地球温暖化論争の三つの争点
今日、地球温暖化は全人類的課題として広く認識されるようになったが、他方で懐疑論も根強く残っている。一口に懐疑論といっても、様々なものがあるのだが、大別すると、温暖化という事実を疑う懐疑論、温暖化の事実は認めるが、その原因が人為的であることを疑う懐疑論、人為的原因で温暖化が起きていることを認めた上で、温暖化が悪であることを疑う懐疑論の三種類にまとめられる。このページでは、温暖化の事実、原因、評価という三つの争点について懐疑論の問題提起を検討し、私たちが地球温暖化にどう向き合うべきかを考えるための手掛かりとしたい。[1]
1. 温暖化の現状
気象学者たちは、気温の傾向が温暖化しているのか冷却しているのか、現在の気候が正常なのか異常なのかを議論してきた。この章では、気象学者の間で気候の現状についての反対意見を検討してみたい。
1.1. 温暖化の発見
現在、世界の気候学者は地球温暖化に警鐘を鳴らしているが、1970年代までは、彼らは地球寒冷化を警告していた。日本の気象庁は、1973年から翌年にかけて気候変動調査研究会を設置し、十数年後には19世紀以前の寒冷期に戻ると予測した。日本の気候学者の中には、氷期の再来を予言するものまでいた[2]。
日本だけでなく、米国でも気候寒冷化を予測する学者が多くいた。1975年に『ニューズウィーク』は「寒冷化する世界」という記事を掲載している。
中心となる事実は、この四半世紀の間、非常に温暖な気候が続いた後、地球の気候が冷えてきているようだということです。気象学者の間では、この冷え込みの原因や程度、地域の天候への具体的な影響などについて意見が分かれています。しかし、今世紀の残りの期間、この傾向が農業生産性を低下させるという点では、ほぼ一致しています。悲観論者が懸念するほど気候変動が深刻であれば、その結果起こる飢饉は壊滅的なものになるかもしれません。[3]
未来予測としてはともかくも、現状認識としては間違っていなかった。以下のグラフを見てもわかるように、1940年から1976年にかけて、地表面の温度は、地球全体で下落傾向を示していた。寒冷化の傾向は、南半球よりも北半球で著しかった。
なぜ、1940年から1976年にかけて、地球の気温は下落したのか。IPCC第四次評価報告書は、以下のようなエピソードを掲載している。
査読付きの学術雑誌の中で、Brysonand Dittberner(1976)は、二酸化炭素の増加が地球気温の低下と関連付けられるべきだと報告した。Woronko(1977)によって反論されると、Brysonand Dittberner(1977)は、彼らのモデルによって予測された寒冷化は、二酸化炭素の増加をもたらしたのと同じ燃焼によって生み出されるエアロゾル(大気内の微粒子)によるものだと説明した。[5]
温室効果は、ジョゼフ・フーリエによって、1824年に発見されていた。1976年にもなって、二酸化炭素濃度の上昇で寒冷化を説明しようとした科学者がいたとは驚きである。実際には、この引用にあるように、大気中に大量に放出されたエアロゾルが太陽放射を遮断することで、地表面の温度が下がったのである。
エアロゾルは、火山噴火などの自然現象でも放出されるが、1940年から1976年にかけての寒冷化をもたらしたのは、人間が放出したエアロゾルだった。なかでも、化石燃料の燃焼で発生する硫酸エアロゾルは、アルベド(albedo 入射光エネルギーに対する反射光エネルギーの比)が高く、最大の元凶だったといってよい。エアロゾルは、雲凝結核(Cloud Condensation Nuclei)となって、雲の形成を促進する働きもあり、雲量増加によるアルベドの上昇をも惹き起こしている。IPCC も「エアロゾルは、雲の性質を変えることで、間接的にも、負の放射強制力を発揮する[6]」と言っている。
以下のグラフは、グリーンランドのアイスコアにおける硫酸イオンの濃度を赤と青の実線で、南極のアイスコアにおける硫酸イオンの濃度を紫の破線で描いたものである。
このグラフを見てわかるように、ヨーロッパと北米の近くにあるグリーンランドでは、20世紀の後半に、人間活動が原因である硫酸エアロゾルの影響が急増しているのに対して、南極にはその影響がほとんどみられない。これにより、なぜ寒冷化が、南半球よりも工業化が進んでいる北半球で顕著であったかがわかる。
人為的に排出される硫酸エアロゾルは、近年急激に減っている。エネルギー源の主流が、石炭から石油へ、石油から天然ガスへと移行するにつれて、燃焼時に生じるエアロゾルが少なくなった。また、70年代以降、先進工業国で公害規制が強化され、以前ほど大気汚染がひどくなくなった。大気汚染問題を解決しようとする人類の努力が実を結び、澄んだ美しい空が戻ってきた。しかし、皮肉なことに、この環境改善のおかげで、地球温暖化という別の問題が出てきた。
では、地球温暖化を防ぐために、今中国がやっているような大気汚染を許容すべきだろうか。答えはもちろん、否である。大気汚染は健康被害をもたらすだけでなく、《悪い寒冷化》をもたらすという点でも好ましくない。太陽放射が、エアロゾルによって妨害されることなく、地表面に届き、地表面を暖めることは、《良い温暖化》であり、この《良い温暖化》と温室効果ガスが結果として惹き起こす《悪い温暖化》は区別されるべきである。《良い温暖化》と《悪い温暖化》あるいは《良い寒冷化》と《悪い寒冷化》がどう違うかは、本ページの最後で詳しく説明したい。
80年代になって地表面の温度が上昇し始めると、気候学者たちは混乱し出したが、やがて、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスにより地球が温暖化しているという点でコンセンサスが形成されるようになった。
1985年に、オーストラリアのフィラハで、国際科学会議(International Council for Science:ICSU)、国連環境計画(United Nations Environment Programme:UNEP)、世界気象機関(the World Meteorological Organization:WMO)の三者が主催する「気候変動に関する科学的知見の整理のための国際会議」が開かれた。この会議で、人間活動が原因で地球が温暖化しているという事実が確認され、その防止が国際的な課題であると初めて宣言された。
会議後に記者会見を開いたが、記者たちも何を書いていいのかに戸惑い、ほとんど記事は出なかった。マスメディアの世界ではまだ「温暖化」というテーマはなかった。[8]
オゾン層保護では、ヨーロッパ以上に熱心に取り組んだ米国も、地球温暖化問題に関しては、不確定性が大きいとして、当初からきわめて消極的だった。1988年にUNEPとWMOが共同で、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change 気候変動に関する政府間パネル)を設立したが、竹内敬二によると、これは、科学者主導で提案が出されることに政府が歯止めをかけられるようにしたいという米国の思惑が絡んでいたとのことである[9]。
設立当初の意図が何であれ、組織というものは、いったん作られると自己目的化するものである。IPCCは、1990年に第一次評価報告書を出したのを皮切りに、今日に至るまで、地球温暖化の脅威とその対策の必要性を世界に訴え続け、そして、マスコミがこれに呼応したことで、今では、地球温暖化は、最もポピュラーな環境問題として扱われるようになっている。
2007年は、IPCCが第四次評価報告書を公開する年である。IPCCには三つの作業部会があり、気候システムと気候変動に関する科学的知見を評価する第一作業部会は、5月に第四次評価報告書の全文をウェッブ上で公開した。本稿には間に合いそうにもないが、気候変動に対する社会経済システムや生態系の脆弱性を評価する第二作業部会、温室効果ガスの排出抑制と気候変動の緩和策を評価する第三作業部会の報告書も今後ウェッブ上で全文が公開される予定である。このシリーズでは、公開された最新レポートへの論評を中心としつつ、地球温暖化の問題を考えてみたい。
1.2. 温暖化の事実
今日、地球温暖化を人類文明にとっての脅威とみなす風潮が強いが、それに疑問を持つ科学者もいる。地球温暖化脅威論への懐疑論には、地球温暖化の事実そのものを疑う懐疑論、温暖化の原因が人間活動であることを疑う懐疑論、温暖化が人間社会に悪影響を及ぼすことを疑う懐疑論と三種類ある。後の二つは、後ほど扱うことにして、本節では、本当に地球は温暖化しているのかという問題を取り上げる。
科学者の中には、地球の大気の温度が上昇していることを否定する人がいる。日本では、渡辺正が、そうした主張をしている[10]。海外では、ウィニペグ大学(カナダ)元教授(地理学)の Timothy F. Ball が、2004年のインタビューで、次のように言っている。
1980年以降、温暖化しているという議論だが、実際には、その温暖化のほとんどすべては、所謂「ヒート・アイランド」効果によるものだ。つまり、測候所は都市の周辺にあって、都市の拡大が記録を歪めている。もしも人里離れた測候所、例えば南極の測候所を見るならば、南極では、1957年以降寒冷化しており、1978年以降採取されている気象衛星データを見れば、同様に、わずかではあるが寒冷化の傾向があることがわかる。[11]
地上での測候所における直接的な温度測定の結果とは違って、気象衛星による観測の結果は、寒冷化の傾向を示していると主張する科学者は、他にもいる。例えば、1997年のものであるが、NASAのサイトには、今でも次のような記事が掲載されている。
地表面の温度とは異なって、気象衛星によってグローバルに測定された地球の下層大気の温度は、過去20年間にわたってはっきりした温暖化の傾向を示していない。実のところ、データに表れた傾向は、わずかながら下向きであるように見える。[12]
本当に大気の温度は下がっているのだろうか。地表面の気温と対流圏の気温は別の変動をしているのだろうか。以下のグラフは、1979年から1996年にかけて、気象衛星で観測した、地表面から5マイル内の位置にある対流圏下層部の温度の偏差(基準:1979-1998)である。グラフの中の回帰直線は、わずかではあるが、上昇傾向を示している。
このデータに基づいて、John Christy は、1997年の米国上院環境委員会の公聴会で、次のように発言している。
このグラフは、10年間で0.06℃のわずかな温暖化の傾向を示しています。この変動は小さく、自然の変動の範囲内とみなすことは容易ですが、私は確信をもてません。人類は、ひょっとしたら、グローバルな対流圏の温度にわずかな影響を与えているのかもしれません。[14]
