どうすれば日本経済は成長するのか
80年代末のバブル崩壊後、日本経済は10年以上にわたって停滞している。いつまでたっても日本経済が回復しないのは、チャンスとマネーの供給が不十分だからである。チャンスの供給は政府の仕事で、マネーの供給は中央銀行の仕事である。しかるに日本政府は、公共投資の拡大により、非効率な保護産業を肥大化させて、潜在的需要を掘り起こすチャンスを民間企業から奪い、日本銀行は、未曾有のデフレスパイラルが進行しているにもかかわらず、インフレを恐れて金融緩和には一貫して慎重であった。
1. デフレスパイラルとは何か
現在日本経済が直面している不況の本質は、バブル崩壊に伴う資産価格の下落が惹き起こしたデフレスパイラルである。デフレスパイラルには、
- 賃金硬直モデル
- 賃金伸縮モデル
の二つがあるので、分けて説明しよう。デフレによって資産価格が下落すると、逆資産効果により、消費が減退する。企業は、商品を売るために値下げを余儀なくされるが、このとき、
- 賃金を引き下げられないなら、企業の収益を圧迫するので、生産と雇用が縮小する。生産の縮小は中間財需要を減らし失業者の増加は最終財需要を減らす。需要が量的に減るのなら、供給も量的に減らざるを得ない。この場合、デフレスパイラルとは、需要と供給が螺旋的に減少を続ける縮小再生産ということになる。
- 賃金を引き下げるなら、Aの時よりも物価下落率が大きくなる。商品を値下げしても、消費者の購買力も同様に下落していて、そして将来のさらなる値下げを予測して買い控えをするために、売り上げが伸びない。また資産家は、貨幣価値のさらなる上昇を予測して、投融資を控える。この場合、デフレスパイラルとは、予言の自己実現的なマネーサプライの伸び悩みということになる。
どちらのモデルでも、経済が成長しないという結果には変わりがない。そして、AのモデルからBのモデルに移行中の現在の日本では、AとBの事態が複合的に起きている。
2. デフレスパイラルから抜け出すには
デフレに対して日銀が最初に実行した金融政策は、金利の引き下げだった。日銀は1999年2月の政策委員会・金融政策決定会合で、短期金利の誘導対象となる無担保コール翌日物金利を、手数料を除けばゼロになる水準にまで引き下げた。しかしその効果は限定的だった。いわゆる「流動性の罠」と呼ばれている現象で、名目利子率が下限に達すると、貨幣の資産需要が無限に大きくなってしまう、つまりタンス預金が増えてしまう。これでは投融資は活性化しない。
流動性の罠から抜け出すには、ベースマネーをアグレッシブに増やして、一方で実質利子率を下降させ、他方で人々にインフレ期待を抱かせ、名目利子率(実質利子率+期待物価上昇率)を上昇させればよい。このクルーグマンの提案を日銀はこれまで頑なに拒否してきたが、2001年3月の政策委員会・金融政策決定会合で、日銀は、金融市場調節の主たる操作目標を、無担保コールレートから日本銀行当座預金残高に変更し、量的金融緩和への道を開いた。
この決定に対して市場は肯定的に反応したが、当初日銀が行った量的金融緩和は、短期国債や手形の買い入れなど通常の公開市場操作だったため、金融機関の貸し出し増にはつながらなかった。国債の買いオペといっても、短期債はゼロ金利だから、ゼロ金利の債券を同じくゼロ金利の債券である紙幣に置き換えても、効果はない。そこで、日銀は、ゼロ金利の短期国債から比較的金利の高い長期国債へとオペの対象を広げている。日銀の量的金融緩和は、手法自体評価できるが、現行(2002年現在)の月8000億円という長期国債の買い入れ額は、市場にインフレ期待を抱かせるには少なすぎる。
もっとも、私は、量的金融緩和を十分行えば、それで日本経済が回復するとは考えていない。もし日本に魅力的な投融資先がないなら、量的金融緩和で増大したマネーは海外に流出してしまうだろう。量的金融緩和は為替レートを円安にする。もし人々が円安期待を持ちつづけるならば、消費者は、将来の値上がりを見越してブランド物を輸入しようとするようになるだろう。また資産家は、円に見切りをつけて、資産を外貨で保有しようとするかもしれない。その場合、量的金融緩和は、海外の経済を活性化するだけの効果しかもたらさない。最近、円安で日本経済をインフレにせよと主張する人を見かける。円安は、確かに輸入品の物価を上昇させるし、輸出企業にとっては追い風になる。しかしこれは、キャピタルフライトを惹き起こし、日本経済を破滅させることになるかもしれない危険な方法である。
幸い日本は、外貨準備高が世界一なので、その気になれば、市場介入で円安期待を打ち砕くことができる。問題は、円買い介入という後ろ向きの方法でではなく、日本への投資の拡大というもっと前向きな方法でキャピタルフライトを防ぐには、どうすればよいのかということである。
3. 構造改革はデフレを悪化させない
その答えは、構造改革である。もっとも構造改革という言葉は、最近ではほとんど何も意味しないほど濫用されている。例えば、「不良債権の抜本的処理こそ真の構造改革だ」という主張をよく耳にするが、どんなに「構造」という概念を拡大解釈しても、不良債権処理は構造改革ではない。この主張をしている人たちは、不良債権がデフレの原因だと思っているようだが、不良債権はデフレの結果であって原因ではない。さらに付け加えると、不良債権の処理自体がデフレの原因の一つになっている。実際、この5年間で銀行部門は55兆円もの不良債権処理を行ったが、それはデフレを深刻にするだけで、不良債権の残高を減らすどころか逆に増やしてしまっているのである。
もし構造改革という言葉が、民間の投融資を拡大させるような供給サイドの変革を意味するのなら、構造改革とは、保護産業への市場原理の導入でなければならない。こう言うと、「市場原理を導入すると、値下げ競争が激化し、合理化(余剰人員削減)により失業者が増えるので、デフレスパイラルを加速させることになる。現在の不況は需要不足が原因なので、公共投資を増やして、政府支出を増やすべきだ」という反論が返ってくる。実際、経済討論の多くは、「構造改革かそれとも景気対策か」といった不毛な二律背反に基づいている。
「供給は自ら需要を作り出す」という古典派のテーゼをセイの法則と呼ぶとするなら、「需要は自ら供給を作り出す」はケインズの法則と呼んでよいかもしれない。ケインズが言うように、セイの法則は本当に間違っているのだろうか。供給が常に需要を作り出すわけではないが、作り出すこともあるという事実は認めなければならない。少なくとも先進国では、営利企業は既存の需要に対して受動的に供給を行っているわけではなく、消費心理を煽って、能動的に新しい需要を開拓しようとしている。
4. どうすれば高齢者は金を使うか
市場原理の導入が、なぜ消費の拡大につながるのか疑問に思っている人のために、具体的な例を一つ上げて反論してみたい。現在、50歳以上の高齢者が日本の金融資産のうち8割以上を所有している。だから、高齢者が消費を増やさない限り、総需要は増えない。高齢者にとっても資産は命の次に大切なものだが、命ほど大切ではない。もし健康な長寿を買うことができるのなら、惜しみなくお金を使うはずだ。ところが、社会主義的経営を続ける現在の医療産業は、こうした潜在的な需要を掘り起こそうと努力していない。
医療産業の社会主義的経営で特に問題なのは、診療報酬制度と医療保険(社会保険と国民健康保険)制度である。
診療報酬が医師の能力や成果とは無関係に画一的な公定価格で支払われる結果、膨大な消費者余剰が生じている。もし診療報酬が市場価格で支払われるようになるならば、富裕な高齢者は、ブランド病院で名医の治療を受けるために大金を支払うようになるだろう。他方で新米の医師は、低価格で診療を引き受けるであろうから、貧しい高齢者が医療から疎外されることはない。成功報酬制を導入する病院も出てくるかもしれない。サービスと価格の差別化で、消費者余剰という潜在的需要が顕在化する。
医療保険は、受益者負担となっていないところが問題である。しばしば「老人は弱者」といわれるが、若い世代はマイホームのローンなどで貯蓄弱者となっており、年寄りの世代のほうが貯蓄強者である。しかるに医療費は、高齢者の方が優遇されている。しかも高齢者ほど医療サービスを受けることが多いので、医療保険は、若い貯蓄弱者から年寄りの貯蓄強者への資金移転として機能している。これでは全体の消費は増えない。政府は生活保護以外の社会保障から撤退し、医療保険を民間の金融機関に任せ、受益者負担の原則を貫くべきだ。
