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クラウジウスはエントロピーをどう定義したか

2014年4月21日

クラウジウスは近代熱力学の創始者の一人であり、「エントロピー」という用語の発案者であるが、この言葉を創る前は「変換の等価値」という呼称を用いていた。今日物理学の専門用語として使われているエントロピーは、交換の対価という経済学的な発想から生まれた概念であった。そもそも熱力学自体が、蒸気機関の熱効率の向上という経済的な関心から生まれた物理学の分野であり、半分物理学であるが、半分経済学でもあるような学問なのである。クラウジウス自身、そのような問題意識はなかったとはいえ、今日、エントロピーという概念は、地球の資源問題や環境問題を考える上で重要にもなっている。

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1. クラウジウスの力学的熱理論の出発点

クラウジウスの熱力学は、1850年、54年、62年、65年の四つの主要論文によって漸次形成されていった。本節では、クラウジウスの力学的熱理論の出発点となった1850年の論文『熱の動力および熱学へ演繹される諸法則について』を分析することで、初期の段階で既に露わとなっていたクラウジウスの力学的熱理論の射程と限界を見定めることにしたい。

1.1. カルノー理論とジュール理論の統合

ルドルフ・ユリウス・エマヌエル・クラウジウス(Rudolf Julius Emmanuel Clausius; 1822 – 1888)は、ウィリアム・トムソン(William Thomson, 1st Baron Kelvin ケルヴィン卿; 1824 – 1907)と同様に、カルノーの理論を継承し、近代熱力学の創始者となった物理学者であるが、トムソンとは異なり、熱を仕事に変換できると主張するジュールの理論と熱量保存則を前提とするカルノーの理論とを二者択一的には考えなかった。クラウジウスは、1850年の論文で、熱量保存則を放棄し、ジュールのエネルギー保存則を「力学的熱理論の第一主法則」として受け入れつつも、カルノーの原理をも「力学的熱理論の第二主法則」として受け入れる道を選んだ。

よく考えてみれば、本来のカルノーの基本原理ではなく、むしろ「熱は絶対に失われない」という補足命題だけが新しい考え方[エネルギー保存則]と矛盾する。というのは、仕事の発生の際に、一定量の熱が消費されると同時に、別に一定量の熱が高温物体から低温物体へと移動するという両方のことが完全に同時に起こりうるからだ。これら両方の熱量はいずれも、発生した仕事に対して、一定な関係を持ちうるのである。[1]

カルノーの基本原理とは、蒸気機関が動力を産むためには、高温物体から低温物体に熱が移動しなければならない[2]という原理であった。カルノーは、1824年に公刊した『熱の動力についての考察』でこう述べた後、草稿の中で、熱量保存則を放棄して、熱の一部は仕事になることを認めた[3]。クラウジウスは、この草稿を読むことなく、カルノーの死後18年経って、カルノーの最終的な見解に辿り着いたということである。そして、これにより、クラウジウスは、トムソンよりも先に熱力学第二法則を確立することになった[4]

1.2. 熱力学における仕事の概念

カルノーとクラウジウスによると、熱機関が動力を産むためには、高温物体と低温物体以外にさらにもう一つ、それらと交互に接触する第三のもの、カルノーが謂う所の作業物質(agent)、具体的に言えば水蒸気が必要である。

なぜなら、高温物体と低温物体とが互いに接触していて、熱が伝導で伝わる場合、力学的な仕事なしに熱の移動が起こりうるからである。したがっ て一般に、一定な温度 t と τ とを持つ二つの物体間を移動する一定な熱量が最大の仕事を達成するためには、前述の場合にみられたように、異なる温度の二つの物体は、互いに接触しないような過程にしておく必要がある。[5]

厳密に言うなら、高温物体と低温物体を隔てる作業物質が必要なのは、熱機関が産み出すような、反復的、周期的な力学的仕事を取り出す時である。一回限りの仕事でよいなら、高温物体を低温物体と直に接触させればよい。すると、前者から後者に熱が移動し、低温物体が膨張し、力学的な仕事が成されたことになる。

クラウジウスは、後に反復しない膨張をも考察するようになるのだが、1850年の論文では、もっぱらカルノー・サイクルによる熱の仕事への変換を考察している。カルノーが蒸気機関の原理を解明しようとしたのは、それが当時の最新技術であり、その効率の限界を調べることに社会的関心があったからだが、クラウジウスがカルノー・サイクルを彼の熱力学的分析の出発点に選んだのは、別の理由による。それは、当時仕事に変換されない熱の行方がよくわかっておらず、それがどうでもよいカルノー・サイクルは、単純化されたモデルを組み立てる上で都合が良かったのである。

