パラダイムとは何か
パラダイムの本来の意味は「模範」であり、クーンは、科学教育において学生が模範として模倣する教科書的な理論や実験方法をパラダイムと名付けた。正常科学においては、科学者はパラダイムに基づくパズル解きに従事するが、これは軽蔑するべき非生産的活動ではなく、科学が本来の機能を発揮するために必要なことであり、科学革命を頻繁に起こすよりも経済的に合理的である。科学革命においても新しいパラダイムは古いパラダイムを引き継いで生まれる。革命が非連続に見えるのは、競合するパラダイムの権力関係が急激に変化するからであって、新しいパラダイムが無から生じることはない。科学革命は、政治革命と同様に、システムの存続のための権力闘争であり、理論が現実をよりよく模写するためにパラダイム・シフトが起きるのではない。
コペルニクスはなぜ地動説を唱えたのか
コペルニクスが、当時支配的だったプトレマイオスの天動説に反して地動説を主張したことは、宗教的迷信に対する科学の勝利と呼べるものではなかった。コペルニクスのモデルはプトレマイオスのモデルよりも正確でもなければ単純でもなかった。それにもかかわらず、コペルニクスが太陽中心の地動説を唱え、かつそれに魅了される天文学者が少なからずいたのは、当時太陽崇拝のネオプラトニズムが流行していたからであり、そしてそれは当時が近代小氷期と呼ばれる寒冷期であったことと関係がある。