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アトキンソンの方法で日本の生産性は向上するか

菅義偉首相のブレーンであるアトキンソンは、日本では、最低賃金が低すぎる、中小零細企業の数が多すぎる、女性の経済参加度が低すぎることが原因で、生産性が低くなっていると分析し、最低賃金の引き上げ、企業数の削減、女性の経済参加の促進を提案している。この提案で、日本の生産性は本当に改善するのかどうかを考えよう。

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1. アトキンソンの政策提案とその問題点

1.1. 菅政権とアトキンソン

2020年9月16日に菅義偉内閣が成立したことに伴って、英国人アナリストで、小西美術工藝社社長を務めるデービッド・アトキンソン(David Atkinson)の政策提案に注目が集まっている。経産省幹部が「菅氏はアトキンソン信者」と言う[1]とおり、アトキンソンの政策提言は菅首相にかなりの影響を与えているからだ。実際、アトキンソンは、菅内閣が発足後まもなくして新たに設置した成長戦略会議の議員に選ばれた[2]

アトキンソンは、1965年生まれ(私と同い年)で、オックスフォード大学で日本学を学んだ後、1992年にゴールドマン・サックスに入社し、バブル崩壊後の日本の不良債権の実態を暴いて注目を集めた。2006年に同社の共同出資者となったが、「マネーゲームを達観するに至り[3]」、2007年に退社した。「引退後は茶道をしたり京町家を買って修復したり、2年ほど自由にして[4]」いたが、2009年に、近所の縁で請われて、文化財補修の老舗、小西美術工藝社に入社し、2011年に同社会長兼社長に就任した。

国宝や重要文化財の修復予算が小さい原因を観光産業の規模の小ささに見出したアトキンソンは、2013年頃から日本の観光政策を改善するための数々の提言を行うようになり、2014年に『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』を、2015年には『新・観光立国論』(第24回山本七平賞受賞)を出版した。菅義偉がアトキンソンとコンタクトを取ったきっかけは。こうした彼の観光立国論であった。菅は、「13年から始めた観光立国の仕組みづくりに際して、アトキンソンさんの本を読み、感銘を受け、すぐに面会を申し込んだ。その後何度も会っている[5]」と述べている。

菅は、地方創生には観光産業の振興が必要という信念の持主で、官房長官時代、法務省などの反対を抑え込んで、外国人のビザ緩和を行い、外国人観光客を大幅に増やした。また、維新の会とともにIR法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)の成立にも尽力し、安倍政権下ではIR推進本部の副本部長を務めた。アトキンソンも、カジノは観光を守るための「集金エンジン」の役割を果たすとして、IRの整備を推奨している[6]

アトキンソンは、他国と比べて日本国内には五つ星ホテルが少ないと指摘する。五つ星ホテルの数とその国の観光収入との間には91.1%の相関性があることから、アトキンソンは五つ星ホテルの数を増やし、富裕層の満足度を高めるべきだと提言している。これを承け、菅官房長官は、2019年12月に熊本地震の被災地を視察した際に、地方経済を活性化させるべく、財投の活用や日本政策投資銀行による資金支援などを実施し、世界の一流ホテルを国内に50カ所設ける考えを示した[7]。アトキンソンは、もちろんこの菅官房長官の表明を歓迎している[8]

アトキンソンは、観光立国という点で、もう一人の政権のキーパーソン、二階俊博幹事長ともつながりがある。二階幹事長は、全国旅行業協会の会長で、観光族議員のドンであるから、それは当然であろう。アトキンソンの2017年の著書『日本再生は、生産性向上しかない!』には、二階幹事長とエイドリアン・ゼッカ(アマンリゾーツ創業者)との鼎談が収録されている。菅首相と二階幹事長という政権のツートップと懇意にしているアトキンソンは、菅政権の最も重要な政策ブレーンの一人と言って過言ではない。

アトキンソンによれば、日本は、気候、自然、文化、食事という観光立国の四条件をすべて満たしている[9]。観光大国になる素地が十分あるにもかかわらず、無策により「日本の潜在能力がフルに発揮されていない[10]」というのが彼の基本的主張であった。しかし、彼は、2016年以降[11]、ポテンシャルが高いのにもかかわらず、十分活用されていないという点で、観光資源よりももっと問題の大きい資源に注目するようになった。それは人的資源である。

1.2. アトキンソンと私の違い

アトキンソンは、日本を除く先進国の場合、労働者の質と生産性との間に82.3%の相関性があって、世界経済フォーラムのデータ(2016年)によれば日本の労働者の質は世界四位であるにもかかわらず、生産性が先進国の中では最下位であるという事実を指摘し、「人材の質と生産性のギャップが世界一大きい国[12]」だと言う。そして、「日本の経営者は優秀な日本の人材の能力をまったく活かせておらず、教育などにかけられてきた投資や子供のころの努力を全く回収できていない[12] 」として、日本の経営者の「奇跡的な[13]」無能ぶりを非難している。私も2015年12月に書いた「日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか」で同じような問題提起をした。拙稿をアトキンソンが読んだかどうかはわからないが、問題提起はよく似ている。しかし、いくつか違いもある。

まず、アトキンソンが定義する生産性とは、一人当たりのGDP[14]であって、労働生産性(GDP÷就業者数または労働時間)ではない。私が「日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか」で前者よりも後者に焦点を当てたのは、日本経済の低迷の原因を少子高齢化に求める通説をあらかじめ排除しようとしたからだ。少子高齢化で、働かない高齢者が増えても、労働生産性の分母である就業者数や労働時間は働いている人の数字であるのだから、労働生産性には影響を与えない。したがって、労働生産性の低さの原因は、少子高齢化とは別のところに求めざるを得ない。アトキンソンが一人当たりのGDPの方を問題にするのは、彼が得意とする人口経済学と結び付けるためなのだろう。もとより、日本は、一人当たりの労働生産性でも、時間当たりの労働生産性でも、一人当たりのGDPでも先進国の中では最低レベルなので、生産性をどの指標で定義するかは、本質的な問題ではない。以下、本稿では、アトキンソンに合わせて、たんに生産性といえば、一人当たりのGDPを意味するものとする。

アトキンソンは、観光立国論を提唱していた頃、日本全体のGDPを一人当たりのGDPよりも重視する議論をしていた[15]。人口が減れば、GDPも減る。これを阻止するために移民を提案する人もいるが、大規模な移民の受け入れは治安を悪化させるなど欧米でも問題になっている。そこで、そうした弊害をなくすために、短期移民としての観光客を増加させ、GDPの減少を食い止めようというのがアトキンソンの観光立国論の趣旨だ。しかし、GDPを増やす方法を考える前に、GDPを一人当たりのGDPよりも重視しなければならない理由は何なのかを考えなければならない。

一人当たりのGDPよりもGDPが重要になる局面として考えられるのは、近代的な総力戦を行う時ぐらいであろう。近代的な総力戦では、GDPの大きさが勝敗を決する上で重要な要因になる。明治政府が富国強兵を目指して殖産興業政策とともに人口増加政策を採ったのはそのためだ。しかし、今の日本は、戦前のように対外膨張策を国策としていない。もちろん、中国の軍事的脅威が増す中、最低限の国防力を持つべきだが、安全保障ということで言うなら、観光立国を推進し、中国人旅行客への経済の依存度を高めることは、中国政府に日本を恫喝する手段を与えるという点で、好ましくないということになる。

