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女性の労働力を活用するにはどうすればよいのか

2013年5月10日

待機児童問題を解消するためにするべきことは、認可保育所を増やすことではない。認可保育所と認可外保育施設との格差を解消するために、認可制を廃止して、バウチャー制を導入することを提案する人もいる。良い保育所と悪い保育所の選別は、本来官僚ではなくて消費者が行うべきであり、そういう点ではバウチャー制の方が認可制よりも優れているが、財政錯覚を生じさせるという点では同じである。[1]

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女性の労働力を活用するにはどうすればよいのか
投稿者:永井俊哉.投稿日時:2013年5月10日(金) 16:23.

安倍総理の成長戦略は、まだその全貌が明らかになっていないが、総理が「成長戦略の中核をなす」と考えているのは、「待機児童の解消」「女性役員・管理職の増加」「職場復帰・再就職の支援」といった「女性が輝く日本をつくるための政策」なのだそうだ。日本では、大卒女性の労働力の相当部分が、労働市場に出ることなく家庭の中で眠っている。ちょうど安倍総理が強力に推進する異次元金融緩和の目的が、貯金という形で眠っているマネーを金融市場に引きずり出して経済を活性化させることであったように、「女性が輝く日本をつくるための政策」は、家庭の中で眠っている専業主婦の労働力を労働市場に引きずり出して経済を活性化させることであると言うことができる。

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正規労働における男女間の平均的な賃金格差(パーセント表示)。日本は、OECD 諸国の中で、韓国に次いで二番目に格差が大きい。[2]

その目標自体は正しいことだが、問題はその目標を実現するための手段が適切であるかどうかである。この問題に対する私の考えは、「男女共同参画を推進する本当の狙いは何か」への追記で既に表明しているのだが、以下この観点から、「女性が輝く日本をつくるための政策」の三本の矢を検討してみよう。

待機児童の解消

子供を認可保育園に入れさせることができないという所謂「待機児童問題」が深刻化している。

19日、杉並区役所前では「保育園に入れろ!保育園を増やせ!」と母親たちが怒りの声をあげて抗議活動を行った。TBSニュースの報道によると、2009年以降、待機児童の数は約2万人を上回る状況が続いているが、東京都の杉並区も保育園不足で、来年度の入園希望者の3分の2にあたる、約1800人が入所できない状況だという。

22日には、杉並区に対してこういった母親たちが、「保育園に入園できない」とした決定の取り消しを求める、異議申立書を提出。母親のひとりは「路頭に迷うような子供や、路頭に迷うような親がいなくなればいい」と発言している。

こうした異議申し立ての動きは、希望者の4割以上にあたる約1600人が入園できないという足立区でも、28日に行われる予定とのこと。いつまでたっても解消されない待機児童問題に、母親達は我慢の限界にあるようだ。[3]

この問題を解消するべく、安倍内閣は、平成25・26年度を「緊急集中取組期間」とし、その期間中に約20万人分の保育を集中的に整備できるよう国として万全な支援をすると言っている。その支援の取り組みは、以下のようなものである[4]

  • 賃貸方式や国有地も活用した保育所整備(施設整備費を積み増して保育所整備を加速)
  • 保育の量拡大を支える保育士確保(保育士資格保有者の復帰促進、保育士の処遇改善、認可外保育施設で働く無資格者の資格取得支援など)
  • 小規模保育事業など新制度の先取り(小規模保育、幼稚園での長時間預かり保育への支援など)
  • 認可を目指す認可外保育施設への支援(認可保育所への計画的な移行への支援など)
  • 事業所内保育施設への支援(助成要件の緩和)

要するに、認可保育所を増やすことで待機児童問題を解消しようというのだが、これは問題の本質を見誤った政策である。認可保育所は、施設が充実しているにもかかわらず、月謝は2万円ほどで安いため、入所希望者が殺到し、その結果として待機児童問題が生じる。しかし、これを安いと感じるのは財政錯覚であり、実際のコストはそれよりもはるかに高い。東京都の場合、政府は、私立認可保育所で約30万円、公立では約50万円を、ゼロ歳児一人当たりの保育費用として毎月補助している[5]。だから、認可保育所に子供を入所させる女性は、月収30万円以上(二人以上を入所させるとか、公立の認可保育所を利用する場合はそれ以上)を稼がなければ採算が取れない。ゼロ歳児を持つ若い女性でそれだけ稼げる人がどれだけいるだろうか。