クラウジウスは、外部への仕事に変換されない熱は、気体の内部の状態を変えることに使われるという彼なりの仮説を持っていたが、1850年の論文では、その仮説について詳しく述べていない。クラウジウスは、気体が内部にもつエネルギーを U という記号でまとめ、以下のような微分方程式で、システムが受け取った熱の行方を表している[6]

dQ=dU+AR\;\frac{a+t}{v}\;dv

クラウジウスは U を「付け加えられた自由な熱と、もしそのようなものがあればの話だが、内的仕事に使われた熱を包括するもの[7]」と説明している。ここからもわかるように、クラウジウスは、通常の熱力学がたんに仕事と呼んでいるところの外的仕事とは別に、内的仕事をも想定していた。クラウジウスは、二つの仕事を以下のように説明している。

発生した仕事には二種類ある。第一には、水の微少部分間に相互に働く引力に打ち勝って、それらを互いに十分に離れた距離だけ引き離し、水蒸気として存在させるために必要な一定量の仕事がある。第二には、水蒸気が蒸発に際して、外圧を押し返して、空間を広げるためにする仕事である。第一の仕事を内的なもの、第二の仕事を外的なものと呼ぼう。潜熱もまた、これらにそれぞれ配分される。[8]

潜熱とは、融解熱や蒸発熱など、状態変化に必要な熱で、水の場合、水分子間で働く分子間力を断ち切るエネルギーである。これを内的仕事として仕事扱いするなら、水分子の運動エネルギーを増大させる「付け加えられた自由な熱」の方もなぜ仕事と呼ばないのだろうか。

物理学では、仕事は力と変位の内積と定義されている。熱力学では、ピストンのようなマクロな物体に対してなされた仕事しか仕事と呼ばないのが慣例であるが、水分子のようなミクロな物体の運動エネルギーや位置エネルギーを変化させることも仕事と呼ぶことは理論的には可能である。それにもかかわらず、それらを仕事と呼ばないのは、それが熱機関の利用者にとって役に立たない仕事であるからだ。

今日内部エネルギーと呼んでいる U の増加は、その構成要素の力学的エネルギー(運動エネルギーと位置エネルギー)の総和の増加とみなされている。クラウジウスは気体分子運動論の先駆者の一人で、U が分子論的にどのようなエネルギーであるかを理解していた。しかし、それは当時としては検証されていない仮説に過ぎなかった。クラウジウスが引用文中で「もしそのようなものがあればの話だが」と控えめな表現を使い、未知の(ドイツ語:unbekannt)という意味の U という記号を用いたのは、そのためである。

もしも当時仮説にすぎなかった気体分子運動論を熱力学の基礎に据えるなら、クラウジウスの熱力学全体が疑わしく思われたことだろう。クラウジウスは、それを避けるために、外的仕事だけを取り出せるカルノー・サイクルで熱の仕事への変換を分析したのである。

任意の物体の体積が変化した場合に、一般には力学的仕事が発生するか、消耗するかする。しかし、多くの場合において、これを正確に決めることができない。なぜなら、外的仕事と同時に、未知の内的仕事もふつうは起こっているから。この困難を避けるために、カルノーは、すでに上に述べたような有効な方法を適用した。すなわち、物体にさまざまな変化を、最後にはそれが再び正確に最初の状態に戻るような順序で生じさせる。そこで、一つの変化の際に内的な仕事がなされた場合には、他の変化の際に再び取り去られるはずであるから、変化の結果最後に残った外的仕事が結局は発生した全仕事になるはずである。[9]

今日、私たちは依然として内部エネルギーを表す記号として U という記号を使っているが、かつての未知だった U はもはや未知ではなくなった。物理学の本来の定義に従うなら、内部エネルギーはミクロなレベルでの仕事である。すると、システムが受け取った熱はすべて仕事に変換されることになる。熱機関において作業物質が熱を低温物体に捨てる時でも、摩擦熱が生じる時でも、それらの熱は、熱を受け取ったシステムの内部エネルギーを増やすか膨張による外的仕事に使われるかどちらかなのであるから、すべて仕事に変換されるということになる。

熱力学第二法則は、しばしばトムソンの原理[10]に対する誤解から、「熱を全て仕事にすることはできない[11]」というように定式化されることがあるが、これは正しくない。たんに仕事をすべて熱に変換することができるだけでなく、熱をすべて仕事に変換することができるからだ。熱がミクロなレベルでの仕事だとするなら、たんに仕事が違う形に変換されているだけと言うべきかもしれない。そしてそのエネルギーの量が変わらないというのが熱力学第一法則であるのに対して、第二法則は、不可逆的過程では、変換するたびに仕事は有用ではなくなるということを言っているのである。