アトキンソンは、観光立国論から生産性立国論へと関心を変える中、一人当たりのGDPを最重要視するようになった。2019年の著作では、「日本では今後、GDP総額やGDP成長率を政策目標にしてはいけないのです。それらにかわり、国民の所得水準や生活水準、生産性を政策目標の中核にするべきです[16]」と言っている。これはもっともなことだ。たとえ人口が減って、GDPの成長が抑制されても、一人当たりのGDPが大きく成長するなら、国民は豊かさを実感することができる。だから、アトキンソンが当初言っていたほど、人口の減少は深刻な問題ではない。

では、一人当たりのGDPを増やすにはどうすればよいのか。アトキンソンは、一人当たりのGDPと高い相関性がある変数として、教育水準以外に

  1. 企業の規模
  2. 最低賃金
  3. 女性経済参加度

という三つの変数を見つけ、

  1. 企業数の削減
  2. 最低賃金の段階的な引上げ
  3. 女性の活躍

という三つの生産性向上策を提案している[17]。私は、「日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか」で、問題の根源を雇用の流動化を妨げている日本的経営に求めたが、アトキンソンは、雇用の流動化には消極的である。アトキンソンと私の最大の違いはここにある。雇用の流動化は不要なのか、アトキンソンの提案だけで十分なのかが、以下の本稿のテーマである。しかし、その前に、アトキンソンの政策提案全般にかかわる問題を指摘しておこう。

1.3. 相関関係と因果関係

アトキンソンは、アナリストらしく、データを重視する。たしかにデータ解析は重要だが、限界もある。データ解析は変数間の相関関係を教えてくれるが、因果関係までは原則として教えてくれないからだ。AとBという時間差の無い二つの変数の相関係数が高いとしよう。Aが原因でBが結果かもしれないし、Bが原因でAが結果かもしれないし、AとBがCという共通の原因の結果なのかもしれない。こうした不確定性があっても、政策決定を行うためには、因果関係を見出さなければならない。Aが原因でBが結果なら、Bを実現するためにAを手段として使えるが、因果関係が逆であるか共通原因の結果にすぎないなら、手段として使えないということになる。

アトキンソンの議論には因果関係の解釈がおかしいと思える箇所がいくつもある。当人は、「自分で言うのもなんですが、相関関係と因果関係を盲目的に勘違いするようでは、ゴールドマン・サックスのアナリストは務まりません。もちろんトップアナリストになることは不可能ですし、私がこれまで歩んできたキャリアを達成することは絶対に無理だったことでしょう[18]」と自信満々なのだが、本人が思っているほど彼の解釈は完璧ではない。

一例を挙げよう。アトキンソンは、『新・生産性立国論』で「計算上、1990年以降に開いた日米両国の生産性の差のうち、実に45%が日本人女性の社会進出による影響であるという結果が出ています[19]」として、「日本では、女性が社会進出をし、働けば働くほど全体の生産性ランキングが低下するという、世界でもまれな奇妙な出来事が何年にもわたって続いています[20]」と言う。アトキンソンは、この「奇妙な出来事」をこう説明している。

日本人女性の生産性は男性の半分強しかおりませんし、海外のように向上していません。そのため、女性労働者が増えれば増えるほど、全労働者に占める生産性の低い人の割合が増えるので、日本人労働者全体の生産性向上を抑制する結果を招いてしまうのです。つまり、日本人女性の労働参加率が高くなればなるほど、他の先進国との生産性の差が大きくなってしまうという、なんとも皮肉な結果が生じているのです。[21]

この説明で、アトキンソンは、生産性と労働生産性を混同している。「全労働者に占める生産性の低い人の割合が増える」ことで低下するのは労働生産性であって、アトキンソンが一人当たりのGDPと定義する生産性ではない。専業主婦が男性の半分強の賃金で働くと、分母が増えるほど分子が増えないので、労働生産性は下がる。しかし、生産性は、労働生産性とは異なり、専業主婦をあらかじめ分母に含めている。彼女たちが働けば、付加価値がゼロから男性の半分強にまで増えるので、他の条件が同じなら、生産性は増えるはずである。それにもかかわらず、他の先進国との比較で生産性向上が抑制されたのは、男性の付加価値の増加率が大きく低下したからだ。

アトキンソンの躓きは、最初の因果関係の解釈から始まっている。女性の社会進出が原因で生産性ランキングの低下が結果として生じたと言うから「奇妙な出来事」に思えるのであって、因果関係を逆にして、生産性ランキングの低下が原因で女性の社会進出が結果として生じたと言えば、それは「奇妙な出来事」ではなくて、ごく当然の出来事ということになる。当時を生きた日本人には説明するまでもないことだが、バブル全盛時代、夫の所得や世帯の資産が右肩上がりだったので、専業主婦たちは左団扇で暮らすことができた。ところが、バブル崩壊後、夫の所得や世帯の資産が右肩下がりになったため、専業主婦たちは家計を支えるために働きに出ざるを得なくなった。しかし、彼女たちの所得は、男性の半分強しかないから、全体として、生産性があまり向上していないということである。

アトキンソンの主張には、こうした類の因果解釈の錯誤と思える箇所が散見される。だから、大企業は、規模を大きくしたから生産性を高めることができたのか、それとも生産性が高いから大企業に成長することができたのか、あるいは、最低賃金を引き上げたから生産性を高めることができたのか、それとも生産性が高まったから最低賃金を引き上げることができたのかというように、逆の因果関係が成り立つのではないかと常に疑ってかかる必要がある。以下、この観点から、企業数の削減、最低賃金の段階的な引上げ、女性の活躍というアトキンソンの三つの生産性向上策を検討しよう。

2. アトキンソンの三つの生産性向上策

2.1. 中小零細企業の統合

アトキンソンは、2018年の著作で、一企業当たりのGDPと生産性との相関係数が0.842と世界的に高いことを指摘し、企業の淘汰を促進することで、日本の企業数を今の半分にして、一企業当たりの規模を大きくせよと主張した[22]。2019年の著作では軌道修正を行い、淘汰の代わりに統合を提案している。

一部の破綻は避けられないかもしれませんが、可能なかぎり企業の破綻は避けるべきです。人が仕事を失って、新しい仕事を探すのは決して効率的なプロセスではないからです。よく指摘されるように、企業破綻にともない、それぞれの企業が持っていた技術が失われることもあります。このように破綻は破壊的な現象以外の何物でもないので、できるだけ避けたほうがいいのです。

では、企業を破綻させる以外に、どのように企業の数を減らすべきでしょうか。

統合です。[23]

菅政権が地方銀行の再編と地方銀行の借り手である中小企業の改革に意欲を示しているのは、アトキンソンのこの提案の影響かもしれない。だが、国家は、どのようにして企業統合による生産性向上といった経営介入ができるのだろうか。アトキンソンは、2018年の著作で次のように経営への直接介入を提案している。

相手が上場企業ならば、政府は比較的簡単に付加価値を向上させることができます。年金基金が株式を保有している企業に対して、大株主として生産性向上目標を設定させ、目標達成ができない社長は次から次へ首を切り、目標達成できる社長があらわれるまで切り続けていけばよいのです。[24]

