公務員人件費の見直し
日本の公務員の給料水準は、他の先進国と比べて高すぎる。公務員のようなローリスクな職業なら、ローリターンにするべきで、ハイリターンを求めるなら、ハイリスクな職業に挑戦するべきだ。ただし、公務員の給与水準は低ければ低いほどよいということはない。行政改革をする時、目標とするべきことは、たんなるコスト・カットであってはならず、コスト・パーフォーマンスの改善でなければいけない。[1]

1. 読者による問題提起
公務員の人件費が財政を圧迫しているという意見がいたるところで叫ばれています。そこで、無駄な税金を使わずに公務を遂行する方法を考えて行きます。皆さんの知恵を貸して下さいますようお願いします。
提案1.給与以外の支給(ボーナス、退職金、各種手当)を全て廃止する。
提案2.共済組合を廃止し、社会保険は国民のそれと統一する。
提案3.公務を行う資格があり就業を希望する者が自ら希望の給与額を提示して、その額の低い者から順に採用する。
いかがでしょうか。モチベーション持続のためには仕事の熟練度に応じた昇給も必要です。しかし、昇給の値が大きすぎると結局今と同じ状況になってしまうので、昇給の仕方については議論の余地があるかと思います。皆さんのご意見お待ちしてます。
たしかに、日本の国民の多くは、中央/地方を問わず、日本の公務員の人件費が民間のそれと比べて不当に高いと感じているし、彼らの特権的な待遇を廃止するべきだと考えています。2010年度予算編成のために民主党政権が導入した事業仕分けは、民主党の政策の中では例外的に評価されていたし、2010年7月の参議院議員選挙で、公務員改革を訴えたみんなの党が躍進し、2011年2月の名古屋市長選挙と3月の名古屋市議会議員選挙で、議員特権廃止を訴えた河村たかしと彼が率いる減税日本が圧勝した事実がこのことを裏付けています。

阪本さんの提案に関してですが、私は、提案2にあるような公務員の特権廃止には賛成です。しかしながら、公務員の給与水準は低ければ低いほどよいとは思っていません。私たちが市場で商品を買う時、「安ければ安いほど良い」というような買い方をしているでしょうか。例えば、食品を買うとき、値段も重要な判断材料ですが、判断材料はそれだけではなくて、安全性や栄養や味など、他の基準も考慮して、高価格な食品を買うことがしばしばあります。行政サービスという商品を購入する時も同じです。だから、行政改革をする時、目標とするべきことは、たんなるコスト・カットであってはならず、コスト・パーフォーマンスの改善でなければいけません。
阪本さんの提案3はユニークで、公務員の雇用契約に一般競争入札の原理を導入する案と解することができます。現在行われている一般競争入札は、公共事業のコストを低く抑える効果がある反面、低品質な事業のダンピングを招く可能性もあり、政府は、2005年に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」を制定し、価格以外の基準も重視するようになりました。公務員の雇用を一般競争入札制にする時も、行政サービスの質の低下を招かないようにすることが重要です。
では、そのためにはどうすればよいでしょうか。民間企業のように、成果報酬型の給与体系にしろという人もいるかもしれません。しかし、民間企業のように売り上げや収益といった明確な成果の基準がない役所のような上意下達の組織で成果報酬型の給与体系を導入しても、上司に媚びるイエスマンの部下ばかりが好待遇になるといった結果に終わる可能性があります。
民間セクターは公的セクターよりもコスト・パーフォーマンスが高いとよく言われますが、それは、民間企業には市場原理が働くのに対して、公的セクターはそうではないからだと私は思っています。だから、市場原理が機能していない限り、いくら成果報酬型の給与体系といった「民間の手法」を導入しても、成功しません。
阪本さんは、政府が行政サービスの独占的な供給者であるという現実を前提にして、その上で人件費削減という改善策を提案をされていますが、私は、その前提をも変えることで、たんに安いだけでなくて、国民/住民にとって満足度の高い行政サービスを提供することができる、より抜本的な改革案を提示したいと思います。その改革案とは、すなわち、行政サービスの独占的な供給者だった政府を、そこにおいて国民/住民が、行政サービスを提供しようとする複数の民間営利企業を選ぶことができるマーケットにしてしまうというものです。
もちろん、マーケットの場を提供することも行政サービスの一つですが、これにより、政府の仕事は劇的に減るので、公務員の数も少数になります。現代の株式市場において確認できるように、マーケット仲介の仕事の大半は、コンピュータがやってくれるから、政府直属の人間はあまり要りません。したがって、公務員の待遇をどうするかといったことはたいして重要な問題ではなくなります。