物理学に有用とか有用でないとかといった人間の主観的な判断を表す言葉を導入するべきではないと思う人もいるかもしれない。しかし、熱力学という学問はもともと蒸気機関の効率を探求する経済的な動機から始まった学問であることを思い起こしてほしい。物理学的に定義された広義の「仕事」と経済的な関心から定義された「有用な仕事」、つまり狭義の「仕事」は概念的に区別されるべきである。もちろん、言葉をどう定義するかは人の自由であるが、熱力学にとって重要なことは、変換のたびに有用さが減るというのはどういうことなのかを物理学的に解明することなのである。

1.3. カルノーの法則の数学的定式化

1850年の論文では、エントロピーの定義にとって後に重要となるカルノーの原理の数学的定式化が行われている。既に紹介したように、クラウジウスは、数式1の微分方程式で、消耗された熱量と生成した仕事を表していた。

dQ=dU+AR\;\frac{a+t}{v}\;dv

これを現代の表記法で書き直すと、

\delta Q =dU+ \frac{nRT}{V} \delta V=dU+ P \delta V=dU+ \delta W

となる。d ではなくて、δ が用いられている変数は、必ずしも微小量とは限らないということを示している。つまり熱量と外的仕事の変化量が微小量でなくても、その差が微小量なら、U の変化量は微小量になるということである。

これ以外の現代の表記法とクラウジウスの表記法の違いを解説しよう。まず、熱量 Q の単位は、現代のようにジュールではなくて、カロリーであるので、仕事の単位をカロリーに変えるための係数、A(単位の仕事に対する熱の当量)が必要である。また温度 t の単位は摂氏で、絶対温度にするために、a=273 が加えられている。R は今日の気体定数とは違って、「気体によって異なっており、それぞれ比重に逆比例している[12]」というのだから、現在なら、物質量をかけて、nR と表記すべきところである。

等温変化では、dU=0 なので、数式1は、

dQ=AR\;\frac{a+t}{v}\;dv

となり、これを体積(v)で積分することで、以下の式[13]が成り立つ(下付き文字の 0 は初期値を表す)。

Q-Q_{0}=AR\;(a+t_{0})\;log \frac{v}{v_{0}}

この式から、「気体を温度変化なしに体積を変化させる場合、体積の増減が等比数列を形成するなら、気体が吸収または放出する熱量は等差数列を形成する[14]」というカルノーの洞察が証明された。

数式4は、現代の表記法では、

Q-Q_{0}=nRT\;ln \frac{V}{V_{0}}

と書かれる。そしてここからボルツマンによる統計力学的なエントロピーの定義まではあと少しである。まず式全体を絶対温度 T で割る。

\frac{Q-Q_{0}}{T} =nR\;ln \frac{V}{V_{0}}

この数式は、以下と等値である。

\Delta S=\frac{N}{N_{A}} R\;ln \frac{V}{V_{0}}

ただし、N は気体分子の数で、NA は、アボガドロ数である。ここで、R/NA をボルツマン定数(Boltzmann constant)k で置き換えると、

\Delta S=k\;ln\left(\frac{V}{V_{0}}\right)^{N} =k\;ln\;W

となり、有名なボルツマンによるエントロピーの定義が導出される。クラウジウスが気体分子運動論のパイオニアであることを考えるなら、クラウジウスの「力学的熱理論」は、ボルツマンの統計力学のすぐ近くまで来ていたことがわかる。

2. カルノーの原理としての変換の等価性の法則

クラウジウスは、1854年の論文『力学的熱理論の第二主法則の修正された形について(Über eine veränderte Form des zweiten Hauptsatzes der mechanischen Wärmetheorie)』で、1850年の論文で定式化した「力学的熱理論の第二主法則」をさらに発展させ、後にエントロピーと呼ばれることになる「変換の等価値」を定義している。ここでは、そこに焦点を当てよう。

2.1. 変換の等価性の法則とは何か

クラウジウスは、カルノーの法則を「変換の等価性の法則(Satz von Aequivalenz der Verwandlungen)」と呼び、その内容を次のようにまとめている。

ある量の熱が仕事に変換され、この変換を媒介する物体が最終的には再びもとの状態に戻るようなすべての場合には、その変換と同時に別の量の熱が温かい物体から冷たい物体へと移動しなければならない。そして後者の熱量と前者のそれとの比は、熱の移動が行われている二つの物体の温度のみにより、それを媒介している物体の種類にはよらない。[15]