地方銀行の多くは上場企業なので、この方法が使えるかもしれない[25]が、政府が大株主として経営に介入することは、すべての生産手段を国有化して、直接企業を経営する共産主義国家とやっていることに本質的な違いがないので、好ましいことではない。M&Aは、当事者の民間企業が自発的に行う場合でも、失敗することが少なくない。業界事情に詳しくない政治家や官僚が介入して官製M&Aを行えば、さらに失敗する確率が高くなる。2012年4月1日に官民ファンドの産業革新機構がソニーと東芝と日立のディスプレイ部門を統合して設立させた株式会社ジャパンディスプレイ(JDI)が、政府から4千億円超の支援を受けながら、7年連続で赤字なのは、代表的な失敗例である。

もしも、企業規模の大きさが原因で、生産性の向上が結果なら、国内のすべての企業を合併して超大企業を作れば、生産性は最高に高まるはずだ。実際にそれをするのが共産主義国家だが、共産主義国家の生産性は低い。ここからもわかるとおり、企業規模と生産性との相関性の因果解釈は、逆に行うべきだ。すなわち、市場経済では、生産性が高い企業は、生産性が低くて退場するライバル企業から顧客や人材や投資資金などを奪って規模を大きくすることができると考えるべきである。

アトキンソンも、2019年の著作では、「ただ単に規模が大きければ生産性が高まるのではなく、生産性を追求することによって、結果としてある程度の規模が必要とされる[26]」というように解釈を変えている。因果関係をそう解釈するのなら、政策手段は、企業統合の促進ではなくて、企業の生産性向上の促進でなければならない。そしてそのためには、政府はジャパンディスプレイ設立とは逆のことをしなければならない。すなわち、雇用維持という名目のもと生産性の低い企業を延命させるのではなくて、退場を促すことである。

現在の日本では、中小企業が全企業数の99.7%を、また全雇用の三分の二以上を占め、その中でも従業員が5名以下の小規模企業が全企業数の9割弱を、また全雇用の四分の一を占めている[27]。日本でここまで中小企業のウェイトが高くなった背景には、「1964年に予定されていたIMF8条国への移行による貿易自由化やOECD加盟による資本自由化に対して、激化する国際競争への対応を迫られるなか、大企業に比べ生産性の低い中小企業の生産性の向上が求められた[28]」結果、1963年に施行された中小企業基本法がある。アトキンソンは、翌年以降の保護主義的な経済政策の体制を「1964年体制」と名付けている。

当時の日本では、資本が自由化されれば外資に乗っ取られるかもしれないという脅威論が唱えられ、護送船団方式など「小さな企業」を守るシステムが続々と整備されました。つまり、1964年というのは、日本を「低生産性・低所得の国」にした「非効率な産業構造」が産声を上げたタイミングなのです。

[…]

「乗っ取り」や「植民地化」という言葉にヒステリックに反応するうち、やがて財閥系や大手銀行系が手を取り合い、買収防止策として企業同士の持ち合いも含めた安定株式比率を高めていきます。1973年度末の法人持株比率はなんと66.9%にも達しました。この「守り」に特化した閉鎖的な経済活動が、護送船団方式や、仲間内で根回しして経営に文句を言わせない「しゃんしゃん株主総会」などを定着させて、日本企業のガバナンスを著しく低下させていったことに、異論を挟む方はいらっしゃらないのではないでしょうか。[29]

これには異論はない。安い農産物の輸入品から日本の農家を守ろうとした結果、日本の農業が衰退したのと同じことである。もっとも、農業の場合は、食料安全保障のためという大義名分はあったが、中小企業は必ずしも生活必需品だけを生産しているのではない。アトキンソンがさらに問うべきだったのは、なぜ日本政府はここまで自国企業を外資から守ろうとしたのかという問題である。そこには日本ならではの事情がある。日本では、企業は、たんなる利潤追求の組織ではなくて、国に代わって国民に雇用、医療、年金を保障する組織だから、それを理解しない外資が経営に参入してもらっては困るということだ。

「ゆりかごから墓場まで」国民の福祉の面倒を見る国家を福祉国家と言う。それになぞらえて言うなら、「入社式から墓場まで」社員の福祉の面倒を見る日本企業は、福祉企業といったところだ。「日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか」でも指摘したとおり、日本は大正時代の後期からフォーディズムを取り入れ、その日本的変容である日本的経営を始めた。戦後もフォーディズムが継続され、国家権力は、個人を直接支配することなく、企業などの中間組織を媒介して支配した。会社は社員にとって運命共同体的な中間組織で、国家は雇用と福祉の保障を中間組織としての企業に任せている。労働組合が、欧米のように産業別ではなくて、企業別で結成されているのもそのためである。労働者が企業から企業へと転職することを標準的なケースとして想定していないのである。

企業を運命共同体にしてしまうと、政府は個人を守るためには、企業ごと守らなければならなくなる。本来市場原理により淘汰されるべき生産性の低い企業を政府が税制上の優遇措置、補助金、規制で保護して延命させると、国全体の生産性が低下する。生産性を高めるために必要なことは、中間組織媒介型社会保障をやめることである。政府が個人をマイナンバーで直接管理し、負の所得税など生存権を保障するセーフティ・ネットを提供すれば、企業が潰れようが、外資に買収されようが、どうなろうがかまわないということになる。雇用を守るという名目で生産性の低いゾンビ企業の延命を政府がやめるなら、イノベーションが進み、生産性が向上し、税収も増え、十分なセーフティ・ネットを提供する財源が得られる。

アトキンソンは、こうした考えには否定的だ。

日本の問題は、「淘汰されるべき企業が淘汰されない」ことではありません。生まれてくる企業が「成長しない」ことこそが大問題です。データを見ると、2012から2016年の間、小規模事業者から中堅企業に成長したのは、たったの7.2万社でした。[30]

こう言って、「中堅企業への支援策を拡充しながら最低賃金を引き上げ[31]」ることで、労働者を小規模事業者から中堅企業への移動を促すことを提案している。最低賃金の引き上げが有効な政策手段となるかどうかは、次の節で論じることにしよう。

2.2. 最低賃金の引き上げ

最低賃金制度とは、国が法律に基づき労働者の賃金の最低限度を定め、使用者にその最低賃金額以上の賃金を支払わせる制度である。最低賃金額以上を支払うことを義務付ける一方で、雇用は義務ではないことから、最低賃金の引き上げは失業者を増やすという批判がある。しかし、アトキンソンは、2020年の記事「最低賃金『引上げ反対派』が知らない世界の常識」で、2017年に発表されたメタ分析「全国最低賃金の雇用への影響」を援用して、海外の専門家の間では、「最低賃金の引き上げは雇用全体には影響を与えない」がコンセンサスだと「断言」している[32]

私はこのメタ分析を読んだが、この論文は、普遍的に見えるタイトルとは裏腹に、英国が行った最低賃金引き上げに関する英語論文にメタ分析の対象を限定しており[33]、これでもって「世界の常識」というのは無理がある。最低賃金が先進十五カ国の雇用に与える影響を吟味した55本の実証研究のメタ分析(2010年)[34]によると、影響は国によって異なる。中でも、雇用保護の規制が厳しい国では、最低賃金が、短期的にはともかく、長期的には雇用にネガティブな影響を与えるという指摘は注目に値する。日本は、解雇規制が厳しいので、これは注意するべき傾向である。

