デフレ対策としての公共事業
デフレの時代になると、国粋主義が台頭し、戦争が起きやすくなるが、それは、政府が景気対策のために公共投資を増やすのと同じ理由による。では、戦争をはじめとする無駄な公共事業を回避して、リフレーションをするには、どうすればよいのか。

1. 財政出動は景気対策として効果的か
不況になると、必ず「政府は公共投資を拡大するべきだ」という声があがる。バブル崩壊後、景気対策・雇用対策として行われた公共投資が、その目的を達していないことが実証されているにもかかわらず、小泉内閣による一般歳出減額に反対する人は少なくない。
積極財政派の人たち曰く「これまでの公共事業が総需要を喚起する効果を上げていないのは、少し景気がよくなると、すぐ緊縮財政に戻ってしまうからなのであって、切れ目ない財政出動を続けていれば、日本経済は、バブル崩壊後のデフレから脱却できていたはずだ」云々。
しかし、こうした議論は、公共事業に効果がないことを自白しているに等しい。伝統的なケインジアンの理論によれば、公共事業は、その乗数効果により、終了後も波及効果を残すはずなのに、彼らが暗に認めているとおり、今の日本の財政出動はその場限りの効果しかなく(政府支出乗数は、現在1.25)、結果として、景気の下支えをするために、「切れ目ない財政出動」が際限なく必要になる。
2. なぜ財政政策は効果を発揮しなくなったのか
マンデル・フレミング・モデルによれば、為替相場が変動相場制に移行した1973年以降、財政政策の有効性は減少している。現在の日本経済のような、変動相場制に基づく開放経済では、財政出動は、金利を上昇させて民間設備投資をクラウディング・アウトする(締め出す)のみならず、金利の上昇によってもたらされる円高が輸出を減少させてしまうので、結果として財政拡大はGDPを抑制してしまう。
もっとも、政府が民間から資金を奪ったとしても、そして為替レートが円高になったとしても、政府が資金を有効に活用し、内需主導の成長を促進するのならば、公共投資は有効といえる。しかし、実際には、当事者意識の欠如から、公共投資の効率は、民間投資に比べて、著しく低い。
3. 景気対策としての戦争
しかしながら、政府が効率を上げようとする強い当事者意識を持ち、内需主導で完全雇用を実現し、デフレを克服する実績を持つ公共事業が一つある。それは戦争である。ルーズベルト大統領は、ニューディールという平和的な公共事業で、アメリカ経済を世界大恐慌から救うことができたという神話をいまだに信じている人もいるが、実際には、ニューディールは失敗に終わっており、アメリカ経済を世界大恐慌から救ったのは、第二次世界大戦の特需である。

戦争は、民族・宗教・イデオロギーの対立が原因で起きるわけではない。それらはたんに戦争主体を区別するのに役立つ徴標に過ぎない。戦争、とりわけ大規模な戦争の原因はデフレである。資本主義成立以前でも、気候悪化に伴う資源デフレーションの時期の戦争が起きている。
デフレは、バブルの崩壊によって起きるが、戦争には、バブル的な過剰投資によって生まれた過剰設備と過剰人員を潰し合いと殺し合いによって、バブル以前の水準に戻す機能がある。平和的な公共事業は、需要を増やすことで需給ギャップを埋めようとするが、需要をバブル時の過剰供給にまで引き上げることは困難であり、通常失敗する。これに対して、戦争という公共事業は、供給を削減することで、つまり供給を削減する需要を増やすことで需給ギャップを埋めようとする。不況になると、転職産業(という名の首切り産業)は、逆に繁盛するのとよく似ている。
デフレにおいては、労働価値に対して貨幣価値が高まる。貨幣とは、経済的交換における媒介的第三者であり、権力的交換における国家の地位に相当する。だから、デフレは、国民に対する国家の価値を高め、全体主義を台頭させ、人命軽視の戦争を惹き起こす。ナチスが結党したのは1920年だが、1923年のハイパーインフレの時には、ナチスは支持されなかった。ナチスが熱烈に支持されたのは、1929年に世界大恐慌の波がドイツに押し寄せて、デフレが深刻になってからである。