John Christy は、この時点では、あまり自信がもてなかったようだが、その後の、2007年までの観測データは、よりはっきりと温暖化の傾向を示している。
Timothy F. Ball は、地表面で顕著な温暖化は、ヒートアイランド現象が原因だとしたが、David E. Parker は、風が強い夜でも、風が弱い夜でもあまり差がないことから、ヒートアイランド現象による影響ではないとしている[16]。
それにしても、なぜ気象衛星でのデータは大気の寒冷化を示しているという主張がかつてなされたのか。どうも、初期の気象衛星による温度測定の精度に問題があったようだ。気象衛星は、直接気温を測るわけではない。様々な波長帯の放射輝度を測り、それから気温を推定する。それゆえ、もとのデータに変更はないにしても、それの気温への変換に様々な補正が加えられる。懐疑論は、初期の推定に基づく議論であり、現在の補正結果によれば、地表面の気温変動と対流圏下層の気温変動が逆の傾向を示しているということはない。
ただし、以下のグラフを見てもわかるように、対流圏の気温(下)が上昇している一方で、成層圏の気温(上)は低下している。
IPCCの第四次評価報告書によると、10年間の温度変化は、対流圏が0.04℃から0.20℃へと上昇したのに対して、成層圏は、-0.32℃から-0.47℃へと低下した[18]。この逆転は、温室効果ガスの増加とオゾンの減少によって説明できる。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスは、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、対流圏を温める一方で、成層圏を冷やす。オゾンは、太陽紫外線を吸収し、そのエネルギーを赤外線として射出することで成層圏を暖める働きを持つ。冷蔵庫・空調機器の冷媒及び電子部品の洗浄剤等として使用されていたCFC(クロロフルオロカーボン)や消火剤のハロン等のオゾン層破壊物質が大気中に放出された結果、オゾン層が破壊された。オゾンの減少が温室効果ガスの増加とともに成層圏の温度を低下させたということだ。[19]
1.3. 温暖化の程度
1980年代から今日に至るまで、対流圏下層が温暖化しているという事実を確認した。では、現代の温暖化は、過去と比べてどの程度異常であるのか。現在の温暖化のスピードは、過去に例がないほど急激であるのか。現在の地球温暖化の異常性を検証しよう。
IPCC第三次報告書の政策決定者向け要約には、以下のような、マイケル・マンらによって復元された過去1000年間の北半球における気温変化のグラフが掲げられていた。
この曲線は、その形状から、「ホッケースティック曲線」と呼ばれ、20世紀における気温上昇の異常さを強調するグラフとしてよく引用されたが、後に古気候復元の妥当性をめぐる論争にまで発展した。これが「ホッケースティック論争」と呼ばれるものである。
IPCCの第四次報告書には、問題となったホッケースティック曲線は掲載されず、代わりに、次のようなグラフが掲載されている。
ホッケースティック曲線とあまり変わりがないように見えるかもしれないが、ホッケースティック曲線よりは、近代小氷期と中世温暖期の存在が確認しやすくなった。
ホッケースティック曲線では、近代小氷期も中世温暖期も明確ではなく、あたかも20世紀以前には気温の変動がほとんどなかったかのような印象を人々に与えたが、第四次報告書の政策決定者向け要約では、近代小氷期の存在を認める記述がなされている。
20世紀後半の北半球の平均気温は、90%以上の確率で、過去500年間のどの50年よりも高く、また、66%以上の確率で、少なくとも過去1300年間において最も高かった。最近の研究は、北半球の気温には、第三次報告書で示唆したよりももっと大きな変動があったことを示しており、とりわけ、12世紀から14世紀にかけてと17世紀と19世紀に寒冷な時期があったことを見出した。20世紀以前の温暖期は、第三次報告書で定めた不確定性の範囲内にある。[20]
第三次報告書には、「西暦1400年以前のデータは、半球規模ないし地球規模の平均気温を推定するには、少なすぎて頼りなかったが、地域の気候変動の推定なら、さらに過去に遡ってなされた[21]」とあり、1400年以前のグローバルな気候は、正確にはわからないという立場を採っていた。近代小氷期は、北大西洋沿岸には存在したが、それ以外の地域に関しては、まだよくわからないというのが第三次報告書の結論だった。
第四次報告書でも、近代小氷期を認めはするものの、中世温暖期の存在については、相変わらず懐疑的である。しかし、図2の(b)を見ればわかるように、1000年ごろの気温は、20世紀前半と同じぐらい高く、その間の期間は、気温が低かったから、地域差はあったにせよ、中世温暖期と近代小氷期が存在したことは確かであろう。
現代の気温は、過去1300年間のうちで最も高い水準にあるが、さらに過去に遡って比較するならば、決して異常に高温というほどではない。以下のグラフは、酸素同位対比から推定した過去5億年の気温変動の推定である。
下にある青い帯は、氷河期ないしそれに準じる寒冷な時期で、オルドビス紀/シルル紀(O/S)、石炭紀/ペルム紀(C/P)間に氷河期があったことを示している。ジュラ紀/白亜紀(J/K)間は比較的寒冷ではあったが、氷河期ではなかった。一番右端は、現代(第三紀)の氷河期である。
氷河期とは、地上に氷床が存在するほど寒い時期である。現代は、温暖化したとはいっても、まだ、グリーンランドと南極に氷床が存在する。私たちは極地に氷床があることを当然のように考えているが、この図を見てもわかるように,顕生代においては、氷床がなかった時期のほうが普通だったのである。
現代は間氷期であるから、氷期と比べれば、もちろん、温暖である。しかし、他の間氷期よりも温暖かといえば、そうとも限らない。今から約12万5千年前の、最終間氷期(Eemian interglacial)の最暖期は、現代よりも温暖であったとみなされている。また現間氷期(完新世)においても、今から9千-5千年前の気候最適期(Climate Optimum )は、現代と同程度の温暖であったと推定されている。
次に温暖化のスピードが異常であるかどうかを検討してみよう。第四次報告書によると、1906年から2005年までの100年間で、地表面の温度は0.74℃上昇した[23]。また、21世紀の100年間で、様々なシナリオに応じて、1.8-4.0℃の気温上昇があると予測している。この気温上昇は、過去に例を見ない異常な現象であろうか。最終氷期が終わった時には、もっと急激な温暖化が起きたのではないのだろうか。
第四次報告書のFAQ6.2は次のように答えている。
過去100万年で最大の温度変化は、氷河サイクルで、氷期と間氷期との間には、4-7℃の地球平均気温の変化があった(局地、例えば大陸氷床の近くでの温度変化はもっと大きかった)。しかしながら、データの示すところによると、氷期の終わりにおける地球温暖化は、約5000年かかった緩やかなプロセスであった(6.3節を見よ)。したがって、過去の変化と比べて、現在の地球気候の変動率がはるかに急激で極めて異常であるのは明白だ。[24]
最終氷期から現在の間氷期への移行に約5000年かかったといっても、決して、ゆっくりと少しずつ温暖化したわけではない。ジェットコースターのように、急激な温度上昇と急激な温度低下を繰り返しながら、現在の安定した完新世の時代になったのであり、グリーンランドの氷柱データによると、ヤンガードリアス寒冷期終了時には、40年間で8℃という急激な温暖化が起きた[25]。
実は、第三次報告書も、北半球の相当な部分で、50年で10度の温度上昇があったと推定していた[26]。もとより、これは、グリーンランドという局地でのデータであり、地球の平均気温がその期間でどれだけ上昇したのかは、正確にはわからない。しかしながら、こうした事例を見ると、100年間で0.74℃という上昇スピードが「過去の変化と比べて、現在の地球気候の変動率がはるかに急激で極めて異常であるのは明白だ」と断言することはできない。
現在の地球温暖化は、その温度水準という点でも、温暖化の速度という点においても、空前絶後の異常事態というわけではない。だからといって、現在の地球温暖化がどうでもよいことだというつもりはない。地球温暖化の本質的な問題は、温度水準や温度変化率とは別のところにあるからだ。
2. 温暖化の原因
温暖化の速度が異常なほど高いかどうかはともかくとして、近代小氷期から現代にかけて、対流圏の平均気温が上昇傾向にあることは事実だということを前の章で確認した。この章では、気温上昇の原因が、産業革命以降人類が大量に排出した二酸化炭素にあるのか、あるいはそれ以外に何らかの原因があるのかを考えたい。
2.1. 温室効果と太陽放射
IPCCの第四次報告書は、温暖化/寒冷化要因を以下の図にまとめている。この図は、FAQ 2.1にあるものだが、政策決定者向けの要約にも同じような図がある。
放射強制力(Radiative Forcing)とは、対流圏の圏界面で出入りする放射量の変化量のことで、1平方メートルあたりのワット数で表す。放射強制力がプラスだと、宇宙から地球への放射量が増えて、気温が上がり、マイナスだと、その逆が起こり、気温が下がる。温室効果ガスは、地表から放射された赤外線の一部を吸収するので、その増加は、宇宙への放射量を減らすことになり、プラスの放射強制力があると言うことができる。
この図の筆頭には、寿命の長い温室効果ガス(Long-lived greenhouse gas)として、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハロカーボン類(フロンなどのハロゲン原子を含んだ炭素化合物)が挙げられている。オゾンは、成層圏の温度を引き下げるので、別格扱いになっているが、対流圏内のオゾンは温室効果ガスとして機能する。
気候の放射強制力の図には、温室効果の8-9割を担っている、最も強力な温室効果ガスである水蒸気が含まれていない。これは、水蒸気の気体としての寿命が短いからではない。個々の水蒸気分子はともかくとして、大気中には常に水蒸気が存在しているから、寿命が短いから影響力がないというわけではない。人類は、灌漑などを通じて、水の蒸発量を増やしているが、その影響は1%程度で、水蒸気は、主として、温暖化が進んだ結果、二次的に増加する、つまり一時的な原因ではない。したがって、掲載されていない[27]。
それならば、なぜ、雲のアルベド効果(Cloud albedo effect)が図に含まれているのか。