もとより、たとえ英国一国でも成功事例があるのなら、それを参考にするべきである。英国の最低賃金の年平均引き上げ率は4.17%で、2000年6月に3.6ポンドであったメインレートが2018年4月には7.83ポンドに引き上げられた[35]。それだけ引き上げて、失業率が増加しなかったのなら、成功していると思うかもしれない。しかし、アトキンソンは、生産性を高めるための方法として最低賃金の引き上げを提案しているのであるから、最低賃金引上げが本当に生産性を向上させたかどうかを検証しなければ、成功したかどうかの結論は出ない。アトキンソンの主張を厳密に裏付けるには、最低賃金引き上げを行った英国とそうではない並行宇宙における英国を比較すればよいのだが、私たちは、並行宇宙における英国については何も知らない。そこで、次善の策として、最低賃金制度を始める前と後との生産性の上昇率を比較することにしよう。

英国には、二十世紀の初頭から最低賃金の制度があったが、1979年に「小さな政府」を理念に掲げて首相になった保守党のマーガレット・サッチャーは、賃金審議会の権限を大幅に制限して、制度を骨抜きにした。そして、1990年に保守党政権を後継したジョン・メージャー首相は、1993年に制度を全廃にした。1997年に保守党から労働党への政権交代が起き、1999年に、トニー・ブレア政権の下、最低賃金制度が復活した。2010年に労働党から保守党への政権交代が起きたが、最低賃金制度は今も継続されている。

以上の英国の歴史をふまえた上で、以下のグラフを見られたい。赤色の点線は、インフレの影響を取り除いた英国の生産性(一人当たり実質GDP)の年間増加率で、実線はそのトレンド線である。青色の点線と実線は、世界全体の値で、これをベンチマークとすると、最低賃金制度がなかった時、英国の生産性の上昇率はアウトパフォームしていたが、1999年に制度を復活させて以降、アンダーパフォームしていることがわかる。点線を比べるのが面倒な人はトレンド線を比較してほしい。

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1961年から2019年にかけての英国と世界の生産性の増加率。赤色の点線と実線は、英国の一人当たり実質GDPの年間増加率とその二次近似曲線。青色の点線と実線は、世界全体の値。世界銀行によるデータ[36]を基に作成。画像クリックで拡大可能。

もちろん生産性はいろいろな要因で動くので、これをもって、最低賃金制度が生産性を低下させたと言うつもりはない。しかし、少なくとも、最低賃金の引上げが生産性を改善するという結論をこのデータから導くことはできない。

では、生産性を改善する上で必要なことは何か。このグラフで、80年代と90年代において英国のパフォーマンスが世界を上回っていることに注目したい。英国経済は、サッチャーが英国病を克服したことで復活したとよく言われるが、このグラフはそれを裏付けている。他方で、サッチャー路線の軌道修正を行ったトニー・ブレアの「第三の道」は、生産性の改善にはつながらなかったと言えそうだ。

実は、アトキンソンもサッチャーの改革を称賛している。

1979年、私がまだ中学生だった頃、サッチャー首相がテレビのインタビューでこのような内容のことを語りました。

「みんながなにも反発せずに、しかたがないと言いながら、この国が衰退していくのを見るのは悔しい!産業革命、民主主義、帝国時代などで輝いたこの国が世界からバカにされるのは悔しい!」

当時、戦争が終わってから、イギリスは経済のさまざまな分野でイタリア、フランス、ドイツや日本に大きく抜かれました。イギリスには過去の栄光以外になにもない、あとは沈んでいくだけだ、などと厳しい意見も聞かれ、世界からは「イギリス病」などと呼ばれ、衰退していく国家の見本のように語られていました。

あの時代、まさか今のイギリスのように「欧州第2位」の経済に復活できるとは、ほとんどのイギリス人をはじめ、世界の誰も思っていませんでした。それほどサッチャー首相が断行した改革はすごかったのです。[37]

アトキンソンは、今の日本をサッチャー以前の英国と同じと考えている。それなら、今の日本に必要なことは、最低賃金の引き上げではなくて、サッチャリズムではないのか。英国は、サッチャリズムにより生産性を改善し、その結果最低賃金の引き上げをすることができたのであって、この因果関係を逆に解釈するべきではない。

そもそも、法定最低賃金制度の導入を提案することは、アトキンソンの以下のような人口経済学的予測と矛盾している。

これから日本人労働者が減少すると、労働市場の需給は今よりもずっとタイトになります。労働力不足が顕著になると、企業間で労働者の奪い合いが起きるはずです。同時に労働者の立場が強くなり、彼らは給料と労働環境のいいところを率先して選ぶようになります。

そのため、付加価値が高く、労働者により高い給与の出せる企業が絶対的に有利になります。付加価値が低く、給与水準の低い、生産性の低い企業からは人が消えることでしょう。不当に低価格の商品をつくっている企業は、雇用が確保できなくなるので、消える運命をたざることになります。[38]

法的強制力を持たせて最低賃金を引き上げろということは、さもなくば賃金は上がらないということを前提としている。1995年以降、日本の生産年齢人口は減り続けているのだから、アトキンソンの人口経済学が正しいなら、政府が何もしなくても、賃金は上昇するはずだが、実際は低迷している。この矛盾に気が付いたからなのかどうかわからないが、最近のアトキンソンは労働市場におけるモノプソニー(monopsony)を主張するようになった。モノプソニーとは買い手独占という意味の経済学用語で、最低賃金制度を正当化する時にしばしば根拠として持ち出される。アトキンソンによれば、最低賃金引上げによるモノプソニーの弊害是正は女性経済参加度の向上にも資するということなので、この話題は次の節で取り上げることにしよう。

2.3. 女性の経済参加度の向上

ここで謂う所の「女性の経済参加度」とは、たんに女性が働いているだけでなく、男女間に生産性や所得の格差が小さいことを示す指標である。女性の経済参加度と生産性との相関係数は、0.77と高い[39]。日本は欧米とは異なり、同一労働・同一賃金ではなく、同じ仕事をしても女性の方が賃金が安くなる傾向がある。それ以前に、男性と同じ仕事をさせてもらえないという傾向も依然としてある。その結果、女性の所得は男性の半分強になっており、こうした女性の経済参加度の低さが日本の生産性が低い原因の一つと考えられる。ではなぜ女性の賃金は低くなるのか。アトキンソンによれば、それはモノプソニーが原因である。

「モノプソニー」の力は、特定の労働者層に特に強く働きます。例えば、低学歴、女性、高齢者、外国人労働者、移動が難しい人など、一般的に労働市場では弱者と考えられている人たちです。

特に、子どもを持った女性に「モノプソニー」の力が最も強く働いていることが、世界中の研究で確認されています。小さな子どもがいる女性は、現実として転職が難しい状況にあります。企業はその「足元を見る」ことができるため、賃金が相対的に低く抑えられるのです。

実は、男女の同一労働・同一賃金が実現しない原因のほとんどが「モノプソニー」だと説明されています。これもビッグデータによって確認されています。女性労働者の「労働供給の賃金弾力性」が年齢とともに下がっていくことが、その証拠です。[40]

海外ではそうなのかもしれないが、日本で女性の賃金が低い理由の説明としては、違和感を持たざるを得ない。子どもを持った女性は、移動の自由が制限されるのは、日本でも同じことである。しかし、アトキンソンも認めるように、日本には中小零細企業の数が非常に多い。よほどの過疎地にでも住んでいない限り、女性は、通勤可能な範囲内に複数の働き口を見つけることができる。働く場所が一つしかなくて、買い手独占になっているというのは稀なケースである。