現在の日本でも、デフレが深刻になるにつれて、国粋主義的傾向が強くなり、歴史修正主義が台頭するようになってきている。小林よしのりの新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論や西尾幹二の国民の歴史 がよく売れ、"私"に対する"公"の優位という国家主義的イデオロギーが支持されているのも、デフレのおかげである。
4. 最も望ましいリフレーションの方法
戦争をはじめとする無駄な公共事業を回避して、デフレから脱却するには、どうすればよいのだろうか。ここで、もう一度マンデル・フレミング・モデルに戻ろう。マンデル・フレミング・モデルによれば、変動相場制では、財政政策は景気対策としては有効でないが、金融政策は有効である。もしそうだとするならば、バブル崩壊後のデフレを解消するには、日銀が量的金融緩和によってインフレを起こし、不良債権をインフレによって一掃するべきだということになる。インフレそれ自体は、決して望ましいものではないが、戦争と比べればまだましである。
ディスカッション
コメント一覧
戦争が公共事業になるというなら。同じ規模で公共事業をバンバンやれば
済む話ではないですか。
既に説明しています。
>供給を削減することで
これが問題なのです。戦争しなくても、その戦争がもたらすだろう
破壊及び建設を量的には戦争と等しく、質的には平和に同じように
やればイイということです。例えば家屋やビルを買い取って、爆撃に
似せて壊してはつくり、壊してはつくりを繰り返したり、公務員を
一時的に大量に雇い、海外で生活させれば、実質戦争をしているの
と変わりはないと思うのですが。
つまり、その公共事業が、他の民間への需要を疎外するほどやれば
いいわけです。そうすれば供給を減らすことが出来ます。
というか、本当は私の預金がインフレでパーになることは避けたいのです。
デフレ脱却の鍵は、技術革新だと思います。技術革新なしで従来と同じものを作っても、供給が量的に増えて、値崩れを起こすので、デフレ圧力が強まるだけです。技術革新が起きれば、人々は、高くても新しい商品を買い、古い商品を捨てるでしょう。
一つ永井先生にお聞きしたいのですが。戦争による供給の減少とは
要するに軍需をバンバン生産して、バンバン壊して浪費させ、つい
でに余った人間を殺して、労働力供給を減らすことにより、全体と
しては一時的に貧しくなり、供給が減るから、それだけ「相対的に」
需要も増えるということと理解しますが。
WWⅡでは出来ても、今の時代大戦争などは核の問題で出来ませんか
ら、今の時代、あまり意味がないというか、不可能だと思うのですが。
そもそも市場あっての国家ですから。デフレならデフレで、
企業の側からそれを克服する手段が無いといけないと思います。
そういう意味で技術革新したら特許の年数を増やすとか、そう
いうインセンティブが重要だと思います。今の社会は混合経済にな
りすぎて、景気が悪いのは政府の失策のように言われますが、本当は
市場の上の企業努力が必要なのではと感じるのですが。
ホリエモンではありませんが、青年実業家を増やす上で、生存権を認
め、起業に失敗しても、死にはしないというような、政府が金を出す
というより失敗しても最終的には政府が助けてくれるような仕組みを
作りベンチャー精神をくすぐるインセンティブが必要だと思います
戦争においては、需要は、間接的ないし相対的にではなくて、政府支出の増額により直接的に増大します。9.11以降、アメリカ政府は、軍事支出を増やしています。アフガニスタンやイラクといった小さな国を相手にしているのにもかかわらず、それ以降、リフレ効果が顕著にあらわれています。
確かに戦争があるとマンキューのマクロ2版にも乗っていますけど、
インフレが怒ってる傾向が強いですね。でも単純にインフレであるから
と言って景気が良くなったのかはわかりませんが。
現在の日本では、人口減少に伴うデフレ圧力の増大によりインフレが発生しにくくなっています。仮に量的金融緩和によってインフレ状態になったとしても、円安によるキャピタルフライトという弊害のほうが大きいでしょう。
2003年ごろまでは、財務省もハイパーインフレによる累積政府債務の一掃を研究していたようですが、現在では、デフレ下の低金利を利用した問題の先送りへと方針転換したようです。
人口が減少するからデフレになるというわけではありません。