アメリカでは、GT(Genome Technology 遺伝子工学)がITに続く情報革命第二弾として注目されているが、日本では、これから高齢化社会だというのに、様々な規制が邪魔になって一向にビジネス化が進んでいない。これは、研究機関が、医療機関と同様に社会主義的経営を続けているからである。日米欧政府の国際ヒトゲノム計画がアメリカの一ベンチャー企業である Celera Genomics 社のスペードに及ばないことから明らかなように、GTも非効率な官僚組織よりも民間の営利企業が中心になって推進する方が望ましい。もし日本が大学と病院に大胆な市場原理を導入しなければ、高貯蓄の高齢者の需要をアメリカのGT産業に奪われる可能性もある。
隠れた需要を引き出すためにも、小泉内閣は、保護産業に市場原理を導入するべきだ。その意味で、小泉首相が口癖のように唱える「構造改革無くして景気回復はなし」という命題は正しい。問題は実行できるかどうかである。
ディスカッション
コメント一覧
「公共投資の拡大により、非効率な保護産業を肥大化させて、潜在的需要を掘り起こすチャンスを民間企業から奪い」の部分について、実情を報告させて下さい。公共工事はすでに15パーセントの単価の引き下げが実施され、工事費の縮減が達成されています。現在はすでに建築工事においては、設計価格はありません。市場価格で予算が作られます。公共工事の予算の1割削減は、末端の施工段階では実質的には3割の削減と同じです。小渕内閣の時に損益分岐点を上昇させてしまった零細企業は塗炭の苦しみにあえいでいます。
従来、建設業は他産業からの落ちこぼれを収容する雇用の受け皿となってきました。日本の建設業は人員を抱え込まされています。アメリカのベクテルのようなゼコンは人員を抱え込みません。仕事を受注したときにユニオンから人員を受け入れて、竣工してから、またユニオンに人員を返します。トレーニングを積んでユニオンに登録された人達は、退職金制度が完備して老後の生活が、保証されていますので、現場でも夢を持って仕事をしています。残念ながら、日本は基本的にはイジメの社会です。戦前は韓国人や中国人をいじめていましたが、戦後は日本人どうしでいじめあいをしています。
ユニオンを整備して、ワークシェアリングを行えばダッチミラクルの再来になります。50歳以上の人達は老後の生活に怯えているから、たんす預金をするのです。今の日本の国民負担率は49.8パーセントです。江戸時代の5公5民と同じです。国民の6 パーセントが公務員です。江戸時代も武士が人口の6パーセントを占めていました。安い労働単価でワークシェアリングを行い、どれだけ楽しく働くか?そして現在世界第26位の労働生産性をどれだけ、高めるかが日本再生の決め手だと思います。
近年、正社員として就職することなく、フリーターになる若者が増えていますが、あれは一種のワークシェアリングです。就職難といわれる時代ですが、正社員にこだわらなければ、仕事はいくらでもあります。正社員の求人が減ったおかげで、非正社員の雇用が増えているのです。自然発生的な雇用形態の脱正社員化とその結果としてのワークシェアリングは、労使の選択の自由を増やすという意味で望ましいと思います。しかし、労働組合が企業に圧力をかけて行う強制的画一的なワークシェアリングには反対です。このタイプのワークシェアリングは、経営の非効率化を招くだけです。
J.Iさん、はじめまして
貴方のご意見には反対です。
非正社員の雇用が増えることが望ましいというのはどのようなご立場のご意見でしょうか?そういう考え方がワーカーをどれだけ苦しい立場に追い込んでいるのかご理解してますか?
現在の日本経済のかなりの部分をワーキングプアと呼ばれる人々が支えていると言われています。逆に言うとそれらの人々の経済的犠牲の上に成り立った社会ですね。
ワーキングプアに追いやられた原因は本人にもあるでしょう。
しかしこういった日本国民を属国扱いしたやり方は非常に腹立たしい思いを感じます。
日本とその国民は戦後、焼け野原の状態から様々な苦労を乗り越えて60年間で経済大国と言われるまでに国を成長、発展させてきました。
やっとたどり着いたと思ったところの到達点がこの有様です。
その労苦に見合った繁栄の生活を日本国民は享受できてるとは思えません。
もてるものも、もたざるものも、等しくこの国の実情を我が事として
今一度謙虚に考えてなおしてみる必要があると思います。
勝ち組と言われている人たち、少しはワーキングプアで苦しんで流している涙を
瞬間でもよいので感じてあげてください。
1日も早く日本人が等しく夢と希望に満ちた生活がおくれる社会になりますように…
現在の日本におけるデフレスパイラルの原因のひとつは、少子化に起因する人口減少であろうと思います。人口減少によって国内の有効需要が減退して、デフレになっていくわけです。
”隠れた需要を引き出すためにも、小泉内閣は、保護産業に市場原理を導入するべきだ。その意味で、小泉首相が口癖のように唱える「構造改革無くして景気回復はなし」という命題は正しい。問題は実行できるかどうかである。”
社会の構造を変動させるには、戦争か革命か外圧しかありません。こんなことは、百年以上前にマルクスが指摘しています。議会制民主政治のもとでの構造改革なんて、自己矛盾でしかないのです。(構造改革に反対する人間のほうが、賛成する人間よりも多いからです。)
デフレはマネーサプライの減少が原因であって、少子化が原因とは思いません。あなたは、少子化と経済成長が同時に起きている現在の中国をどう考えますか。
「経済的な面を含めた閉塞状態が20年におよぶ」理由の1つに「社会の老化」があると思います。確かに20年前と比べると高齢者の割合と数は増加しています。ここまでの高齢化のスピードが速い(ただ、中国や韓国では今後の高齢化のスピードが、日本を抜く可能性があります)日本では「老いる社会」になっており、どうしても気分的に萎えてしまいがちで、若い世代が「明るい将来」と言う発想ができないと思います。ただ、「無条件で将来が明るい」と言う発想は必ずあるものではなく、少なからず「将来の不安」と言うものがいつの時代もあると思います。2010年代は「老荘青」のバランスが取れた社会を築き、経済成長をする事が課題ですね。少子化の流れは短期的には是正が難しいと感じます。少子化を是正できればそれだけで経済効果があります。
私は、今の日本に必要なのは、少子化を阻止することではなく、労働市場における年齢差別を撤廃することだと思います。中途採用に消極的で、35歳以下は採用しない新卒至上主義、実力よりも勤続年数で待遇が上昇する年功序列システム、定年で強制的に退職させる定年制度といった年齢差別を放置しているから、日本経済の閉塞状況がいつまでも打破されないのです。特に定年制は大きな問題を惹き起こしています。定年退職した技術者が、アジアの企業に再就職して、技術流出を加速したり、生きがいを失って、健康を損ね、社会保障費を増大させたりしています。逆に言うと、高齢者を労働者として活用することができれば、少子高齢化は問題でないということです。
高齢者でも健康で大きな持病も障害もない(認知症でもない)人が、再雇用できれば最近の団塊の世代が抱える「老人性うつ病」(人間関係が変わったり生きがいを失って落ち込む事)などを回避できるんですね。現に農家の人で老人性うつ病が少ないと言うのもそれですね。芸能人や農家と職人の人には「定年」は存在しませんからね。高齢でも一定の収入を確保できれば、年金支給の節減にもつながると言うことですか。返答文中の「新卒規定」については解釈を柔軟にしようと言う動きがありますね。プロ野球で言う「新人王」と概念が同じ(プロ野球では新人王の資格は、「入団1年目の選手」だけに限定されていない)になりそうです。例えば60歳での定年後の再雇用を契約制にすると、「正規雇用枠」を別枠で用意すれば新卒者の雇用を確保できますね。実現は難しいですが、これをすれば就職難は緩和されますね。「契約制での再雇用」はファストフード店で導入されています。この場合は他ジャンルからの再就職になりますが。ただ、定年を事実上撤廃すると年配者が在職中に死去することも当然出てくるので、専門技術やビジネスのノウハウなどの伝承を潤滑にする必要はありますね。実際にあらゆる世代を「自由雇用」にして、「職にあぶれる」ことをなくすと経済効果はどれくらい出ますか?
