地球は熱機関としてどのような仕事を行うか
熱機関とは、熱エネルギーを継続的に運動エネルギーに変える装置である。熱機関が、私たちにとって有用な正の仕事をするためには、温度格差と膨張率の高い作業物質が必要である。高温熱源との接触による膨張と低温熱源との接触による圧縮が直接仕事を行うこともあれば、体積変化に伴う密度変化が惹き起こす対流が間接的に仕事を行うこともある。私たちに有用な仕事を行ってくれる熱機関は、人工の熱機関に限らない。地球もまた熱機関として、生命にとって有用な仕事をしている。すなわち太陽放射の熱を高温熱源とする熱機関は空気と水の循環を、地球内部の熱を高温熱源とする熱機関は無機塩類の循環を生み出している。
1. 熱機関とその理論の歴史
熱機関(heat engine)とは、熱力学的には、熱エネルギーを運動エネルギーに変換することで反復的に正の仕事を行うシステムである。そうした装置は、古代ギリシャの工学者、アレクサンドリアのヘロン(Ήρων ο Αλεξανδρεύς)が最初に発明した[1]とされているが、本節では、近代における実用化の歴史とその原理の理論的考察を取り上げる。
1.1. 蒸気機関の実用化とワットの洞察
最初に熱機関の実用化に成功したのは、トーマス・ニューコメン(Thomas Newcomen; 1664 – 1729)である。ニューコメンの蒸気機関は、以下のアニメーションが示すように作動した。すなわち、ボイラーで熱せられた蒸気がピストンを押し上げ、ポンプが下がると、ボイラーのバルブが閉められ、別のバブルが開けられて、噴出する冷却水が蒸気を凝縮させ、大気圧との圧力差によりピストンが押し下げられた。
ニューコメンの蒸気機関は、1733年に特許が切れるまで、排水用の蒸気機関ポンプとして百機以上が鉱山開発に使われた。実用上の成功とは裏腹に、当時の人々は、ニューコメン本人を含めて、熱機関の仕事の原因を正しく理解していなかった。ニューコメンの蒸気機関の棹は、右のピストン側よりも左の揚水ポンプ側の方が重く、シリンダー内が大気圧なら、棹は左側に傾く。では何がピストンを押し下げるのか。当時の人々は、大気圧がピストンを押し下げるというよりも、蒸気が凝縮する際にシリンダー内に作られる真空がピストンを引き下げると考えていた[3]。ましてや、温度格差が熱機関にとって本質的であるとは認識されていなかったのである。
ニューコメンの蒸気機関の燃料効率を向上させ、ピストンの往復運動を回転運動に変換することで、蒸気機関の用途を広げ、イギリスでの産業革命の立役者となったのは、ジェームズ・ワット(James Watt; 1736 – 1819)である。以下のイラストは、19世紀に描かれたワットの蒸気機関のイラストである。この図を使ってその仕組みを説明しよう。
ボイラーから管(v)を通って矢印の方向に蒸気が供給され、その蒸気がシリンダー(J)内のピストンを上から押し下げる。それと同時に、下部の蒸気は、冷水タンク内(R)にある凝縮器(H)に送り込まれ、そこで冷却ジェットにより凝縮され、ピストン下部の気圧を低くする。ピストンが下限に達すると、蒸気がピストンの下部に供給され、ピストン上部の蒸気は凝縮器に送り込まれる。ピストン上部の気圧の低下と梃子竿(c)の自重によりピストンは押し上げられる。このサイクルが自動的に繰り返される。
ワットの蒸気機関では、同じシリンダーを熱したり冷やしていたりしていたニューコメンの蒸気機関とは異なり、冷却部分が凝縮器として分離されているので、シリンダーを蒸気の温度に維持し続けられる。また、ニューコメンの蒸気機関では大気圧がピストンを押し下げたが、ワットの蒸気機関は蒸気が押し下げている[5]。これらの工夫により、ワットは蒸気機関の燃料効率を大幅に向上させることができた。ワットはまた、蒸気を最後まで送り込み続けるよりも、途中から断熱膨張でピストンに仕事をさせる方が、その作用能力を使い尽くしながら冷却されるので、燃料効率が良くなることを認識していた[6]。
ワットはたんなる技術者ではなく、熱機関の本質をかなり理解していた。とはいえ、概していえば、経験主義的伝統のある英国では、職人が、理論的に考えることなく、試行錯誤で熱機関の技術的改良を重ねていた。これに対して、合理主義的伝統のある大陸では、あるフランス人の学者が熱機関の普遍的原理に理論的考察を加え、論文として公表した。ニコラ・レオナール・サディ・カルノー (Nicolas Léonard Sadi Carnot; 1796 – 1832) が、1824年に著した『熱の動力についての考察 (Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance)』がそれである。
1.2. カルノーによる一般理論の構想
カルノーは、この論文の冒頭で、自分の研究の動機を語っている。すなわち、「蒸気機関によってなされたあらゆる種類の仕事にもかかわらず、今日蒸気機関にもたらされた満足すべき状態にもかかわらず、蒸気機関の理論はほとんど理解されておらず、その改善の試みも依然として行き当たりばったりがほとんどである[7]」というのが当時の状況であって、蒸気機関はなぜ仕事を生み出すのか、そしてその効率はいかにすれば高められるかに関する理論的考察が不十分であったのだ。
カルノーは蒸気機関が動力を産むための二つの条件を挙げている。最初の条件は、温度差である。