2009年3月現在のように、世界的なデフレが進行している時には、主要な中央銀行が協調してインフレ政策を実行し、キャピタルフライトを阻止することができます。
”人口が減少するからデフレになるというわけではありません。”
少子化・高齢化に伴う人口減少により、日本国内の有効需要が減少してデフレになっていくでしょう。
”デフレ脱却の鍵は、技術革新だと思います。”
技術革新が必ず起こるという保証はなく、永井様が提唱なさっている「市場原理の導入」にしても、仮に民主党政権が誕生したとしても 政策として実行されるとは思われません。(アメリカ合衆国政府の外圧があれば別ですが)。
民主党は社会民主主義的傾向が強いので、民主党が政権をとったら、市場原理の導入とは逆の方向に傾く可能性が高いと思います。
さて、質問致します。
民主党による政権交代より半年以上が経過し、次期参院選まで3ヵ月をきる状況にあります。デフレスパイラルは、リーマンショックより一段と拍車をかけ、貧富の差は目を覆うばかりに拡大しています。ユニクロ等に代表されるデフレの申し子のような企業が、技術革新なのか、業界のunwritten ruleを破る形でか台頭してきています。いまや、内需の拡大は見込めず、ばら撒き政策としての子供手当・高校無償化政策による現状対応政策しか打てない状況にあります。今治水でしかなく、恒久(又は長期スパン)対策は財政赤字とno ideaより現実味を帯びていません。ややもすれば、空前の新党ブームが発生しています。
長い前置きになりましたが、この半年の説明には短すぎる内容かと存じます。その上で、デフレ脱却=リフレの創出を考慮した場合、特効薬は残念ながらないと思われます。これより、既に施行済の子供手当・高校無償化を有用活用するプランで国家百年の計による、財政出動を実施する長期計画でのリフレ転換を図るべきと考えます。財政破綻を危険性を孕んではいますが、その危険性回避のフォーキャスト観点より法人税の引下げ+消費税の増税を早期に実施すべきと考えます。更に、社内留保金への強い課税+35才以上の未婚者に未婚課税を敷き、国家財政のインフラを強化すべきです。「私」は「公」と著しく区分されてあるべきですが、「私」を「自由」とするならば、「公」は「責任」に当たると考えます。その2区分は表裏一体であるべきです。
永井先生のご指摘される「平和的リフレの創出は、半端な政策になりがちで結局失敗する」のはご指摘のとおりだと存じます。愚見は、ソフトランディングという名の問題先送り論かもしれません。先生の理論は愚見に比較致しますと、ややハードランディングと感じます。ですが、ハードランディング論者であった自民党旧執行部の政策の下、日本国は荒廃しました。事実上の失業率30%を見た目上で5%に押し下げようとするものだから、派遣社員に代表されるワーキングプア人口を急増させ、国力の疲弊を招きました。もっとも、色々な事情より、全てが自民党旧執行部がやりたいハードランディングではなかったかもしれませんが、途中で投げ出したことは事実です。一番腹が立つのは、ミッションを中途放棄し、下野されたにも関わらず、今もって外野から意見を述べられていることです。男たるもの、いかなる事情があれど、中途放棄した場合は口をつぐみ後任に任せるべきだと感じます。
この国のハードランディング史に汚点を残した旧政策は、ばら撒き政策に取って変わられました。ハイパーインフレーション政策は有用な政策と感じますが、国民の欺瞞に満ちた視線がある現状ではとても履行できる政策とは思えません。具現化させるにはどのような手順が見込まれますでしょうか?また、国債が1,000兆円超過が確実なこの財政現状でも有用といえますでしょうか?
財政支出の拡大は、副作用が大きすぎるので、反対です。政府主導ではなく、民間主導でリフレを起こすためには、ベースマネー増大によるインフレ政策がよいでしょう。
インフレ政策を実施すれば、徴税コストゼロで、かつデフレ効果なしで、円建て資産から一律に税を取ることになります。あなたは、少子化がデフレの原因と思っているようですが、これはむしろデフレの結果であり、「未婚課税」や「子供手当」や「高校無償化」は、本末転倒な政策と考えます。