菅政権は、経済対策の一環として、高校や大学を卒業してから3年目までの人を新卒と同じ条件で正社員に採用した企業に、採用拡大奨励金として100万円を支給すると、2010年9月に発表しました。正社員を過剰に保護している現在の雇用システムを温存したまま、こうした彌縫策を打ち出しても、抜本的な雇用対策にはならないでしょう。重要なことは、新卒枠を広げることではなくて、新卒枠と中途採用枠の区別そのものを撤廃することなのですから。
有料の研修コースを作って、技術伝承をすればよいでしょう。
解雇規制を撤廃したからといって、失業率がゼロになるわけではありません。しかし、未利用労働力が活用できるようになれば、その経済効果は大きいと言うことができるでしょう。
日本経済が成長しない最大の原因は、圧力団体だと思います。
特に農業がひどいです。弱者である日本の農業を圧力をかけて保護した結果、どうしようもない状況になりました。
最近、TPP問題が話題になりましたが、TPPの参加も農林省の圧力で否決するでしょう。
官僚や政治家は、自分の利権のためにデフレを続けているように見えます。デフレになると「大きな政府」を望み、政府が大きくなるほど自分たちの利益になるからです。
もう、日本経済が成長する見通しはないでしょう。なぜなら、少子高齢化や人口減少でデフレを克服することができないからです。
そして、日本経済は、そのままデフォルトで破綻して、日本人は「奈落の底での生活」をせざる負えなくなるでしょう。
その未来が分かっているから、多くの国民たちはあきらめています。
経済学者や新聞が日本の悲惨な未来を描いています。
[人口減少時代の大都市経済 – 池田信夫ブログ]
[未知の領域に踏み込む日本~The Economist 日本特集(1/10)~]
「公共投資の拡大により~チャンスを民間企業から奪い」→橋本政権以降一貫して減らしています。「マネーの供給が不十分」→第二次安倍政権で金融緩和しましたが2期連続で景気後退しています。
まず、金融緩和ですが、これは、円安、資産インフレ、雇用の増加をもたらしたのですから、明らかに効果があったと言うべきでしょう。2015年4-9月のリセッションは、中国におけるバブル崩壊が原因であり、日本の金融緩和が原因ではありません。
「もっとも、私は、量的金融緩和を十分行えば、それで日本経済が回復するとは考えていない」と本文に書いたとおり、日本経済の成長には、構造改革が必要です。多分この投稿者は、「構造改革=公共投資を減らすこと」と考えているのでしょうが、本文に書いたとおり、「構造改革とは、保護産業への市場原理の導入でなければならない」。市場原理を妨げている要因は、他にもたくさんあり、そうした阻害要因の弊害を除去しなければ、日本経済は成長しません。
なお、アベノミクスに関しては、「アベノミクスの三本の矢」で取り上げているので、そちらを参照してください。
経済成長とは「GDPの成長」です。効果があったかどうかはGDP成長率であり、結果は2期連続でマイナスでした。この期間に中国はバブル崩壊しましたが外需寄与度はプラス1.0%です。
現在のリセッションの原因が中国経済の減速であるというのは、かなり一般的な見方です。参考までに日経新聞の記事を引用しておきましょう。
もとより、安倍政権発足以降、日本の実質国内総生産が思うように増加していない本質的な原因は、外部要因(あるいは民主党政権時代からの置き土産である消費税増税)ではなくて、構造改革の不十分さにあると私は考えています。「アベノミクスの三本の矢」で、私は金融緩和と構造改革の関係を麻酔と手術の関係に譬えました。
私は、金融緩和に明らかに効果があったと書きましたが、それは麻酔としての効果であり、麻酔が麻酔としての効果を発揮しても、手術をしなければ、病気は治りません。日本の経済成長についても同じことが言えます。
参考までに、内閣府が公表している実質GDPの成長率(のマイナス)の内訳を記載します。内需寄与度が▲0.3%、外需寄与度は0.1%のプラスです。「中国が~」とやる前に、外需寄与度がプラスであるという現実を踏まえる必要があります。
中国のバブル崩壊が悪影響を与えたのは、輸出に悪影響を与えたからではなくて、投資家心理に悪影響を与えたからです。中国市場での株価の急落と連動して、日本を含めた世界の市場で株価が大きく下落しました(日経平均でいえば、二万円台から一万八千円を切る水準まで下落しました)。株価は投資家心理を反映しており、これは世界経済の先行きに対して投資家が弱気になったことを意味しています。企業の設備投資も株への投資と同じで、先行きが不透明になれば、慎重になるものであり、今回、それが主要因となって、国内総生産を押し下げたということです。
なお、日本経済ではリセッション(2四半期連続のマイナス成長)は珍しい現象ではなく、わずか五年間で四回も起きています。これは日本経済の潜在成長率がほぼゼロで、小さな要因で、すぐにマイナスになるからです。これに対して、米国経済の潜在成長率は2%程度あり、簡単にはリセッションになりません。だから、本当の問題は、国内総生産の成長率が各四半期ごとにマイナスかプラスかということよりも、長期的に見てゼロ成長であるということです。あなたは、日本経済の潜在成長率がほぼゼロである原因はどこにあると考えていますか。
GDP減少の要因は構造改革(規制緩和)と緊縮財政(公的資本形成削減)によるデフレです。過去17年間に渡り公的資本形成を減らし続け、中国のGDPの増減によらず日本のGDPは減少を続けましたが、例外は公的資本形成を増やした小渕政権、麻生政権期のみGDP成長率がプラス化しており、税収も増え財政も改善しています。
まず、この命題が正しいかどうかを検証しましょう。以下のグラフは、1995-2015年度における日本の国内総生産の成長率です。
表にすると以下のようになります。
日本の国内総生産の成長率は、世界の経済動向に左右されています。1997年度から1998年度にかけて悪化していますが、これは1997年のアジア通貨危機と1998年のロシア財政危機が背景となっています。小渕内閣の期間は、1998年(平成10年)7月30日から1999年(平成11年)1月14日までで、1998年度に相当し、その年度の成長率はマイナスでした。その後米国のドットコムバブルで景気が良くなり、2000年のドットコムバブルの崩壊により、再び景気が後退します。小泉内閣が、2001年(平成13年)4月26日に発足したのはそういう時期です。その後、外部環境が比較的安定していたこともあり、小泉政権が終わる2006年(平成18年)9月26日まで、実質的成長率が2%近くまで上昇しました。しかし2008年度以降、米国でサブプライム・ローン危機が表面化しました。麻生内閣はその時期の政権で、2008年(平成20年)9月24日から2009年(平成21年)9月16日までです。その時期は、成長率は大幅なマイナスに転じた時でした。
このように、日本の国内総生産の成長率は、外部要因に左右されるので、成長率がマイナスだった小渕政権と麻生政権のバラマキ政策が間違いで、長期にわたって成長率をプラスにした小泉政権による改革路線の政策が正しかったということを国内総生産の成長率だけで示すことはできません。しかしながら、構造改革(規制緩和)と緊縮財政(公的資本形成削減)を推進した小泉竹中改革の結果、実質的成長率が2%近くまで上昇しましたことは特筆に値することです。いずれにせよ、よって、「過去17年間に渡り公的資本形成を減らし続け、中国のGDPの増減によらず日本のGDPは減少を続けましたが、例外は公的資本形成を増やした小渕政権、麻生政権期のみGDP成長率がプラス化しており」云々という文章は、統計結果に反しています。
次に税収と財政の推移を見てみましょう。国と地方のプライマリーバランスは、小渕内閣の平成10年度と麻生内閣の平成20-21年度には悪化していますが、小泉内閣の時代の平成13-18年度には好転しています。
次は、歳出総額と税収の推移です。小渕内閣の平成10年度と麻生内閣の平成20-21年度には、税収が落ち込み、歳出が増え、結果として公債発行額が増えています。小泉内閣の時代の平成13-18年度には、歳出が抑制され、税収が増え、結果として公債発行額が減っています。
以上から、小渕政権、麻生政権期に「税収も増え財政も改善しています」というのは正しくありません。
また、日本と米国は同じ先進国で、「成熟経済」であるにもかかわらず、米国経済の潜在成長率が2%程度あるのに対して、日本のそれはゼロに近いという差を「構造改革(規制緩和)と緊縮財政(公的資本形成削減)」で説明することはできません。日米の違いは何に起因するとあなたは考えているのですか。
GDP成長率は「麻生政権期がプラス」なのではなく「麻生政権期の経済政策でプラス化した」です。
公的資本形成はGDPにそのまま計上されるのでGDP成長率が押し上げられるのは当たり前ですが、効果が出るのは予算が執行された年以降です。公的資本形成を増やした政権(小渕、小泉、麻生)の経済対策予算が通った翌年(’99,’01,’08)にプラス化し、その後税収が増えPBが改善しています。
米国でも公的資本形成を増やす議論があり(サマーズ、バーナンキ)、ポールクルーグマン、ルー財務長官などは日本にも財政出動により需要を喚起するよう求めています。
”前FRB議長:長期停滞論に反論 サマーズ氏と論争”
http://mainichi.jp/select/news/20150408k0000m020115000c.html
“ポール・クルーグマン「苦しむ日本がとるべき道筋」”
http://econ101.jp/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%80%8C%E8%8B%A6%E3%81%97%E3%82%80%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8C%E3%81%A8%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E9%81%93/
”日本政府、内需主導型成長に向け財政支援を=米財務長”