私は、「民主主義はどうあるべきか」で、ハイブリッド民主主義を提案しましたが、これとPFI(Private Finance Initiative)を組み合わせることで、政府を行政サービスを売買するマーケットにすることができます。話が抽象的だとわかりにくいので、警察を例にして説明しましょう。
警察は、治安という商品を生み出すサービス産業です。治安は、非排除性と非競合性を持った公共財であり、通常の市場経済では、売買が困難です。だから、従来、警察という仕事は政府が独占的に行ってきました。しかし、独占は腐敗とイノベーションの低下をもたらします。そこで、交番等のインフラはその自治体が所有することにして、その運用を民間の警備会社に委託することにしましょう。これがPFIの考えです。現在の警察も分割民営化して、民間警備会社にしてしまえばよいでしょう。
警備を依頼する地域住民は、ハイブリッド民主主義のシステムに基づき、それぞれ独自のサービスプランと料金を提示する複数の民間警備会社から一社を選定し、一定期間サービスを委託する契約を結び、対価として税金を支払います。金額だけなら、一番安いところを機械的に選ぶことができますが、サービス内容との兼ね合いとなると高度な判断が必要となります。間接民主主義では、政治家がこうした高度な判断を行っていましたが、それでは、政治家と業者との癒着が起きるので、それをできるだけ防ぐために、ハイブリッド民主主義が必要というわけです。
契約期間が終了に近づくと、ハイブリッド民主主義のシステムに基づき、契約を更新するかどうかが決定されます。コスト・パーフォーマンスが自治体住民の期待以下であれば、契約が解除となり、他の業者が選ばれることになります。民間警備会社は、そうならないようにするために、コスト・パーフォーマンスの改善に努めます。その結果、安くて満足度の高い行政サービスが可能になります。
現在、政府は教育や福祉といった公共財でない商品までも自ら生産していますが、これらは、通常の市場経済で供給可能です。私の考えでは、政府が自ら行っている行政サービスの大半は、民間企業に行わせることが可能です。例外は、司法、立法、行政という政府の基幹的仕事と国防ぐらいでしょうか。日本は、製造業は強いが、ドメスティックなサービス産業には国際競争力がないとよく言われますが、市場原理を大胆に導入すれば、それらも十分強い産業に成長すると思います。
永井先生
貴重なご意見ありがとうございます。
公務の民営化は難しいと思い込んでいましたが、先生の言う通りに事が進めば案外スムーズに移行できるように感じました。
公務が民営化されれば、私の提案は用無しとなるのですが、一点腑に落ちないところがあります。
それは、給与を安くしすぎると質が落ちてしまうのではないかという指摘いただいた部分です。
食料品や公共事業とは違って、公務員になるには試験と面接をパスしなければなりません。
さらに私の提案では働く本人が給与を決めるというものなので、給与不足による意欲低下は起こりにくいはずです。
だから行政サービスの質は落ちないと思いますがいかがでしょうか。
繰り返しになりますが、先生が言う行政の民営化には全面的に賛成です。
阪本智彦 さんが書きました:
食料品や公共事業とは違って、公務員になるには試験と面接をパスしなければなりません。
さらに私の提案では働く本人が給与を決めるというものなので、給与不足による意欲低下は起こりにくいはずです。
食品に関しては、食品衛生法や食品安全基本法に基づく様々な規制によって、品質の最低ラインが保証されており、公共事業の競争入札においても参加資格審査があって、一定の条件を満たさなければ参加有資格者にはなれません。しかしながら、こうした一次選抜は、質の下限を決めるだけで、上限の決定には影響を与えません。
希望給与水準と人材の質は、個別事例では合致しないことがあるものの、多数の事例においては正の相関があって、一般企業でも、公務員でも、給与水準を下げれば、応募者の数と質は下がります。公務員はたいした仕事をしているわけではないのだから、質は低くてもよいという人もいると思いますが、「たいした仕事」をしてもらうような仕組みづくりを私は前回提案した次第です。
モチベーションは、就職した当時は本人が希望した条件なのだから、たしかにあるでしょう。問題は、それが持続するかどうかです。一般に不況になると公務員は就職先として人気が出てくるので、現在のように不況期においては、低い給与水準で引き受ける人がいます。しかし、もしも景気が良くなって、民間の給与水準が上がってくると、自分の給与水準に不満を持つ公務員が出てくるでしょう。