もっと簡潔に表現するなら、「冷たい物体から温かい物体への熱の移動は、同時に関連して生ずる別の変化なしにはなされえない[16]」ということである。熱を有用な仕事に変換する時には、高温物体から低温物体に熱が移動しなければならない。逆に、低温物体から高温物体に熱を移動させる時には、有用な仕事を熱に変換しなければならない。

この交換の原理をわかりやすく図式化してみよう。以下の図に示される通り、石炭を燃やして蒸気機関を動かすような場合、高温物体から低温物体に熱が移動し、両物体間の温度格差が縮まるという代償を払うことで、熱を有用な仕事に変換することができる。

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この図では、上の赤いゾーンがエントロピー(変換の等価値)の高い状態、下の青いゾーンがエントロピーの低い状態であることを示している。蒸気機関においては、高エントロピーな熱が低エントロピーな仕事へと変換され、その代わりに、高温物体から低温物体へ熱が移動することで、両者の温度格差が縮小し、エントロピーが高くなる。

これとは逆なのが、エアコンや冷蔵庫で内外の温度格差を拡大する場合で、以下の図に示される通り、電気が行う有用な仕事を熱に変換するという代償を払うことで、低温物体から高温物体に熱を移動させることができる。

画像
エアコンや冷蔵庫においては、室内の温度が下がり、エントロピーが低くなる(室内外の温度差が拡大する)が、その代わりに、発電において低エントロピーな仕事が高エントロピーな熱に変換される。

こうした熱力学的な変換は、貨幣によって媒介された等価交換を連想させる。ちょうど、私が他人に有用な仕事をさせようとすれば、お金を払わなければならないし、逆にお金を稼ごうとすると、私は他人に有用な仕事をしなければならないように、熱を有用な仕事に変換する時には、高温物体から低温物体に熱が移動しなければならないし、逆に、低温物体から高温物体に熱を移動させる時には、有用な仕事を熱に変換しなければならない。ちょうどお金を使うことは簡単でも、お金を稼ぐことは困難であるように、熱を高温物体から低温物体に移したり、有用な仕事を熱に変換することは簡単でも、熱を低温物体から高温物体に移したり、熱を有用な仕事に変換したりすることは困難であるのだから、こうした比喩が成り立つ。そしてこう考えるなら、なぜクラウジウスが「変換の等価性の法則」という名前を付けたのかがわかる。

2.2. 変換の等価値はなぜ増えようとするのか

経済的交換では、貨幣によって表示される価格が等価値であることを示す。では、カルノーの法則で、変換の等価性を示す物理量は何か。クラウジウスは、システムの絶対温度を T、システムが受け取る熱量を Q として、

N=\sum \frac{Q}{T}

を、「変換の等価値[17]」と定義し、この値が、高温物体から低温物体に熱が移動したり、有用な仕事が熱に変換されたりといった、容易に起きる変換で、正の値になり、低温物体から高温物体に熱を移動させたり、熱を有用な仕事に変換したりといった前者の代償なしには起きない変換で負の値になることを見出した。経済の比喩を使うなら、変換の等価値の増大は支出の増大に相当する。

このことを確認しよう。まず、絶対温度 T1 の高温物体から絶対温度 T2 の低温物体へ熱量 Q が流れた時、変換の等価値がどうなるかを考えよう。システムに流入した熱量は正として、流出した熱量は負として扱われるので、変換の等価値は、

\frac{Q}{T_{2}}- \frac{Q}{T_{1}} = \frac{T_{1}-T_{2}}{T_{1}T_{2}} Q

となる。定義により、T1>T2 であるから、この値は必ず正になる。逆に、低温物体から高温物体に熱を移動させる時には、負となる。有用な仕事は、絶対温度が無限大の高温物体とみなすことができるため、有用な仕事を熱に変える時の変換の等価値は、

\frac{Q}{T_{2}}- \frac{Q}{ \infty }=\frac{Q}{T_{2}}>0

というように正となる。逆に、熱を有用な仕事に変換するなら、負となる。いずれの場合でも、全体としては必ずゼロ以上になる。

なお、システムが受け取る熱量がシステムの温度を変えてしまう場合、変換の等価値を計算するには、熱量を微小量に分割したうえで、積分しなければならない。よって、数式9は、次のような形となる。

\int \frac{dQ}{T} \geq 0

カルノー・サイクルのような、可逆過程からなるサイクルでは、変換の等価値の和はゼロとなる。そういう理想的な仕事と熱との等価交換では、高温物体から低温物体に熱を移転させることで生成する仕事で、同量の熱を低温物体から高温物体へと移転させ、最初と全く同じ温度差を回復させることができる。しかし、実際の熱機関では、シリンダー内に渦が生じたり、シリンダーとピストンの間に摩擦熱が発生したりするので、サイクルは可逆的ではなく、変換の等価値の和は正となる。

