槌田敦の熱学外論
槌田敦著の『熱学外論』という奇妙なタイトルは「熱学概論」の間違いではなくて、彼の父、槌田竜太郎が書いた『化学外論』を真似たもので、聖書の正典に対する外典のような位置付けであることを意識した書名である。異端の書であるがゆえに、間違いも少なくないが、傾聴するべき問題提起も多いので、この書で提示された「生命・環境を含む開放系の熱理論」を批判的に吟味してみたい。
循環型社会は可能か
「環境に優しい」と自称する企業が、「わが社は、ごみを一切出さないゼロエミッションリサイクルを実現している」と宣伝するのを耳にすることがある。しかし、厳密に言うならば、ゼロエミッションのリサイクルなどは物理的に不可能である。物理的に可能で環境保全になる循環型社会とはどのようなものかを考えよう。
熱力学第二法則からエントロピーの法則へ
熱力学には二つの基本法則がある。熱力学第一法則は「エネルギーは保存される」、第二法則は「孤立したシステムにおけるエントロピーは減少しない」というものである。熱力学第二法則を、熱力学の範囲を超えて拡張してみよう。