蒸気機関における動力の産出は、実際に熱素が消費されるからではなく、熱い物体から冷たい物体への熱素の移動、すなわち燃焼のような化学作用あるいは何かその他の原因によって破られた[熱的]平衡の回復によるものである。間もなくわかるように、この原理は熱によって動かされるすべての機関に適用できる。この原理によれば、動力を産み出すためには熱を作り出すだけでは不十分であって、冷たさも供給しなければならない。冷たさなしに熱は役に立たないのである。[8]
蒸気機関を動かすには、高温物体だけでなく低温物体も必要だということは、冷却用に凝縮器を分離したワットも認識していたことである。カルノーは、熱い物体から冷たい物体へ熱が流れることで動力が生み出されるという点に注目して、熱機関の動力を水車による動力に喩えている。
落水の動力はその高さと水の量に依存している。熱の動力もまた、使われる熱素の量に依存し、その落下の高さと呼んでよいようもの(実際にそう呼ぶことになるだろう)に、すなわち、熱素の交換がなされる物体間の温度差に依存する。[9]
カルノーは、この論文を書いた時、ちょうど水車に流入する水量と水車から流出する水量が同じであるように、「熱機関に流入する熱量と熱機関から流出する熱量が同じである[10]」と考えていた。カルノーは、「熱素 (calorique)」という言葉を使っていることからもわかるように、当時隆盛を極めた熱素説と熱量保存則を前提にしていたのである。しかし、カルノーは、この論文執筆後書いた草稿で、大砲の砲身の中刳りをする過程で無制限に発生する熱を根拠に熱素説を否定したランフォード伯ベンジャミン・トンプソン (Sir Benjamin Thompson, Count Rumford; 1753 – 1814) の論文[11]に触発され、熱量保存則を放棄して、熱の一部は仕事になることを認め[12]、今日の熱力学第一法則に相当する新たな保存則を表明した[13]。
エネルギー保存則については後で取り上げることにして、動力発生の二番目の条件に話を進めよう。一番目の条件として確認したように、動力発生には温度差が必要だが、それだけでは十分でないとカルノーは考える。実際、作業物質を使わずに、たんに高温物体と低温物体を接触させても、熱が移動するだけでは、熱機関に期待される動力は発生しない。それゆえ、高温物体と接することで膨張し、低温物体と接することで収縮する作業物質がなければならない。
もとより、高温物体と低温物体が直接接触する場合、たとえわずかであったとしても、低温物体は膨張し、高温物体は収縮するのであるから、熱はそれぞれ正と負の仕事をしたことになる。そもそも、作業物質は、高温物体に対しては低温物体として膨張し、低温物体に対しては高温物体として収縮するので、作業物質を、高温物体でも低温物体でもない第三者として扱うのはおかしい。それにもかかわらず、作業物質を特別扱いするのは、液体である低温物体とは異なり、気体であるから、熱膨張率が高く、有用な仕事を生み出すからだ。そこで、以下、作業物質という言葉をこの意味で使う。有用かどうかを無視するなら、熱機関が動力を発生させるために必要な条件は、第一の条件だけであり、第二の条件は、あくまでも有用な仕事を活用するための条件と考えてほしい。
カルノーは、「熱は、それが物体の体積もしくは形の変化を惹き起こす限りにおいて運動の原因でありうる[14]」と言う。この命題を言い換えるなら、有用な仕事を取り出すには、体積変化に寄与しない熱の移動をなくさなければならないということだ。
熱素の平衡の回復は、すべて動力を生じる原因となりうるのであるから、動力の産出を伴わない平衡の回復は、全くの損失とみなされなければならない。それゆえ少し考えてみればわかるように、物体の体積変化に基づかない温度変化は、すべて熱素の平衡の無駄な回復でしかない。したがって、動力を最大にするための必要条件は、熱の動力を実現するために使用される物体において、体積変化によらない温度変化が全く生じないということである。逆に、この条件が満たされていれば、必ず最大値が達成される。[15]
最大値が達成されている熱機関は、理想機関と呼ばれる。実用化されている熱機関は、温度変化をすべて体積変化に結びつけているのではないので、理想機関とは異なるが、ちょうど理想気体が実在気体の単純化されたモデルとして有用であるように、理想機関も学問的には有意義である。理想機関は、準静的過程(quasi-static process)によって、すなわち、ゆっくりじわじわと、熱平衡状態(シリンダー内の圧力と温度がどこでも一定の状態)を保ちながら、シリンダー内の気体を膨張させる。しかし、ゆっくりじわじわでは実用にならないので、実際に使われている熱機関では、もっと急激に熱したり冷ましたりして、ピストンを高速で動かしている。急激に熱すると、シリンダー内の気体には対流や渦が発生し、熱平衡状態が維持できなくなる。つまり、実用化されている高速作動の熱機関は、対流や渦という余計な仕事をシリンダー内ですることで効率を下げているということである。
現実の熱機関の過程は不可逆的だが、理想機関は、準静的であるから、可逆的である。すなわち、高温物体から低温物体に流れる熱で生み出された動力を使って、低温物体から高温物体へと熱を元に戻せる。カルノーはここから、熱機関には理想機関以上の仕事をすることはできないことを背理法で証明している。すなわち、もしもできるなら、高温物体と低温物体の熱格差を何も変えることなく、いわば無から仕事を取り出せることになるが、これは不合理である[16]。後の言葉を使うなら、そのような熱機関は、熱力学第一法則に反する第一種永久機関である。