このことを先ほどの貨幣と労働の等価交換の例で説明しよう。今、すべての労働単価が同じで、無駄なコストのない仮想上の労働市場では、お金を払って他人に仕事をさせ、次に自分が同じ仕事をすることで、費用を賃金としてすべて回収することができる。しかし、実際には、求人費用、交通費用、決済費用など余計なコストがかかるから、完全に回収することはできない。それと同じことである。

2.3. 変換の等価値の熱力学的限界

サービス市場では、詐欺師に騙されて、消費者が何ら仕事の対価を得ることなくお金を失うといった非等価交換がある。熱力学においても、仕事が成されないのにもかかわらず、変換の等価値が増える場合がある。クラウジウスは、そうした対応する変換が存在しない変換を「補償されない変換[18]」と名付け、伝導によるたんなる熱の移動、摩擦熱、電気抵抗による発熱などの例を挙げている。しかし、既に確認したように、これらの場合では、熱が物体の内部エネルギーを増大させたり、体積を膨張させたりするので、仕事が行われていないとは言えない。ただそれらの仕事は有用性がないから、熱力学では仕事扱いされないというだけのことである。

では、金を払ったけれども役に立たない仕事しかしないというのではなくて、全く仕事をしないという場合はないのか。クラウジウスが挙げているもう一つの事例である断熱自由膨張、所謂ジュール膨張は、理想気体に関しては、補償されない変換ということができる。ジュール膨張は、1845年にジュールが行った実験に因んでそう名づけられているが、この現象は、1807年にゲイリュサック(Joseph-Louis Gay-Lussac; 1778 – 1850)によって既に確認されており、クラウジウスも自分の力学的熱理論の課題として認識していた。

以下の図は、ジュール膨張を説明した模式図である。(1)最初、二つの断熱容器の片方には気体分子が入っていて、もう片方は真空になっている。(2)二つの部屋を遮断する障壁を取り外すと、気体分子は全容器一杯に均等に広がり、平衡状態に達する。この過程は不可逆で、(2)から(1)へと自然に移行するということはない。

画像
ジュール膨張の模式図。

ジュールが実験に用いた気体は理想気体に近かったので、膨張に伴う温度の低下は観測されなかった。54年の論文では、この不可逆過程が自分の理論の例外ではないとはしつつも、クラウジウスは、「ここではそれぞれの特例について実際に詳しく述べることはしない[19]」と言って逃げている。

クラウジウスの力学的熱理論がジュール膨張という不可逆的過程を変換の等価値で説明できなかったことは、仕方のないことであった。ジュール膨張においては、外部との熱の出入りがなく、外部に仕事が行われることはなく、したがって、内部エネルギーも変化しない、つまり気体の温度は変わらない。すべての変数の変化がゼロである以上、クラウジウスが定義した変換の等価値もゼロである。にもかかわらず、不可逆なのだから、変換の等価値は増えなければならず、そうではないということは、クラウジウスの定義に問題があるということになる。ジュール膨張のような不可逆的過程を説明しようとするなら、クラウジウスの熱力学的アプローチでは不十分であり、統計力学的アプローチが必要になる。

3. 分散度と熱の変換値の合計としてのエントロピー

クラウジウスは、1862年の論文『変換の等価性の法則の内的仕事への適用 (Über die Anwendung des Satzes von der Aequivalenz der Verwandlungen auf die innere Arbeit)』と1865年の論文『力学的熱理論の主法則を適用するためのさまざまな便利な形式について (Über verschiedene für die Anwendung bequeme Formen der Hauptgleichungen der mechanischen Wärmetheorie)』で、変換の等価値を分散度と熱の変換値の二つに分けて分析し、その総称概念としてエントロピーという新名称を提案した。彼のこの新しい試みは、どの程度現代的意義があるのか考えてみよう。

3.1. 内部エネルギーの新たな分析

既に述べたとおり、クラウジウスがこれまでカルノー・サイクルをもとに熱から仕事への変換を考察してきたのは、分子論的な仮定を前提とする内部仕事を考察の対象から外し、マクロな力学の対象となる外部仕事のみを考察するためであった。1862年の論文で、クラウジウスは、次のようにそれ以前の論文での議論を振り返っている。

私は、以前の研究において仮説的なものをすべて避けようとしてきたので、内的な仕事については全く取り扱わなかった。それは、周期過程に考察を限定したおかげだった。というのも、周期過程では、物体が途中で変化を被っても、物体が再び最初の状態の戻ってくるようになっているからだ。[20]

