社会システムを形成している。このページでは、システムとは選択する機能であり、エントロピーを縮減する主体であるという定義に基づいて、生命システム、意識システム、社会システムがどのような意味でエントロピーを縮減する主体であるのかを説明したい。
地平線と境界線の違いは何か
地平線も境界線も、内と外を区別する、似たような線だと思うかもしれない。しかし、システム論的には、システムの境界が《否定の能力》によって形成されるのに対して、システムの地平は《能力の否定》によって形成されるので、両者は対照的な関係にある。
複雑系としての社会システム
一般的に言って、社会科学は自然科学より厳密性を欠くので、社会科学者は自然科学にコンプレックスを感じている。その結果、自然科学の新しいパラダイムが現れると、それに追従しようとする社会科学者が必ず現れる。複雑系ブームの場合もしかりである。しかし社会システムを複雑系として扱う前に、それがいかなる意味で複雑系なのかを理解しておく必要がある。
複雑系の時代
複雑系という言葉が、ジャーナリスティックな流行語となったのは、1992年にミッチェル・ワールドロップの『複雑系』が出版されてからであり、それはちょうど、ソ連が崩壊し、世界が新たな時代を迎えようとする時だった。なぜ複雑系が流行したのか、その時代背景を探りたい。
イニシエーションとは何か
イニシエーションとは、入社式または加入礼とも呼ばれる、通過儀礼の一つである。外部の人間が新たに共同体に加入する時、しばしば苦痛を伴う儀式の洗礼を受けなければならない。こうしたイニシエーションがなぜ必要なのかをシステム論的に考えてみよう。
ハンセン病と触穢思想
小泉純一郎首相は、2001年5月23日、ハンセン病患者隔離政策を推進した政府の責任に加え、適切な立法措置を講じなかった国会の責任をも認めた熊本地裁判決に対して、控訴しないことを決断した。これでハンセン病患者の長い差別の歴史にピリオドが打たれることになったわけだが、なぜハンセン病患者は長い間差別され続けてきたのか。
オートポイエーシスとは何か
オートポイエーシスは、もともと生物学から生まれた概念だが、哲学や社会学でもよく使われるようになった。オートポイエーシスとは何かを、自己組織化、自己指示、自己反省など隣接概念との意味の区別を通じて考えていきたい。
認識のシステム
神秘的一元論者は、近代の哲学者たちの二元論的な認識論を批判する。しかし、私たちは、二元論か一元論かという対立地平を克服し、二元論から成り立つ多元論化を目指さなければならない。
フラクタルは複雑系か
複雑系を扱った本は、必ずと言って良いぐらい、カオスとフラクタルに言及しているが、ロジスティック写像の自己指示的反復適用が必ずしもカオスを発生させるわけでないのと同様に、すべてのフラクタルが複雑系と呼ぶにふさわしい不確定性を持つわけではない。
複雑系とは何か
複雑系とは、複雑な環境にさらされつつ、その複雑性を縮減することを通して、自己自身を複雑にするシステムである。これはパラドキシカルに見えるが、エントロピーの減少がエントロピーの増大をもたらすというエントロピーの法則の特殊なケースと考えることができる。
システムとは何か
システムという言葉は、ギリシャ語の「結合する」という意味の語に由来する。だからシステムは、常識的には、結合された要素のまとまりとして定義されている。この定義は、システム/要素関係を全体/部分関係と同一視しているわけだが、システムは部分から合成された全体ではないし、ましてや全体と部分との空間的な包摂関係ではない。
複雑性と進化の関係
進化というプロセスは複雑性の増大なのかそれとも複雑性の縮減なのか。ルーマンによれば、進化に伴う差異化は、複雑性の増大であるのみならず、それと同時に複雑性の縮減の新しい形式を可能ならしめる。私も、進化とは複雑性の増大による複雑性の縮減であると認識しているが、それはルーマンとは異なる意味である。違いは、複雑性を複合性と解釈するか不確定性と解釈するかにある。
機能的システム論と超越論的目的論
ルーマンは、1973年の著書『目的概念とシステム合理性』で、目的論的合理性とシステム合理性を区別し、彼の機能システム論を前者からではなくて後者から説明しようとする。通常我々は、「機能」と聞いて目的に対する手段的有用性を連想するし、「合理性」でもって最も適切な手段の選択を理解している。ルーマンは、なぜこのような伝統的な目的合理性による解釈を拒否するのか。このページでは以下、第一節で「機能」、第二節で「合理性」についてのルーマンの理解を検討し、第三節でシステムが目的論的合理性に基づかなければならないことを主張する。
ルーマンのシステム理論の問題点
今日社会システム論を論じる上で、ニクラス・ルーマンは避けて通ることはできない。このページでは、主著『社会システム論』を中心に、ルーマンのシステム論を検討しつつ、妥当性と規範についての問題を提起する。その際、ルーマンがシステム論的な術語で《複雑性》と名付ける不確定性をどう理解し、またシステムがそれをどのように確定化するかが問題となる。