以上を要するに、熱機関が仕事を生み出すには、温度差と作業物質という二つの条件が必要であるということなのだが、カルノーが熱機関にとってより本質的とみなしていたのは前者の方である。当時実用化されていた熱機関はすべて蒸気機関であったが、今日蒸気以外の気体を用いた熱機関が普及していることからもわかるように、作業物質が水蒸気でなければならない必然性はない。カルノーは、この点でも、時代的制約を超えた抽象化を行っていた。そして、後に「カルノーの定理」と呼ばれることになる大胆な仮説を提示した。
熱の動力は、それを取り出すために使われる作業物質によらない。その量は、熱素が最終的に移行し合う二つの物体の温度によって一義的に決定される。[17]
この定理は、現在でも基本的に正しいとされている。熱効率は、高温物体の絶対温度に対する低温物体の絶対温度の比で一義的に決定されるのである。
1.3. カルノー以降の熱力学の発展
カルノーの『熱の動力についての考察』は、その画期的な内容にもかかわらずというよりも画期的な内容ゆえに、発表当時評価されなかった。内容が解析的ではなかったから評価されなかったと見る向きもあるが、カルノーの死から二年後の1834年に、カルノーの論文を解析的に書き直したエミール・クラペイロン (Benoît Paul Émile Clapeyron; 1799 – 1864) の論文[18]も反響を呼ぶことなく、クラペイロンもその後は興味を失ってしまった。そんな中、フランスに留学中だったウィリアム・トムソン (William Thomson; 1824 – 1907)、後のケルヴィン卿(Lord Kelvin)は、1845年にクラペイロンの論文を通してカルノーを知り、その後カルノーの理論を発展させる研究を行った。
ケルヴィン卿が発掘したもう一人の無名だった科学者がジェームズ・プレスコット・ジュール(James Prescott Joule; 1818 – 1889)である。ジュールは、有名な羽根車の実験で、重力が行う力学的な仕事が熱に変換されることを示した。ジュールはそこからさらに飛躍して、熱をすべて仕事に変えられるとまで主張した。
活力[運動エネルギー]は熱に転換できるし、熱は活力もしくはそれと等価な空間を通した引力[位置エネルギー]に転換できる。これら三つすべて、すなわち、熱、活力、空間を通した引力(今の話と両立するなら、これに光を加えてもよいかもしれない)は、互いに転換可能である。これらの転換において失われるものは何もない。同じ量の熱が常に同じ量の活力に転換できるだろう。それゆえ、私たちは、この等価性を常にどのような状況においても適用可能な確定的言語[後にジュールと呼ばれる単位]で表現できる。[19]
ジュールのこの考えは、カルノーが前提した熱量保存則とは相容れない。ジュールは、ケルヴィン卿にカルノー理論を完全に捨てるように説得したが、ケルヴィン卿はどちらが正しいのかわからず躊躇していた[20]。この問題を解決したのは、ルドルフ・ユリウス・エマヌエル・クラウジウス(Rudolf Julius Emmanuel Clausius; 1822 – 1888)である。
クラウジウスは、高温熱源の熱の一部がピストンを動かす仕事に消費されることと、熱が低温熱源へ移動することは矛盾しない[21]とする解決策を出した。これはカルノーが遺稿で取った立場でもある。仕事はすべて熱にできるが、熱をすべて仕事にすることはできないというのが現在の認識であり、その点、ジュールの議論は、部分的には正しくなかったということである。クラウジウスとケルヴィン卿はこの不可逆性から、熱力学第二法則を発見する。
カルノー理論は、クラペイロンを経てクラウジウスとケルヴィン卿によって古典熱力学として確立されたが、それは理想機関の理論であって、ピストン内で起きる対流や渦は排除すべき攪乱要因として扱われ、研究の対象とはされなかった。対流や渦などの運動を扱う分野は流体力学(Fluid mechanics)や伝熱物理学(Heat transfer physics)で、この分野では、1858年にドイツのヘルマン・ルートヴィヒ・フェルディナント・フォン・ヘルムホルツ(Hermann Ludwig Ferdinand von Helmholtz; 1821 – 1894)が、渦の運動の数学的原理を確立したり[22]、20世紀の初頭にイギリスのレイリー卿、ジョン・ウィリアム・ストラット(John William Strutt, 3rd Baron Rayleigh; 1842 – 1919)とフランスのアンリ・クロード・ベナール(Henri Claude Bénard; 1874–1939)が、細胞状のパターンを形成する熱対流(レイリー=ベナール型対流)に関する諸研究に取り組んだりするなど、一定の成果があるが、流体力学と熱力学の関連付けは十分ではない。本稿では、理想機関が行う仕事と対流が行う仕事を同じ熱機関が行う仕事として、その類似性に注目しつつ関連付けることに焦点を当てたい。
2. カルノー熱機関