http://jp.reuters.com/article/2015/11/16/japan-usa-economy-idJPKCN0T50BB20151116
前回、小渕と麻生だけだったのに、今回、なぜ小泉を入れたのですか。小泉政権は公共事業費を削減したのに、なぜ公的資本形成を増やしたと言えるのですか。また、もう一度表を見てほしいのですが、2008年度のGDPの成長率は大幅なマイナスです。1999年にはプラスになりましたが、これは、前回申し上げたとおり、ドットコムバブルのおかげですし、2010年度以降のリーマンショックに対する反動増も世界的に見られた現象ですから、日本の政権による経済政策を評価する根拠にはなりません。
公共投資が経済成長をもたらすという説は、理論的にも否定されています。変動相場制のもとで国債を発行して財政支出を行うと、市場金利が高くなり、自国通貨高をもたらし、輸出が減り、それが公共支出増加の効果を相殺してしまいます。所謂マンデル=フレミング効果です。小泉とその後継者たちの努力により、日本の公的固定資本形成のGDP比は、8%から4%へと半減しましたが、それ以上に純輸出のGDP比は増加し、長期にわたるGDPの増加と財政の改善をもたらしました。
米国は、日米構造協議のころから同じことを言っていますが、それは日本の国益のためではなくて米国の国益のためにそう言っているのです。積極財政は、マンデル=フレミング効果により需要を海外に流出させてしまいます。1980年代以降、米国は日本への輸出を増やすことで、貿易赤字を解消したいと考えていますが、私たちはもっと日本の国益のことを考えた方がよい。もちろん、公共事業の増加で潤う国内の人もいますが、それは特定の人たち限定の話です。米国で公的資本形成を増やす議論があるといっても、もともと公的固定資本形成のGDP比が低い国の話であり、日本の公的固定資本形成のGDP比を引き上げる根拠にはなりません。
ちなみにアメリカも財政出動を増やしており公的資本形成対GDP比率の推移は1996年を100とすると2009年時点で日本は50.1、アメリカは200.9です。
以下のグラフは、主要先進国の1960-2010年における一般政府総固定資本形成のGDP比の推移を示したものです。日本は、1996年時点で 6.3% と異常に高かったので、それを基準にすると大幅に下がってはいますが、それでも他の先進国並みの 3% 程度あるので、低すぎる水準にあるとは言えません。
なお、米国のデータでは、2008SNA により、兵器、データベース、研究開発を新たに一般政府総固定資本形成にカウントするようになったので、過去と比較する際には、基準変更の影響を勘案するべきです。他のOECD諸国も同じ基準変更をしていますが、日本は2017年に行う予定なので、その間は単純な国際比較はできません。
H16(’04)小泉政権で公共事業は増やしていますが、公的資本形成は増やしていないため抜くとしても、H11(’99)小渕政権、H21(’09)麻生政権で公的資本形成を増やし、2回ともGDP成長率がプラス化しており、長期で見ても’96の+2.7%から▲0.2と減っています。
財政出動を行っても日銀の長期金利は20年近く2%を割り続け、’14には0.1%台まで下がっています。また輸出依存度はGDP比で韓国の46%、ドイツの38%に対し日本は13%(’10)程度しかないためGDP成長率が上がり内需が増えればプラスになります。財政出動の中身は公的資本形成に限らず、医療報酬・介護報酬引き上げ、減税等であれば特定の人たちに限定されません。
小泉政権は公共事業を増やしていません。何を根拠にそのようなことを言うのですか。
日銀の長期金利と市中金利(市中銀行が貸出しを行う際の基準金利)は同じではありません。
市中金利の上昇が影響を与えるのは輸出入だけではありません。市中金利の高騰は、国内における民間の経済活動を直接抑制します。公共投資の拡大が民間投資を抑制する現象は、クラウディングアウトと呼ばれています。但し、日本では、マンデルフレミング効果の方がクラウディングアウト効果よりも大きいと言われています。直接輸出に従事していなくても、間接的に関わっている事業者が大きいから、実際には影響は大きいのです。
あなたはこれまで公的資本形成の話をしてきたのに、なぜ話を変えるのですか。
公共事業は補正を含めH16(’04)(第二次小泉政権)に増やしています。
財務省HP:
https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014/sy014s.htm
市中金利も下がりつづけています。
厚生労働省HP:
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/10/s1008-4b4.html#top
緊縮財政によるデフレのためGDP成長率が悪化しているので、財政出動を増やせばGDP成長率が上がります。GDPとは、
「国民が生産者として働き、モノやサービスを生産し、顧客が消費・投資として支出し、創出された所得」
の合計です。具体的には「民間最終消費支出+政府最終消費支出+民間企業設備+民間住宅+公的固定資本形成+在庫変動+純輸出」です。公的資本形成や医療報酬(政府最終消費支出)はGDPに計上されるためドットコムバブルと違い、統計上「必ず」GDPを押し上げます。
リンク先のグラフを引用しましょう。
平成十五年の補正が極端に小さかったから、平成十六年には、補正を加えると増えたことになりますが、そこだけ取り上げても全然意味がありません。平成十三年から平成十八年まで続いた小泉政権が公共事業を減らしたことは、このグラフからも明らかに読み取れます。小泉政権とその後継者が公共事業を長期にわたって大幅に削減したにもかかわらず、なぜ国内総生産が増加し、財政が改善したのかという私の問いに対する答えになっていません。
リンク先にあるグラフは、1980-2001年の期間のものです。長期のトレンドとして経済成長率の低下とともに金利が下がるのは当然でしょう。しかし、公共投資の拡大が、短期的に金利に上昇圧力をかけるのは事実です。但し、金利が上がると海外マネーが流入するので、それによって金利が再び低下する一方で、円高になります。「日本では、マンデルフレミング効果の方がクラウディングアウト効果よりも大きい」と書いたのはそういうことです。
そこを押し上げても、他を押し下げたなら、全体としては効果なしということになります。
では、効果がないのなら、有益でもないが、有害でもないのかと言えば、そうではありません。社会主義経済が典型的にそうであるのですが、政府主導の経済は、イノベーションを阻害します。官民一体の取り組みが促進するのはせいぜい持続的イノベーションであって、破壊的イノベーションではありません。クリステンセンも、日本経済停滞の根本原因を破壊的イノベーションの不足に求めています。イノベーションが不足しているから、生産性が向上しないし、生産性が向上しないから、経済は成長しないのです。
議論が長くなったのでまとめます。
不況の原因は
永:公共投資の拡大 → 匿:’98年以降減らしてる
永:マネーの供給が不十分 → 匿:安部政権で金融緩和した
永:中国バブル崩壊のせい → 匿:中国がバブルのときも悪化してる
永:公的資本形成増やした小渕、麻生政権でGDP成長率がプラス化したのはドットコムバブル、リーマンショック反動のせい
→ 匿:公的資本形成は統計上必ずGDPを押し上げる
→ 永:他が押し下げられる
→ 匿:公的資本形成増やしGDP成長率がプラス化した’00,’10とも民間設備投資、民間最終消費支出とも下がってない
そのまとめは、適切ではありません。まず、議論の混乱を防ぐためにも「不況」という言葉でもって、短期的、一時的なリセッションのことを言っているのか、「失われた十年あるいは二十年」と呼ばれる長期的な経済の低迷のことを言っているのか明確に区別する必要があります。本稿で問題にしているのは、後者であって、前者ではありません。中国のバブル崩壊は、あなたが話題にした現在の二四半期連続のマイナス成長の説明で出てきた話、つまり短期的なリセッションの要因であって、日本が長期的に見てゼロ成長であることの説明として出てきた話ではありません。
公共投資の拡大は、マンデルフレミング効果により経済成長に対してニュートラルです(長期的視点から言うと、民間の破壊的イノベーションを阻害するという点で好ましくない)。日本政府は、バブル崩壊後、1998年度まで公共事業を増やしましたが、効果はありませんでした。その後、他の先進国並みの水準まで引き下げたものの、それが経済成長に悪影響を与えたという証拠はありません。金融緩和は、リフレーションの必要条件ではあっても、十分条件ではありません。では、日本が長期的なゼロ成長から抜け出すには何が必要なのか。それは、これまで繰り返してきた通り、構造改革=市場原理の徹底です。この一番肝心な点が抜けているという点で、あなたのまとめは不適切なのです。
2000年の時も、2010年の時も、その数年前から世界的な経済危機がありました。世界的な経済危機があると、日本でも民間の設備投資や消費が落ち込みます(1997年には消費税が導入されたので、その後買い控えが起きました)。危機が過ぎ去ると延期された投資計画が再開されたり、我慢していた消費が我慢できなくなって、反動で対前年度比率が高くなります。でも、その効果は一時的で、2000年の時も、2010年の時も、翌年すぐに成長率が下がりました。本稿において、私はそうした短期的な成長率の変動の話をしているのではありません。長期的平均的に見て日本の成長率が他の先進国と比べて低いのはなぜなのか、それを高めるにはどうすればよいのかを論じているのです。ともあれ「公的資本形成を増やした小渕政権、麻生政権期のみGDP成長率がプラス化しており、税収も増え財政も改善しています」という命題が正しくないことは御理解いただけたかと思います。
長期で考えると通貨量(マネーストック)は安倍政権で金融緩和する前から現在まで、一貫して増やしています。
マネーストック、名目GDP推移
http://toyokeizai.net/articles/-/13661