インフレとハイパーインフレは異なります。両者を区別しましょう。2010年現在の日本は、依然として生産力と資産を持っていますので、インフレ政策をとっても、ハイパーインフレにはならないでしょう。
早速のご回答有難うございました。
引き続き、質問させて下さい。
稚拙な議論になっているようでしたら、その旨を教示願います。
>財政支出の拡大は、副作用が大きすぎるので、反対です。政府主導ではなく、民間主>導でリフレを起こすためには、ベースマネー増大によるインフレ政策がよいでしょう。
ご指摘のとおり、現状におけるこれ以上の財政支出は、「輸血のノリシロ」が非常に薄い事態において危険性を孕んでいると思います。ケインジアンの安易な発想によるニューディール発想が、「不況時には公共投資」という特効薬神話を産んでいるのだと思います。ですが、現在この国はケインジアンによる発想しかないように思います。かくいう私も3流私大の経済学部出身ですが、ケインジアン的な発想があります。アンシャンレジームから脱却できていない部分はあるのかもしれません。
ご指摘のベースマネー増大によるインフレ政策とは、単純な発想で不躾な質問かもしれませんが、日銀による貨幣発行量を増大させ、市場流通貨幣の増大を意図されているのでしょうか?単純に言えば、現状で月給30万の人の給料が60万になるイメージでよいでしょうか?当然生活物資もそれに見合って価格向上するでしょうから、自由償却価格度合い(使える金の範囲)は変わらないのでしょうけども。
>インフレ政策を実施すれば、徴税コストゼロで、かつデフレ効果なしで、円建て資産か
>ら一律に税を取ることになります。あなたは、少子化がデフレの原因と思っているようで
>すが、これはむしろデフレの結果であり、「未婚課税」や「子供手当」や「高校無償化」
>は、本末転倒な政策と考えます。
常々思うのは、バブル崩壊より発生していると定義されている「lost 10 years」は平成景気により一度終息したと定義されていると認識しています。が、実体上は企業収益の向上に比較して家計収益は悪化しています。それは色々な要因より発生している「結果」なのかもしれませんが、そもそも家計収益の悪化が市場流通貨幣量の減衰を招いたと認識しています。市場流通貨幣量の減衰が、デフレを引き起こした要因と考えます。その上で、インフレ政策による円建て資産の膨張は、円建て資産を有する私企業・国家にすれば、国債帳消しのために課税対象になると宣告すれば、すぐさまに換金するのではないでしょうか?そうなれば、円価値は急降下し、激しい日本売りになるのではないでしょうか?日本売りとなれば、急激な円高が促進され、輸出企業はその多くが窮地に追い込まれる懸念がありませんか?
また、残念ながら本末転倒な政策が2つも施行されているのも現実です。これが現実である観点より、殖産政策を実行し、十分な就労人口の増強(国家財政としての基盤整備=納税対象者の生産)後に、社会保障政策に当該原資を振り向けるという政策が現実路線なのかしらと考えています。
デフレで問題なのは、通貨価値が上昇することそのものではなくて、通貨価値が上昇すると人々が予想することです。デフレ期待がある場合、マネーは投資や融資に使われずに、死蔵されるので、経済が萎縮します。ベースマネーを増大すれば、人々はインフレ期待を持ち、マネーを死蔵せずに投資や融資に使い、その結果、マネーサプライが増大します。
「円価値は急降下」するということは、円安になるということです。円安かつ円高になるというのは矛盾しています。
デフレ対策として「紙幣や通貨の供給量を増やす」と言う手段がありますが、景気の動向でこれは決まるんでしょうか?最近のニュースを見ると「国債の増加で日本が破滅=国家消滅する」と言うような事を聞きますが、ほとんどの国民は国債増加の実感はないですね。戦後は一貫して国債が増加しています。考えてみると経済悪化で消滅した国はあるでしょうか?もしも、財政が破綻したら財政破綻を政府が宣言することはあるんでしょうか?ギリシャが今危機と言われますが。「戦争以外で国家が消滅」とすれば天変地異くらいですが。
経済統計上ではデフレと言われますが、この3~4年は主婦感覚では「緩やかなインフレ」と言う感じ(アンケートを取ると「物価が上昇している感じである」と言う回答が多い)ですね。平均所得が増加しない状況で「バラマキ政策」以外でデフレ克服する手段はありますか?自民党も民主党も関係なくバラマキ政策はいつの時代も評判が悪いです。金融不況の1990年代末期ではなく、「人口減少期」に入った時点で日本は真性デフレになったとも言えなくはないですが。