まずは、理想機関であるカルノー熱機関を考察しよう。本節では、カルノー熱機関のサイクル、所謂カルノー・サイクルの四つの過程、カルノー熱機関が行う仕事、その熱効率についての標準的な解説を概観し、カルノーの洞察が現代の標準的熱力学の理論にどう反映されているかを確認する。
2.1. カルノー・サイクルの四つの過程
カルノーは、『熱の動力についての考察』で理想機関の作動過程を説明するために、以下の図における 0 のような図を描いているが、これではよくわからないので、1 から 4 まで、四つの過程に分解して描き、シリンダー内を運動するピストンと気体の状態を説明することにしよう。
1 から 4 までの四つの過程には、以下のような名称が付けられている。
- 等温膨張 (isothermal expansion):高温熱源(A)から熱を入れ、熱源と温度を一定に保ちつつ、シリンダー内の気体を膨張させる。
- 断熱膨張 (adiabatic expansion):高温熱源からの熱の流入を遮断する。その結果、膨張とともに気体の温度は下がる。
- 等温圧縮 (isothermal compression):低温熱源(B)に熱を捨てる。熱源と温度を一定に保ちつつ、シリンダー内の気体を圧縮させる。
- 断熱圧縮 (adiabatic compression):低温熱源への熱の流出を遮断する。その結果、圧縮とともに気体の温度は上がる。
4 の後に 1 が続いて、循環の輪は閉じる。
2.2. カルノー熱機関が行う仕事
カルノー・サイクルの各過程における圧力と体積の状態は、以下の図で示せる。
横軸の V [m3] と縦軸の P [Pa=N/m2] をかけると仕事 W [J=Nm=m3×N/m2] となる。それゆえ、カルノー・サイクルの仕事は、この図で黄色に塗った面積に等しい。この面積を、VA-VB-B-A と VB-VC-C-B の領域の面積和から VA-VD-D-A と VD-VC-C-D の領域の面積和を引くことで求めよう。
面積を求めるには各曲線を積分すればよい。そこで積分する関数を求めよう。シリンダー内に閉じ込められた気体システムに流入した熱エネルギーQ[J]は、熱力学第一法則により、気体システムの温度を上昇させる、つまり内部エネルギー(U)を増やす、もしくは膨張により外部に対して仕事(W)をするというように、その形態を変えつつ全量は保存される。
可逆的な準静的過程であるため、微小な内部エネルギーの変化に関しても同じ式が微分形式で成り立つ。
但し、n を物質量、Cvを1モルあたりの定積比熱、Tを絶対温度、Pを気体システムの圧力、Vを体積とする。理想気体の状態方程式 PV=nRT を用いて変形すると。
となる。以下、カルノー・サイクルの四つの過程でなされる仕事をこれらの式を用いて求めよう。
1. 等温膨張(A→B)
等温であるから dT=0 である。その仕事は、流入する熱量 Q2 あるいは体積増加による正の仕事に等しい。
2. 断熱膨張(B→C)
断熱変化では、システムに対する熱の出入りがないので、δQ=0 である。
この式を変形することで、体積変化を内部エネルギーの変化に置き換えて、その正の仕事を求められる。
3. 等温圧縮(C→D)
等温であるから dT=0 である。その仕事は、流出する熱量 Q1 あるいは体積減少による負の仕事に等しい。
4. 断熱圧縮(D→A)
断熱変化であるから、δQ=0 で、圧縮だから仕事は負となる。
以上の仕事を合計することで、正味の仕事が得られる。
Eq.0.
ここで、準静的断熱変化では、TVγ-1 は一定(γ=Cp/Cv)なので、断熱膨張では、
断熱圧縮では、
という式が成り立つ。式(10)と式(11)の各辺を割って、
すなわち、
が得られる。式(09)と式(13)より、
となる。この式で、カルノーが指摘した熱機関の条件を確認できる。まず必要なのは高温熱源と低温熱源の温度差であり、T2-T1=0 なら W=0 となる。もう一つの条件は、熱によって膨張する作業物質が存在することである。作業物質が存在しない、すなわち、n=0 であったり、体積が変化しない、すなわち、VA=VB であったりするなら W=0 となる。熱機関の仕事を大きくしようとするなら、熱源間の温度差を大きくし、膨張率の高い作業物質を多く使えばよいということがわかる。
2.3. カルノー熱機関の熱効率
熱機関は、仕事が大きくても、効率が悪いのでは、資源を有効活用していることにはならない。そこで高温熱源から取り入れる熱量に対する仕事の割合を熱機関の熱効率として定義し、
どうすれば熱効率を高められるかを考えよう。ここで、式(04)、式(07)、式(13)より、
となるので、式(15)と式(16)より、
となる。ここからわかる通り、熱効率は低温熱源の温度と高温熱源の温度との比によってもっぱら決まる。温度格差を重視したカルノーの認識は正しかった。熱効率を最高の 1 にするには、カルノー機関のように準静的な状態を維持しつつ、低温熱源の温度(T1)を絶対零度にすればよいのだが、絶対零度は実現不可能であるから、熱効率を 1 にすることは不可能である。
カルノーは、実際の熱機関の熱効率が、理想化されたカルノー・エンジンの理論的な熱効率よりもずっと低いことを理解していた[25]。カルノー・サイクルを実現しようとした熱機関として、1816年にロバート・スターリング(Robert Stirling; 1790 – 1878)が発明したスターリング・エンジン(Stirling engine)がある。スターリング・エンジンは、高温部と低温部が分離されるのが特徴で、これまでいろいろな種類が考案されており、以下の図はその一つである。