おそらく、アトキンソンは、モノプソニーを文字通りの意味ではなくて、まるで買い手独占が成立しているかのように雇用主が被雇用者よりも強い立場にあるという意味で使っているのだろう(さもなくば、企業の数を減らすというアトキンソンの提案は、モノプソニーを強めることになるから、矛盾ということになる)。もしも雇用主と被雇用者が対等な立場で相互に自由に選択できるなら、市場原理に任せればよいということになるが、そうではないなら、政府が弱い立場にある人に有利になるように労働市場に介入しなければならないということになる。それで、アトキンソンは最低賃金の引き上げを主張しているということだ。

女性たちに本当に選択の自由がないかどうかは措くとして、日本において最低賃金で働いている労働者の大半が女性であるのは事実だ。それで、アトキンソンは、最低賃金を時給1300円にまで高めれば、状況は劇的に変わり、女性活躍が実現可能になると主張する[41]。もしも最低賃金を時給1300円にすれば、女性労働者を低賃金で雇っていた零細企業の廃業や統合が進む一方、大企業や中堅企業は、ライバルが減ったことを好機に、雇用を増やし、その結果、大企業や中堅企業に転職した女性は所得を増やすことができるというのが、アトキンソンが思い描くシナリオである。

アトキンソンは、2015年に全国一律の最低賃金を導入したドイツでそうした動きが起きたと言う[42]。ドイツの最低賃金は、カイツ指数(Kaitz Index:賃金の中央値に対する最低賃金の比率)が英国よりも高いので、英国以上に実体経済に影響を及ぼしている。アトキンソンが言うような良い影響だけでなく、労働時間の短縮による人件費の抑制[43]や企業利益の圧迫や価格への転嫁[44]などが報告されている。最近導入されたばかりということもあって、経済全体にとって良かったかどうかを判断するのはまだ時期尚早である。よく知られているように、ドイツでは、ゲアハルト・シュレーダー首相がサッチャー改革と同様の「新自由主義的」な改革(アゲンダ2010)を行ったため、企業側に賃上げの余地があった。つまり、生産性が向上したから最低賃金を引き上げることができたのであって、この因果関係を逆に解釈するべきではない。

ドイツの話は措くとして、日本でも最低賃金を大幅に引き上げれば、零細企業の廃業や統合が進む一方、零細企業で働いていた低賃金労働者が、男女を問わず大企業や中堅企業に転職して、所得を増やすことができるかと言えば、答えはおそらく否だろう。大企業や中堅企業が、零細企業で働いていた低賃金労働者を、正社員と同じ待遇で中途採用するということは、ありそうにない。仮に採用するとしても、派遣社員として、正社員より格下の待遇で雇用するというのがありそうなシナリオだ。だから、生産性の向上はあまり期待できない。日本には、日本的経営と呼ばれる独特の雇用慣行があり、同一労働・同一賃金の原則に基づく転職が難しいという事情がある。日本の女性の所得が低いのも、日本的経営に原因があるのだが、アトキンソンはそのメカニズムを十分理解していない。

アトキンソンは、日本特殊論を否定し、欧米で成功した(と彼が信じている)政策を日本にもそのまま適用しようとする。たしかに経済学が科学であろうとするなら、その法則は普遍妥当的でなければならないが、だからといって、法則が適用される対象までが均質的に同じでなければならないということはない。それは自然科学でも同じことだ。日本の特殊事情である日本的経営の弊害を十分認識していないと、日本の生産性を改善する抜本的な手段を見つけることができないというのが私の考えである。そこで、次の章では、日本の生産性向上に根本的に必要と私が考える政策提案をしたい。

3. 日本の生産性向上には何が必要なのか

3.1. 労働市場の流動化

私は、2015年に書いた「日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか」での結論は、日本の労働生産性を高めるには、日本版フォーディズムである日本的経営から脱却することが必要というもので、その考えは今でも変わらない。しかし、アトキンソンは、とりわけ解雇の自由化には否定的である。解雇規制と生産性の相関係数は、先進国の場合、0.32とかなり低いからだ[45]。たしかに、解雇規制が厳しくても、労働者がより良い待遇を求めて自発的に転職もしくは起業できるなら、労働市場はある程度流動的になるだろうし、人材の適材適所化が進むだろう。ところが、日本には、たんに企業が労働者を解雇することを妨げる仕組みだけでなく、労働者が他の企業に転職するもしくは起業することを妨げる仕組みがある。それは、日本的経営を特徴付けるものとして、しばしば終身雇用とペアで列挙されるもう一つの特徴、年功序列である。

年功序列とは、個人の能力、実績とは関係なく、勤続年数や年齢に応じて役職や賃金を上昇させる人事制度である。最近は見直しが進んでいるが、かつての昭和の職場では、後輩は先輩よりも先に退社しないといった奇妙な慣習があった。それで、仕事の量はむしろ中高年よりも若手の方が多かったが、給与は前者の方が不釣り合いに高かった。だから、以下の概念図に示されるように、仕事の量と報酬の高さの間にアンバランスが生まれた。

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日本の年功序列の概念図。赤色は仕事の量(会社への貢献)で、青色は報酬(給料)の高さ。

新入社員は、入社後、管理職から安い給料で扱き使われるが、管理職に昇進すると、若手を搾取する側に回れるので、搾取された分を取り戻すことができる。そして、退社時には、高額の退職金を受け取り、老後は企業年金で豊かな老後を送ることができる。このように、終身雇用の年功序列システムにおいては、同じ会社を勤め上げることで大きな報酬を手にすることができる一方で、途中で離職すると、搾取された分を取り返すことができないので、大きな損害を被る。それゆえ、年功序列システムは転職や独立の妨げになるということである。

年功序列システム以外にも、転職や独立を妨害する制度的要因がある。日本の労働組合は企業別なので、労働組合は転職者の権利までは守ってくれない。また企業が社会保障を代行しているので、独立のリスクが大きい。アトキンソンは、「なぜ日本では労働者がおとなしく働き続けるのか、正直言って理解に苦しみます[46]」と言っているが、それは彼が日本の労働者の選択の自由を奪っている特殊日本的要因を理解していないからだ。

アトキンソンは、海外の事例から「低学歴、女性、高齢者、外国人労働者、移動が難しい人[39]」がモノプソニーの犠牲者で、転職が困難と言っているが、日本では、これとは正反対の《高学歴、男性、働き盛り、日本人労働者、移動(単身赴任)が容易な人》は、大企業の正社員になっている人が多く、日本的経営の特殊性ゆえに、転職が困難である。海外では、経験を積んだ中年労働者は、そうではない若年労働者よりも転職が容易であることが普通であるのに対して、日本では、むしろ中年の方が新卒よりも就職できない。アトキンソンは、「企業規模が大きくなれば分業ができますので、社員の専門性が上がって、一人ひとりが自分のスキルを最大限に発揮できるようになります[47]」と言うが、これは海外での話で、日本の大企業の社員は、様々な部署に配置転換されるので、年をとっても専門性が身につかず、中年で退職しても、転職市場での価値は低い。こうした特殊日本的要因が人的資源の最適化を妨げている以上、海外のデータを根拠に解雇規制の緩和を否定しても、説得力がないのである。

男性と比べると、女性は転職のハードルが低い。企業も、女性は、結婚、出産、子育てを機に離職する可能性が高いことを計算に入れて、処遇している。企業が終身雇用・年功序列の対象にしているのは、会社に一生を捧げることができる男性正社員である。実際には、終身雇用・年功序列を維持するためのコストは大きく、そのしわ寄せが女性や男性非正規社員に及んでいる。日本では、同一労働・同一賃金にならない所以である。