認可保育所と認可外保育施設との格差を解消するために、認可制を廃止して、バウチャー制を導入することを提案する人もいる。良い保育所と悪い保育所の選別は、本来官僚ではなくて消費者が行うべきであり、そういう点ではバウチャー制の方が認可制よりも優れているが、財政錯覚を生じさせるという点では同じである。保育コストを引き下げる努力をしてもらうには、認可制を廃止することで市場原理を導入し、保育士のハードルを大幅に引き下げ(二級、三級などの下位の階級を導入するとよい)、利用者に費用を全額負担してもらうのがよい。私は、以前、こう書いた。

もしも女性の生産性が高くて、時給が保育料を上回るのなら、保育所に子供を預けて働きに行けばよいし、もしもそうでないならば、保育士資格を取って、自宅で自分の子供と共に近所の他人の子供も育てればよい。自宅を保育所にするのなら、コストもかからないし、保育料を低料金にすることができます。自宅保育所の増加は、女性の就業者増加に二重の効果があります。[6]

専業主婦/主夫が自宅で一人の子供を育てることは、たんに経済的に効率が悪いだけでなく、教育上も好ましくない。子供は他の子どもとの集団生活の中で社会性を学ことができるのだから、自宅保育園で近所の子と一緒に育つということには教育的な意義もある。そもそも専業主婦が普及する以前では、年長の子供が年下の子供の面倒を見ていた。少子化と専業主婦の普及により、子育てはもっぱら母親の仕事となり、過大な負担の結果、育児ノイローゼや児童虐待の問題が起きるようになった。子供が子供を育てるというかつての習慣を部分的に復活させることを考えてみるべきではないだろうか。

認可保育園なら安心して入所させることができるが、個人営業の自宅保育所は信用できないという人も多いだろう。しかし、すでに多くの保育所で採用されているように、ウェブカメラで保護者がいつでも閲覧できるようにしておけば、そうした不安を小さくすることができる。他方で、補助金を廃止すると、既存の保育所は、料金が高すぎて入所希望者がいなくなるという懸念を持つ人もいるだろう。しかし、補助金を廃止するということはそれだけ規制もゆるくなるということだから、英才教育を行うなど、付加サービスを行うことで、富裕層向けの需要を満たすことができる。そして、一般向けには、自宅保育所が低廉な託児サービスを提供すればよい。

女性役員・管理職の増加

これも、結果としてそうなるならよいのだが、賃上げと同様、総理大臣が経営者たちに直接要請することではないだろう。

「全上場企業において、積極的に役員・管理職に女性を登用していただきたい。まずは、役員に、一人は女性を登用していただきたい。」 指導的地位に占める女性の割合を「2020年までに30%程度」にすべく、平成25年4月19日、安倍総理は、経済3団体に直接要請しました。[7]

ノルウェーは、2003年に女性取締役の割合を40%以上にする法律を定め、その結果、ノルウェーの女性取締役比率は、2002年時点の6.8%から44.2%に急上昇したが、この数値目標は社外取締役の増加によって実現されており、表面だけを取り繕ったという感は否めない[8]。安倍総理は自民党の党三役のうち二つに女性を起用したと胸を張るが、総裁、副総裁、幹事長というトップの役職は男性によって占められているし、さらに現政権では「政高党低」であるため、パフォーマンスの色彩が強い。

この他、野田聖子総務会長が、新入社員の4割を女性にする法律を作ることを提案して物議を醸したことがあった[9]が、その手段が法による規制であれ、税制優遇であれ、何であれ、民間に結果の平等(あるいは、30%とか4割とかだと、厳密には平等ではないから、準平等)を求めることは望ましくない。性に限ったことではないが、一般的に言って結果の平等の保証(アファーマティブ・アクション)は、自由と機会の平等を制約することになるので、支持できない。

女性の社会進出を促したいのであれば、まず政府がやるべきことは、配偶者控除を廃止することである。これがあると、専業主婦/主夫は、所得(収入から65万円の給与所得控除などを引いた額)を38万円以下に抑えようとするため、低賃金のパート・タイム労働に甘んじがちになる。配偶者控除は、家事育児支援のために必要だという人もいる。しかし、子供がいなくても配偶者控除の恩恵を受けることができるし、子育てしていても所得が38万円を超えると、その恩恵に与ることができない。だから、配偶者控除は専業主婦/主夫優遇策であって、育児支援としては機能していない。家事も、専業主婦/主夫か否かとは無関係にしなければならない労働だから、専業主婦/主夫だけを優遇しなければならない理由にはならない。