スターリング・エンジンは、体積あたりの出力が低く、限られた用途でしか使われていない。現在、世界で幅広く使われている熱機関は、ガソリンやガスを用いた内燃エンジンであり、その理論サイクルは、オットー・サイクル(Otto cycle)と呼ばれている。オットー・サイクルは、以下のアニメーションが示すように、1. 燃料を含んだ混合気をシリンダー内に吸入させる過程、2. ピストンが上がって混合気を圧縮する過程、3. 着火された混合気の爆発によりピストンが押し下げられる過程、4. 慣性によりピストンが上がって燃焼ガスをシリンダー外に押し出す排気過程の四つの過程からなる。
オットー・サイクルの熱効率は、カルノー・サイクルの熱効率よりも低いが、体積あたりの出力が高いため、輸送機などに使われている。熱機関の優劣は熱効率だけでは決まらないということだ。
カルノーの時代には、内燃エンジンはなかったが、カルノーの原理は、現代の内燃エンジンにも基本的に当てはまる。それだけではなく、カルノーの原理は、通常の熱力学は熱機関として扱わないところにまで当てはまる。次節では、人工の熱機関よりは複雑だが、私たちにより大きな恩恵を与えている自然界の熱機関を取り上げることにする。
3. グローバルな熱機関
人類は、というよりも生命全体は、蒸気機関を利用するよりもはるかに昔から、二つの熱機関の恩恵を受けてきた。一つは、太陽放射がもたらす熱エネルギーを高温熱源とし、宇宙空間を低温熱源とし、大気を作業物質とする熱機関である。もう一つは、地熱がもたらす熱エネルギーを高温熱源とし、地殻を、最終的には宇宙空間を低温熱源とし、マントルを作業物質とする熱機関である。これ以外にも、月の引力が行う仕事の結果生じる潮汐加熱があるが、ここでは地表面の熱と地熱に含めて考えることにしよう。
前者では大気が、後者ではマントルが対流を起こしている。対流が行う仕事は、最終的にはすべて熱となって宇宙空間に放出される。したがって、二つのグローバルな熱機関が受け取る熱量(Qin)と放出する熱量(Qout)は同じになる。つまり、外から見る限り、地球の熱機関としての熱効率はゼロである。
それでも、地球表面に住む生命にとっては、二つの熱機関が行う仕事は、それがなければ自分たちの生存をも脅かすほど重要な役割を果たしている。本節ではそのメカニズムを確認したい。
3.1. 大気の対流と水の循環
人類が作った熱機関では、外部に対して行う膨張や収縮が有用な仕事とみなされ、内部で発生する対流や渦は熱エネルギーの無駄な消費と考えられている。ところが熱機関として見られた地球の大気では、人類を含めた生命に恩恵を与えているのは、外部に対して行う膨張や収縮ではなくて、内部で発生する対流である。
対流には、浮力によって内発的に起きる自然対流(natural convection)と外的な力によって駆動される強制対流(forced convection)があり、対流圏における大気循環は前者に属する。対流圏の鉛直方向の気温変化率は、-6.5K/km で、地面から離れるにつれて、温度は低下する。高温熱源が下にあり、低温熱源が上にある場合の自然対流の形状は、以下のように定義されたレイリー数(Rayleigh number)で決められる。
但し、L = 対流の規模、g = 重力加速度、T2 = 物体表面温度、T1 = 流体の温度、ν = 動粘性係数、α = 熱拡散率、β = 体膨張係数、k = 熱伝導率、ρ = 密度、Cp = 比熱容量である。
レイリー数が1700未満の時は、熱伝導による熱の移動が起き、レイリー数が1700を超えると、以下図のようなレイリー=ベナール型対流と呼ばれるセル状のパターンを形成する熱対流が発生する。
5×104になると、セル状対流は乱れ始め、106を超えると、完全な乱流となる。
レイリー数における gρβ(T2-T1) は、L3 の体積に働く浮力を表しており、カルノー・サイクルが行う仕事を定義した式(14)と同様に、高温熱源と低温熱源の温度差が重要なファクターとなっている。しかし、他方で、カルノー・エンジンでは、作業物質は膨張と収縮を繰り返すだけで仕事を生み出せたが、自然対流では、熱せられて密度が小さくなった作業物質が重力に逆らった仕事をしなければならないという違いもある。レイリー数が、式(14)とは異なり作業物質の特性にも左右されるのはこのためである。
そうした違いがあるにもかかわらず、自然対流による大気循環は、カルノー・サイクルと似たような四つの過程を繰り返すことで仕事を行っている。
この図を説明しよう。
- 等温膨張 (isothermal expansion):太陽放射により地表面が暖められ、その結果、地表面の空気は膨張し、軽くなり、上昇する。
- 断熱膨張 (adiabatic expansion):周囲からの熱の出入りを遮断した状態で、上昇を続ける。気圧の減少に伴い、さらに膨張し、温度は下がる。
- 等温圧縮 (isothermal compression):成層圏との境目である対流圏界面で、熱を放射し、宇宙に捨てる。冷やされることで、圧縮され、重くなり、下降する。