ところが、1862年の論文では、クラウジウスは、ジュール膨張のような不可逆な非周期過程まで説明できなければ、理論としては不十分と考えたようで、これまで考察の対象外においていた内的仕事についても考察するようになった。そこで彼は、内部エネルギーの変化量 dU を気体内部に含まれている熱の変化量 dH と内的仕事の変化量 AdJ に分割した[21]

dU=dH+AdJ

そして、「内的な仕事と外的な仕事は本質的には互いに異なっていない[22]」という理由から、内的仕事と外的仕事をまとめて、AdL としているのだが、実は、クラウジウスが謂う所の内的仕事を内部エネルギーに入れるか仕事に入れるかは、どうでもよい問題なのである。というのも、クラウジウスは、マリオット(Mariotte)の法則とゲイ・リュサック(Gay-Lussac)の法則(日本で謂う所のボイルの法則とシャルルの法則)の結合から導かれた、理想気体の状態法則[23]、pv=R (a+t) を用いていたことからもわかる通り、理想気体を理論の対象にしていたからである。

当時、窒素や水素や一酸化炭素など、容易に液化しない気体は「永久気体」と呼ばれ、永久気体では、マリオットの法則とゲイ・リュサックの法則が、わずかな誤差で成り立つことが知られていた。永久気体をモデルに理想化された理想気体では、分子間力など、分子間の引力が無視される。つまり、内的仕事はゼロとして扱われる。ゼロである以上、内部エネルギーに入れようが、仕事に入れようが、同じことである。

1862年の論文で、クラウジウスは、ジュール膨張に関して、「法則は、熱がする仕事ではなくて、熱がすることができる仕事について語っている[24]」という苦しい言い訳をしているが、説明としては失敗に終わっている。1876年の『力学的熱理論』改訂版でもあまり進歩はない[25]。失敗の原因の一つは、既に述べたとおり、クラウジウスのアプローチが熱力学的で、統計力学的ではないため、この不可逆的過程における変換の等価値の増大を認識できなかったことだが、もう一つは、1873年に提唱される実在気体に関するファンデルワールスの状態方程式(Van der Waals equation)をクラウジウスが採用しなかったことである。

分子間の引力が無視できない実在気体がジュール膨張を行う時、クラウジウスが認識した通り、その引力に逆らって内的仕事が成される。エネルギー保存則により、気体分子が位置エネルギーを高めた分、運動エネルギーを減らす。つまり、気体の温度は下がる。しかし、それ以上に膨張に伴う統計力学的なエントロピーが増えるので、ジュール膨張は不可逆的である。このように、ジュール膨張もクラウジウスの法則に反することなく説明できるのだが、二つの理由により、クラウジウスはこの解釈には到達できなかった。

3.2. 変換の等価値からエントロピーへ

クラウジウスは、1865年の論文『力学的熱理論の主法則を適用するためのさまざまな便利な形式について[26]』で、62年の論文における気体内部に含まれている熱と仕事への分割を継承して、変換の等価値を以下のように定義している。

\int  \frac{dQ}{T} = \int  \frac{dH}{T}+ \int dZ

この式の中の H は、数式13の時と同様に、物体の絶対温度のみを変数とする、物体内に現存する熱の量を表す関数である。クラウジウスは、H を絶対温度 T で割った値を Y と表記し、「物体内に現存する熱の変換値[27]」と名付けている。

他方で、クラウジウスは Z を「物体の分散度[28]」と名付けている。この概念は、62年の論文において、内的仕事と外的仕事の結果増大する分子間の距離の大きさを表すために、既に導入されている[29]。クラウジウスは、後に「分散度」という概念を放棄し、1876年の『力学的熱理論』改訂版では使わなくなるが、科学史家のクラインのように、「エントロピーは物理学的には分散によって説明されるべきものであったから、クラウジウスは分散をエントロピーよりももっと基本的な概念として見ていた[30]」と評価する者もいる。

クラウジウスは、数式14

\int \frac{dQ}{T} = Y+Z-(Y_{0}+Z_{0})

と変形し、熱の変換値と分散度の合計に S という記号を割り当てている。つまり、

\Delta S =  \Delta Y +  \Delta Z

ということである。理想気体なので、内的仕事を無視して、Y と Z の内実を確認しよう。定積熱比熱を c とすると、S に関して、以下の式[31]が成り立つ。

dS= c \frac{dT}{T} + AR log \frac{dv}{v}

これを積分すると、

S=S_{0} + c\; log \frac{T}{T_{0}} + AR\; log \frac{v}{v_{0}}

となる。現代の表記で書くなら、

\Delta S=nC_{v} ln \frac{T}{T_{0}} + nR ln \frac{v}{v_{0}}

ということである。この式は、温度が上昇したり、体積が膨張したりすると、その比の対数に比例して、S が増加するということを示している。第一節で導出した数式8は、T=T0 という特殊ケース(等温膨張)での数式19とみなすことができる。