終身雇用・年功序列の非合理なコストのわかりやすい事例は、窓際族と呼ばれる社内失業者である。アトキンソンは 「『窓際族』がいても生産性には影響しない[48]」と言っているが、これは、本人も言うように、窓際族が会社にとって無害で、かつ窓際族に機会損失がないと仮定した場合の話である。

本当は付加価値を生み出せるのに、経営があまりにも下手で、有能なスタッフを適材適所に配置できず、宝の持ち腐れにしてしまっていると仮定すれば、たしかに窓際族は問題です。もしこんなことが横行しているとすれば、日本の生産性を下げる一因になっているのは聞違いありません。

しかし、この場合でも批判されるべきは、当の窓際族の人たちではなく、その人材を活かせていない経営者であることは明らかです。特に人材が足りなくなるこれからは、十分に付加価値を生み出せていない人にも、付加価値の生み出せる活躍の場を与えて、活用するべきでしよう[49]

人材も会社も千差万別なのだから、相性が悪いこともある。もしもスティーブ・ジョブズのような人間がIBMに入社したなら、周囲と軋轢を生んで孤立したことだろう。そういう場合、社内で有効活用するよりも、会社から外に出して起業させる方が、本人にとっても、社会にとっても好ましいことなのだが、日本では独立がリスキーで難しい。

かつて、窓際に座っているだけで年収2000万円をもらっているおじさんたちが “Windows 2000" などと呼ばれた時代があったが、そうしたおじさんたちは、Windows 2000 と同様の過去の遺物にしなければならない。2020年5月にエン・ジャパン株式会社が行った調査によると、社内失業者もしくはその予備軍がいると回答した企業は、三割程度いる[50]。但し、社内失業者は、必ずしも窓際族のようなわかりやすい形で存在しない。これは良い傾向とは言えない。「働かないおじさん」は無害だが、給料をもらう口実作りのために「働くふりをするおじさん」は、やたらと会議を開いて同僚や部下の時間を奪うとか、管理職のIT化を妨害するとか、有害な影響を及ぼしうるからだ。ハンマーシュタイン=エクヴォルトではないが、勤勉な無能は怠惰な無能よりも厄介なのである。

企業が必要のない人材を解雇しても、そのすべてが失業者になるとは限らない。ある企業にとって無能な働き手が、他の環境では能力を発揮することはありうる。どこでも能力を発揮できない人は、すでに提案した負の所得税で保護するしかない。実は、政府が個人に負の所得税というセーフティ・ネットを直接提供すると、それが最低賃金と同じような機能を発揮する。生存権を保障された個人には、安すぎる賃金を拒否する余裕があるからだ。同じような機能を果たすなら、最低賃金を規定した法律があってもよいと思うかもしれない。しかし、法律を制定すると、行政はそれが守られているかどうかを監視したり、調査したりしなければならない。つまり、行政の仕事が増え、税金が増える。だから、私は反対である。アトキンソンは、モノプソニーで労働市場が機能しないことを前提に最低賃金の引上げを提案しているが、私としては、労働市場を機能させることによる解決策を優先したい。

日本の労働市場を機能させるためには、年功序列をやめさせなければいけないのだが、これはネズミ講(無限連鎖講)の破綻と同じ種類の悲劇をもたらすから容易ではない。ネズミ講が破綻すると、会員は、上位の会員に支払った以上の金を下位の会員から取れなくなり、損害を被る。年功序列システムという賃金後払い制度もネズミ講と同じ「非対称的贈与システム」で、廃止すると、上の世代に搾取されたのに、下の世代を搾取できないというババ抜き世代が生まれる。ここでもう一度、年功序列の概念図を見られたい。最大の被害を被るのは、この図で転換期と記したところにいる世代である。

これまでも企業経営者は年功序列を廃止しようとしたが、団塊の世代やバブル世代といった厚い層の世代が転換期にいる時は、社内の反対が強くて、なかなか実行できなかった。しかし、今経営者たちにチャンスの時期が到来している。就職氷河期世代という薄い層の世代が転換期に差し掛かっているのだ。どこの会社でも、新卒入社時期からずっと勤務している就職氷河期世代の社員は少ないはずで、この世代を犠牲者にすれば(もう既にそうなっているが)、比較的社内の反対が弱いので、実行が容易になる。近年、年功序列を見直す企業が増えているのは、グローバリズムが進む中、安い給料では優秀な若手を採用できないという理由以外に、こうした社内の実情があるからなのだろう。

もとより、特定の世代に痛みが集中することは、好ましいことではない。そこで、未払い分を取り返す水準の補償金を定めた解雇の金銭解決制度を設けて移行措置とするべきだ。比較的恵まれた世代であるゆとり世代が転換期になるころには補償金を減額し、最終的には、コストなしで解雇できるようにする。そうすれば、もはや誰も終身雇用・年功序列という幻想を抱かなくなるだろう。解雇が容易ということは同時に転職も容易ということだから、若手は、外資系企業並みの初任給の高さを日本企業にも求める一方で、入社後も転職に有利になる専門的な能力を身につけようとするだろう。

若手労働者はそれでよいとしても、専門的能力を身につけないまま会社から追い出される中高年労働者はどうすればよいのだろうか。実は、日本には、そうした人たちを受け入れる働き口がある。後継者不足に悩む中小零細企業である。様々な部署に配置転換された中高年労働者は、労働者としては専門的能力はないが、経営者としては過去の経験を生かすことができるかもしれない。経営者には、会社、顧客、取引先全体を見渡す能力が要求されるからだ。ゼロから起業するのもよいが、既存の企業の経営者の役を引き継ぐ方がリスクは小さい。アトキンソンは、後継者不足問題は解消せずに、政府主導で統合を促進するべきだという立場であるが、それでよいのかどうかを次の節で考えることにしたい。

3.2. 保護主義との決別

アトキンソンが言うように、日本の中小零細企業は数が多すぎる。しかし、それよりもっと深刻な問題は、企業の新陳代謝が低調であることだ。以下の日本の開業率と廃業率を他の主要先進国と比較したグラフを見られたい。中小零細企業のウェイトが大きいのなら、どちらも高くてもよさそうなものだが、実際には、日本は最下位である。

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2008年から2018年にかけての日米英独仏における開業率と廃業率の推移。Source: 中小企業庁『中小企業白書2020年版第一部第三章 中小企業・小規模事業者の新陳代謝. 第1-3-9図. 令和2年4月24日.