- 断熱圧縮 (adiabatic compression):周囲からの熱の出入りを遮断した状態で、下降を続ける。気圧の増加に伴い、さらに圧縮され、温度は高くなる。
4の後に1が続いて、循環の輪は閉じる。
対流圏では、鉛直方向に温度差があるのみならず、水平方向にも温度差がある。太陽放射の入射角の違いにより、低緯度地帯は高温で、高緯度地帯は低温となる。この他、陸と海との比熱の違いにより生じる温度差もあり、実際の対流圏中の大気は複雑な動きを示すのだが、大気循環は、熱帯にあるハドレー循環、中緯度にあるフェレル循環、極にある極循環の三つの代表的な循環に分類できる。
こうした大気の循環は、鉛直方向の循環ゆえに、生命が出す廃熱を宇宙に捨てることに貢献するのみならず、水平方向の循環ゆえに、地表面上にある温度差を小さくすることで、生命にとって快適な環境を作り出してくれる。人類は、風力発電を発明するよりもずっと前から、風車や帆船によって、大気循環を利用してきた。生命にとってさらに重要なことは、大気の対流が水の循環をも生み出しているということである。
水は地表面上に海として大量にあるが、私たちは直接海水を飲むことはできない。海水から淡水を取り出すことは困難だが、太陽放射は、水だけを蒸発させ、取り出す。これは、人類を含めて、淡水しか利用できない生命にとっては重要な働きである。太陽放射によって温められ、上昇した水蒸気は、断熱膨張により、温度が下がり、過飽和になる雲を形成し、さらには雨となって、地表面に戻る。この働きは、海水から淡水を取り出すだけでなく、淡水の分布の偏りも是正してくれる。すなわち、大気の循環は、温度の不均衡を是正しているだけではなく、水の分布の不均衡をも是正してくれるのである。
大気循環は、海洋循環という、もう一つの水の循環をも作り出す。海上を吹く風によって惹き起こされる海洋循環を風成循環といい、これは強制対流に属する。また、これとは別に、海水の密度の違いによって惹き起こされる熱塩循環がある。北大西洋のグリーンランド沖と南極近くのウェッデル海では、海氷形成時に氷から排出される塩分で塩分濃度が増え、重くなって海底に沈みこむ。熱塩循環は、太陽放射による熱の差異から生まれつつも、熱の差異を小さくように働く。
風成循環にせよ、熱塩循環にせよ、自然対流ではない。対流圏は、その下部が高温で、上部が低温であるがゆえに、自然対流が生じた。海洋は、その上部が太陽放射によって高温となり、下部は、海底火山があるような特殊な場合を除いて、深海になればなるほど低温になる。鉛直方向の温度勾配が対流圏とは逆なのである。それでも、海洋の鉛直方向の温度差から仕事を生み出す熱機関を作り出すことは原理的には可能である。
海洋温度差発電(OTEC = Ocean Thermal Energy Conversion)は、そうした考えに基づく熱機関である。クローズド・サイクル型は、アンモニアや R-134a など沸点の低い媒体を作業物質にして、それを深層の冷たい冷水により液化させた後、表層の暖かい温水によって気化させ、その膨張が行う仕事によって発電タービンを回転させ、電力を得る。オープン・サイクル型は、熱帯の海洋表層水を用い、低圧で沸騰させて発電タービンを回し、冷たい深層水で凝縮することで、副産物として純水を得る。海洋温度差発電は、次世代の再生可能エネルギーの一つとして注目されているが、エネルギー効率が高くないので、実用化には至っていない。
海洋温度差発電は、作業物質の循環を人為的に行わなければならないために、そこにエネルギーが使われ、結果としてエネルギー効率が落ちる。それならば、自然に存在する水の循環を使った方が、エネルギー効率が良いということになる。そして、その発電方式は既に実用化されている。水力発電がそれである。水力発電は、水の位置エネルギーを消費することで電気を生み出しているのだが、位置エネルギーを高めているのは、太陽放射がもたらす水の循環である。
3.2. マントルの対流と無機栄養塩の循環
熱機関としての地球の高温熱源は、太陽放射によってのみもたらされるのではない。地球は、自分自身の内部に高温熱源を持っている。地熱の熱源は、主として二つあると考えられている。一つは、原始の地球が形成される時に、小惑星との衝突、とりわけ45億年前の火星とほぼ同じ大きさの原始惑星との衝突、所謂ジャイアント・インパクトがもたらした熱の残存であり、もう一つは、地球内部で起こるウラン238やトリウム232などの放射性崩壊から発生している熱である。
2011年に、東北大学を中心とする国際的な研究者チームは、カムランドでの実験で、これらの元素が放射性崩壊で放出する反ニュートリノを測定することで、44TW ほどある地球内部からの熱流のうち、約半分にあたる 21TW が放射性物質起源の熱である[29]とする見積もりを公表した。この熱を差し引いた残りは地球形成時の熱と考えられる。
これらの熱を高温熱源とし、地殻とその外部を低温熱源とすることで、マントル内に自然熱対流が存在すると考えられている。以下の図は、それを描いた地殻内部の想像図である。
マントル対流に駆動されて、プレート運動が起こり、火山活動や地震活動が生じる。対流圏が私たちに対して行う仕事は、対流が惹き起こす循環であって、宇宙に向かって行われる膨張と収縮ではないが、マントル対流が私たちに対して行う仕事は、それとは逆に、隆起や陥没といった地殻に向かって行われる膨張と収縮である。
