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『カントの超越論的哲学』を出版しました

2014年12月4日

私の著作『カントの超越論的哲学』の解説動画、書誌情報、販売場所、概要、読者との質疑応答などを掲載します。本書に関してコメントがありましたら、このページの下にあるコメント・フォームに投稿してください。誤字脱字の指摘から内容に関する学問的質問に至るまで幅広く受け入れます。

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1. 解説動画

このビデオでは、私の著作『カントの超越論的哲学』の要点を解説します。カント哲学の意義はどこにあるのか、なぜ物自体と現象とを区別するべきなのか、超越論的哲学および批判哲学とはどのような哲学なのか、そしてカントの哲学には社会哲学的にどのような含意があるかについて語ります。

2. 出版告知

投稿者:永井俊哉.投稿日時:2014年12月04日(木) 15:59.

本日、Google Play のストアにて、電子書籍『カントの超越論的哲学』を出版しました。2014年12月11日までの期間限定で、無料でダウンロードできます。電子書籍は初めてという方も、一度試してみてはいかがでしょうか。Google Play Books の電子書籍は、業界標準の epub 形式を採用しており、Android/iOS のモバイル端末はもちろんのこと、パソコンで読むこともできます。

本書は、1997年以来ウェブで無料公開している『カントの超越論的哲学』の改訂版で、導入節を全面的に書き換えた他、現代科学の観点から、第1章第3節の「超越論的弁証論」と第3章第2節の「客観的合目的性」のアップデートを行いました。

電子書籍は、販売店がサービスを停止すると、読めなくなると評判がよくありません。しかし、それは、DRM(Digital Rights Management デジタル著作権管理)で保護されている場合の話です。この電子書籍は、DRM フリーなので、コピーや他のフォーマットへの変換が自由にできるので、一生所有することができます。

この電子書籍をダウンロードするには、Google でアカウントを持つ必要があります。まだアカウントがない人はこのページで作成しましょう。アカウントを作成したなら、ログインし、Google Play ブックスの売り場 に行って、『カントの超越論的哲学』をライブラリに追加します(追加する途中で、購入と出ることもありますが、0円と表示されている限り課金されません)。追加後、「読む」ボタンをクリックすれば、ウェブ上でそのまま読めます。

電子書籍をローカルにダウンロードするには、表紙の右上にあるオプション・ボタンをクリックし、プルダウンの中から「epub をダウンロード」を選びます。ダウンロードした epub ファイルは、Firefox のアドオン、EPUBReader で読むことができます。またこれを使って、任意のディレクトリにファイルをダウンロードし、それを、例えば、 Amazon Kindle や楽天 Kobo など他のイーブック・リーダーにアップロードして読むこともできます。

スマホやタブレットなど、汎用モバイル機器で読むには、Google Play ブックス専用アプリをインストールします。Android では、このアプリがデフォルトで入っているはずなので、これを開いて読みます。アップルの iPhone、iPod touch、iPad で読むには、iTunes の App Store で配信中の iPhone、iPod touch、iPad 用 Google Play ブックス をインストールします。

カントの超越論的哲学』を epub 以外のフォーマットに変換したいのであれば、オープンソースの電子書籍管理ソフト、Calibre を使うことをお勧めします。

3. 販売場所

販売価格は小売店によって異なることもあります。リンク先で確認してください。

4. 表紙画像

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横幅360ピクセルに圧縮した『カントの超越論的哲学』の表紙画像(クリックすると拡大できます)

5. 書誌情報

  • Title :: カントの超越論的哲学
    • Furigana :: カントノチョウエツロンテキテツガク
    • Romaji :: Kant no Choetsuronteki Tetsugaku
  • Author :: 永井俊哉
    • Furigana :: ナガイトシヤ
    • Romaji :: Nagai, Toshiya
  • Author bio :: 著作家。インターネットを主な舞台に、新たな知の統合を目指す在野の研究者。専門はシステム論。1965年8月、京都生まれ。1988年3月、大阪大学文学部哲学科卒業。1990年3月、東京大学大学院倫理学専攻修士課程修了。1994年3月、一橋大学大学院社会学専攻博士後期課程単位修得満期退学。1997年9月、初めてウェブサイトを開設。1999年1月、日本マルチメディア大賞受賞。電子書籍以外に、紙の本として『縦横無尽の知的冒険』(2003年7月, プレスプラン)、『ファリック・マザー幻想』(2008年12月, リーダーズノート)を出版。
  • Language :: ja
  • Page :: 320ページ
  • Publisher :: Nagai, Toshiya
  • ISBN :: 9781311722218 (Smashwords, Inc.)
  • BISAC :: Book Industry Standards and Communications
    • Philosophy / Criticism
    • Philosophy / Epistemology
    • Philosophy / Ethics & Moral Philosophy
  • Tags :: キーワード
    • Japanese :: 認識論, 時間論, 人間原理, 目的論, 倫理学, 形而上学, コスモロジー
    • English :: philosophy, metaphysics, ethics, cosmology, epistemology, anthropic principle, teleology, immanuel kant, transcendental idealism, noumenon