Ramaswamy et al.(2001) にあるように、水の量が一定であると仮定すると、エアロゾルの濃縮は、雲のアルベドを増加させる(Junge, 1975; Twomey, 1977)。このメカニズムは、本論文では、「雲のアルベド効果」として言及されている。[28]
雲のアルベド効果が、人間活動によって放出されたエアロゾルが雲凝結核となって雲を形成し、それがアルベドを増加させるならば、それは二次的効果でしかないはずだ。成層圏の水蒸気(Stratospheric water vapor)も、人間活動によって排出されたメタンが、成層圏で酸化されたものと説明されている[29]が、それならこれも二次的効果ということにならないのか。たとえ副次的な効果だとしても、それが地球の気候変動に大きな影響を与えているのだとするならば、それらを積分して、放射強制力の収支の内訳を書くべきではないのか。
こうした疑問が残るが、細かい話は脇に置こう。地球温暖化の原因をめぐる論争の中で最大の争点は、現在の温暖化の原因は、人間が排出した温室効果ガスなのか、それとも太陽活動なのかという問題である。図では、唯一の自然的プロセスとして、太陽放射(Solar irradiance)が挙げられている(本文中では火山噴火も取り上げられている)が、その影響力は非常に低く(+0.06~ +0.3 Wm-2)見積もられている。
1950年から2005年にかけての期間において、自然の放射強制力の合計(太陽放射と火山のエアロゾル)が、人間活動を起源とする放射強制力の合計に匹敵する温暖化の影響力を及ぼした確率は1%未満である。[30]
IPCCは、太陽活動の気温への影響として、太陽放射の変動しか認めない。太陽放射全体の強度の変動幅は、11年周期で1%以下と小さいから、それだけなら、気温にはほとんど影響を与えないだろう。だが、他方で、紫外部の放射強度は、極大期では極小期に比べて、2-3倍にもなり、この変動幅は、地球に無視できない影響を与える。
Svensmark と Friis-Christensen の説によると、太陽活動の変動は、宇宙線を通じて気温に間接的に影響を与える[31]。
宇宙線は、超新星残骸などで加速されて、銀河から地表面に降り注ぎ、空気中で、窒素や酸素の原子核に衝突して、陽子、中性子、パイ中間子、ミュー粒子などを発生させ、これらの粒子がさらに、大気の窒素や酸素の原子核に衝突し、多数の粒子を発生させる。粒子が増えると、粒子の周りに水蒸気が集まって、雲が形成されやすくなる。しかるに、太陽黒点数が増えると、太陽風(太陽から吹き出す高温で電離したプラズマ)が吹き荒れ、そして、その太陽風が、太陽系外から流入する宇宙線を吹き飛ばす。だから、太陽活動極大期には、宇宙線の流入量が減り、雲が形成されにくくなる。つまり、太陽放射が雲に反射されずに地表に届きやすくなり、気温が上がる。太陽活動極小期にはその逆が起きる。
第四次評価書は、この説の信憑性を不確かだとしている[32]。この説を認めてしまうと、IPCCのこれまでの主張を覆すことになりかねないから、IPCCとしても慎重にならざるをえない。
ここでもう一度IPCCの報告書から引用した図を見られたい。「雲のアルベド効果」の不確定性が最も大きい。第四次報告書は、温室効果ガスの科学的合意(Scientific Understanding)を「高い」としながらも、雲のアルベド効果の方は「低い」としている[33]。要するに、雲量変動のメカニズムは、温室効果変動のメカニズムとは違って、まだよくわからないことがたくさんあるということだ。
ともあれ、人間が出すエアロゾルだけで雲のアルベドの変動を説明しようとするのは、無理があり、第四次報告書は、次のように、様々な原因の候補を挙げている。
太陽活動の変動と雲量の見かけ上の関係は、そのメカニズムが不確かなので、太陽圏における太陽活動によって変調する宇宙線束の変化 (Usoskin et al., 2004) や太陽活動によってもたらされるオゾンの変化 (Udelhofen and Cess, 2001) のみならず、全太陽放射の変化が直接的に惹き起こす海表面の温度の変化 (Kristjansson et al., 2002) やエルニーニョ南方振動による内的変動 (Kernthaler et al., 1999)の結果としても解釈されてきた。[34]
実は、雲のアルベド効果が気温に対して無視できない影響力を持つことを IPCC も認めている。
雲は、地表面の約60%を覆っており、地球全体のアルベドの2/3を担っている。地球のアルベドは、約30%である。地球のアルベドが30%から29%へと、たった1%下がるだけで、黒体放射平衡温度を約1℃上げることになる。これは大変な数字で、大気中の二酸化炭素濃度を倍にしたときの直接的な放射効果とほぼ同じである。[35]
今後、気候を変えているのは人間なのか自然なのかという論争は、雲のアルベドを変化させている原因は何なのかという問題をめぐって行われうることになるだろう。
主流派がもっぱら温室効果ガスに原因を求めるのは、二酸化炭素濃度と気温との間に高い相関性があるからだ。以下のグラフは、世界の地表面気温とハワイのマウナロア山で観測した二酸化炭素濃度の変化を表している。
たしかに両者の相関性はよいが、だからといって、気温上昇の原因が二酸化炭素だと速断できない。気温が上昇すると、海中から二酸化炭素が放出されるので、二酸化炭素濃度が上昇する。それゆえ、両者の相関性が高いとしても、どちらが原因で結果かはわからない。同じことは、もう一つの温室効果ガスであるメタンについても言える。気温が上昇すると、海底や永久凍土にあるメタンハイドレードが気化して空中に放出されるので、メタン濃度が上昇する。以下の図は、過去20万年間の二酸化炭素濃度と気温とメタン濃度の変化を復元したものである。人間の影響が出る以前から、三者の相関が高かったことを観て取れる。
どちらが原因でどちらが結果かわからないという問題は、しかしながら、太陽活動と気温の相関に関しては生じない。太陽は地球よりも圧倒的に大きいので、太陽は地球に大きな影響を与えられるが、地球が太陽に大きな影響を与えることはまず不可能である。
では、太陽活動と気温との間には、どのような相関性があるのだろうか。以下のグラフは、1881年から2006年までの毎年の太陽黒点数と気温との関係を示したものである(太陽活動は、太陽黒点数と密接に関係している)。
これでは、両者の関係がよくわからないので、太陽黒点数の主要周期を平準化すべく、11年移動平均の値で比較してみよう。
両者は、1940年頃までは、同じ長期的トレンドを示しているが、1940-70年の間は、太陽活動が盛んであるにもかかわらず、気温は低下傾向を示し、1990年以降は、太陽活動が低下しているにもかかわらず、気温が急激に上昇している。このような乖離が生じるのは、1940-70年の間は、エアロゾルによるアルベド効果で気温が押し下げられ、1990年以降は、温室効果が顕現してきたからだと解釈できる。
地表面平均気温のデータを使うと、ヒートアイランド現象の影響を指摘して、異論を唱える人が出てくるので、次に気象衛星から測定した対流圏下層のグローバルな平均気温と太陽黒点数の関係を見てみよう。1979年以降、毎月のデータがあるが、季節要因を除外するために、12ヶ月移動平均を用いている。
このグラフを見ると、1992年あたりから相関性が崩れ始め、特に2001年以降、太陽活動が低下しているにもかかわらず、気温が上昇傾向を示しているということを見て取れる。
太陽活動は、太陽黒点数のみならず、太陽黒点数の周期の長さとも相関していることがわかっている。太陽黒点数の主要周期は11年であるが、実際には、それよりも長くなったり、短くなったりしている。太陽活動が活発になり、太陽黒点数が大きくなると周期が短くなり、逆だと長くなるという傾向がある。以下の図を見てもわかるように、太陽黒点数よりも、周期の長さの方が、気温との相関性が高い。この図に関しては、補正の恣意性が指摘されることがあるが、もしもこの図におけるSCL(Solar Cycle Length 太陽周期の長さ)が太陽活動を正確に反映しているとするならば、これならば、エアロゾルを持ち出さなくても、1940-70年の寒冷化を説明できる。
太陽の磁性反転の周期をヘール周期といい、11年周期を二つあわせた22年周期となっている。以下の図は、太陽の磁性反転の周期と気温を重ね合わせたものだが、1860年以前も高い相関性を示している。
IPCCの放射強制力の図によれば、太陽活動の変動は、1750年から2005年にかけての気候変動にほとんど影響を与えていないということになるのだが、この図を見るならば、むしろ気候変動のほとんどすべてが太陽活動の変動によって決められているのではないかと考えたくなる。もとより、このグラフに関しては、気温復元に用いられるプロキシーデータの選択が恣意的だという批判もある。
太陽周期の長さとの相関を示す二つの図は、1990年代以降の最新のデータがないが、これは問題だ。太陽周期の正確な測定には、フィルタによる補正が必要だが、補正前のデータで言うならば、11年周期の極小期から極小期の長さは、1976年7月から1986年6月までは119ヶ月、1986年6月から1996年10月までは124ヶ月、1996年10月から2007年4月までは125ヶ月というように、長くなる傾向にある。本来なら寒冷化してもよさそうなのだが、気温はこの間ずっと上昇している。最近十数年間の気温上昇は、太陽活動だけで説明するのは困難である。
二酸化炭素温暖化脅威説の否定論者である槌田敦氏も、1998年に公開した「CO2温暖化脅威説は世紀の暴論」では気候変動を太陽活動で説明していたが、2006年に出版した本では、大気汚染で現代の温暖化を説明する新しい仮説を打ち出している[41]。槌田によると、対流圏を汚染する白いエアロゾルは寒冷化をもたらすが、黒いエアロゾルは、太陽光を吸収するので、上空の温度を上げる。対流は、地表面が温められ、上空が冷やされることで起きるのであるから、上空の温度上昇は、対流を弱めることになる。対流が弱くなると風が吹かなくなり、水が気化熱を奪って蒸発しなくなるので、地表面も暑くなる。また、大気汚染物質は、温室効果ガスと同様に、放射冷却を妨害する。これら三つの原因により、現代の地球温暖化が起きているというわけである。
もしもこの仮設で現代の気候変動を説明しようとするならば、1940-70年の間は、白いエアロゾルが増えて気温が低下し、1990年以降は、黒いエアロゾルが増えて気温が上昇したということになるが、このようなエアロゾルの種類の劇的な変化が起きたという話は聞いたことがない。現代の科学的知見では、1990年以降の気温上昇を、温室効果で説明するしかないだろう。