火山活動も地震活動も私たちに甚大な災害をもたらす。だから、大気や水の循環とは異なって、マントルの循環はない方がよいと思うかもしれない。しかし、それは間違いである。地熱には、たんに温泉や地熱発電を可能にするといったこと以上の恩恵を生命にもたらしているからだ。もしも地球がマントル対流のない死んだ惑星であったとするならば、生命は、必須元素、中でも最も重要な元素であるリンを得ることが困難となり、現在よりずっと貧弱な存在になっていたことだろう。
かつてGFAJ-1 が、ヒ素でリンを代替する新生物として注目されたことがあった。しかし、その後の研究により、GFAJ-1 は DNA のリンをヒ素で置換しておらず、リンなしでは生存できないことがわかった[31]。つまり、リンなくして生きられる生命は皆無ということである。もちろん、生命に必要な元素は、リン以外にも窒素やカリウムなど多数ある。これらを無機栄養塩と総称することにしよう。
無機栄養塩となる元素はイオンとして水に溶け、重力に従って、陸地から水に流され、海底にたまりやすいが、地殻が隆起と陥没を繰り返すと、海底にたまった無機栄養塩が地上に表れたり、無機栄養塩が不足した陸地が海底となったりするので、地質学的な長い年月においてではあるものの、無機栄養塩の循環を作り出し、陸上での無機栄養塩の枯渇を防いでくれる。
マントル対流がなくても、太陽が存在する限り大気と水の循環は続くので、太古において地球が地殻変動を止めたと仮定するなら、大気と水による陸地の浸食と海溝の埋め立てが進行し、長い時間をかけてではあるが、地球の表面は凹凸のない平坦なものになったことだろう。そうなると地表面はすべて海の下に沈み、陸棲生物は存在しなくなっていたであろう。では、代わりに水棲生物が豊かな進化を実現したかと言えば、答えは否だ。
地球表面に存在する水の総量は、1.4×109 km3 で、これを地球の表面積 5.1×108 km2 で割ると、平均水深は、2.7km となる。つまり、地球表面が浸食によりつるつるになると、すべての地球表面が、光合成が赤字となる補償深度(compensation depth)である水深 200m 以下に沈んでしまう。現在、海棲生物の九割は、水深 200m 以上の真光層(euphotic zone)に生息している。真光層に海底の無機栄養塩が湧昇するなら、そこで生物が繁殖するだろう。
しかし、沿岸湧昇や海底火山の噴火による無機栄養塩の供給がないなら、大部分の真光層が無機栄養塩不足となる。その結果、海は、光は豊富だが無機栄養塩の足りない表層と無機栄養塩は豊富なものの光が足りない深層という生命にとって好ましくない二つの領域に分かれ、生命はその量と多様性において、現在よりもずっとみすぼらしいものになっていたことだろう。
3.3. 生命を可能にする二つの熱機関
本稿の結論をまとめよう。温度格差と作業物質があれば、熱機関は仕事を生み出せる。仕事は、高温熱源と低温熱源を用いた作業物質の膨張と圧縮という体積変化で行うこともできれば、体積変化に伴う密度変化が惹き起こす対流で行うこともできる。熱機関としての地球が行う生命にとって有用な仕事のうち、マントル対流による無機塩類の循環は前者による仕事であり、大気対流による水の循環は後者による仕事である。
マントルの対流が火山噴火や地震などによって災害をもたらすことはあっても、無機栄養塩の循環というマントルの対流が行う仕事が生命にとってそれ以上の価値をもたらすのは、大気の対流が強風や豪雨などによって災害をもたらすことはあっても、水の循環という大気の対流が行う仕事が生命にとってそれ以上の価値をもたらすのと同じことである。地球内部の熱は、太陽放射の熱とともに、生命システムの存在を可能にするグローバルな熱機関の重要な高温熱源になっていることを認識しなければならない。
火星が生命を地球上でのように繁殖させられなかった理由の一つとして、火星が熱機関としては地球よりもずっと貧弱であることを挙げられる。火星の質量は地球の十分の一程度で、重力が小さいため大気は極めて希薄である。その結果、火星の大気には対流が存在するものの、その範囲と効果は極めて限定的である。また、火星ではマントル対流によるプレート運動は確認されていない。かつては火山活動があったと見られているが、小さな惑星であるため、地球よりも早く冷え切ってしまった。火星のように熱機関として機能しない惑星は死の惑星なのである。
4. 参照情報
- 菊川芳夫『熱力学 (講談社基礎物理学シリーズ) | 』講談社 (2010/11/20).
- 都筑卓司『なっとくする熱力学 (なっとくシリーズ)』講談社 (1993/11/20).
- 保坂直紀『謎解き・海洋と大気の物理 地球規模でおきる「流れ」のしくみ (ブルーバックス)』講談社 (2003/7/20).
- ↑Wilhelm Schmidt. Herons von Alexandria Druckwerke und Automatentheater. Literaricon (January 27, 2014). “Pneumatika" Book ΙI, Chapter XI.
- ↑Emoscopes. “Animation showing the operation of a Newcomen atmospheric engine.” Licensed under CC-BY-SA.