阪本さんは「モチベーション持続のためには仕事の熟練度に応じた昇給も必要」と認識されているようですが、人間は、過去との比較よりも他者との比較で満足度を決める傾向があります。昇給があっても、それが他者の昇給よりも低いと不満の対象になります。同窓会に行って、民間企業に就職した元同級生の優雅な生活の自慢話を聞かされ、モチベーションを失い、仕事を手抜きしたり、場合によっては不正蓄財したりする公務員が出てくる可能性もあります。
これを防ぐ方法の一つとして、公務員の給与水準を民間の平均的な給与水準と連動して上下するようにするという方法があります。これはたんに官民格差の是正に役立つだけでなく、公務員に成果報酬型のインセンティブを与えることになります。給与が勤続年限と共に自動的に増えていくなら、公務員は仕事への興味を失い、代わりに退職後の天下り先の確保に熱心に取り組むことでしょう。しかし、自分の給与が国あるいは自治体の平均的な所得と連動するということになれば、自分の国あるいは自治体の経済の改善に真剣に取り組むことになるでしょう。
日本は、20年間デフレ状態にあり、「もしも景気が良くなったらどうするのか」ということが想定外になりがちです。しかし社会システムの設計をする時には、景気が良かろうが悪かろうが成り立つ普遍性を持ったシステムを作る必要があります。
永井俊哉 さんが書きました:
公務員はたいした仕事をしているわけではないのだから、質は低くてもよいという人もいる
まさに私はそのように考えていました。人件費を最小限に抑えるのだから、質も最小限で我慢しよう、と。
しかし永井先生の提案でしたら”人件費”と”質”、両方のバランスを見て国民がそれを選択できるところが良いですね。
永井俊哉 さんが書きました:
民間の給与水準が上がってくると、自分の給与水準に不満を持つ公務員が出てくるでしょう。
なるほど、よく理解できました。
永井俊哉 さんが書きました:
公務員の給与水準を民間の平均的な給与水準と連動して上下するようにするという方法があります。自分の給与が国あるいは自治体の平均的な所得と連動するということになれば、自分の国あるいは自治体の経済の改善に真剣に取り組むことになるでしょう。
仰る通りです。物価は常に変動しますし、民間の給与水準を参考にするのは当たり前ですね。
それに近いことを人事院が行っているはずですが、なぜか公務員給与は民間給与よりも高いと感じます。
これは単純に人事院が行っている民間給与水準の算出方法が不適切だという判断でよろしいでしょうか。(具体的には従業員数50人未満の小企業を計算の対象外としている点です。)
平成16年から21年の5年間で、民間の事業所に勤務している給与所得者の平均年収が439万円から406万円へ7.5%下落した[3]。民間の給与水準の変動を十分に反映しているとは言えません。
小さな自治体の地方公務員は別として、国家公務員の場合、「自分一人が努力したところで、国民経済が改善することはない」という意識を持ちがちなので、やはりモチベーションを向上させるには、最初に提案したとおり、市場原理を導入して、成果報酬の連動単位を小さくする必要があります。
先生はもうご存知かもしれませんが内閣府が市場化テストというものを行っているようです。(私は最近知りました。)
これは先生の提案にかなり近いですね。
国民が直接選べない点などは劣りますが、今後さらに期待できる政策だと思います。
リンク先を見てみましたが、趣旨のところに、「官民競争入札」とあります。
公共サービス改革(市場化テスト) by 内閣府 さんが書きました:
「官民競争入札」は、公共サービスについて、「官」と「民」が対等な立場で競争入札に参加し、質・価格の両面で最も優れた者が、そのサービスの提供を担う仕組み
もしも、「官」と「民」が対等な立場で競争することができるのであれば、なぜその「官」を民営化しないのかと言いたくなってしまいます。
警察官以外の公務員の給料なんか、最低賃金と同じでいいんですよ。
ペンペン さんが書きました:
警察官以外の公務員の給料なんか、最低賃金と同じでいいんですよ。
最低賃金は地域によって異なりますが、東京都の最低賃金は、時間額にして821円(22.10.24発効)です。この時間額で労働者が見つかる職務というのは、限られたものしかないでしょう。公務員にも職業選択の自由がありますから、離職者が相次ぎ、募集しても応募者がいなくて、最終的に、人手不足が原因で政府が機能不全に陥ることも考えられます。
退職金を廃止すれば、人件費が下がるでしょ。
これだけだと不満が出るから、永井様がつねづね指摘されるように、定年雇用制の廃止、年齢制限の撤廃、解雇の自由を導入しましょう。
あとは、国家公務員採用1種試験を廃止すること。戦前の高等文官試験と同様のものが、いまだに存続しているのは異常。
