10月 212012
 
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1970年頃の米国の化学教育界では、モルによる単位換算の高校生向けの方法として、モル法(Mole Method)が採用されていた。日本では、高松高校の佐野俊介がモル法の採用を提案した[高校化学計算におけるモル法の提案 (date) 1970年7月20日 (media) 化学教育 18(3), 306]が、普及には至らず、今日に至るまで、日本の教育現場では比例式を用いた解法が主流を占めている。

今日の米国では、モル法は因子標識法(factor-label method)として一般化され、単位換算のための汎用的なテクニックとして幅広く使われている。このテクニックは、簡単に説明すると、求められている答えの単位が、A/B の時、

A/E = A/B × B/C × C/D × D/E

というように、媒介単位が分母と分子で消去されるように連鎖させて立式し、求める答えを出す方法である。以下、具体的な化学の計算でこれを説明しよう。

問題 1.

酸素8.0mgは、標準状態(0℃、1.01×105Pa)で何mLの体積を占めるか。但し、酸素の分子量を32とする。

標準状態の気体のモル体積は、22.4L/mol、分子量は、32g/mol というモル質量と解釈できるので、

1000mL/1L × 22.4L/1mol × 1mol/32g × 1g/1000mg × 8.0mg = 5.6mL

というように、途中の単位を消去して、mL しか残らないように配列して、解くことができる。

問題 2.

塩化ナトリウムの結晶は、一辺の長さ5.64Åの面心立方格子を単位格子としている。塩化ナトリウムの式量を58.5、アボガドロ定数を6.0×1023/molとする時、塩化ナトリウムの密度は何g/cm3となるか、有効数字2桁で答えよ。

面心立方格子では、1つの格子につき NaCl のペアは4対あり、また、1cm=108Å なので、

58.5g/1mol NaCl × 1mol NaCl/6.0×1023 NaCl × 4 NaCl/1 格子 × 1 格子/(5.64Å)3 × 1024Å3/1 cm3 = 2.2g/cm3

となる。ここでも分母と分子が等価であることを確認しつつ、前の分母と後の分子の単位が同じになっていることを確認しつつ立式する。

問題 3.

白金電極を用いて、硫酸銅水溶液(Ⅱ)に10.0Aの電流を32分10秒通じて電気分解した。このとき陰極に生じる銅は何gか。但し、銅の原子量を63.5、ファラデー定数を 96500 C/mol とする。

陰極で起きる反応は、

Cu2+ + 2e → Cu

であるから、2e につき 1mol Cu と考えることができる。また、1A=1C/s、32分10秒=1930s なので、

63.5g Cu/1mol Cu × 1mol Cu/2mol e × 1mol e/96500C × 10C/1s × 1930s = 6.35g

となる。日本式に比例式を重ねて立ててもよいのだが、この方法の方が一発で答えを出すことができる。その方が約分も一度でできるし、途中で数値を丸める必要がないから、正確に答えを出すことができる。日本の教育現場でもこの方法を使って教えてみてはいかがだろうか。

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