配偶者控除が廃止になったからといって、専業主婦/主夫という生き方が禁止になるわけではない。たんに税制上優遇されなくなるだけである。わずか38万円であっても、適用範囲が広いので、その控除の廃止は、多くの女性の労働意欲を高めることになるか、もしくは税収を増やすか、どちらにしても、好ましい結果をもたらすことになる。より多くの女性が労働市場に参入し、女性が結婚や出産を機会に退職するリスクが減れば減るほど、自然と女性役員・管理職は増加するだろう。

職場復帰・再就職の支援

1991年に制定された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」により、育児休業は、最長で、子が1歳6か月になるまでと規定されている。安倍内閣は、これを公務員なみに3歳までに引き上げようとしている。

安倍総理は、経済3団体に、「子供が3歳になるまでは、希望する場合には、男女とも育児休業や短時間勤務を取得できるようにしていただきたい」と依頼しています。[10]

この三番目の政策は、一番目の政策と矛盾しているように見える。待機児童問題を解消するにもかかわらず、なぜ三年間も育児休暇を取る必要があるのか。それとも、待機児童問題が解消するまでの間、育児休業を三年間取らせよということなのか。安倍内閣の真意は不明である。2013年4月19日に安倍首相が都内の日本記者クラブで「成長戦略に向けて」をテーマで行った講演では、アンケートの結果希望者が多かったからと安倍総理は言っているが、アンケートの結果は、明らかに待機児童問題が解消されないことが前提になっている。

育児休業三年間といっても、三年間を完全に休業するということではない。インターネットの普及により、テレワークが技術的に可能になりつつあり、それを活用するために規制緩和を進めようとしていることは評価できる。

職場以外の場所で働く「テレワーク」に関し、自民党が、育児休業中の在宅勤務の規制を緩和する方針を固めたことが5日、わかった。育休中の収入確保やスムーズな職場復帰を図ることで、育休取得への環境整備を図る狙い。安倍晋三首相が掲げる「育休3年」実現に向けた具体策で、自民党は参院選公約の目玉として明記する方針だ。

育休は休業取得開始前の2年間に、一定の勤務実績などを満たせば取得でき、さらに雇用保険に加入していれば育休前の給料の50%相当の育児休業給付金を受け取ることができる。

ただ、育休給付金は月に20日間以上「休業」していないと支給されない。雇用保険法施行規則では1カ月の就業日数は「10日以下」と定められている。これは法律が「育休中に仕事をするくらいなら、早く職場復帰するべき」との前提に立っているためだ。

この規制に従うと、育休中でも、在宅であれば1日数時間程度、月に11日以上の在宅勤務が可能な人であっても、働き過ぎれば育休給付金をもらえなくなる。現行制度では、1日1時間の仕事でも、法律上は「1日」に換算されてしまうという仕組みもある。

しかし、近年は事務作業のIT化で、在宅での勤務が可能な職種、職場が大幅に増加。育休中でも、1日数時間の在宅勤務をこなすことは難しくない。

自民党は、これら規制が育休中のテレワーク普及を妨げている原因と分析。「就業10日以下」の規定を時間単位に変更するなど規制の見直しを進めており、「子育てしながらでも、働き続けられる」環境を整備したい考えだ。

仮に、規定を「月80時間以下」に見直せば、1日当たり4時間の在宅勤務を週5日間、月20日間行っても育休給付金を受け取ることが可能だ。

雇用側にとっても、有能な社員に仕事を継続してもらえることで利益に結びつけられるほか、社員側も仕事の感覚を維持でき、職場への復帰が容易になるという利点がある。[11]

自宅で育児を行いながら、インターネット等を用いて仕事に参加するのがテレワークだとするなら、会社で働きながら、インターネット等を用いて育児に参加することは逆テレワークと呼んでよいかもしれない。保育所がウェブカメラを設置するのは、保育士が乳幼児を虐待しないかどうかを保護者に監視させるためだけではない。休憩時間等に子とコミュニケーションを取るためでもある。待機児童問題解消と整合的な政策は、テレワークではなくて、逆テレワークの推進である。