一方名目GDPは’97をピークに下がり始めており、前年の’96にそれまで増やしていた公的資本形成も減らしています。’96まで公的資本形成を増やし続けていた間も民間設備投資、民間最終消費は減っていません。
リンク先のページに書いてある通り(あるいはグラフから読み取れるように)、バブル崩壊後、マネーストックは増加しましたが、増加率は減少しました。
インフレになれば、名目GDPは増加します。しかし、何度も同じことを主張することになりますが、私はこうした金融緩和だけに頼る方法を推奨しているのではありません。
どこのデータを参照して書いているのかがわかるように、ソースを明記してください。
増加率であれば’70~’85と’95~’10の15年間はどちらも6.3倍で同じで、2つの期間で後者の方が小泉政権により規制緩和されており、97以降のGDP成長率減少は通貨量の増加率減少や規制強化によるものではありません。
’85~’96で公的資本形成は1.8倍に増えており、民間最終消費支出は2.3倍、民間設備投資は1.9倍
とどちらも増えています。
公的資本形成、民間最終消費支出、民間設備投資:
2009年度国民経済計算(2000年基準・93SNA)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h21/h21_kaku_top.html
2011年度国民経済計算(2005年基準・93SNA)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/h23_kaku_top.html
リンク先で櫨浩一さんが言っていることは、バブル崩壊後(91年以降)のマネーストックの増加率がバブル期(86-90年)と比べて小さくなっているということでしょう。
なぜバブル期とバブル崩壊後を一緒にするのですか。バブル期に消費や設備投資が増えるのは当然でしょう。
とろこで、リンク先にはいろいろなデータがあって、どれのことを言っているのかよくわからないのですが、とりあえず、国内家計最終消費支出を見つけたので、対前年度増加率をグラフにしてみました。
赤色の点線は一次近似線で、長期的に下落トレンドであることを示しています。バブル期にはトレンドを上回っており、バブル崩壊後下振れしたことを見て取ることができます。その後、反動でトレンドまで戻し、96年にはトレンドを上回りました。これは1997年に消費税が増税されることを見越した駆け込み需要によるもので、増税とともに急落しています。小泉政権以降、再びトレンドを上回っていますが、リーマンショックで再び急落となっています。
設備投資の動きは、GDPや家計最終消費の動きと遅行して、1996年にボトムをつけ、1997年に反動増となり、1998年に再びボトムを形成します。遅行はあったものの、他の指数と同じような動きをしています。バブル崩壊後に公共投資を増やし、それが、マンデルフレミング効果により、円高を招き、公共投資の効果を相殺してしまい、民間設備投資もあまり増えませんでした。円高は1995年にピークを迎えましたが、その後、住専問題等、日本で表面化した金融不安により円安になったものの、これは悪い円安であり、民間設備投資の持続的な増加をもたらさなかったということでしょう。
民間企業の目的は「利益」のため、政府が公的資本形成を増やせば民間企業はその需要を見越して投資を増やします。例えば高速道路建設の計画があれば、土木・建築業者は需要を満たし利益を得るため建機を購入します。そのため、あなたが書いた通り設備投資の動きは遅行して(公的資本形成によって増えた)GDPに連動します。
マンデル-フレミング効果(以下MF効果)について繰り返しになりますが、財政出動を増やしても市中金利は上がっていないためクラウディングアウトは起こらない上、日本は輸出依存度も低いので内需が増えてGDPはプラスになります。MF効果が仮にあったとしても、バブル崩壊後に公的資本形成を増やした結果、あなたが書いた通り「民間設備投資もあまり増えません」=増えています。
公共投資を増やそうとすると、さもなくば民間が使うはずのマネー、人材、資源を民間から奪うことになるので、民間経済の成長を抑制することになります。民間がそれらを十分に使っていないのであれば、十分使えるように金融緩和や構造改革を進めるべきで、公共投資を増やさなければならない必然性はありません。結局のところ、政府と民間のどちらがマネー、人材、資源をハイリターンで運用できるかという問題です。もしも政府の方がうまく運用できるというのなら、すべての経済活動を政府が行う社会主義経済の方が、そうではない市場経済よりも経済を成長させるはずですが、歴史はそれが逆であることを示しています。
円高になって困るのは輸出産業だけではありません。円高には金融引き締め効果があり、国内経済にデフレをもたらすので、すべての産業に影響を与えます。また、経済成長はマイナスにならなければよいということではありません。他の先進国並みの高い成長率を維持しなければ、日本のステイタスは下がる一方です。それを防ぐにはどうすればよいかというのが私の問題提起です。
民間企業はデフレ下では投資をしません。それはマネーストックや規制緩和が足りないからではなく、民間企業はマネーの価値が上がり続けるデフレ下では効率的に利益を増やすために資金を持ち続ける(投資をしない)ことが正しいからです。よって民間企業に任せていてはデフレスパイラルから抜けることができないので、政府の財政出動により安定的にインフレ率が2%を越えるようになってから財政支出を絞り民間企業主導の投資に任せる必要があります。
何度も繰り返しになりますが円高で円が買われてマネーストックが減れば金利が上がり金融引き締めと同じ効果になりますが、マネーストックは増え続けているので民間設備投資は減らなかったのです。
あなたは、中央銀行あるいは政府がいくら紙幣を刷ってもインフレにはならないと思っているのですか。日銀の国債引き受けは、財政法第五条により禁止されていますが、日銀は、第五条の但し書きに基づいて、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えに応じています。国による借換えのための国債の引受けを増やすだけでも、リフレ効果はあります。
量的金融緩和で民間設備投資が増えるのであれば、公共事業を増やすべきだという結論にはならないではないですか。
日銀が国債の引受けを増やしてマネーストックが増え続けても、コアコアCPIは下がり続けています。マネーストック(M3)は2006年10月の1019兆円から2013年の11月の1175兆円まで増え続けているのに対し、コアコアCPIは2006年を100とすると2013年は96.1まで下がり続けています。
それはデフレ下ではいくら紙幣を刷っても物やサービスが購入されずに預金だけが増えて物価は上がらないからです。一方公共投資は予算が使われた瞬間に、モノやサービスが購入されるので物価を押し上げます。
1970-2011年の期間で、“インフレ率=-2.1+0.62*2年前のマネーストック増加率”という関係式が成り立ち、相関係数は、0.89 と比較的高い[高橋洋一(嘉悦大)on Twitter]。この式は、マネーストックの増加率が3.3を下回ると、2年後のインフレ率がマイナスになることを示しています。だから、マネーストックを増やしても、コアコアCPIが下がるということも起きるのです。
特にリーマンショック後、日銀は量的金融緩和を行いましたが、米国や欧州の中央銀行がそれをはるかに上回る量的金融緩和を行ったので、円高が進み、国内はデフレになりました。しかし、第2次安倍内閣になって、他国以上に量的金融緩和をした結果、物価が上昇しました。消費増税や原油価格の下落により、直近の物価指数はさえないのですが、食料とエネルギーを除く物価指数は堅調な推移を示しています。
物価は貨幣価値との相対的な関係で決まります。貨幣の数量が増えて希少価値がなくなれば、物価が名目で上昇します。一方、公共事業を増やすことは、それ自体リフレ効果があるものの、その効果は、マンデル・フレミング・モデルに基づく円高(デフレ)効果により相殺されます。
マネーストックと2年後のCPIはバブル期の1993年以前は高い相関がありますが、デフレ期の1996年以降でみると相関係数は0.05でまったく相関がありません。それは物価が貨幣の量では決まらず需要で決まるためです。そのため総需要が減少するデフレ期では、マネーストックが増えてもコアコアCPIは増えなかったのです。
まとめを追加します。
・不況の原因は
永:公共投資の拡大 → 匿:’98年以降減らしてる
永:マネーの供給が不十分 → 匿:安部政権で金融緩和した
永:中国バブル崩壊のせい → 匿:中国がバブルのときも悪化してる
→ 永:短期ではなく長期の話 → 匿:長期でもマネーストックは増えている
→ 永:増加率は減っている → 匿:増加率が同じ15年間で比較しても悪化している
・GDPを増やすには
匿:公共投資を増やす → 永:小渕、麻生政権で公共投資を増やしGDP成長率がプラス化したのはドットコムバブル、リーマンショックの反動のせい
→ 匿:公的資本形成は統計上必ずGDPを押し上げる → 永:他が押し下げられる
→ 匿:GDP成長率がプラス化した’00,’10とも民間設備投資、民間最終消費支出とも下がってない
→ 永:世界的な経済危機の反動のせい
→ 匿:’85~’96も下がっていない → 永:バブルのせい
→ 匿:バブル崩壊後も下がっていない
・GDPを効率的に押し上げるのは
→ 永:公共投資より民間のほうが効率的 → 匿:デフレ下では民間は投資しない
→ 永:マネーストックを増やせばインフレになる → 匿:2006年以降マネーストックが増えてもインフレになっていない
→ 永:1970-2011ではマネーストックとCPIの相関係数は0.89だからインフレになる
→ 匿:デフレ下の1996年以降では相関係数は0.05だからインフレにならない