温暖化の原因の特定は、「悪者探し」の様相を呈しており、純粋に科学的な探求というよりも、業界の利害を反映した政治的な闘争になりやすい。二酸化炭素温暖化説の否定論者というと、石油産業から金をもらっている御用学者と決め付ける風潮が世間で強いようだ。確かに、Sallie Baliunas のように、アメリカ石油協会(American Petroleum Institute)から資金提供を受けている否定論者もいるが、そうでない人もいる。例えば、槌田氏は、原発反対運動をやってきた人で、近年「原子力発電は、二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギー」というキャッチフレーズのもと原発増設の動きが強まっていることに危機感を抱いて、否定論者になったようだ。槌田氏は、「原発業界がこのCO2温暖化説の仕掛け人で、各国政府に働きかけて、CO2温暖化説の科学者に研究費を出させた[42]」とすら言っている。
私は、原発業界がそれほど強い政治力を持っているとは思わないものの、他方で、IPCCの気象学者たちが、完全に中立的で客観的な立場から、報告書を書いているとも思わない。人間活動が原因で異常気象が起きているということになれば、人間の努力でそれを防げるということになるのであるから、政策決定者たちはそれに関心を持ち、気象の研究に多額の予算を付けてくれる。そこで、気象学者としては、自分たちへの予算が増える方向へと結論にバイアスをかけたくなる。二酸化炭素温暖化説の否定論者には、専門が気象学でない人が圧倒的に多いが、これは、二酸化炭素温暖化説が否定されても、自分たちの研究資金が減ることがないからだ。もちろん、こうした政治的動機からは自由に中立的で客観的な研究を行っている科学者もいるのだろうが、いずれにせよ、権威を盲信して専門家の言うことを鵜呑みにせず、自分の頭でよく考えて情報選択していく態度が必要だ。
2.2. メタン・ミステリー
メタンは、水蒸気と二酸化炭素についで、最も影響力のある温室効果ガスだ。しかし、メタン濃度変動のメカニズムは、二酸化炭素濃度変動のメカニズムほどよくはわかっていない。メタン濃度の不可思議な変動は、研究者の間で、メタン・ミステリーと呼ばれているが、このメタン・ミステリーを解くことを試みよう。
メタンの濃度は、二酸化炭素の濃度よりも上昇率が高い。
[二酸化炭素、亜酸化窒素、メタンという]三つの温室効果ガスの測定された濃度は、産業革命以前の過去一千年間、ほんのわずかな範囲(二酸化炭素と亜酸化窒素は4%、メタンは7%以内)でしか変動せず、第四紀末でも、限られた範囲内でしか変動しなかった。過去200年の間に、第四紀末の自然の範囲を二酸化炭素は少なくとも25%、メタンは120%、亜酸化窒素は9%超えた。[43]
過去65万年の間、メタンの濃度は、氷期で 400 ppb、間氷期で 700 ppb の間で変動していたが、2005年における二酸化炭素の濃度は、1774.62±1.22 ppb にまで上昇した。
二酸化炭素の濃度の上昇に関しては、その原因が化石燃料の燃焼とセメント製造であることで意見が一致している。では、メタン濃度の上昇はどう説明すればよいのか。そのメカニズムは、二酸化炭素ほど明確ではないので、「メタン・ミステリー」と呼ばれている[44]。
もちろん、メタンの発生源としていくつか候補が挙げられている。近年におけるメタン濃度の異常な上昇を、湿原、シロアリ、海洋、植物などといった自然のプロセスがもたらしたということはありそうにないので、人間活動を原因とするメタンの発生源の中から、どれが一番影響していそうであるかを考えよう。
米国オークリッジ国立研究所のスターンとカウフマンの試算[45]によると、人間活動を原因とする最大のメタンの発生源は牧畜であり、その次は、稲作とのことである。
メタン発生源 | 排出量 | ピーク年 |
---|---|---|
畜産 | 113.1 | 1994 |
稲作関係 | 100.8 | 1994 |
採炭 | 49.5 | 1989 |
埋め立てごみ処理 | 40.3 | 1994 |
バイオマス焼却 | 38.0 | 1988 |
天然ガスの燃焼と漏出 | 29.3 | 1973 |
燃焼を除く石油・ガス供給システム | 18.0 | 1994 |
人間が牧畜用に飼っている牛や羊などの反芻動物は、腸内発酵で発生したメタンを放出しており、水田も嫌気性発酵を促進している。牧畜と稲作は、どちらも人口を変数とする関数であり、人口が増えれば増えるほど、肉や乳製品や米に対する需要が増える。また農業一般の廃棄物は、その腐敗の段階で、大量のメタンを出す。埋め立て式ごみ処分所も大きなメタン発生源である。
大気中のメタンのほとんど(70%)は、生物による発酵を発生源としているが、それ以外にも、メタンは、バイオマス燃焼、採炭、天然ガス/石油精製所からの漏出により排出されている。しかし、これらの非発酵型のメタン排出量は、農業や廃棄物から発酵により出るメタンの量ほど多くはない。
メタンは、一度排出されると永久に大気に残るというわけではない。メタンは、大気中のOHラジカルと反応することで消滅する。大気中のOHラジカルは、光分解されたオゾンが水蒸気と結びつくことで生み出される。自動車や工場などから出される一酸化炭素は、大気中のOHラジカルと反応することで、これを消滅させ、結果として、メタン濃度を高める。しかし大気に放出される一酸化炭素の主要な源泉は、火山と山火事であり、これで、メタン濃度の急激な上昇を説明することは難しい。
以下の図に表れているように、メタン濃度の上昇率は、1991年以降、低下し始め、1999年以降はゼロ近くになり、メタン濃度は横ばい状態になっている。この原因が何なのかがよくわからず、新たなメタン・ミステリーとなっている。
以下のグラフは、変化率であるが、明らかに減少傾向にある。
フランスのオブザーバトヮール・ド・パリは、メタン濃度の変動要因を分析して、次のような結論を出している。
メタン濃度の増加率の減少は、1990年代における人間による排出の減少によって説明できる。1999年以降、人間による排出は、とりわけ北アジアにおいて再び増加に転じた。だが、同時に起きた湿地帯での排出の減少により、メタン濃度の上昇は抑えられた。湿地帯での排出が減ったのは、おそらく乾燥化が再発したためであろう。[47]
メタン濃度の変遷を見ると、1991年に上昇率が急激に高くなっているが、これは、この年にフィリピンのピナツボ山が大規模な噴火を起こし、大量の一酸化炭素を空中に放出したことで、OHラジカルによるメタンの破壊が阻害されたからである。ではその後、上昇率が低迷しているのはなぜなのか。
原因は、いろいろ考えられる。世界の人口は、70年代以降、増加率を減らしている。バイオマス燃焼、採炭、天然ガス/石油精製所からの漏出によるメタンの発生も減っている。しかし、これだけでは不十分だし、第一、なぜ「1999年以降、人間による排出は、とりわけ北アジアにおいて再び増加に転じた」のかが説明できない。北アジアといえば、シベリアのことであるが、シベリアに何があったのだろうか。
1991年は、ソ連が崩壊した年である。ソ連は、それまでシベリアのタイガを大量に伐採していたが、ソ連経済は80年代後半から急速に悪化した。国内の木材需要の急減に伴い、伐採量が減少したことが、ソ連崩壊後、シベリアからのメタンの放出を減らしたのではないだろうか。
ロシア人の森林伐採の方法は、荒っぽい皆伐で、伐採跡地への植林は、ほとんど実施されない。切り倒した森林の半分は、利用せず、その場に放置し、腐るに任せる。木材は、腐敗するとメタンを放出する。それだけではない。地下10メートルほどの深さにある凍土層には、高濃度のメタンが、メタンハイドレート(水分子によって包接されたメタン分子)の形で眠っている。皆伐で地面が日光に対して剥き出しになると、メタンハイドレートが溶けて、メタンを放出することになる。
現在、ロシア国内の木材需要は相変わらず伸び悩んでいるが、ソ連崩壊後にできた民間企業は、アジア、特に日本向けに輸出する木材を手に入れるために、無秩序に伐採している。「1999年以降、人間による排出は、とりわけ北アジアにおいて再び増加に転じた」のは、このためなのかもしれない。
もう一つ考えられるのは、ロシアによる天然ガス開発である。ロシアの天然ガスの生産量は、ソ連崩壊直前の1990年にピークを迎えた後、減少し続けたが、近年のエネルギー価格の高騰を受けて、再び増えつつある。天然ガス/石油精製所からの漏出によるメタンの発生は、世界全体では減りつつあるが、ロシアの設備はお粗末であるから、北アジアに限ってみれば、天然ガス増産に伴って、漏出メタンの量が増えていると考えられる。
メタンは、同じ温室効果ガスでも、二酸化炭素とは異なり、燃料として使える。メタンを空気中に放出する代わりに、燃料として使用すれば、温暖化防止という点では一石二鳥となる。天然ガスは昔から燃料として利用されてきたが、近年新たな燃料源として注目を集めているのは、メタンハイドレートである。
メタンハイドレートは、永久凍土に含まれている以上に海底に含まれている。地球温暖化により、水温は上昇しつつあり、海底に閉じ込められたメタンハイドレートが溶けて、大気にメタンを放出する現象が確認されている。
海底から噴出するメタンがただちにメタンハイドレート化し、その後海水中を上昇して、最後は浅層で分解する様子を、世界で初めてビデオ撮影することに成功した。
新潟県上越市沖の海底から600mの高さにまでメタンガス気泡の柱(=メタンプルーム)を噴き出しているメタン噴出孔を無人探査機で調査した。そこでは、メタンは噴出後、直ちにメタンハイドレートに変わっていることが初めて明らかになった。深海底から湧き出したメタンは、通常は海水に溶解し、やがて酸化されて炭酸となるため、メタンとして表層に達することはないとこれまでは考えられている。しかしながら、上越沖では、気泡全体がメタンハイドレート化し、あるいはメタンハイドレートの皮膜で覆われるため、海水に溶けることなく浅海層にまで運ばれることが分かった。このことが、本海域の浅海層のメタン濃度異常の原因と考えられる。[48]
メタンの温室効果は、二酸化炭素の21倍もある。2億5千年前に生物種の約9割が絶滅したペルム紀/三畳紀(P/T)境界の大量絶滅では、温暖化がメタン濃度を高め、それが更なる温暖化をもたらすという暴走的な温室効果(runaway greenhouse effect)により激しい気温上昇(地球の平均気温は23℃にまでなった)が起こったと言われている。こうしたポジティブ・フィードバックを事前に防ぐためにも、メタンハイドレートを、気化する前に採掘し、燃料として利用するということを真剣に考えたほうがよいだろう。