国家が財政破綻した例は、過去にいくらでもあります。最近の例ですと、2001年11月14日に、アルゼンチン政府が、対外債務の返済不履行宣言を発して、経済が破綻しました。それによって、アルゼンチンという国家が消滅したわけではありませんが、財政破綻するもしくは破綻寸前になると、その国は、IMFの管理下に入り、国民生活を犠牲にした財政再建が行われるので、財政破綻が憂慮するべき事態であることには変わりがありません。
日本の財政破綻に関しては、最近、ネバダ・レポートなるものが取りざたされています。これは、ネバダ・レポート(現在は改称)を配信している会社が、有料で定期発行していた印刷物の「ネバダ・エコノミック・レポート」に書かれていたことで、IMFの公式文書ではないそうです[ナゾの「ネバダ・レポート」の正体]が、その内容は、以下のようなもののようです[ネバダレポート]。
債権・社債については5~15%の課税
株式は取得金額の1%課税
このうち最後の二つは、税金を課したり、預金封鎖をしなくても、政府紙幣の発行によって、同じことを行うことができます。但し、後者がデフレ対策として行われるのに対して、前者は、インフレ対策として行われます。
「国家公務員の数を減らす」と言う行革構想は15年ほど前から叫ばれていますが、一向に実現していません。ただ「選挙公約」自体が本当に必要かどうか、現在の選挙において岐路にあると思います。「税金削減」として、国会議員の数を仮に今の定数から衆参両院ともに半分にしたら、選挙区の場合は選挙での得票数が現状の2倍以上(衆議院では小選挙区の数も半分になるため)でないと当選できない計算です。でも国家公務員削減が現実に最大の歳出効果をもたらしますか?少子高齢化社会のため福祉予算の削減を行えないため、それ以外の歳出分を削減しないと国債の発行額が減らないためです。現在多くても50兆円台前半しか税収が見込めません。国債依存度を下げるには「予算構造」の変化が必要ですが、消費税を上げての税収増加はたしかに可能です。増税による景気後退を防ぐのは可能でしょうか?庶民感覚としては「税金が増えるのと景気が悪くなるのは勘弁してほしい」というのが本音でしょう。
日本の人口当たりの公務員数は、諸外国と比べて多いとは言えません。それにもかかわらず、日本が、小さな政府ではなくて、大きな政府と呼ばれるのは、特殊法人や公益法人や第三セクターといった官でも民でもないグレーゾーンが肥大化しているからです。このグレーゾーンを仕分けしないと、本当に行政改革をしたことにはなりません。
「半官半民」の組織を完全民営化する事こそが真の行革と言えるんですね。現在、政府・日銀が事実上「2回目の量的緩和政策」をとっていますが、消費者物価上昇率がゼロ以上の状態が定着することがデフレ脱却の基本条件と言えます。「デフレ脱却認定条件」の経済指標が他にもあるので、単純には決められません。そうなると景気が上昇しても短期金利の利上げは短くてもあと1年はないと思うんですが、もし景気と物価が安定上昇局面に転換したら、利上げはアメリカのようにコンスタントに行えれば、そうした方がよろしいのでしょうか?1990年代以降の日本は利上げが少なく、幅も小さいので景気拡大期では欧米との金利差拡大が懸念されています。一部では景気回復を受けて利上げをしている国もあります。あとこの2年間の円高が景気回復の勢いを弱くしていると言う指摘もあります。
たびたびの投稿のご回答ありがとうございます。
最近、円高が進行しています。1985年のプラザ合意以降の円高により、尚且つ、内需拡大策を実行したことにより、日本に資金が集まり、土地、株が上昇しました。今回も同じような流れになりつつあるのでは、ないかと思ってますがどうでしょうか?つまり、インフレより以前にバブルが発生する可能が高いのではないでしょうか。黒点の量も増加し始めました。更に、首都圏の地価も上昇に転じたとのことです。もし、バブルが発生しても日銀は金利をあげることは出来ないので、その後にインフレが発生すると考えますがどうでしょうか?
