言語はなぜ不完全なのか

もしも、言語が世界を忠実に写し取り、それを他者に伝達するための手段だとするならば、そこには二つの不完全性がある。しかし、その不完全性は、私たちにとって必要な不完全性である。
ヴィトゲンシュタインの言語哲学

分析哲学は、ラッセルやムーアを中心としたケンブリッジ分析学派による言語分析に端を発し、フレーゲの言語哲学やウィーン学団の論理実証主義の影響を受けつつ、ヨーロッパで広まり、第二次世界大戦後、英語圏で主流となった哲学である。哲学史家の間で、分析哲学の創始者が誰なのかに関しては意見が一致しないのとは対照的に、もっとも影響力があった哲学者が誰であるかに関しては、ほぼ意見が一致している。ヴィトゲンシュタインである。このページでは、ヴィトゲンシュタインと彼以降の言語哲学の成否を超越論的哲学という観点から検討したい。