育児休暇は、女性のみならず男性も取ることができる。たしかに、授乳以外の育児なら男性でもできるだろう。しかし、だからといって男性も女性と平等に家事や育児を分担するべきだという結論にはならない。経済合理性の観点からすると、性とは無関係に、生産性がより低い方の配偶者が家事や育児をより多く分担するべきだということになる。専業主婦/主婦というのはその極限的な形態なのだが、もっと中間的な形態があってもよいだろう。

この他、「子育て後の起業支援」という政策もあるが、これは、地域需要創造型等起業・創業促進補助金の一環だから、特に女性だけをターゲットにしたものではないようだ。

以上、個別に内容を検討したが、安倍内閣の「女性が輝く日本をつくるための政策」は、目標は正しいが手段は不適切であるという結論を下さざるをえない。これが「成長戦略の中核をなす」というのだから、他もあまり期待が持てなさそうである。結局のところ、アベノミクスの三本目の矢である成長戦略は、自由主義的な構造改革というよりもむしろ国家社会主義=国家資本主義的な市場介入に近いと評することができる。

男と女を同じ職場にするな
投稿者:ペンペン.投稿日時:2013年5月18日(土) 00:28.

男と女を同じ職場で労働させるから、セクハラ、不倫、美人局などの性的な問題が発生する。刑務所だって男女別になっている。職場も男女別にしてくれー。

車両を男女別にするべきか
投稿者:永井俊哉.投稿日時:2013年5月18日(土) 15:14.

そんなこと言い出したら、パワハラを防ぐために上司と部下を別の職場にしろとかいうことになって、全員を個室に入れないといけないはめになります。

但し、車両を男女別にするのはありだと思います。日本の鉄道各社は痴漢防止という名目で女性専用車両を導入したのにもかかわらず、男性専用車両を導入していません。2009年6月24日に開催された西武ホールディングスの株主総会で、株主が、痴漢や痴漢冤罪の防止のために男性専用車両の導入を提案しましたが否決されました。女性専用車両には身体障害者の乗車が認められており、痴漢防止が目的というよりも、シルバーシートと同様に弱者優遇策としての性質が強い。しかし、女性が弱者というのは偏見であり、痴漢防止が目的なら、男性専用車両も導入するべきでしょう。

なぜ待機児童問題が生じるのか
投稿者:永井俊哉.投稿日時:2013年6月07日(金) 18:31.

待機児童問題に関しては、長谷川幸洋による以下のコラムも参照されたい。

市場原理の導入を提案すると、必ず「利益第一主義になって、サービスの質が低下する」といった反対意見が出るものなのだが、そういうことを言って自分たちの独占権益を守ろうとする抵抗勢力の方が、もっとひどい利益第一主義に陥っているという一つの事例をここに見ることができる。

待機児童が推計85万人に対して、潜在保育士が60万人以上である。 「保育されたい児童」と「保育したいプロたち」がこれほどいるのに、マッチングできていない。それは、保育事業の基本的メカニズムがおかしいからだ。逆に言えば、双方のニーズを上手にマッチさせるメカニズムさえ用意できれば、待機児童問題は解決できるどころか、有望産業にさえなりうるはずだ。[12]

そのメカニズムこそが市場原理である。市場原理を有効に働かせるために必要なことは、認可保育園に株式会社を参入させることではなくて、認可制度そのものを廃止することである。

Re: 女性の労働力を活用するにはどうすればよいのか
投稿者:shioden.投稿日時:2014年7月25日(金) 12:23.

長谷川幸洋 さんが書きました:

待機児童が推計85万人に対して、潜在保育士が60万人以上である。

場所も必要でしょう。公園で面倒みてるわけじゃないんですから。それに、お母さん同士で面倒みるっていう地域における相互保育が確立されているところもあるらしい。まあ、人口が少ないと難しいでしょうけど。保育設備に拘りすぎるから市場原理になるのであって、一人しか預からないのなら、同世代の子供がいる人なら可能ではないでしょうか。この間のテレビ番組では一回500円らしい。ネットで依頼、相互会らしきもので保育可能な人が手をあげる。近い人を選らんで依頼する。依頼は500円。互いのことだから無料でもいいのだが、逆に500円を払うことで気軽に頼めると。500円から保険料も払っていると。ほぼ、ボランティア活動のようなものでしたが、それだけでも主婦にとっては助かる。つまり,保育屋さんのネットワーク。互いに主婦だからそれなりに安心でしょう。毎日固定して預けるということではないにしろ、基本をついていると思いますけど。