アトキンソンは、小さな企業に価値を認めていないようだが、小さな企業には大企業にはできない社会的役割がある。それは、クレイトン・クリステンセンが謂う所の「破壊的イノベーション」である。世界的大企業になったGAFAMは、いずれも創業が1970年代以降の若い企業で、小さなスタートアップ企業から事業を始めたが、IBMをはじめとする既存の大企業を凌駕し、2020年現在、世界の時価総額ランキング上位に食い込んでいる。日本企業も、戦後、80年代までは世界に対して破壊的イノベーションを仕掛けるチャレンジャーであった。終戦後、GHQが財閥を解体し、戦争に協力した経済界の大物1500人を経営陣から追放したおかげで、経営陣の世代交代が進み、競争的な環境の中で新興企業も生まれた。その中には、1945年に盛田昭夫と井深大が創業したソニーもあった。

ソニーは、80年代まで破壊的イノベーションを続け、90年代にも持続的イノベーションを行ったが、本格的なインターネット時代に適応できずに、21世紀になって没落した。ウォークマンを生み出したソニーが、iPodのようなオーディオプレーヤーを作れなかったのは、典型的な「イノベーターのジレンマ」である。ソニーは、自社が作り出したCDやMDなどのレガシーを捨てることができなかった。また、ソニー・ミュージックという音楽コンテンツ部門を抱え込んでいたため、著作権上の問題が起きそうなネット販売に消極的であった。成功した企業ほど、イノベーションによる「共喰い」を恐れて躊躇し、そうこうしているうちに失うものが何もないチャレンジャーが「抜け駆け」を行い、既得権益にしがみついている古い企業を追い越す[51]。iPodで「抜け駆け」に成功したアップルは、そのモバイル端末をiPhoneへと進化させ、日本企業からエレクトロニクスの主役を奪った。

日本の大企業の凋落を嘆く日本人が多いが、大企業が破壊的イノベーションで没落するのは宿命のようなものである。本当に嘆かなければいけないことは、日本の大企業が斜陽化していることではなくて、代わって抬頭する破壊的イノベーションの担い手が日本からほとんど生まれないことだ。これは、本来その役割を果たすべき中小零細企業が日本ではそうしていないことによる。

中小零細のスタートアップ企業は、破壊的イノベーションに成功して大企業になるか、失敗して廃業するかのどちらかであるのが通常だが、日本の中小零細企業は、開業率も廃業率も低いことからもわかるとおり、どちらの道も選ぶことなく、政府による保護に甘えて、生産性の低いビジネスを十年一日のごとく延々と続けている。この中小零細企業の非本来的な状態を変えるために必要なことは、中小零細企業に対する優遇策を撤廃すること、政府が産業振興策を放棄することである。そうすれば、本当に必要な中小零細企業だけが生き残る。

現在の日本の中小零細企業は、法人税率の軽減など、いくつか税務面で優遇措置を受けており、本当は規模を拡大する能力があるにもかかわらず、あえて規模の拡大をしないところが少なくない。これは、専業主婦を税制と社会保障性の両面で保護した結果、女性の経済参加度が低くなったのとよく似ている。保護主義の壁を撤去することで、優秀な中小零細企業の大企業化や優秀な女性の本格的な社会進出を促すべきである。

3.3. 少子化対策の放棄

人間にとって子供を産むという行為は、企業にとっての設備投資と同じで、費用対効果を勘案して行われる。政府が補助金を出せば、見かけ上の費用は減るので、費用対効果の低い設備投資が行われるだろうし、出産についても同じことが言える。見かけ上の費用が減っても、実際の費用が減ることはないので、どちらも、政府が民間の賢明な投資を妨害していることに変わりはなく、長期的に見て有害である。

アトキンソンは、ことあるごとに少子化がもたらす影響の深刻さを強調し、「子どもが12歳になるまでは徹底的に優遇するなど、子どもをつくることが『お得』だと思われる制度を検討すべき[52]」と提案しているが、これは、子供の数が増えることが経済成長をもたらすという考えに基づいている。実際、彼は「日本が成し遂げた戦後の大きな成長は、人口の激増とそれに伴う内需の拡大が主要因だった[53]」と過去を分析している。人口が増えたことが原因で、経済成長はその結果ということだ。しかし、ここでもまた因果解釈が逆になっているのではないか。

日本の人口は、江戸時代、二千万人から三千万人程度で、増加率は極めて低かった。明治時代から昭和時代にかけて人口が爆発的に増えたのは、開国し、産業を近代化して、生産力を増大させたからであって、理由もなく人口が増え、その結果日本の経済が成長したのではない。アトキンソンの母国である英国でも、18世紀に農業革命と産業革命が起き、生産力の向上により人口爆発が起きた。人口爆発が起きたから経済が成長したという逆の因果関係も副次的にはあったが、一次的な因果関係ではない。二十世紀のアフリカ大陸を見ればわかるとおり、外的な援助で人口が爆発的に増えても、それが爆発的な経済成長をもたらすことはない。

生産力の増大が人口爆発(指数関数的増加)をもたらしたとするなら、なぜ経済成長を続ける先進国で少子化が起きているのかと疑問に思う向きもあろう。以下のグラフを見ても分かるとおり、世界の人口増加率は、1962年に2.1%に達した後、低下傾向にあり、今後世界の人口は頭打ちになると予想されている。

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1750-2015年の世界の人口と人口増加率。2015年以降は国連(2015年改訂版)による中位の予想[54]

日本の人口増加率もほぼ同じ頃にピークアウトしている。一般的に言って、人口の増加曲線は、資源と環境に制約がある場合、マルサスが想定したような指数関数曲線とはならずに、シグモイド曲線(ロジスティック曲線)になることが知られている。60年代には公害問題が深刻になり、70年代には石油危機が起きて、世界的にスタグフレーションとなった。このころを境に、資本集約型工業社会から知識集約型情報社会へのパラダイム転換が起き、人的資源も、量より質の時代になった。求められる教育水準が上昇するにつれて、子育てのコストが上昇し、それが少子化につながった。高学歴化による晩婚化もその傾向を促している。

この傾向は、今後も続くと思われる。産業革命で生産力が高まった時代、より多くの人口を養う能力が高まった一方で、情報処理の仕事は人間が行うしかなかったので、より多くの労働者が必要とされた。より多くの労働者を必要としながらも、養う能力がなかった前近代の労働集約型農業社会が、多産多死で、人口増加が抑制されていたのとは異なり、近代の資本集約型工業社会が多産少死で、人口が爆発的に増えたのはこのためである。知識集約型情報社会になると、情報処理という人間に残された最後の労働までが自動化と機械化の対象になる。だから、子供の数を減らし、希少な教育資源を集中的に投じることで、高度な知的労働者を少数精鋭で生産するという現在の人口戦略は、決して間違っていない。

三つの時代における人口戦略
時代区分プレ近代近代ポスト近代
典型的産業による呼称農業社会工業社会情報社会
産業の重要資源による区別労働集約型産業資本集約型産業知識集約型産業
人口を増やす必要大きい大きい小さい
人口を増やす能力小さい大きい大きい
人口動態多産多死多産少死少産少死
人口増加率低い高い低い

戦争における人口の多さの重要度も、時代とともに低下している。私は、一人当たりのGDPよりもGDPの総額が重要になるのは、近代的な総力戦を行う時だと言ったが、ポスト近代の現代では、他の産業と同様に、一人の優秀なプログラマーは、百人の凡人以上の戦力になりうる。

アトキンソンは、少子化以上に高齢化を深刻な問題と考えている。技術革新により、高齢者が働き続けることが今より容易になることを認めた上で、「それでも高齢者や90歳を超える超高齢者が、現役世代と同じように働き、同レベルの生産性を発揮できると考えるのには無理があります[55]」と言っている。たしかに、これまでの常識でなら、その通りである。しかし、再生医療によりこの常識が覆されそうだ。

再生医療による高齢者の若返りは遠い未来の夢物語ではなくなってきている。2020年6月から歯髄幹細胞を用いた歯髄再生治療が実際に開始された[56]。小さな一歩だが、今後、再生医療の実用化は確実に進むだろう。従来の医療は、老化に対して対処療法しか提供できなかったが、再生医療は、老化を病気として治療することを目指している。それは、人生百年どころか人生無限年時代の幕開けを意味している。無限といっても、寝たきりの状態が無限に続くのではなくて、現役の時代が無限に伸びるのだから、アトキンソンのように悲観することはない。