円高にはデフレ効果があります。実際、85年以降は円高不況と呼ばれるデフレが発生しました。そこで、日銀は、85年当時5%あった公定歩合を、87年2月には記録的低水準であった2.5%にまで引き下げました。このため、87年の半ば以降、日本経済が回復し始めたのですが、1987年10月19日に起こった、ニューヨークでの株価大暴落(ブラックマンデー)による米経済の回復を優先して、そのまま1989年5月まで低金利政策を続け、これが国内における不動産バブルの原因となりました。なお、バブルの時期には、円/ドルレートは、120円台から160円付近にまで下落しています。円高がバブルの原因であるという認識は正しくありません。2010年8月11日現在の海外市場で、円相場は一時84円72銭となり、ドバイショック後の高値(84円82銭)を上回って、15年1カ月ぶりの高値を付けました。このまま円高が進めば、さらにデフレはひどくなるでしょう。
たとえば120万円のトヨタカローラが一台売れるとその代金の中からまずセールスマンの歩合が支払われ、トヨタの労働者に賃金が、役員に報酬が、株主に配当が支払われる。次に下請け会社に部品代が支払われるがそれは下請け会社の誰かの収入と、鉄やプラスチックなどの原料代になる。その原材料費、たとえば鉄の代金は製鉄会社の誰かの収入と、鉄鉱石や石炭の代金に分解され、そのまた石炭の代金は石炭会社の誰かの収入になる。
つまり120万円はすべて、結局は誰かの収入になる。
このとき、売り上げは120万円だったがそれによって得られた収入が130万円になるなどということはないし、逆に110万円の収入しかもたらさないということもない。
商品の価格は収入の合計に等しい。
これはすべての商品についていえることだから、世界の全商品の価格の合計は世界の全収入の合計に等しい。
ここで120億ドルの商品と、したがって120億ドルの収入の対峙する世界を考える。
両者を120億ドルの金貨が媒介し、取引は年一回行われる。
どこからはじめてもよいのだが、まず「企業」に120億ドルの金貨があったとしよう。それは前年度の総売上である。
「企業」はそのうちから利潤の20億ドルを株主(地主)に支払い、100億ドルで労働者(農民)を雇う。「企業」は一年で120億ドルの商品(コメ)を生産し売りに出すが、買うのは「家計」(株主+労働者)である。利潤率20パーセントで、それは株主の手に入る。
「家計」が120億ドル(20億ドル+100億ドル)のすべてを商品の購入に支出すれば「企業」に120億ドルが還流し、「家計」はその商品を一年で消費する。これでもとの状態が回復され、次の一年の生産が始められる。
このとき10億ドルが使われずに甕に詰めて地中に埋められると(貯蓄)、「企業」には110億ドルしか還流しないことになる。すると「企業」が「家計」に支払うことのできる金額も110億ドルになり、「家計」は10億ドル貧しくなる。
貧しくなった「家計」の側では10億ドル分の商品(コメ)を変えない貧民・労働者が餓死するだろうが、その労働者を養うべき10億ドルの商品(コメ)は「企業」の倉庫で腐り始めている。
なぜこんな馬鹿なことが起こるかといえば10億ドルの金が溜め込まれてしまったからだ。
もしこのとき商品の側で少なくなった貨幣量に適応しようとして価格が下がると(120億ドルの商品を110億ドルの貨幣と交換する)、貨幣価値の上昇・すべての物価の下落(賃金も下落)という教科書どおりのデフレが始まってしまう。
だからはじめに貯蓄されてしまった10億ドルを何とかしなければいけない。
1 まずやらなければならないのはお金を貯めるだけで使わない人の手にはお金が行かない、とどまらないようなシステムを作らなければいけない。しかし政府は金持ち減税・消費税増税という真逆のことをやろうとしている。
2 理屈として一番単純なのは貯蓄に100パーセントの税金を掛けて没収し、それを財源にして貧困対策(貧民にただで金を配るでもよい。貧民はその金で「企業」から売れ残っていた商品を買い、「企業」には10億ドルが還流する)をすることだが金持ちの抵抗があって実行は難しいかもしれない。
3 没収しない代わりに安い金利で借り受けてそれを財源にして貧困対策(貧民にただで金を配るでもよい)をしようとすると、国の借金は国が借金したことだからいつか返さなければならないなどと、本末転倒のお馬鹿なことを言う人が出てくる。(国債は国民が国に預金しているのだ)。貯蓄の全部を吸い上げるだけの国債を発行しなければいけない。
4 最後に、贋金を作るという裏技がある。10億ドル分の金貨を作るのは大変だが紙に「かね」と印刷して10億ドル分の紙幣を作ればインフレにもならず、デフレも退治でき、ただで10億ドルの収入を得ることができる。それを財源にして貧困対策(貧民にただで金を配るでもよい)をすればよいのだが、そんなことが日本銀行には難しいことらしい。
「死に金」という単語を目にするようになった。溜め込まれた貯蓄が生きた使われ方をしていないという意味らしいが、その金が溜め込まれてしまったために得られたはずの収入を失ってしまった貧民が世界の底辺で死んでいっている、そういう意味での死に金でもあるのだ。
なぜこうなのだろうか、というと、政府は本当は貧困やデフレを解決しないほうがよいと考えているのではないかと思われる。
海外で貧乏旅行をするとわかるが、貧しい国へ行くと私たちのような貧乏旅行者でもかなりの贅沢をすることができる。それならいっそ日本を貧乏人の住む貧乏な国にすれば、一部の金持ちはよりいっそうの贅沢な暮らしを味わえることになる。政府は一部の金持ちの利益を代表していて、日本を貧しい国にしようとしているのだろう。