退職金(公務員の場合は「退職手当」と呼ばれる)は賃金の一部であり、その引き下げは、賃金引下げと同じ効果をもたらします。私は、長期雇用に合理性がある特殊なケースを除いて、民間企業でも、政府においても、退職金や退職手当は不要と考えますが、就業規則や国家公務員退職手当法等に規定された既存の退職金や退職手当の制度を廃止するのであれば、それを賃金の一部としてカウントしていた人たちに相応の補償を別の形で行わなければなりません。それなしで退職手当を廃止したら、訴訟問題になるでしょう。現状では公務員の賃金が高すぎるのだから、賃金の総額の減額はやむをえないにしても、これまで述べてきたように、重要なことは行政サービスのコストパーフォーマンスの改善であって、単純にコストを下げればよいということではありません。
国家公務員採用試験における、I種、II種、III種の区別、あるいは地方公務員試験における、上級、中級、初級の区別は、職種による区別に取って代わる必要があります。どの産業についても言えることですが、職種によっては、知能とは別の高度な能力が要求される職種もあり、たんに一般的な学力の高低でもって階層的に区別して採用すればよいものとは思いません。なお、私の提案では、行政サービスの大半は民間企業によって担われるので、公務員の数は激減し、その結果、公務員の採用のあり方は重要な問題ではなくなります。
2. 付録:市町村行政
以下の議論は、システム論フォーラムの「市町村行政」からの転載です。
システム論を応用した多くの政策提言にいつも感服しております。
多くのご提言はほとんどが中央政府に関する事で、情報社会に対応する(質の向上に資する)ためには、行政のスリム化、規制緩和、市場原理の導入等がキーワードとなる事は理解しているつもりです。私も、地方が活性化するためには中央を変えるしかないとの思いに至っておりますが、先月の総選挙を見ても中央政府を変えるのにはまだ時間がかかるものと感じております。
せめて、身近な地方行政からでもシステム論から導かれるような情報社会にあった社会を目指せないかと思いはじめております。(もしくは中央が変わった時の準備として)
もちろん地方行政でもハコ物行政をやめるなどの財政の健全化が第一の課題であるとは思いますが、それ以外でシステム論から是とされる地方行政のアイデアがあればお聞きしたく思います。
図書館の運営を民間に任せたり、市立学校の民営化とか、産地直送や買い物弱者対策の仲介役等々考えておりますが、皆さんのご意見を頂ければと思っております。
また、少し国の法律が変われば、市町村行政にとって、やり方によっては良くなる事や、地方行政でやるべきではない施策などお教え頂きたいと思います。
まだ、考え始めたばかりで、事例の勉強が追い付いておりませんで申し訳ありません。私も各地の取り組みなど調べて参りますが、有望な事例を知っている方もお教え頂ければ幸いです。
くわひろ さんが書きました:
図書館の運営を民間に任せたり、市立学校の民営化とか、産地直送や買い物弱者対策の仲介役等々考えておりますが、皆さんのご意見を頂ければと思っております。
著作物の流通に関しては、「定額式超流通の提案」で、学校教育のあり方に関しては、「教育改革はどうあるべきか」などで、産地直送や買い物弱者対策に関しては、「ネット通販はどうすれば普及するのか 」で既に述べましたが、どれも理想論ばかりで、地に足の着いた議論ではないという御批判を受けることになりそうです。
図書館に話を限定すると、すべての著作物がネットで簡単に入手できるようになることがユーザにとって最も理想的ですが、例えば、グーグルが推進する図書館プロジェクトなどは、出版社が既得権を失うことを恐れるので、なかなか進みません。
角川グループ、全作品を「Google図書館プロジェクト」の対象外に (date) 2012年12月14日 (media) INTERNET Watch さんが書きました:
株式会社角川グループホールディングスは13日、傘下の出版社が発行する全作品を「Google図書館プロジェクト(Google Library Project)」の対象から外すことでGoogleと合意し、そのための作業を開始したと発表した。
Google図書館プロジェクトは、Googleが提携した各国の大学図書館や公立図書館の蔵書をデジタル化して「Googleブックス」で検索可能にし、検索キーワードを含む文書の抜粋を閲覧できるようにするプロジェクト。
角川グループでは、9月にサービス開始となったGoogleの電子書籍ストア「Google Playブックス」には著作者の了承を得ながらコンテンツを提供している。
一方で、図書館プロジェクトについては、著作者や業界関係者から著作権上の指摘があり、Googleとの協議を重ねてきたと説明。その結果、Googleの「図書館プロジェクトの除外登録」の仕組みを利用して、角川グループで発売されているすべての紙の出版物を、図書館プロジェクトの対象外とする作業が開始された。これにより、既に図書館プロジェクトでデジタル化されたデータは、今後検索結果には表示されなくなる。