天然メタンハイドレートは世界に広く分布し、その資源量は莫大である。日本周辺のメタンハイドレート資源量は、日本が現在消費している天然ガスの約96年分あると見積られている。メタンは、クリーンなエネルギー源で、直接燃焼させても二酸化炭素の排出量は石油や石炭よりも少なく、不純物も少ないという点でも環境負荷が低いし、燃料電池を使う場合では、低コストで水素を取り出せられる。日本のエネルギー自給率を高めることができるというのも魅力的である。もしも「メタンハイドレートの実用化は、原油価格が1バレル40―50ドル程度で採算にのる[49]」というのが本当なら、もう既に採算ラインに乗っているということになる。もしも採算が取れるかどうかあやしいとしても、温暖化対策として検討する余地がある。
2.3. 森林伐採と砂漠化
植物は、海水とともに、重要な二酸化炭素吸収源である。人口爆発により、森林伐採と砂漠化が世界中で進んでいる。こうした植生の後退は、二酸化炭素濃度を上昇させることで、地球温暖化を悪化させていると考えられているが、これに異論を唱える人もいるので、植物が果たす役割について、改めて考えてみたい。
2001年10月に、モロッコのマラケシュで、第7回気候変動枠組条約締約国会議が開かれ、京都議定書の運用細則を定める文書が正式に採択された。この所謂マラケシュ合意では、新規の植林や再植林だけでなく、既存の植生の管理によって確保される吸収分も京都議定書で目標とされている削減分にカウントできるようになった[50]。これは、目標の達成が困難な日本などの国が、目標のハードルを少しでも下げようとした結果の苦肉の策で、結果として、日本は、1300万炭素トン(1990年総排出量比3.9%)を上限に、自国での森林管理による吸収分を算入できることになった。
こうした、植物を二酸化炭素のシンク(貯蔵庫)として活用しようとする動きに対しては、批判も強い。植物が吸収し、固定化した炭素は、最終的に分解や火事などで二酸化炭素に戻るから、新たに植林でもしない限り、二酸化炭素削減効果はないというわけだ。例えば、福田正己北海道大学教授は、頻発する森林火災を根拠に「世界の森林はCO2の吸収源ではなく、放出源になっている[51]」とすら言っている。
しかし、植物が、空中の二酸化炭素から取り入れた炭素をすべて二酸化炭素として空中に送り返しているという考えは間違っている。
植物に蓄えられた炭素の多くは、数千年間の世代交代を経て、土壌に移行しており、その結果、地球の土壌の炭素貯蔵量は、目下、全世界における生きた植物の炭素量の約三倍になっている。[52]
石油・石炭・天然ガスといった化石燃料の炭素も、その起源を辿ると、大半は、植物が光合成により空中から固定した炭素に行き当たる。石油・石炭・天然ガスは、現在も自然によって作られており、そのプロセスを促進することは、これらの消費を減らすことと同様の二酸化炭素削減効果がある。
もとより、山火事などが起きれば、炭素の大部分は、二酸化炭素として、空中に放出される。森林火災が木の寿命の間隔で起きるなら、新陳代謝を促進するので、長期的に見れば、より多くの二酸化炭素を吸収するのだろうが、最近では、人間によるずさんな森林開発のおかげで、もっと短いサイクルで火災が発生するようになり、その弊害が顕在化してきている。
したがって、既存の森林を管理することも、二酸化炭素濃度の上昇を抑制する上で有効だ。寿命に達する前に、そして火事で燃える前に、その木材を利用し、最終的には、燃料として使えば、化石燃料の使用を減らせられる。化石燃料という退役したバイオマスの貯蔵を使わずに、現役のバイオマスだけで、エネルギーが調達できるようになれば、それはカーボン・ニュートラルであり、かつ持続可能なエネルギー利用ということになる。
植物は、代表的な温室効果ガスである二酸化炭素を吸収し、固定するが、それ以外の温室効果ガスを出すことで、地球温暖化の原因になっていると主張する人たちがいる。マックス・プランク研究所のフランク・ケプラーたちだ。彼らは、2006年の1月に、好気的条件下で、陸上植物がかなりの量のメタンを出しているという論文を発表した[53]。ケプラーたちは、植物の細胞壁を形成しているペクチンが関与しているのではないかと推測し、リンゴから精製したペクチンからメタンが発生することを実験で示した。
メタンというと、腐敗した植物を微生物が嫌気的に分解して作り出すというイメージが強いが、これとは別に、生きている植物も、酸素に富んだ環境で、その10倍以上も多いメタンを放出しているというのである。メタンの温暖化効果は、二酸化炭素の21倍もある。メタンの大気中での寿命が二酸化炭素よりも短いとはいえ、これが本当なら、植物には、地球温暖化を促進している側面があるということになるので、この論文は世界的に大反響となった。
ところが、翌年になって、トム・デュックらのオランダの研究チームが追試を実施し、ケプラーたちの主張を否定する報告をした[54]。このチームは、炭素13(13C)でレイベリングした二酸化炭素の環境下で六種類の植物を育て、その植物が好気的条件下で出す炭素13のメタンの量を測定したところ、その量は、ケプラーが報告した量の0.3%以下で、事実上植物はメタンを出さないと言っている。
ケプラーはこれに対して、炭素13を使ったことで、植物の代謝選好が変わったのではないかと言っているが、デュックは、そのような説には根拠がないと反論している。かくして、このメタン論争は、1989年の常温核融合論争のような様相(世間の耳目を集めた意外な実験結果と再現不能性がもたらす懐疑)を呈してきた。論争はまだ決着していないが、今のところ、追試による再現ができていない以上、ケプラーの説を認めるわけにはいかない。
植物が出す最強の温室効果ガスは、水蒸気である。植物は、気孔から大量の水蒸気を出しているが、これが温暖化問題を悪化させるということはない。水蒸気は、濃度がある程度高くなると、雨となってまた地上に戻ってくる。二酸化炭素やメタンは、濃度が高くなったからといって、液体となって降ってくるということはない。また、植物が行う蒸散は、気化熱を奪うから、その点では、地表面の温度を下げる効果がある。また水蒸気が雲を形成すれば、アルベド効果により、気温を低下させるという面もある。
植物は、光合成のために太陽光を吸収するが、植物被覆が減って地面が露出すると、太陽光が反射されやすくなる。実際、砂漠の夜は、放射冷却が激しいので、とても冷え込む。つまり、砂漠化は、地表面のアルベドを高め、寒冷化をもたらす効果がある[55]。IPCC第四次報告書も、土地利用の変化によるアルベド上昇の放射強制力を-0.2(W/m2)としており、エアロゾル放出によるアルベド上昇の放射強制力、-0.5(W/m2)ほどではないが、かなりの寒冷化効果を認めている[56]。
とはいえ、これを根拠に、砂漠化は温暖化防止に役立つので望ましいと主張することは、大気汚染が温暖化防止に役立つので望ましいと主張するのと同じぐらいばかげている。太陽光を利用せずに宇宙に跳ね返すことは、エネルギー利用という点で望ましくないのであって、その結果生じる寒冷化は、「悪い寒冷化」であって「良い寒冷化」ではない。これについては、本稿の最終節で改めて取り上げることにしよう。
IPCC第四次評価報告書は、森林伐採などの土地利用変化がもたらした二酸化炭素の増加量は、化石燃料の燃焼やセメント製造がもたらした二酸化炭素増加量の三分の一にまで上ると見積もっている[57]。砂漠化は、二酸化炭素濃度上昇に無視できない影響を及ぼしている。
植物は、二酸化炭素の吸収や蒸散により、地球温暖化の抑制に貢献している。アルベドの低下や温室効果ガスである水蒸気の排出は温度上昇をもたらすが、どちらも人間を含めた生命にとって有益であり、有害視することは妥当ではない。植物は、地球温暖化問題の解決にとって必要なだけでなく、栄養の循環と水の循環を作り出す上で、生命にとって重要な役割を果たしている。したがって、人類は、塩害を惹き起こさないように注意しつつも、砂漠化した地表面を再緑化することが必要である。
3. 温暖化の影響
これまでの二つの章で、地球温暖化が事実であり、人間活動を起源とする温室効果ガスが温暖化の主要な原因であることを確認した。しかし、これらを認めたとしても、地球温暖化が人類にとって有害なのかどうかはまた別の問題である。地球温暖化の問題とされているものは、大きく分類すると、気温変化がもたらす問題と気温上昇がもたらす問題の二つに分類できる。気候変動は、温暖化であれ、寒冷化であれ、現状とは異なるという点で不確定性をもたらすリスクである。温暖化固有の問題はこれとは区別されなければならない。この最後の章では、気温が変動する問題と温暖化に固有の問題のそれぞれを検討した後で、温暖化の問題の本質は何であるかに関して考察したい。
3.1. 温度変化の影響
地球温暖化の影響を評価することは、IPCC第二作業部会の仕事である。2007年6月現在、フルレポートはまだ公開されていないが、政策決定者向けの要約は公開されている。この要約の14~15ページに、温暖化が惹き起こすと予想される現象の一覧表がある。日経BPが、環境省の仮訳をもとに、簡潔にまとめているので、それを引用しよう。
地球温暖化が及ぼす影響の中には、好ましいものもある。温暖化といっても世界各地で均等に温度が上昇するわけではなく、高緯度ほど温度が上昇する。つまり、暑いところはあまり暑くならず、寒いところほど暖かくなる。したがって、高緯度地帯に住む人には、暖房費を節約できるというメリットがある。寒さが直接または間接の原因で死ぬ人も減る。気温が上昇すれば、蒸発や蒸散が盛んになり、降雨量も増える。飲み水や、農業用水、工業用水に困らなくなる。二酸化炭素濃度も増えるから、植物の光合成も盛んになり、豊作となる。「昆虫発生の増加」も豊作が原因である。
この表の一行目にある「ほぼ確実」のところには、温暖化のデメリットだけではなく、以上述べたようなメリットも書かれている(日経版では省略されているが、原文には書かれている)。しかし、二行目以降は、それよりも可能性は下がるが、熱波、豪雨、旱魃、サイクロン、高潮など、デメリットばかりが書かれている。これは、地球の平均気温が1990年と比べて1-3℃未満の上昇なら、地域と分野によってはデメリットよりもメリットのほうが多いが、2-3℃以上の上昇なら、世界のどの地域でも、メリットよりもデメリットが大きくなるという第四次評価報告書の予測[58]に符合している。
私たちは、IPCCが指摘するデメリットに対して、どのように対処すればよいのか。以下、次の節にわたって、一つずつ検討していきたい。