- ↑山本義隆『熱学思想の史的展開―熱とエントロピー』現代数学社 (January 1, 1987). p. 262.
- ↑Amédée Guillemin. La vapeur. First published: 1876. Republished: HardPress (June 14, 2018).
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- ↑“Malgré les travaux de tous genres entrepris sur les machines à feu, malgré l’état satisfaisant où elles sont aujourd’hui parvenues, leur théorie est fort peu avancée, et les essais d’amélioration tentés sur elles sont encore dirigés presque au hasard." Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 6.
- ↑“La production de la puissance motrice est donc due, dans les machines à vapeur, non à une consommation réelle du calorique, mais à son transport d’un corps chaud à un corps froid, c’est-à-dire à son rétablissement d’équilibre, équilibre supposé rompu par quelque cause que ce soit, par une action chimique, telle que la combustion, ou par toute autre. Nous verrons bientôt que ce principe est applicable à toute machine mise en mouvement par la chaleur. D’après ce principe, il ne suffit pas, pour donner naissance à la puissance motrice, de produire de la chaleur : il faut encore se procurer du froid ; sans lui la chaleur serait inutile." Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 10-11.
- ↑“La puissance motrice d’une chute d’eau dépend de sa hauteur et de la quantité du liquide ; la puissance motrice de la chaleur dépend aussi de la quantité de calorique employé, et de ce qu’on pourrait nommer, de ce que nous appellerons en effet la hauteur de sa chute, c’est-à-dire de la différence de température des corps entre lesquels se fait l’échange du calorique." Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 28.
- ↑“la quantité de calorique absorbée ou abandonnée est toujours la même" Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 42.
- ↑Benjamin Thompson. “An Experimental Enquiry Concerning the Source of the Heat which is Excited by Friction." in The Collected Works of Count Rumford, Volume I: The Nature of Heat. ed. Sanborn C. Brown. p. 22.
- ↑Nicolas Léonard Sadi Carnot. “Extrait de notes inédites de Sadi Carnot." in Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 92.
- ↑Nicolas Léonard Sadi Carnot. “Extrait de notes inédites de Sadi Carnot." in Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 93.
- ↑“La chaleur ne peut évidemment être une cause de mouvement qu’en vertu des changemens de volume ou de forme qu’elle fait subir aux corps" Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 14.
- ↑“Puisque tout rétablissement d’équilibre dans le calorique peut être la cause de la production de la puissance motrice, tout rétablissement d’équilibre qui se fera sans production de cette puissance devra être considéré comme une véritable perte : or, pour peu qu’on y réfléchisse, on s’apercevra que tout changement de température qui n’est pas dû à un changement de volume des corps ne peut être qu’un rétablissement inutile d’équilibre dans le calorique. La condition nécessaire du maximum est donc qu’il ne se fasse dans les corps employés à réaliser la puissance motrice de la chaleur aucun changement de température qui ne soit dû à un changement de volume. Réciproquement, toutes les fois que cette condition sera remplie, le maximum sera atteint." Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 23-24.
- ↑Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 20-22.
- ↑“La puissance motrice de la chaleur est indépendante des agents mis en œuvre pour la réaliser ; sa quantité est fixée uniquement par les températures des corps entre lesquels se fait en dernier résultat le transport du calorique." Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 38.
- ↑Émile Clapeyron. Mémoire sur la puissance motrice de la chaleur. JACQUES GABAY. First published: 1834.
- ↑“You see, therefore, that living force [energy] may be converted into heat, and that heat may be converted into living force, or its equivalent attraction through space. All three, therefore – namely, heat, living force, and attraction through space (to which I might also add light, were it consistent with the scope of the present lecture) – are mutually convertible into one another. In these conversions nothing is ever lost. The same quantity of heat will always be converted into the same quantity of living force. We can therefore express the equivalency in definite language applicable at all times and under all circumstances." James Prescott Joule. “On Matter, Living Force, and Heat." in The Scientific Papers of James Prescott Joule, Volume 1. ed. William Scoresby, Baron William Thomson Kelvin, Baron Lyon Playfair Playfair.
- ↑William Thomson Baron Kelvin. “An Account of Carnot’s Theory of the Motive Power of Heat – with Numerical Results Deduced from Regnault’s Experiments on Steam." in Mathematical and Physical Papers, Volume 1. p. 119.
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- ↑“Nous avons cependant choisi notre exemple parmi les meilleures machines à vapeur connues. La plupart des autres leur sont bien inférieures. L’ancienne machine de Chaillot, par exemple, élève 20 mètres cubes d’eau à 33 mètres pour 30 kilogrammes de charbon brûlé, ce qui revient à 23 unités de puissance motrice par kilogramme, résultat neuf fois moindre que celui cité ci-dessus, et 180 fois moindre que le maximum théorique." Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 117.
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- ↑“Below a depth of about 700 km, the descending slab begins to soften and flow, losing its form. Below: Sketch showing convection cells commonly seen in boiling water or soup. This analogy, however, does not take into account the huge differences in the size and the flow rates of these cells.” U.S. Geological Survey. “What drives the plates?.”
- ↑Erb, Tobias J., et al. “GFAJ-1 is an arsenate-resistant, phosphate-dependent organism." Science 337.6093 (2012): 467-470.
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