高橋洋一もあなたもデータのソースを示していないから、どちらが言っていることが正しいのかを検証することはできませんが、両者の間に食い違いが生じる原因として考えられることとしては、(1) インフレ率とCPIは数字としては同じではない、(2) データの数が違う、(3) たぶん依拠しているデータの種類が違うといったところでしょうか。高橋が1970-2011年という長期の期間を選んだのは、これぐらいの数がないと統計学的に意味のある結果にはならないと考えたからでしょう。1996年から2011年だとデータが16組しかないので、信用度は下がります。
高橋の回帰直線の信憑度はともかくとして、私が言いたかったことは、日本が閉鎖経済でない以上、日本が自国のマネーストックを増やしても、それは必ずしもインフレを帰結しないということです。他の国がそれ以上にマネーストックを増やすと、円高になり、円高が国内経済にデフレ効果をもたらすからです。このメカニズムは御理解いただけたかと思います。
他人を批判するときは、私がやっているように、相手の主張を正確に引用した上で行ってください。引用は、<blockquote>ここに引用したい文章を書く</blockquote>という形で行うことができます。相手の主張を自分の都合の良いように捻じ曲げてから叩くやり方は、藁人形論法と言って、学問的に誠実なやり方ではありません。
私は、不況から脱出するため、そしてGDPを増やすため、構造改革が最も重要だと言っているのに、なぜそれを無視して重要でないことばかりを書くのですか。
また私に同じことを繰り返させるのですか。
政府が需要を増やせば経済が成長するという考えは、国家主導のフォーディズムです。1970年代以降、フォーディズムが無効になっていることに関しては、昨日投稿したばかりの「日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか 」を御覧ください。日本が「構造改革=市場原理の徹底」としてやらなければならないことはたくさんありますが、現在改革の出発点として最も重要であると私が考えているのは、労働市場の改革です。
匿名氏が公共投資に拘る理由は、それが馬鹿(=連立与党)の一つ覚えだからですよ。連立与党には、「構造改革=市場原理の徹底」をする意思も能力もありません。
空前絶後の金融緩和をしても物価上昇がこの程度で済んでいるのは、日銀当座預金にマネーがブタ積みされているからです。もし、このマネーが市中に流出すれば、激しいインフレになるでしょう。
こうして、日本の公的債務問題は解決することとなりました。めでたし、めでたし。
現代ビジネスの記事(リンク先)のグラフを見ればわかりますが、バブル期はマネーストックとインフレ率は連動しますがデフレ期(’96~)はあなたが書いたとおり連動していません。現在はデフレ下なのでマネーストックを増やしてもインフレにならないため、民間投資ではなく公共投資に頼る必要があります。
・マネーストックとインフレ率の相関(現代ビジネス):
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35100?page=2
・数値データ
マネーストック(日本銀行):
http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html#
コアコアCPI(e-Stat):
https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do
(消費者物価指数参照)
構造改革については前述したとおりです。
97年以降のGDP成長率減少の要因はデフレであり規制強化ではありません。
まず、構造改革(市場原理の徹底)と規制緩和は、厳密に言えば、同じではないということを認識してください。独占禁止法など、規制を強化した方が市場原理の徹底になることもあるのです。市場原理の徹底とは、小さな政府を目指すということであります。1997年には消費税が増税されました。社会福祉の充実を名目に消費税を増税することは「大きな政府」の路線であり、小さな政府の理念に反しています。97年以降は、この消費税増税の影響が大きい。第二次安倍内閣も、せっかく金融緩和したのに、消費税増税でその効果を大いに損ねる結果となりました。この他、97年にはアジア通貨危機があるなど、他のファクターもあります。
リンク先で高橋洋一さんが掲げているグラフを引用しましょう。
あなたは、1996年度から2011年度の部分に着目して、デフレ期ではマネーストックが増えてもインフレにはならないと主張しています。でもこのグラフを見れば明らかなことですが、バブル崩壊後は、バブル崩壊前よりもマネーストックの増加率の水準が大幅に低い。だから、バブル崩壊後、マネーストックを増やし足りなかったからインフレにならなかったという主張の方が正しい。もちろん、細部を見れば連動していない部分もあります。1996年度以前でも、1970年代の後半に連動していない箇所があります。インフレ率はマネーストックだけでは決まらないので、他のファクターによって攪乱されることがあるのです。1997年度以降は既に述べたとおりです。2001年度以降は、マネーストックの伸び率は大したことはありませんが、小泉改革のおかげで景気が好転し、インフレ率は改善しています。2008年度は、原油価格や小麦価格、トウモロコシなどの価格が海外で上昇し、コアコアCPIにまでその影響が及んだと考えられます。2009年度は、リーマンショックの影響でインフレ率が大幅に下がりました。こうした外部要因によって、マネーストックと2年後のインフレ率の連動性は攪乱されることがあります。外部要因による攪乱を小さくするには、データの数を増やす必要があります。データの数が増えるほど、統計学的な信用度は高くなります。統計学的な傾向を、部分的な例外で否定することには意味がありません。
マネーストックの増加率が低いのは、デフレ期は金融緩和で直接マネーストックを増やせないからです。マネタリーベースは、デフレ脱却を目指して大規模な金融緩和を続けたことで、昨年1年間で29%増えて356兆円を超え、過去最高を更新しました。ところが、消費者物価指数(インフレ目標はコアCPI)は直近で対前年比0.1%。日銀インフレ目標(2%)に全く届いておりません。金融緩和だけでは日銀当座預金が増えるだけで、民間に貸し出されないためマネーストックは十分に増えず、中央銀行あるいは政府がいくら紙幣を刷ってもインフレにはなりません。
小泉政権の派遣法改正により労働者は保護されなくなったため、97年以降のGDP成長率減少の要因はデフレであり、労働者保護により労働市場原理を阻害したからではありません。
第二次安倍政権で消費税増税という負の財政政策によりGDP成長率が減少しました。GDPを増やす財政政策の中身は前述したとおり消費税減税で民間最終消費支出を増やしても、医療報酬・介護報酬引き上げや公共投資で直接GDPを増やしても需給ギャップが埋まればどれでもかまいません。
デフレが原因でマネーストックの増加率が低いと言いたいのですか。それは因果関係が逆です。もう一度、グラフを引用しましょう。
ここで、マネーストックの対前年度比が2年前の値であることに注意してください。もしも同じ時期の値なら、相関性があると言っても、どちらがどちらに影響を及ぼしているのかがわかりません。しかし、マネーストックの対前年度比が2年前の値であるなら、こちらが原因で、2年後の値であるインフレ率の対前年度比は結果ということになります。過去の出来事がその後の出来事を惹き起こすというのが因果律であって、その逆ではないのです。
日本語として意味不明の文章です。もっと論理的に、何が原因で、何が結果なのか、はっきりわかるように書いてください。
日銀が直接いじれるのはマネタリーベースでマネーストックではありません。デフレ期は企業の内部留保が増え続けます。通貨を発行してもマネーストックは内部留保を使い切った後に増えるため、2年以上たっても十分な効果が得られません。そのためマネタリーベースを増やし続け、昨年1年間で29%増やし、356兆円を超えてもデフレのままなのです。
労働者派遣法は85年以降改正され続け労働市場の競争は激化しました。96年にも派遣業種は10種追加されており、97年以降のGDP成長率減少の要因は労働者保護により労働市場原理を阻害したからではなくデフレです。
GDP成長率減少の要因の1つは消費税増税ですが、市場原理を阻害したからではなく、増税という負の財政政策により民間最終消費支出を減らしたからであり、財政政策として減税すればGDPは回復します。
もちろん、そんなことぐらいは知っています。本文でも「流動性の罠から抜け出すには、ベースマネーをアグレッシブに増やして、一方で実質利子率を下降させ、他方で人々にインフレ期待を抱かせ、名目利子率(実質利子率+期待物価上昇率)を上昇させればよい」と書いたでしょう。
問題はマネーストックを間接的に増やすことができるかどうかですが、ハイパワードマネー(ベースマネー、マネタリーベース)とマネーストックの間には
マネーストック=貨幣乗数*ハイパワードマネー
という関係があります。通貨乗数は最近3程度にまで下がってきたとはいえ、ハイパワードマネーに高いパワーがあることには変わりがありません。つまり、ハイパワードマネーを増やせば、それ以上にマネーストックを増やすことができるのだから、日銀がマネーストックを増やすことができないというのは正しくはないし、「中央銀行あるいは政府がいくら紙幣を刷ってもインフレにはなりません」というのも正しくありません。
1月1日のコメントではコアコアCPIを指標として挙げながら、なぜそれをコアCPIに変えたのですか。「インフレ目標はコアCPI」とありますが、政府はデフレ脱却判断の基準として、2013年7月以降「コアコアCPI」を採用することを決めたのだから、コアコアCPIで判断するべきでしょう。日銀の12月25日の発表によれば、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価(日銀版コアコアCPI)の前年比上昇率は、9月から11月まで3カ月連続で+1.2%となったとのことです。ここから、黒田異次元緩和以前はマイナスだったインフレ率が、消費増税によるデフレ圧力を受けつつも、堅調に増加していることがうかがえます。コアCPIは、原油価格の世界的な値下がりの影響で低調ですが、原油価格の下落は外的要因によるもので、量的緩和が失敗した証拠にはなりません。