新卒一括採用、終身雇用、年功序列、定年退職、年金生活という人生五十年時代にできた仕組みは、人生無限年時代に向けて解体し、エイジレスかつエンドレスに働き、能力と努力に応じて報われる社会を作らなければならない。工業社会時代に適応して形成されたフォーディズムと決別し、情報社会時代にふさわしいポスト・フォーディズムの自由な労働市場を作ることが、日本の生産性を高める上で必要なことである。

4. 参照情報

  1. 日刊工業新聞社.「菅首相はアトキンソン信者、中小企業に再編圧力」『ニュースイッチ』2020年09月21日(日刊工業新聞2020年9月17日の記事から抜粋).
  2. 相原亮「「成長戦略会議」議員にアトキンソン氏 首相のブレーン」『朝日新聞』2020年10月13日 21時30分.
  3. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). 著者紹介.
  4. 中村陽子, デービッド・アトキンソン.「身勝手な日本人が、日本の国宝をダメにする」『東洋経済』2014年12月07日.
  5. 週刊東洋経済編集部.『爆熱!観光立国 週刊東洋経済 2019年9/7号』東洋経済新報社 (2019/9/2).
  6. デービッド・アトキンソン『世界一訪れたい日本のつくりかた―新・観光立国論【実践編】』東洋経済新報社 (2017/7/7). p. 270.
  7. 世界の一流ホテル50カ所新設 官房長官、財政投融資活用」『日本経済新聞』2019/12/7 16:23.
  8. デービッド・アトキンソン「政府「高級ホテルを50カ所」に反対する人の盲点」『東洋経済オンライン』2019/12/17 5:30.
  9. デービッド・アトキンソン『新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」』東洋経済新報社 (2015/6/18). p. 69.
  10. デービッド・アトキンソン『世界一訪れたい日本のつくりかた―新・観光立国論【実践編】』東洋経済新報社 (2017/7/7). p. 29.
  11. 観光立国論から生産性立国論へのターニングポイントになったのは、2016年12月に出版された『新・所得倍増論―潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋』である。
  12. 12.012.1デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 174.
  13. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 175.
  14. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 56.
  15. デービッド・アトキンソン『新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」』東洋経済新報社 (2015/6/18). p. 5.
  16. デービッド・アトキンソン『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』東洋経済新報社 (2019/1/11). p. 63-64.
  17. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 208.
  18. デービッド・アトキンソン「最低賃金アップで「生産性が向上する」仕組み」『東洋経済オンライン』2019/07/19 5:10.
  19. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 130.
  20. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 130-131.
  21. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 137.
  22. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 221.
  23. デービッド・アトキンソン『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』東洋経済新報社 (2019/1/11). p. 158.
  24. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 213.
  25. 2020年3月末現在、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀は、東証1部企業の8割にあたる約1830社で事実上の大株主となっている。座小田英史, 寺西和男「公的マネーが大株主、東証1部の8割 4年前から倍増」『朝日新聞』2020年10月23日. 但し、間接保有なので、直接株主として議決権を行使することはできない。それでも、規制当局が事実上の大株主でもあるなら、経営者は政府の方針により圧力を感じることだろう。
  26. デービッド・アトキンソン『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』東洋経済新報社 (2019/1/11). p. 127.
  27. 平成26年経済センサス‐基礎調査」総務省統計局. 平成27年11月30日.
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  30. デービッド・アトキンソン「人口減少の日本には「所得倍増計画」が不可欠だ」『東洋経済オンライン』2020/08/13 5:40.
  31. デービッド・アトキンソン「人口減少の日本には「所得倍増計画」が不可欠だ」『東洋経済オンライン』2020/08/13 5:40.
  32. デービッド・アトキンソン「最低賃金「引上げ反対派」が知らない世界の常識」『東洋経済オンライン』2020/07/30 5:40.
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  37. デービッド・アトキンソン「「1人あたり」は最低な日本経済の悲しい現実」『東洋経済オンライン』2016/12/09 6:00.
  38. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 208-209.
  39. 39.039.1デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 127.
  40. デービッド・アトキンソン「日本人の「給料安すぎ問題」はこの理論で解ける」『東洋経済オンライン』2020/06/11 5:30.
  41. デービッド・アトキンソン「女性活躍は「最低賃金引き上げ」で実現可能だ」『東洋経済オンライン』2018/04/05 6:00.
  42. デービッド・アトキンソン「コロナ不況でも「最低賃金引き上げ」は必要だ」『東洋経済オンライン』2020/03/20 6:00. 根拠として挙げられているのは、以下のレポートである。Dustmann, Christian, Attila Lindner, Uta Schönberg, Matthias Umkehrer, and Philipp vom Berge. “Reallocation Effects of the Minimum Wage.” CReAM Discussion Paper Series. Centre for Research and Analysis of Migration (CReAM), Department of Economics, University College London, February 2020.
  43. “Two years after the minimum wage introduction, the following conclusions can be drawn: while hourly wages increased for low-wage earners, some small negative employment effects are also identifiable. The effects on aspired goals, such as poverty and inequality reduction, have not materialized in the short run. Instead, a tendency to reduce working hours is found, which alleviates the desired positive impact on monthly income." ― Caliendo, Marco, Linda Wittbrodt, and Carsten Schröder. “The Causal Effects of the Minimum Wage Introduction in Germany – An Overview.” German Economic Review 20, no. 3 (August 1, 2019): 257–92.
  44. “Besides reductions in working hours or increases in work intensity, companies highly affected by the introduction of the minimum wage have used price increases and have had to accept profit reductions as a response to the new wage floor." ― Bruttel, Oliver. “The Effects of the New Statutory Minimum Wage in Germany: A First Assessment of the Evidence.” Journal for Labour Market Research 53, no. 1 (June 17, 2019): 10.
  45. デービッド・アトキンソン『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』東洋経済新報社 (2019/1/11). p. 291.
  46. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 193.
  47. デービッド・アトキンソン「「中小企業の改革」を進めないと国が滅びるワケ」『東洋経済オンライン』2019/09/20 5:10.
  48. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 78.
  49. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 80.
  50. HRプロ.「「社内失業者」は予備軍含め約3割の企業に存在。誰もが活躍する環境を作るために何をすればいいのか」2020/06/16.
  51. 「共喰い」と「抜け駆け」に関しては、以下の本を参照されたい:伊神満『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』日経BP (2018/5/24).
  52. デービッド・アトキンソン「女性活躍は「最低賃金引き上げ」で実現可能だ」『東洋経済オンライン』2018/04/05 6:00.
  53. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 22.
  54. Max Roser and Esteban Ortiz-Ospina (2018). “World Population Growth“. Published online at OurWorldInData.org. Original Resource: “World population until 2015 – Our World In Data series.” World population projection 2016 to 2100 is the UN Medium Variant from the 2015 revision published by the UN Population Division.” Licensed under CC-BY-SA.
  55. デービッド・アトキンソン『新・生産性立国論―人口減少で「経済の常識」が根本から変わった』東洋経済新報社 (2018/2/23). p. 39.
  56. エア・ウォーター株式会社, 株式会社 歯愛メディカル."「歯髄幹細胞を用いた再生医療」を世界で初めて実用化." 2020/06/26. 現在、RD歯科クリニックがこのサービスを提供している。