港湾施設にとっては、海面水準は安定しているのが一番望ましく、温暖化による上昇も寒冷化による下降もどちらも望ましくない。海面が下降すれば、接岸に支障をきたしたり、船が座礁しやすくなったりするなどの弊害が出てくる。もとよりそれは一時的な問題で、新たに適切な位置に港湾を作ればよいだけのことだが、海面上昇は、それよりももっと深刻な悪影響をもっと広範囲な地域に及ぼす。海面上昇は、たとえわずかな規模だとしても、洪水による浸水リスクを高め、大規模であれば、人類の可住地域を狭める。完全に水没する島も出てくるだろう。
では、地球温暖化により、海水面は実際にどの程度上昇したのだろうか。第四次報告書は、20世紀全体を通しての上昇幅を、0.17(0.12-0.22)メートルと見積もり[59]、また、現在(1980-1999)から今世紀の末(2090-2099)までの上昇幅を六つのシナリオで 0.18-0.59 メートルと予測している[60]。
米国環境保護庁は、21世紀末までに数メートル規模の海面上昇が起きると、1980年代に予測していたが、実際には、海面上昇のスピードはもっと遅いということが、その後判明した。温暖化により極地の氷が溶けていることは確かであるが、温暖化の初期の段階で溶けるのは、海中に浮いている氷であって、陸上にある氷ではない。海中の氷は溶けた時の体積を予め押し下げているので、溶けても海面水準に変化を及ぼさない。他方で、温暖化は水の体積を膨張させる。第四次報告書によると、1993年から2003年までの間に生じた海面上昇のうち、51.6%は、熱膨張による上昇だった[61]。
22世紀以降の海水面水準はどうなるのか。
数百年から一千年の期間にわたって、1990-2000年との比較で1-4℃地球の平均気温が上昇し、グリーンランドとさらにはおそらく南極西部の氷床が少なくとも部分的には溶け、海水面水準を4-6m以上上昇させるという中度の確信がある。グリーンランドと南極西部の氷床が完全に溶けると、それぞれ、7mと5mの海面上昇をもたらすであろう。[62]
こうした大規模な海面上昇が100年以上先ということならば、水没する地域にある現在の人工物はすべてそれまでに寿命を迎えるので、防波堤を築くといった小手先の対応策よりも、都心を内陸に向けて少しずつシフトしていく方法のほうが根本的な解決策になる上、コストもそのほうが安くつくだろう。問題は、海面上昇の正確な予想ができない点にある。
温度変化がもたらすもう一つの問題は、絶滅種の増大である。生物は、それぞれ特殊な環境に適応しているので、温度は安定しているのが一番で、温暖化であれ寒冷化であれ、通常とは異なる温度変化は、生物の生存には不利である。第四次報告書は、「もしも地球の平均気温が1.5-2.5℃以上上昇したなら、今のところ評価の対象となっている動植物の種のうち約20-30%が絶滅の危機に瀕しやすくなる[63]」と警告している。
2004年に『ネイチャー』に掲載されたレターでも、2050年までに生物種の4分の1が危なくなるというシミュレーションの結果が出ていた。
将来の気候変動のシナリオに対する種の分布の予測を用いて、地表面の約20%をカバーするサンプル地域の絶滅リスクを査定した。絶滅の評価された確率が地理的範囲の大きさとべき乗則の関係を示している三つの方法を調査したところ、私たちは、2050年までの中位の気候温暖化シナリオに基づいて、サンプルに選んだ地域と分類群において、15-35%の種が「絶滅の危機に瀕する」と予測する。[64]
温暖化で絶滅が危惧されている生物にサンゴがある。サンゴの生息可能温度は、上限も下限も限られていて、海水温が高温になっても低温になっても、サンゴの白化(coral bleaching)が起きるのだが、実際には温暖化の方が脅威である。サンゴの白化は、海水の温度上昇だけではなく、酸性化によっても起きると考えられていて、「人間が過去200年間にわたって排出した二酸化炭素のおかげで、海洋表層水のpHが、平均で0.1減少し、2100年までには0.5減少しうるということが証拠からわかる[65]」からだ。
二酸化炭素は、水に溶けると弱酸の炭酸となるので、海洋の酸性化をもたらす。サンゴは、海中に溶けている炭酸イオンと岩石から溶け出したカルシウムイオンから炭酸カルシウムを作り、死後、これを石灰岩として海底に蓄積する、炭素貯蔵庫としての役割を果たしている。だから、サンゴが著しく減ったり、絶滅したりすると、海洋の二酸化炭素吸収力が下がり、さらに温暖化を加速することになる。
サンゴは特殊な例だが、気候変動によって絶滅する種が出てきても、どのみち、生き残った種が進化して、空いたニッチを埋めるべく適応放散するであろうから、気にする必要はないではないかという人もいるだろう。もしも地球温暖化が、ある種にとっては好ましくはないものの、ある種にとっては好ましいといった類の気候変動であるとするならば、たしかに、絶滅する種に人類が入っていない限り、たいして気にする必要はないだろう。問題は、現在の地球温暖化が生命一般にとって望ましくないかどうかであって、これについては、またあとで取り上げることにしたい。
3.2. 温度上昇の影響
本節では、気温変化一般がもたらす問題ではなくて、寒冷化とは異なる温暖化特有の問題を考察することにしたい。具体的に言えば、降雨量、植生、洪水や暴風といった異常気象の発生、熱塩循環(深層海流)への影響などである。
地表面が温暖化すれば、水の蒸発量も増えるが、蒸発した水は、雨としてまた地表面に戻ってくるのであるから、地球全体では降雨量が増えるはずである。クラウジウス-クラペイロンの式によれば、1℃の気温上昇で大気の保水能力は7%増加する。第四次報告書は、20世紀全体を通して、大気中の水蒸気量は、5%増えたと認識している[66]。
しかしながら、以下のグラフを見ればわかるように、温暖化と降雨量との関係は、それほど単純ではない。1976年以降、気温が上昇している一方で、降雨量は減少し、最近ではまた増加に転じている。飽和水蒸気量が増大しても、水の循環が停滞するならば、温暖化は降雨量の増大をもたらさない。
過去25年間の降雨量の変化を緯度別に分析してみると、ハドレー循環が上昇する北緯25度-南緯25度間の赤道付近では、この25年間で降雨量が4%増加したが、陸地での2%の減少が足をひっぱている[67]。陸地で降雨量が減ったのは、熱帯雨林の乱伐が原因と見られる。また、温暖化といっても、低緯度地帯はあまり温度が上昇しないので、温暖化による降雨量の増大効果はあまりない。ハドレー循環が下降する中緯度高圧帯では、陸地でも海でも降雨量が減っている。温暖化で乾燥が激しくなっている一方で、蒸発した水がこの地域では降らない。代わりに、高緯度地帯の降雨量は増える。
乾燥地域はより乾燥し、多雨地域はより多雨になるという降雨量の二極化が起きているわけで、第四次報告書は、この傾向が今後も続くとみている。
21世紀の中頃までには、毎年平均の川の流水量と水の入手可能性は、高緯度地帯と一部の熱帯の湿地帯では、10-40%増加し、中緯度の一部の乾燥地域と乾燥した熱帯地域では、今でも水不足が逼迫しているのだが、10-30%減少すると予測されている。[68]
二酸化炭素は光合成の材料であるから、二酸化炭素濃度の上昇は、植物の光合成にとって好ましい影響を与えると考えられている。特に高緯度地帯では、降雨量の増大と気温の上昇により、豊作になることが期待されるが、実際には、地球温暖化は、農業にとって好ましくない影響をも与える。
まずは、二酸化炭素濃度の上昇がもたらす効果について考察しよう。以下のグラフを見てもわかるように、二酸化炭素濃度が増えると、光合成の収量も増加する。
しかし、限界相対収量は、二酸化炭素濃度の上昇とともに逓減し、最終的にはゼロになる。これは光合成の速度を決める他のファクターが足を引っ張るためである。以下のグラフを見ると、光合成速度の上昇に伴って、水の利用効率が上がり、蒸散によって捨てる水の量も減っていくことがわかる。イネと比べると、トウモロコシの葉の光合成速度は、比較的低い二酸化炭素濃度で頭打ちになる。これは、効率よく二酸化炭素を集められるC4植物のトウモロコシのほうが、そうでないC3植物のイネよりも、早い段階で水の利用効率が頭打ちになるからだと考えられる。
水と二酸化炭素という光合成の直接の材料のみならず、リンやカリウムといった無機肥料も制約条件となる。無機肥料が不足していると、水や二酸化炭素がいくらあっても、豊作にはならない。
では、温度上昇は収穫にどのような影響を与えるのだろうか。下のグラフは、イネの玄米収量に対する登熟期間(実を結んで成熟していく時期)の平均気温、二酸化炭素濃度、太陽エネルギーの影響を表したものである。太陽エネルギーが大きくなるほど収量は増え、二酸化炭素濃度倍増の効果も大きくなるが、登熟期平均気温には最適値があって、暑すぎても、寒すぎても収量が減るということがわかる。
温度が高くなると、作物の成熟が早まるが、でんぷんの蓄積が不十分で、まずくなる傾向がある。最適気温は種によって異なるから、温暖化が進むなら、品種改良や品種変更をする必要が出てくる。総じて、高緯度に存在する先進国は、工夫次第で、地球温暖化を農業生産性の向上に利用できるが、中低緯度に存在する発展途上国での農業は、利益よりも不利益を被ることになるだろう。
海水温が上昇すると、台風、ハリケーン、サイクロンといった熱帯性低気圧が発生しやすくなると言われている。21世紀の末までの海面上昇は、0.18-0.59 メートルとわずかであるが、わずかであっても、これとの相乗効果により、洪水のリスクが高まる。地球温暖化により、洪水や暴雨風といった異常気象が発生し、被害額が増えているという認識を持つ人は多い。
例えば、国立環境研究所の原沢英夫は、以下のようなデータで、温暖化の進行とともに異常気象による被害が増加しているという。
「被害額は近年に急増している」とあるが、計測単位であるドルの価値が下落していることや、人口や経済や保険の規模自体が大きくなっていることから、これだけでは、異常気象が増えているかどうかは判断できない。
下のグラフは、報告されている災害の数で、こちらは経済の影響を受けにくい。もとより、この図の注釈にあるように、情報アクセスの改善や人口増加によって、実際以上に水増しされているが、洪水とサイクロンの数は、地震の数よりも増え方が急激であり、地球温暖化の影響ではないかと推測されている。
最近多大な被害をもたらした暴風としては、2005年に米国南東部を襲い、1836人の死者を出したハリケーン・カトリーナが有名である。しかし、これと地球温暖化が関係あるかどうかは、研究者の間でも意見が分かれる。温室効果ガスにより、地表面に滞留するようになった過剰な熱エネルギーが暴風を惹き起こすという考えもあれば、低緯度と高緯度との温度勾配が弱まることで、かえって風が弱くなるという考えもある。