1865年の論文で特筆すべきことは、熱の変換値と分散度の合計として定義された S に「エントロピー」という名前を与えられたことである。

S に対する特徴的な名称を探すなら、量 U について、それを物体の熱と作用の内容と呼ぶように、量 S についても、それを物体の変換の内容と呼ぶことができる。しかし、このような学問にとって重要な量は、そのまますべての現代語で使うことができるように、古代語から借用するのが適当かと思うので、量 S をギリシャ語で変換という意味の“ἡ τροπή”に従って、物体のエントロピーと名付けることを私は提案する。私は、エントロピーという用語を意図的にエネルギーという用語にできるだけ類似するように作った。というのも、これら二つの量は、このように命名されると、物理的意義が相互にいっそう似通ってくるので、命名によってある程度の同質性を示そうとする私の意図に適していると思われるからである。[32]

「ヘー・トロペー (ἡ τροπή)」の「へー」は、女性名詞の単数主格に付く冠詞で、これを省いて、代わりに英語の“in”に相当する前置詞「エン(ἐν)」を付けることで、「エントロピア (ἐντροπία=ἐν+τροπή)」、ドイツ語の発音で、「エントロピー (Entropie)」という用語ができたということである。引用にある通り、クラウジウスは「エントロピー」という用語を「エネルギー」に似せて作ったということなのだが、「エン」を付けることにどのような意味があるのだろうか。

日本語になっている「エネルギー (Energie)」はドイツ語の発音で、ギリシャ語の「エネルゲイア (ἐνέργεια)」から来ている。「エントロピア」とは異なって、「エネルゲイア」は古代から使われているギリシャ語である。「エネルゲイア」は日本語で現実態と訳され、日本語で可能態と訳される「デュナミス (δύναμις)」とともに、アリストテレスによって哲学用語として使われるようになった概念[33] である。エネルギーという言葉を近代物理学的な意味で最初に使ったのは、トーマス・ヤング (Thomas Young; 1773 – 1829) で、1807年のことである[34]。位置エネルギー(potential energy 潜在的可能的エネルギー)が運動エネルギーに変換されることで、可能態が現実態として顕現するといった事例を考えるなら、アリストテレスの用法と近代物理学の用法には接点があると言える。

語源的には、「エネルゲイア」は、前置詞「エン」と「仕事」を意味する「エルゴン (ἔργον)」が結合することで出来したので、「仕事中」といったような意味である。「エントロペイア」という新造語は、その方法を真似て作られている。このことを理解するなら、クラウジウスがなぜ「量 U について、それを物体の熱と作用の内容(Wärme- und Werkinhalt)と呼ぶように、量 S についても、それを物体の変換の内容(Verwandlungsinhalt)と呼ぶことができる」という前置きをしていたのかがわかる。「熱と作用の内容」とあるが、ジュールの法則により、熱と仕事は本質的に同じとみなせるので、「作用の内容」と解釈しよう。「内容」と訳したドイツ語“Inhalt”は、「中」を意味する“in”と「保つ」を意味する“halten”から合成されており、「熱と作用の内容」とは、「仕事の-内に-保たれているもの (Werk-in-halt)」、すなわち「エネルギー (ἐν-ἔργον)」を意味し、これに対して、「変換の内容」とは、「変換の-内に-保たれているもの (Verwandlungs-in-halt)」、すなわち「エントロピー (ἐν-τροπή)」を意味するということである。クラウジウスとしては、エントロピーという語は、エネルギーという語を意識しつつも、変換の等価値というドイツ語をそのままギリシャ語に翻訳したものだったのである。

1865年の論文で、エントロピーを表す記号として S が用いられ、この習慣は現在にまで受け継がれている。しかし、クラウジウスはなぜ S という記号を用いたのかを説明していないので、その理由ははっきりしない。サディ・カルノー(Sadi Carnot)の頭文字をとったということも考えられるが、熱の変換値 Y と分散度 Z の合計(Summe)と定義したからなのかもしれない。そう定義される前、変換の等価値には、N という記号が使われていたのだから、そういう可能性も十分ある。もう一つの可能性として、エントロピーの定義で使用される積分記号がラテン語の“ſumma”の頭文字、長く伸びた S 記号を用いていることを挙げることができる。いずれにせよ、エントロピーというのは和なのである。

1865年の論文の結論部で、クラウジウスは、1850年の論文以来取り組んできたジュールの法則とカルノーの原理をエネルギーとエントロピーという用語を用いて、次のように簡潔に定式化している。