解決策は、無駄になるような施設を作らないことなのではないでしょうか。無駄に収容人数を上げて、施設を作っても、場所により、5年程度の需要があるだけで、子供達は大きくなってしまいます。多摩ニュータウンを見て下さい。今は老人の数が多いです。昔は働き盛りの人達ばかりでした。これらも見越して市場原理を導入すると解決すると思われているのでしょうか。おじいさん、おばあさんネットワークを作るという手もあると思いますし、、、企業が出張ってくるほどの儲けがあるとは思えないのですが。

待機児童問題と市場原理
投稿者:永井俊哉.投稿日時:2014年7月27日(日) 10:55.

shioden さんが書きました:

場所も必要でしょう。公園で面倒みてるわけじゃないんですから。

潜在保育士の自宅という場所があります。

shioden さんが書きました:

それに、お母さん同士で面倒みるっていう地域における相互保育が確立されているところもあるらしい。まあ、人口が少ないと難しいでしょうけど。保育設備に拘りすぎるから市場原理になるのであって、一人しか預からないのなら、同世代の子供がいる人なら可能ではないでしょうか。この間のテレビ番組では一回500円らしい。ネットで依頼、相互会らしきもので保育可能な人が手をあげる。近い人を選らんで依頼する。依頼は500円。互いのことだから無料でもいいのだが、逆に500円を払うことで気軽に頼めると。500円から保険料も払っていると。

子育てをしている母親が、500円という対価を受け取って、他の子供を預かるというサービスを自主的に(政府から独立して)提供するという御指摘の活動は、まさに市場原理に基づく経済活動です。

shioden さんが書きました:

解決策は、無駄になるような施設を作らないことなのではないでしょうか。

なぜ「無駄になるような施設」が作られるのか、その根本的な原因を考えてください。待機児童問題の根本原因は、保育園の認可制度だというのが私の持論です。認可制度があると、認可を受けて補助金を受け取るために、保護者のニーズから懸け離れた施設が作られます。通常のマーケットでは、不必要に高額な商品は売れないものですが、税金が投入されると財政錯覚が生じ、安くて高級感のあるサービスが提供されているということで、入園希望者が殺到し、待機児童問題が発生するというわけです。

shioden さんが書きました:

無駄に収容人数を上げて、施設を作っても、場所により、5年程度の需要があるだけで、子供達は大きくなってしまいます。多摩ニュータウンを見て下さい。今は老人の数が多いです。昔は働き盛りの人達ばかりでした。これらも見越して市場原理を導入すると解決すると思われているのでしょうか。おじいさん、おばあさんネットワークを作るという手もあると思いますし、、、企業が出張ってくるほどの儲けがあるとは思えないのですが。

たぶん、shioden さんは、市場原理が作動するのは、大企業が巨額の儲けを出すようなときだけで、個人が少額の儲けしか出さない経済活動は市場原理とは無縁であるという前提で議論しているのでしょうが、それは市場原理に対する誤解というものです。

参照情報
関連著作
注釈一覧
  1. ここでの議論は、システム論フォーラムの「女性の労働力を活用するにはどうすればよいのか」からの転載です。
  2. OECD. “Percentage gap between median men’s and women’s wages, for full-time workers by OECD country, 2006." 9 March 2010.
  3. 杉並区に続き足立区も 待機児童ママの怒り収まらず“『livedoor ニュース』2013年2月25日.
  4. 女性が輝く日本へ“『首相官邸ホームページ』2013年4月30日.
  5. 新規参入は断固阻止!! 保育園業界に巣くう利権の闇“『ダイヤモンド・オンライン』2009年11月16日.
  6. 永井俊哉「男女共同参画を推進する本当の狙いは何か」への追記. 2010年9月9日.
  7. 女性が輝く日本へ“『首相官邸ホームページ』2013年4月30日.
  8. 欧州が「女性役員4割」へ" 『日経ビジネスオンライン』2012年3月15日.
  9. 「新入社員の4割を女性にする法律を」野田聖子総務会長の発言に賛否“『J-CASTニュース』2013年4月4日.
  10. 女性が輝く日本へ“『首相官邸ホームページ』2013年4月30日.
  11. 在宅勤務規制、緩和へ 育休取得を促進 自民、参院選公約に" 『産経新聞』2013年5月5日.
  12. 長谷川幸洋. “続報・待機児童問題 旧態依然の認可保育所では、60万人の潜在保育士を活かせない“『現代ビジネス』2013年6月7日. p. 4.