2005年1月に、第四次評価報告書の作成に携わっていたクリストファー・ランドシー(Christopher Landsea)が、彼の抗議にもかかわらず、地球温暖化が最近のハリケーン活動に寄与しているとするケビン・トレバース(Kevin Trenberth)に抗議して、IPCCの仕事を辞任するといったアクシデントも起きている[69]。クリストファー・ランドシーは、ハリケーンと長期的な温暖化傾向は関係なく、ハリケーンが活発になっているのは、大西洋の塩分濃度や水温が40-60年周期で変化しているためだとしている。
ランドシーを含むアメリカの科学者は、「最近の大西洋でのハリケーン活動の増加:原因と含意」と題する『サイエンス』に掲載されたレポートで、1948-1964年は、1995年以降と同様に、ハリケーンが多かったことを指摘し、地球温暖化が1995年以降ハリケーンが多発した原因であるという通説に疑問を投げかけている。
ランドシーたちは、このレポートの中で、次のように述べている。
1995年以降の活動の増加が人間活動を原因とする地球温暖化によるものではないかと問う人もいるかもしれないが、大西洋のハリケーン活動における歴史的な数十年規模の変異の方が、地球温暖化による漸次的な気温上昇から予期される変異よりもはるかに大きい[…]1995年以降の前代未聞のハリケーン活動が、大西洋における海面温度(および鉛直方向のずれ)の数十年規模の変化と長期にわたる温暖化トレンドによる海面温度の付加的な上昇との結合の結果という可能性もある。しかしながら、現在の活動期(1995-2000)が、以前の活動期(1926-1970)よりも活動的であるようにみえるのは、もっぱら現在張り巡らされている観測網が優れているからであるとみなすことも同様に可能である。[70]
このように、ハリケーンの活発化が、クリストファー・ランドシーが主張するように、周期的な自然現象なのか、それともケビン・トレバースが主張するように、地球温暖化が原因となっているのか、まだ不確定で、第四次報告書も地球温暖化が熱帯サイクロンを増加させる確率を66-90%とし、他の予測と比べて低く見積もっている。もしも、近年におけるハリケーンの活発化が周期的な自然現象ならば、そのうちハリケーンの活動は停滞するはずであるから、しばらく様子を見れば、クリストファー・ランドシーとケビン・トレバースのどちらが正しいかがわかる。
3.3. 温暖化問題の本質
これまで地球温暖化の現状、原因、影響を分析してきた。最後に結論として、良い温暖化と悪い温暖化を区別することで、地球温暖化問題の本質は何なのか、対策としてどのようなことをすべきかに関して私見を示したい。
人間を含めて、生命システムは、太陽放射を中心とする高熱源から、低エントロピーなエネルギーを作り出し、それ以上に発生する高エントロピーな廃棄物を最終的には廃熱という形で、水を中心とする低熱源に(最終的には宇宙に)捨てることで、自らを維持している。地表面に到達する太陽放射の量が増えれば、地表面の温度は上昇するが、それは良い温暖化である。なぜならば、太陽放射は低エントロピーな資源であり、太陽放射が増えることで大気内の水の循環も活発になり、水の入手可能性も高まるからである。
これに対して、温室効果ガスの増加による温暖化は悪い温暖化となりうる。温室効果ガスは、地表面から発せられる熱放射を吸収し、地表面に送り返すため、温室効果ガスが増えると、高エントロピーな廃熱が大気圏内に滞留することになる。このように、地球温暖化問題とは、ゴミが捨てられなくなって困るというゴミ問題なのである。気温が上昇すること自体は、ある種の生物にとってはプラスになるが、エントロピーが増大することは、熱死状態に近づくことであり、すべての生命システムにとって普遍的な脅威である。
以上の、良い温暖化と悪い温暖化の区別に基づいて、良い寒冷化と悪い寒冷化を区別できる。火山噴火や大気汚染などにより、地表面に届く太陽放射が減れば、気温が下がるが、それは生物にとっては、資源の減少を意味するのであるから、悪い寒冷化である。これに対して、廃熱を宇宙に放射すれば、それだけ気温は下がるが、これは大気圏内のエントロピーを下げるから、良い寒冷化である。
良い寒冷化と悪い寒冷化、良い温暖化と悪い温暖化の区別は非常に重要である。しかしながら、地球温暖化の危機に警鐘を鳴らす人の中には、こうした区別をすることなく、たんに温度が上昇することが問題だと思っている人が多い。そういう人の中には、悪い温暖化を悪い寒冷化で相殺するアイデアを提案する人がいる。
スペース・サンシェイドを提案している米国のロジャー・エンジェル教授(アリゾナ大学)もその一人である。エンジェル教授は、以下のイラストにあるような飛行物体を、地球と太陽の間にあるラグランジュポイントのL1(安定軌道の一つ)に浮かべ、地球に到達する太陽エネルギーを1.8%減らすという案を提案している。この計画を実行するために必要な費用は、数兆ドルになると見積もられている[71]。
米航空宇宙局先端構想研究所(NASA Institute for Advanced Concepts)は、エンジェル教授に、このアイデアでさらに研究を進めるよう、補助金を出したとのことである[73]
1995年にノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェン博士は、気球で硫化水素を成層圏にまで運び、それを燃焼させ、二酸化硫黄の粒子を撒くことで、成層圏のアルベドを高め、地球を温暖化から救う方法が検討に値すると言っている[74]。大気汚染によって、地球を寒冷化させようというわけだ。実は、こうした人為的な手段を講じなくても、太陽活動は近年減少傾向にあり、途上国による大気汚染も手伝って、太陽放射の流入量は減っている。所謂グローバル・ディミングと呼ばれている現象である[75]。グローバル・ディミングは、地球温暖化を阻止するから望ましいかといえば、決してそうではない。
地球温暖化を緩和するために、太陽放射の流入量を減らすことは、喩えて言うなれば、便秘を治すために、食事の量を減らすようなものだ。なるほど、食べる量が減れば、排泄物の量も減るだろう。しかし、これでは根本的な問題解決にはならない。人間は、食物を低エントロピーな資源として取り入れ、そのエントロピーを増大させて、体外に捨てている。低エントロピー資源の摂取と高エントロピー廃棄物の排泄は、生命システムを維持する上で欠かせない車の両輪で、その両者が滞るとなれば、生命システムにとってはダブルパンチになってしまう。
生物について当てはまることは、地球についても当てはまる。太陽光の流入を減らせば、大気圏内のエントロピーは増大することになるので、私たちの環境はますます悪化することになる。温室効果ガスの増大による地球温暖化は地球の便秘であり、地球の生命を便秘の苦しみから救うには、食料である太陽光を減らすのではなくて、スムーズに排便できるようになる対策を講じる必要がある。
廃熱の蓄積が惹き起こす問題は、ヒートアイランド現象として、局地的にではあるが、都市部でかなり前から起きている。都市部は、熱を大量に出すだけでなく、気化熱を奪って蒸発する水が少ないとか、高層建築物が風の流れを遮断するとかの理由で、熱を蓄積しやすい。第四次報告書は、都市部は、地表面の0.046%しか占めず、ヒートアイランド現象による放射強制力は、地球全体で0.03W/m2にすぎないから、地球温暖化には小さな影響を与えないと言っている[76]が、むしろ地球温暖化がヒートアイランド現象に与える影響の方を心配すべきである。
近年アメリカやヨーロッパで多発するようになった熱波は、地球温暖化が直接の原因ではないが、温室効果ガスの増大に伴って、頻度や規模が大きくなっていると考えられる。アメリカやヨーロッパといった都市化が進んでいる地域で起きている熱波には、広域的なヒートアイランド現象としての側面がある。オーストラリアで起きている熱波は、オーストラリアで進行している砂漠化の影響が強い。砂漠化は人間による持続不可能な土地利用が原因であるが、地球温暖化による蒸発量の増大も原因の一つである。
地球温暖化と砂漠化は、人口爆発と一人当たりのエネルギー消費量の増大、一口に言えば、社会の近代化を共通の原因としている。人類文明の規模が大きくなればなるほど、それはより多くの低エントロピー資源を奪い、より多くの高エントロピー廃棄物を出す。その結果、他の生物たちが衰退し始めている。人間は自分たちだけで生きていける生物ではないので、人類文明の無制限な量的拡大は、自らの破滅をもたらすだろう。水の循環、大気の循環、栄養の循環といった地球の循環構造を維持する持続可能な文明のあり方を探らなければならない。
地球温暖化が、具体的にどのような変化をもたらすかは不確定である。不確定であるということは、情報エントロピーが大きいということであり、情報システムである生命にとっては、それ自体が脅威である。さらに、予測に不確定性があるだけでなく、予測外の不確定性もある。地球温暖化がどのような影響を及ぼすのかに関して、現在、多くの科学者が様々な予測を立てているが、ひょっとすると、全く予想していなかった好ましくないことも起きるかもしれない。好ましくないことに不確定性があるだけでなく、不確定性そのものが好ましくない。
四季の変化のように、予見可能な、その意味では安定した不安定さならば、生物は容易に適応できる。しかし、思いがけない気候変動に対しては、人間を含め、生物は一般に脆弱である。例えば、2003年のヨーロッパでは、37-38℃の猛暑が1週間ほど続いて死者が大量に出たが、毎年この程度の暑さを経験している地域では、死者は出ない。海面水準の変動も、いつどの程度になるのかが予めわかっているならば、都市設計も容易だ。気温と降水量の変化を事前に予測できるなら、農業も容易である。それができないから困るのである。
第一章で述べたように、現代の地球温暖化は、温度水準という点でも、温度変化という点でも、決して前代未聞の異常な水準にあるわけではない。現代の温暖化の特異性は、温室効果ガスの増大が先導しているがゆえに、良い温暖化ではなくて悪い温暖化であるということころにある。資源問題と環境問題を解決するための基本的な命題は、資源問題も環境問題もすべて究極的にはエントロピーの問題だということである。地球温暖化は、熱エントロピーと情報エントロピーという二種類のエントロピーを増大させる。ここに地球温暖化問題の本質がある。
4. 参照情報
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- 杉山大志『地球温暖化のファクトフルネス』2021/2/7.