私が謂っている所の「労働市場の改革」とは、「どうすれば労働者の待遇は良くなるのか」や「日本人はなぜ学力が高いのに生産性は低いのか」で書いたとおり、解雇の自由化のことです。解雇を基本的に自由化すれば、労働者派遣は不要になります。解雇の自由化を回避して労働者派遣の対象を広げることは、本当の意味での構造改革とは言えません。
あなたは「97年以降のGDP成長率減少の要因はデフレ」という命題を繰り返していますが、デフレさえ克服すれば実質GDP成長率が上昇するとは限りません。デフレなら金融緩和で克服することができますが、期待インフレ率が高くなっても、マネーが海外に投融資されたなら、国内の成長には寄与しません。インフレによってリスク・オンとなったマネーが国内に投融資されるためには、国内に投融資したくなるビジネスチャンスが増える必要があり、そのためには構造改革が必要なのです。解雇の自由化は、既存企業の生産性を高めるだけでなく、起業を増やすことになります。マネーを金融緩和によってリスク・オンにするだけでなく、解雇の自由化によって人材をリスク・オンにし、衰退産業の保護をやめることでビジネスをリスク・オンにすれば、国内経済は成長します。
いくらマネタリーベースだけ継続的に増やしても、インフレ期待は起こらず貨幣乗数が下がり続けてインフレにはならなかったのが「現実」です。1997年から2015年の18年間でマネタリーベースが51兆円から346兆円まで295兆円増えて6.8倍になっているのに対し、コアコアCPIは105.6から100.2まで5.4減って0.95倍になっています。
増税が要因だというなら、金融政策だけではインフレにならないことを認め、消費税を減税するなどの財政政策を同時に行えばよいのです。
97年以降に解雇規制が強化された事実は無く、97年以降のGDP成長率減少の要因は解雇規制により労働市場原理を阻害したからではありません。
何度も同じことを繰り返すことになりますが、貨幣乗数が1以上なのだから、マネタリーベースを増やした以上にマネーストックは増えます。但し他の国もマネーストックを増やしているのですから、他の国以上に増やさないとインフレ効果はありません。1970-2011年の期間で、“インフレ率=-2.1+0.62*2年前のマネーストック増加率”という関係式が成り立ち、この式は、マネーストックの増加率が3.3を下回ると、2年後のインフレ率がマイナスになることを示しています。つまり、マネーストックを増やしても、増加率が低ければコアコアCPIが下がるということも起きるのです。
それゆえ、1997年から2015年までをまとめて議論しても意味がなく、量的緩和によるリフレ効果を検証したいのなら、他の国以上に日本が積極的に量的金融緩和を行っている時期を選ばなければなりません。そこで、黒田日銀総裁による異次元緩和を例にとって考えてみましょう。インフレ期待は、期待インフレ率によって計測されます。代表的な期待インフレ率は、普通国債と物価連動国債の流通利回りの差であるブレーク・イーブン・インフレ率です。以下の図は、2004-2013年のブレーク・イーブン・インフレ率の推移です。
小泉内閣時代に続けられた量的緩和政策が、2006年3月に停止させられたことで、2006年4月から2013年2月まで1%を下回っていましたが、安倍内閣の誕生後7年ぶりに1%を超えて上昇し、直近では2%前後の水準となっています。
このグラフから、黒田異次元金融緩和が期待インフレ率を高めるという政策目標を達成していることを見て取ることができます。
私は既に「インフレ率はマネーストックだけでは決まらないので、他のファクターによって攪乱されることがある」と書いているでしょう。私とあなたは増税反対という点で表面的に一致しているように見えますが、政策の本質が全く逆であることに気づいてください。何度も同じことを繰り返すことになりますが、バブル崩壊後の日本経済を成長させるために必要なことは、量的金融緩和によるリフレーションと構造改革です。構造改革を行えば、歳出が減るので、歳入も減らすことができます。つまり減税が可能ということです。その結果、民間がマネーを使うようになります。ところが、あなたは減税によって歳入を減らすだけでなく、公共等の拡大によって歳出を増やすことを提案しています。そうすると、国債を発行しなければならないので、減税で民間に還付されるマネーが国債を通じて再び政府に集められてしまいます。私が民間主導の市場経済による成長を目指しているのに対して、あなたは政府主導の社会主義的な計画経済による成長を目指しています。この点で、私とあなたとでは目指す方向が逆なのです。
あなたは何もしなければ現状が維持できると思っているのですか。それからなぜ97年以降にしか注目しないのですか。失われた20年は、バブルが崩壊した1991年3月から始まるというのが一般的な見方でしょう。バブルのおかげで表面化しなかっただけで、日本経済衰退の予兆は、80年代後半に既に現れていました。本来、70年代に日本はフォーディズムからポスト・フォーディズムへと構造変換を行うべきでした。改革の遅れによる弊害は、手術の遅れによる容体悪化と同様、時間の経過とともに大きくなるものなのです。
ビンボウニンはカネを使うのがダイスキ、カネモチはカネ使うのがキライ。
税金とられるのは特にキライ。だから経済の健全化が必要になる。
富の半分を多勢のビンボウニンが持ち、半分を少数のカネモチが持つ、
そういう理想?社会を目指すべきだ。
近代化→民主化→社会主義化は、生活水準を向上させ、人類社会の進歩を促す、
と考えられてきた(特にマスコミや政治家)。しかし経済成長によって、
ビンボウニンが爆発的に増えた結果はドウだ?深刻な資源不足・環境汚染を
招いてしまったではないか?
19世紀末およそ16億人だった世界人口は20世紀末にはおよそ60億人
に急増、特に第2次世界大戦後の増加が著しい。人口爆発と共に貧富の格差
が増大、社会主義は完全に行き詰まってしまった。
先進国群においては人口減が進行し、心ある人々の眉をひそめさせている。
新自由主義が叫ばれ、富の再配分政策を見直す(カネモチ優遇、法人税減税
など)ようになった。スカンジナビアの旅ネズミは増えすぎると、フィヨルド
に飛び込んで集団自殺する。貧富の格差の増大は、人類に求められたマットウ
な適応行動なのでアル。
カネモチは強盗や誘拐を恐れ、ビンボウニンを忌避する。それが正常な反応だ。
アメリカ(United States)は移民の作った国だ。これからも移民、難民を
受け入れるべきだ。(トランプを大統領に なんてトンデモナイ!)
欧州は中東・アフリカからの難民を拒絶すべきだし、日本はチャイナ・韓国
などのビンボウニンを、たとえ観光目的であっても、入国させるべきでない。
犯罪予備軍を招き寄せるに等しいからだ。
カネモチはカネモチだけで集まりたがる。ビンボウニンはお呼びでない。
カネモチはいくらカネあっても、さらに儲けたがる。それはかれらの本能だ。
しかしカネモチが本当に欲しいのは、第一に健康、長寿、それから名声名誉、
地位権威。要するに尊敬されたいのだ。税金をとられるのはキライだが、
尊敬されたいから、大枚の寄付をするのはイヤじゃない。かれらの弱点?を
利用して、ビンボウニンにカネの回るように工夫する。それがこれからの
国家、政府、官僚の仕事だ。ワカルね?ワカラナイかなア?
景気よくしたければ、まずカネモチ優遇する、思い切って税金も軽減する!
そのかわり寄付金を要請する。カネモチはホコリ高いから、決して強制しては
ならない。寄付金額に応じて爵位(公爵100億円以上、侯爵75億円、伯爵50億円、
子爵25億円、男爵10億円以上)を天皇陛下から授与していただく。あるいは
町の通りや公共施設に名前つけたり、などする。公爵3人、侯爵10人、伯爵100人、
子爵300人、男爵1000人、これで毎年(300+750+5000+7500+
10000=)3兆300億円の歳入を確保できる。消費税なんて大衆課税は
イラナイ!デキルかなア?デキナイだろうなア?
富裕層は必ずしも名誉を求めて寄付をしているわけではありません。実際匿名を条件に寄付をすることもあります。理由は、名誉欲が強いと思われたくないから、あるいは、名前を公表すると寄付の勧誘がたくさん来て煩わしいからなのだそうです。
所得税と法人税とを廃止して、消費税を増税すれば、日本経済は成長する。
異次元の金融緩和を行っても、低いインフレ率のままであった。それは、中央銀行に輸入物価、原油価格を統制することなどできないからだ。ゼロ金利のままで公債残高が膨張していく状態は、あと何年続くのだろうか。それは誰にもわからない。
異次元の金融緩和を行っていなければ、実際よりももっとインフレ率は低いままだったでしょう。
異次元緩和によって、土地・株などの資産価格は上昇したけれども、いわゆる「物価」はそれほどまでには上昇しなかった、というお話です。ゼロ成長、ゼロ金利、社会保障関係費の増加に伴う政府債務の膨張・・・。もうじきソ連末期のようになるのかしら。
量的緩和はもう古い。これからはMMTの時代だ。ただし、土建屋へのバラマキではなく、減税によるべきだ。具体的には、消費税、相続税・贈与税を廃止することだ。
出目(江戸時代に使われた言葉)と言っても、調整インフレ(1990年代に使われた言葉)と言っても、量的金融緩和と言っても、MMTと言っても、皆同じような政策です。言葉を新しくしたからといって、政策の中身まで新しくなるわけではありません。
インフレ政策は、インフレ税を徴収していることになるので、トータルでは減税にはなりません。もちろん、だからといって無意味なのではありません。税金は、その時代において好ましくない行為に罰金を科すように課せばよいのです。
財政政策としてのMMTの方法論としては、公的年金のマクロ経済スライドの廃止が有効だ。公明党も賛成してくれるだろう。
廃止するべきは、公的年金のマクロ経済スライドではなくて、公的年金それ自体でしょう。それに、MMTは、大きな政府を志向するリフレ政策なので支持できません。同じリフレ政策でも、小さな政府を目指すリフレ政策こそが今の日本に必要です。
MMTの理論に則り公共投資で市場にマネーを供給したらどうなると考えていますか?
