ライプニッツはなぜ予定調和説を提唱したのか
ライプニッツは、自分の形而上学を予定調和説と名付けていたが、この形而上学の学説は神の存在論的証明を前提にしている。存在論的証明は神の遍在を説く汎神論を帰結し、そこからさらに、連続律に基づいて、神に当てはまることをすべての実体に当てはめることでモナドロジーが帰結し、充足理由律に基づいて、なぜこの世界が現実存在するかを問うことで最善説が帰結する。ライプニッツは、神は可能的な宇宙をすべて認識する認識力、その中で最善のものを選ぶ善意、そしてそれを現実存在するようにする実行力を持つと想定するが、そのような神は、存在論的証明によってその存在が証明される、たんなる宇宙の合計以上のものであり、両者を同一視することはできない。また、私たちが誤謬、悪、失敗を経験する以上、有限な存在者の認識、意思、行為に予定調和説を適用することはできない。
神は完全であるがゆえに存在するのか
神は完全な無限者であり、その神がたんに観念的で現実に存在しないならば、完全な無限者とは言えないので、神は現実に存在する。このような神の存在の証明を存在論的証明と言い、アンセルムスやデカルトなどによって行われてきた。カントは、存在論的証明が、分析的判断と総合的判断を混同する間違いを犯していると指摘したが、存在論的証明の誤謬は、それとは異なるところに、すなわち、存在論的証明がその存在を証明する完全な無限者は、キリスト教徒が神と考える全知全能の至高な存在者とは全く逆の存在者であるというところにある。
小室直樹のイスラム原論
イスラム教は、信者の数が、キリスト教についで世界で二番目に多い世界宗教である。にもかかわらず、なぜイスラム教は、仏教やキリスト教などの他の外来宗教とは異なって、日本で信者をほとんど確保することができないのか。小室直樹の『日本人のためのイスラム原論』を読みながら、イスラム教の特異性がどこにあるのかを考えてみたい。
イスラム教徒はなぜ断食をするのか
イスラム教徒はラマダーンの月に断食をする。断食といっても、日没後は飲食をしてもかまわない。最近では、健康のために断食をする人もいるが、健康が目的なら、就寝前に食べない方が良い。イスラム教徒が断食する理由は、イスラム教の父権宗教としての本質から理解するべきだ。このページでは、イスラム教の聖典である『コーラン(クルアーン)』の記述が何を象徴しているかを考えることで、断食の謎を解くことを試みたい。
吉村作治の古代エジプト講義録
文明以前の古代エジプトにはどのような宗教があったのか。ピラミッドは何のために建造されたのか。出エジプトに描かれているモーセの奇跡は史実だったのか。『吉村作治の古代エジプト講義録』を読みながら、考えてみよう。
ファラオと死者の書
古代エジプトは、母権社会的な色彩が強かった。このことは、ファラオ(男性)による統治と太陽崇拝に矛盾しないのか。吉村作治の『ファラオと死者の書―古代エジプト人の死生観』を読みながら、考えよう。
古代メソポタミアの神々
最古の文明である古代メソポタミア文明での神話は、日本の神話にどのような影響を与えたか、岡田明子と小林登志子の共著古代メソポタミアの神々―世界最古の「王と神の饗宴」を読みながら、考えてみよう。