6. 短い概要

超越論的哲学は、超越的哲学や経験的哲学とどう異なるのか。超越論的哲学における超越とは、どこからどこへと超越することなのか。理論理性と実践理性は別なのか。イマヌエル・カントの構成主義を行為論として解釈し、その行為の目的を問いつつ、『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の三批判書全体を超越論的哲学という観点から再構築する。

7. 長い概要

たんに感性的所与を記述しただけの「今、私には、かくかくのように見える」という命題は、間違うことはない。また「AかつAでないということはない」という矛盾律も絶対的に正しい。なぜならば、それは誤謬を誤謬と判断する基準そのものであるからだ。しかし、こうした「真理」は、真理の名に値しない最も貧しい真理である。真理の名に値する真理を獲得するには、確実だが、狭い真理の領域から《超越》しなければならない。そのような超越が可能かどうかを論じる哲学が、超越論的哲学である。

超越論的哲学の源泉となったイマヌエル・カントの哲学では《超越論的 transzendental》は《超越的 transzendent》から区別される。ドイツ語の接尾辞“-al”には、「…に関する」という意味があり、したがって、超越論的哲学における認識とは超越に関する認識ということになる。全知全能の存在者が限界を持たず、したがって限界を認識することもないので、端的に超越的であるのに対して、有限な存在者は自己の限界を意識せざるをえず、その認識の様態は超越論的になる。

ソクラテスは、「無知の知」ゆえに、すべてを知っていると僭称する他の人々よりも優れていた。「生兵法は大怪我の基」という諺にある通り、自分の能力の限界を知らない人ほど、大失敗をするものだ。自分の無知を心得ている人は、無理をしないし、その限りでは利口なのである。この意味で、自分の認識に限界があると認識できる人は、実は自分の認識の限界を超越している。限界の内部にいる人には、限界が見えない。限界を超越して初めて、限界を認識することができる。カントもまた、「無知の知」ゆえに、たんなる無知以上の智者だった。

カント以前の哲学者たちは、認識とは物自体の認識であると考えていた。大陸における合理論的哲学者たちは、それが可能であるとする独断論的主張を行い、英国における経験論的哲学者は、それを疑問視する懐疑論的な結論を下した。カントは、合理論的独断論者と経験論的懐疑論者が共有していた「認識とは物自体の認識である」という大前提を否定し、物自体から区別された現象を認識の対象とすることで、アプリオリな総合判断が可能であると考えた。

私たちは、不完全であっても、世界を理性的に認識しようとするし、道徳法則に従って理性的に行為しようとする。理論的ならびに実践的な意味で人間理性によって理性的に創られた現象界は、理性を究極目的としているとみなすことができる。この歴史観は、人間原理の哲学バージョンと名付けることができる。人間原理とは、宇宙において人間に特殊な地位を与えない宇宙原理とは対照的に、観測可能な宇宙における観測者に特別な地位を与える原理である。マルチバース全体を物自体、観測可能なこの宇宙を現象界なぞらえるなら、人間原理とカントの超越論的哲学との間に類似性を見出すことができる。したがって、カントの超越論的哲学は、超越論的目的論として特徴付けることができる。

8. 関連著作

カントの入門書や解説書は、山のようにある。私が学生時代に読んだ当時の定番は、

岩崎武雄『カント

であるが、最近のものとしては、

石川文康『カント入門

御子柴善之『カント哲学の核心

などがある。ユニークなアプローチをとっているカントの入門書としては、

坂部恵『カント

中島義道『カントの読み方

などがある。

入門書を読んで、ある程度問題意識を持ったら、カントの著作を直接読んでみよう。カントの名著は、哲学の古典中の古典なので、ドイツ語ができるなら、ドイツ語の原書を読んだほうがよい。まずは、主著である三批判書。

倫理学や法哲学に興味のある人は、

も読むべきだ。