供給されたマネーが貯蓄に回るか、それとも海外にマネーが流出してしまうのでしょうか?
ちなみに現時点では私はMMTに(といってもMMTにもいろいろ幅があるようですが)反対派です。
現代貨幣理論(MMT)の主張は、「現代はインフレが起きにくい時代である」という現状認識と「インフレが起きない範囲で財政赤字を増やし、財政支出を増やすべきだ」という政策提案の二つに分けて考える必要があります。私は、前者の現状認識には賛成ですが、後者の政策提案には反対です。
後者は後で取り上げることにして、前者から見ていきましょう。現代の世界では、1970年代以前と比べてインフレが起きにくいというのは事実です。その理由として、人口増加率の低下とイノベーションの加速という二つの要因を挙げることができます。
日本でも、世界全体でも、人口増加率は1970年代にピークを迎え、今日に至るまで低下し続けています。日本でインフレ懸念を声高に主張する人には、狂乱物価の苦難の時代を体験した人が多いのですが、あの頃と今では人口増加率が全然違うことを考慮に入れなければなりません。
人口増加率の低下が需要面でのデフレ要因であるのに対して、イノベーションは供給面でのデフレ要因です。ゴードン・ムーアが予測したように、半導体の性能は指数関数的に改善しました。それでいて半導体の価格はそれほど上昇しなかったので、性能ベースでの半導体の価格は急落したことになります。
1970年代以降、世界経済を牽引した新興産業は、情報技術です。情報技術のイノベーションにはポジティブ・フィードバックが働くので、その進化は指数関数的になります。どの産業も情報技術を使うので、経済全体の生産性も底上げされます。そして、生産性の改善はデフレ圧力となります。
このように大きなデフレ圧力がかかっているということは、政府と中央銀行が、それを相殺する程度のインフレ税を徴収し、シニョリッジを手にすることができるということです。デフレ局面でインフレ税を徴収しても、通貨の価値はあまり変化していないように見えるので、納税者には重税感がありません。
通常増税は納税者の反発を買いますが、デフレ局面でインフレ税は目に見えない税金なので、反発が起きにくいという点で、政治的にやりやすいという利点があります。徴税コストと脱税リスクも極めて低く、公平で、徴税方法としては極めて理想的であるとすら言えます。
ここまでは、現代貨幣理論の支持者と同意できるところなのですが、ここから先は意見が分かれるところです。彼らは、財政支出の拡大を主張するのですが、財政政策にはもう一つ、減税という方法があることを忘れています。どちらを選ぶかは、大きな政府か小さな政府かという問題でもあります。
私は、公共事業を全否定する立場のものではありませんが、ワイズ・スペンディングには程遠い日本の公共事業のお粗末な現状を考慮に入れるなら、景気対策を目的として公共事業を拡大することには賛成できません。
それよりも、消費税や所得税や法人税といったデフレ効果のある税金を減らし、民間主導の経済成長を促す方がよっぽどワイズだと思います。そもそも、一方でインフレ税を徴収しておきながら、従来の税をそのままにするということは、全体として増税ということになります。
減税によって、民間主導の経済成長とイノベーションを促せば、労働生産性が改善します。労働生産性が改善すれば、企業は省人化を進め、それがさらに人口増加率を低下させます。すると二要因によりさらにデフレ圧力が高くなるので、政府はさらにインフレ税を徴収して、従来型の税を減らせます。
この好循環を繰り返すことこそ、情報社会の現在に必要なことです。それなのに、日本政府は、一方で財政健全化のために増税を行い、他方で少子化対策と称してバラマキをしています。これとは逆のことをするべきだというのが私の考えです。
Facebookで粟倉惣之輔さんから質問があったので、お答えいたします。
インフレ税とは、政府が通貨を新たに発行し、既存の通貨の貨幣価値を切り下げる(同時に、既存の政府債務を実質的に切り下げる)ことで、政府が民間から徴収する税金のことです。通貨や債券の保有者は、さもなければ所有するであろう価値を失うので、納税者ということです。
通常、税金には、徴税コストがかかります。所得税や法人税の場合、納税者には申告コストが、国税庁には査察コストがかかります。消費税も、納税する小売店のコストを考えると、それほど徴税コストが低いとは言えません。これに対して、インフレ税は通貨を発行するだけなので、非常に低いと言えます。
徴税コストが低いということと関連するのですが、脱税リスクもほぼ皆無です。世の中、脱税のため、庭に穴を掘って現金を隠す人もいますが、インフレ税は、そうした人からも、非常に低いコストで確実に税金を取ることができます。その意味で、非常に公平性の高い徴税方法です。
もう一つのメリットは、消費税などとは異なり、増税の政治的ハードルが低いことです。これは、選挙を気にする政治家にとっては重要です。多くの日本人は、通貨の価値が時間とともに変わらないと感じています。本来デフレで増えるはずの通貨価値が、同じままでも、税金を取られたとは感じません。
ただし、インフレ税を取りすぎると、インフレ率が高くなりすぎて、国民の生活が苦しくなります。当然国民の不満も高まるでしょう。あくまでもデフレ局面で有効という制限付きであることを付け加えておきます。
もしもインフレ税でインフレにすれば、円安になるだけでなく、消費や投融資も活発になるでしょう。インフレ下において通貨を死蔵しても、減価して所有者が損をするからです。政府と日銀は、バブル崩壊以後、長期にわたってデフレもしくは低インフレを放置したので、積極的な投資を控える経営者が増えてしまいました。
日本企業が内部留保をため込むもう一つの理由は、終身雇用年功序列を原則とする日本的経営です。不況になったからといってレイオフをするわけにはいかないので、終身雇用をやっている日本企業は、不況に備えて、普段から内部留保を厚くしなければなりません。
バブル崩壊後、日本企業は、既存の正社員の既得権益を守るため、新規の正社員の雇用を絞り、就職氷河期世代と呼ばれる貧しい世代を生み出しました。この世代の消費が低調なので、日本経済はますます停滞し、今では、日本企業は、国内市場を軽視し、海外市場を相手にするようになったという次第です。
「物価上昇を見て見ぬふり。日銀は金利を上げられない。」
日銀がマイナス金利を解除することができない理由はふたつある。
(1)日銀当座預金には利子がつくのだが、その支払利息が増加して日銀の財務内容が悪化する。
(2)短期金利の上昇は長期金利にも波及し、国債の利払いが増加して財務省が予算を組めなくなる。
金利を上げても、二つの理由から日銀も財務省も困りません。
1. 名目金利を上げても、増えるのは名目の債務にすぎません。金利を上げないと、インフレ局面では、債務はむしろ実質的に目減りするので、国債を発行している債務者には有利になります。
2. 現在、発行している国債の多くを日銀が保有しています。日銀が受け取る利子収入は、準備金や出資者への配当に充当されるものを除き、日本銀行法第53条により、国庫納付金として国に還元されます。だから財務省は困らないのです。
では、なぜ日銀は金利の引き上げに慎重なのかといえば、それは日本企業の生産性が低く、高い金利に耐えられないからです。
ニッポンはもはや先進国ではなく、衰退途上国といはれています。日本円についても、日本リラ、ジンバブ円と呼ばれる始末です。それならば、OECDから脱退すべきでしょう。OECDの年会費を払う必要がなくなり、外国からODAという名のバラマキを要求される機会も減少するでしょう。
日本は、対外純資産が世界最大なので、海外情勢に対して無責任な立場を採れません。米国主導の世界秩序を維持する側に回らざるを得ないのです。
現在進行中の円安は、日本の金利が低いことで起きています。日銀が金利を引き上げられないのは、日本の生産性が低いからです。それゆえ、日本がすべき第一のことは、生産性を高めることです。
「安楽死を自由化・合法化すれば、日本経済は成長する。」
老人が金融資産を貯め込むのは、自分の死期を予測できないからである。安楽死を自由化・合法化すれば、死ぬまでに全財産を消費するから、GDPは、むしろ増加する。
金融資産があるのに安楽死を選ぶような人は、耐えがたい苦痛を伴う病に侵された人とかでしょうから、計画的に消費することはないでしょう。