角川グループでは今回の成果を踏まえ、引き続き著作者の権利を守りながら、より多くのタイトルを「Google Playブックス」でもユーザーに提供できることを期待するとしている。
Google Play は、有料の電子書籍販売サービスだから、出版社と Win-Win の関係を築くことができると言えますが、読者の立場からすると、いちいち課金されるのは面倒なので、その点、定額式超流通の方がよいと私は思っています。現行の図書館も、無料で本が読めるように見えるけれども、実際には、税金という形でコストがかかっていますから、そうしたコストを最小化する努力が必要でしょう。
いずれにせよ、コンテンツ・マーケットの主流が今後インターネットに移ることは間違いありません。そんな中、市町村長が管轄する建造物としての図書館(以下たんに図書館と呼ぶことにします)の役割はどうなるかということを考えてみる必要があります。これまで図書館は、たんに書籍を貸し出すだけでなく、司書が一般の利用者からの質問に答えるというサービスも行ってきました。しかし、ネットには質問に対して答えを無料で出すというサービスが普及しており、この機能も図書館ならではのものと言えません。
そんな中、最後に残るであろう図書館の機能は、自習室としての機能です。今でも、自宅には誘惑が多いという理由で、多くの受験生たちが図書館を自習室として利用しています。図書館は、そうした人たちを非本来的な利用者と考えているようですが、彼らは、インターネットがどれほど普及しても、図書館を利用し続けるでしょうから、図書館がネット時代を生き残ろうとするなら、無視できない利用者になることでしょう。
図書館民営化の動きは既に一部で出ています。例えば、佐賀県武雄市は、2013年4月から、市立図書館の運営を、全国でCD・DVDレンタル店「TSUTAYA」約1400店を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブに委託する予定です。共通ポイントサービス「Tカード」の図書貸し出への導入、雑誌や文具の販売、カフェの設置などを計画しているとのことです。しかし、図書館の第一の機能が自習室になるとするなら、別の業者への委託も考えた方がよいかもしれません。
このトピックを立てた桑原宏史さんが、それまで自民二人、社民一人で無風状態だった大分県議会選挙の佐伯市選挙区に維新の新人として立候補し、当選したそうです。おめでとうございます。
議会の仕事とは、立法することだ。それ以上でも以下でもない。議会で思いつきの質問をするのが 議員の仕事ではない。支持者の陳情を役所にネジ込むのが 議員の仕事ではない。立法能力のない議員の報酬なんて、最低賃金と同額でよいのだ。
地方の議員も、定数の12分の1以上の議員の賛成があれば、政策的条例を提案することができます。しかし、議員による政策的条例提案が全体に占める割合はわずか 0.17 %しかなく、大半は、市の職員が作成した議案が市長提案という形で提出され、可決されているのが実態です。現在統一地方選の時期ですが、現職の議員に投票しようとする時、その議員に条例提案などの実績があるかどうかチェックするとよいですね。
地方公共団体の吏員だって、条例案や規則なんて作れやしねーよ。条例や規則の雛形は、中央官庁が作ってくれるんだ。執行機関は、さも「私が作りました」てな顔をして、議会に提案するんだ。なにをかいわんや だよ。
中央官庁はそこまで暇ではないでしょう。もちろん、総務省が同意しないと条例は施行できないけれども、山梨県甲州市の白ワイン乾杯条例とか、栃木県高根沢町のハートごはん条例とか、鹿児島県志布志市の子ほめ条例とか、兵庫県芦屋市、六麓荘町の豪邸条例(豪邸を建てないといけない)とか、大阪府泉佐野市の犬税条例とか、中央官庁が雛形を作ったとは思えない条例がたくさんあります。
3. 参照情報
- 上山信一『行政の経営改革 ― 管理から経営へ』第一法規株式会社 (2014/9/24).
- 公務員実務用語研究会『公務員版 悪魔の辞典』学陽書房 (2019/9/20).
- 福島太郎『公務員のタマゴに伝えたい話』2020/6/24.
- ↑ここでの議論は、システム論フォーラムの「公務員人件費の見直し」からの転載です。
- ↑JitiJiti. “蓮舫(2008年1月25日)" Licensed under CC-BY-SA.
- ↑平成21年分民間給与実態統計調査結果について,国税庁]のに対して、国家公務員一般職の年収は、657万円から636万円へ3.2%しか下落していません[過去の人事院勧告 など
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