『システム論序説』を出版しました
私の著作『システム論序説』の解説動画、書誌情報、販売場所、概要、読者との質疑応答などを掲載します。本書に関してコメントがありましたら、このページの下にあるコメント・フォームに投稿してください。誤字脱字の指摘から内容に関する学問的質問に至るまで幅広く受け入れます。
ヒュームの懐疑論に対する懐疑論
18世紀のスコットランドの哲学者、デイビット・ヒュームは、因果関係の客観性や道徳命題の妥当性を疑った懐疑論者として有名である。しかし、原因と結果、「である」と「するべき」は異質で、その結合は主観的であるがゆえに不確定であるという懐疑論は本末転倒である。むしろ、不確定であるからこそ、その不確定性を縮減するために、主観は、原因と結果、事実と価値を分割しなければならないというのが真実である。
複雑性とは何か
自然科学における複雑系ブームのおかげで、あるいは社会学におけるルーマンのブームのおかげで、複雑性概念はポピュラーになった。しかし、多くの研究者は、複雑性とは何かに関して、漠然とした考えしか持っていない。複雑性と複合性の区別を通して、複雑性を厳密に定義したい。
複雑系としての社会システム
一般的に言って、社会科学は自然科学より厳密性を欠くので、社会科学者は自然科学にコンプレックスを感じている。その結果、自然科学の新しいパラダイムが現れると、それに追従しようとする社会科学者が必ず現れる。複雑系ブームの場合もしかりである。しかし社会システムを複雑系として扱う前に、それがいかなる意味で複雑系なのかを理解しておく必要がある。
複雑系の時代
複雑系という言葉が、ジャーナリスティックな流行語となったのは、1992年にミッチェル・ワールドロップの『複雑系』が出版されてからであり、それはちょうど、ソ連が崩壊し、世界が新たな時代を迎えようとする時だった。なぜ複雑系が流行したのか、その時代背景を探りたい。
貨幣とは何か
貨幣は、かつては金や銀など、価値のある財であったが、今では、それ自体では、取るに足りない金属や紙のかけらあるいは電子情報に過ぎない。それにもかかわらず、なぜ貨幣には価値があるのか。共同幻想に基づく惰性によるのか、それとも根拠があって貨幣は流通するのかを考えてみよう。
フラクタルは複雑系か
複雑系を扱った本は、必ずと言って良いぐらい、カオスとフラクタルに言及しているが、ロジスティック写像の自己指示的反復適用が必ずしもカオスを発生させるわけでないのと同様に、すべてのフラクタルが複雑系と呼ぶにふさわしい不確定性を持つわけではない。
複雑系とは何か
複雑系とは、複雑な環境にさらされつつ、その複雑性を縮減することを通して、自己自身を複雑にするシステムである。これはパラドキシカルに見えるが、エントロピーの減少がエントロピーの増大をもたらすというエントロピーの法則の特殊なケースと考えることができる。