- 杉山大志『地球温暖化問題の探究』デジタルパブリッシングサービス (2018/12/7).
- 鬼頭昭雄『異常気象と地球温暖化-未来に何が待っているか』岩波書店 (2015/3/20).
- ポール・ホーケン『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』山と溪谷社 (2020/12/19).
- ↑本稿は、2007年05月20日から7月15日 にかけて『連山』で九回にわたって連載した地球温暖化に関する記事のシリーズを一つにまとめ、2021年6月26日に加筆と修正を施した上で再公開したものである。
- ↑竹内敬二『地球温暖化の政治学』朝日新聞社 (1998/6/1). p. 11.
- ↑“The central fact is that after three quarters of a century of extraordinarily mild conditions, the earth’s climate seems to be cooling down. Meteorologists disagree about the cause and extent of the cooling trend, as well as over its specific impact on local weather conditions. But they are almost unanimous in the view that the trend will reduce agricultural productivity for the rest of the century. If the climatic change is as profound as some of the pessimists fear, the resulting famines could be catastrophic." ― Newsweek (1975) The Cooling World, April 28, 1975. p.64.
- ↑Data from Global Historical Climate Network (2007) GLOBAL Temperature Anomalies in .01 C.
- ↑“In the peer-reviewed literature, a paper by Bryson and Dittberner (1976) reported that increases in carbon dioxide (CO2) should be associated with a decrease in global temperatures. When challenged by Woronko (1977), Bryson and Dittberner (1977) explained that the cooling projected by their model was due to aerosols (small particles in the atmosphere) produced by the same combustion that caused the increase in CO2." ― Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Chapter 1. Historical Overview of Climate Change Science. p.98. The cited papers in this quotation are Reid A. Bryson and Gerald J. Dittberner (1976) A Non-Equilibrium Model of Hemispheric Mean Surface Temperature, Journal of the Atmospheric Sciences, 33. p.2094-2106; Stanley F. Woronko (1977) Comments on “A Non-Equilibrium Model of Hemispheric Mean Surface Temperature", Journal of the Atmospheric Sciences, 34. p.1820-1821; Reid A. Bryson and Gerald J. Dittberner (1977) Reply, Journal of the Atmospheric Sciences, 34. p.1821-1824.
- ↑“Aerosols also cause a negative radiative forcing indirectly through the changes they cause in cloud properties" ― Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Chapter 2. Changes in Atmospheric Constituents and in Radiative Forcing. p. 136.
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- ↑Dueck, Tom A., Ries De Visser, Hendrik Poorter, Stefan Persijn, Antonie Gorissen, Willem De Visser, Ad Schapendonk, et al. “No Evidence for Substantial Aerobic Methane Emission by Terrestrial Plants: A 13C-Labelling Approach.” New Phytologist 175, no. 1 (2007): 29–35.
- ↑Charney, J. G. “Dynamics of Deserts and Drought in the Sahel.” Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society 101, no. 428 (1975): 193–202.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Summary for Policymakers. p. 4.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Chapter 7. Couplings Between Changes in the Climate System and Biogeochemistry. p. 527.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Summary for Policymakers. p. 17.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Summary for Policymakers. p. 7.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Chapter 10. Global Climate Projections. p. 750.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Summary for Policymakers. p. 7.
- ↑“There is medium confidence that at least partial deglaciation of the Greenland ice sheet, and possibly the West Antarctic ice sheet, would occur over a period of time ranging from centuries to millennia for a global average temperature increase of 1- 4°C (relative to 1990-2000), causing a contribution to sea level rise of 4-6 m or more. The complete melting of the Greenland ice sheet and the West Antarctic ice sheet would lead to a contribution to sea-level rise of up to 7 m and about 5 m, respectively." ― Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Summary for Policymakers. p. 17.
- ↑“Approximately 20-30% of plant and animal species assessed so far are likely to be at increased risk of extinction if increases in global average temperature exceed 1.5-2.5°C." ― Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Summary for Policymakers. p. 7.
- ↑“Using projections of species’ distributions for future climate scenarios, we assess extinction risks for sample regions that cover some 20% of the Earth’s terrestrial surface. Exploring three approaches in which the estimated probability of extinction shows a power law relationship with geographical range size, we predict, on the basis of mid-range climate-warming scenarios for 2050, that 15-37% of species in our sample of regions and taxa will be 'committed to extinction’." ― Thomas, Chris D., Alison Cameron, Rhys E. Green, Michel Bakkenes, Linda J. Beaumont, Yvonne C. Collingham, Barend F. N. Erasmus, et al. “Extinction Risk from Climate Change.” Nature 427, no. 6970 (January 2004): 145–48.
- ↑“Evidence indicates that emissions of carbon dioxide from human activities over the past 200 years have already led to a reduction in the average pH of surface seawater of 0.1 units and could fall by 0.5 units by the year 2100." ― The Royal Society. “Ocean acidification due to increasing atmospheric carbon dioxide.” 30 Jun 2005. p.6.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Chapter 3. Observations: Surface and Atmospheric Climate Change. p. 262.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Chapter 3. Observations: Surface and Atmospheric Climate Change. p. 260.
- ↑“By mid-century, annual average river runoff and water availability are projected to increase by 10-40% at high latitudes and in some wet tropical areas, and decrease by 10-30% over some dry regions at mid-latitudes and in the dry tropics, some of which are presently water stressed areas." ― Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Summary for Policymakers. p. 6.
- ↑“– Prometheus: Chris Landsea Leaves IPCC Archives.” The Center for Science and Technology Policy Research. January 17, 2005.
- ↑“One may ask whether the increase in activity since 1995 is due to anthropogenic global warming. The historical multidecadal-scale variability in Atlantic hurricane activity is much greater than what would be “expected" from a gradual temperature increase attributed to global warming […] The possibility exists that the unprecedented activity since 1995 is the result of a combination of the multidecadal-scale changes in Atlantic SSTs (and vertical shear) along with the additional increase in SSTs resulting from the long-term warming trend. It is, however, equally possible that the current active period (1995-2000) only appears more active than the previous active period (1926-1970) due to the better observational network now in place." ― Goldenberg, Stanley B., Christopher W. Landsea, Alberto M. Mestas-Nuñez, and William M. Gray. “The Recent Increase in Atlantic Hurricane Activity: Causes and Implications.” Science 293, no. 5529 (July 20, 2001): 474–79.
- ↑Angel, Roger. “Feasibility of Cooling the Earth with a Cloud of Small Spacecraft near the Inner Lagrange Point (L1).” Proceedings of the National Academy of Sciences 103, no. 46 (November 14, 2006): 17184–89
- ↑“The graphic shows the 2 foot-diameter flyers at L1. They are transparent, but blur out transmitted light into a donut, as shown for the background stars. The transmitted sunlight is also spread out, so it misses the Earth. This way of removing the light avoids radiation pressure, which would otherwise degrade the L1 orbit." ― UNIVERSITY OF ARIZONA. “Space Sunshade Concept."
- ↑National Aeronautics and Space Administration. “EO News: Space Sunshade Might Be Feasible in Global Warming Emergency.” Earth Observatory News. November 3, 2006.
- ↑Crutzen, Paul J. “Albedo enhancement by stratospheric sulfur injections: A contribution to resolve a policy dilemma?" Climatic change 77.3-4 (2006): 211.
- ↑BBC. “Global Dimming." 17 September 2014.
- ↑Intergovernmental Panel on Climate Change. The Physical Science Basis, Climate Change 2007: Fourth Assessment Report. Cambridge University Press; 1st edition (September 10, 2007). Chapter 2. Changes in Atmospheric Constituents and in Radiative Forcing. p. 185.
ディスカッション
コメント一覧
地球は便秘になるけれど、熱中症にはなりますか?宇宙は冷えてるからありえませんよね。
宇宙の温度が低いからといって、地表や大気にあるエントロピーの高い廃熱をスムーズに捨てられるとは限りません。温室効果ガスは、地表や大気から射出された赤外放射を吸収し、地表に向かって再射出する働きを持つため、廃熱を宇宙に捨てる上で妨害となります。
もちろん、だからといって温室効果ガスが生命にとって完全に悪ということではありません。温室効果ガスがなければ、地球の平均気温は、現在の14℃から-19℃になると見積もられています。これ程平均気温が低下すると、生命は生きにくくなります。
私は、地球温暖化を便秘に喩えましたが、その喩えを応用すると、温室効果ガスが少なすぎることは、ろくに栄養や水分を吸収せずに排泄する下痢に喩えることができます。便秘も下痢もどちらも好ましくないように、温室効果ガスも多すぎても少なすぎてもいけないのです。
熱が生命にとって有益なのか有害なのかに関しては、「マッチ売りの少女はなぜ死んだのか」を参照してください。