1) 世界のエネルギーは一定である。

2) 世界のエントロピーは極大へ向けて増大する。[35]

これが今日熱力学第一法則と第二法則と呼ばれるものである。

3.3. エントロピーと環境問題

クラウジウスは、1876年に『力学的熱理論』を改訂した際に、62年と65年の論文で扱った「分散」の概念を削除し、「エントロピー」概念で統一した。ところが、科学史家の中には、クラウジウスが放棄した分散概念を重視し、熱の変換値としてのエントロピーとの違いを強調する者もいる。例えば、山本義隆は、「エントロピー S を Y と Z の和として一まとめに考えるのではなく、別々に考え、したがって全体量だけを問題にするのではなく、Y と Z の増加、特に Y[ママ]の増加を他方の減少によって打ち消すことのできないものとして扱う[36]」ジョージェスク・レーゲン(Nicholas Georgescu-Roegen; 1906 – 1994)のリサイクル批判を援用し、次にように述べている。

実際、大気中への窒素化合物や硫黄化合物の拡散、水銀やカドミウム等重金属類の土中や海中への拡散は、すべて非可逆的なエントロピーの増大、クラウジウスの言う〈分散Z〉の増大であって、それを人工的に元に戻そうとすれば、おびただしいエネルギーの消費としたがってまたさらなるエントロピーの発生をもたらすことになる。[…]この意味で、人類の生存条件の維持にとっては、熱拡散に劣らず物拡散の防止がより重要な要因になる。YとZの和としてエントロピーを考えるクラウジウスの出発点の現代的重要性はここにある。[37]

クラウジウスは、たしかに、物拡散 Z と熱拡散 Y を区別したが、前者を後者で変換できないとは考えていなかった。「変換の等価値」というエントロピーの当初の呼称が示すように、クラウジウスは、両者を等価とみなしていた。

分散度は、物体の構成要素の配列に依存しており、分散度の増加量は、作用から熱への同量の変換と等価値であり、その変換は分散度増加を再度撤回せるように生ずるので、分散度増加の埋め合わせとして用いることができる。[38]

65年論文のこの記述からも明らかなように、クラウジウスは、作用を熱へと変換させることで、分散度を減少させることができると考えていた。その交換を図示すると、以下のようになる。

画像
有用な仕事を廃熱にするという代償を支払うことで、分散度を小さくする、つまりリサイクルをすることができる。

実際、正の熱拡散の増加 ΔY でもって、負の物拡散の増加 ΔZ をもたらすこと、すなわちリサイクルは原理的には可能である。地球が行うことができるリサイクルという仕事には上限があるが、それは量の問題であって原理の問題ではない。リサイクルによって物のエントロピーを熱のエントロピーに変換し、その熱を宇宙に捨てることで、持続可能な経済を実現することは原理的には可能である。

クラウジウスは、「世界のエントロピーは極大へ向けて増大する」と言っているのであって、「地球のエントロピーは極大へ向けて増大する」とは言っていない。熱力学第二法則が成り立つのは、孤立システムにおいてのみであり、地球のような非孤立システムにおいては、必ずしも成り立たない。既に述べたとおり、地球は、太陽放射熱と地熱を高温の熱源、宇宙空間を低温の熱源とする熱機関である。

地球の表面が太陽放射から受け取る熱エネルギーの平均的な一秒当たりのエネルギー密度は 341.5 W/m2 であるが、その一部は反射などにより地表面まで届かない。地表面にまで届くのは、そのおおよそ七割なので、有効太陽放射の平均的な一秒当たりのエネルギー密度は、239 W/m2ということになる。地表面の平均気温は 15℃(288K)で、熱放射を行う大気上空の気温は -24℃(249K)であるから、一平方メートル当たり毎秒

239\left (\frac{1}{249} -\frac{1}{288}  \right )=1.30\times 10^{-1}[W/Km^{2}]

のエントロピーを縮減していることになる。

次に地熱が縮減するエントロピーを計算しよう。地球内部から地殻を通って流出する熱エネルギーの平均的な一秒当たりのエネルギー密度は、91.6 mW/m2 で、マントルと外殻の境界の温度は約4000Kなので、

0.0916\left (\frac{1}{288} -\frac{1}{4000}  \right )=2.95\times 10^{-4}[W/Km^{2}]

となる。地熱も最終的には宇宙に捨てられるので、その際に大気圏で行う仕事も換算すると、

0.0916\left (\frac{1}{249} -\frac{1}{4000}  \right )=3.45\times 10^{-4}[W/Km^{2}]

のエントロピーを地熱が縮減していることになる。こうした熱機関が行う仕事によって減るエントロピーが、人類をはじめとする地球内部の存在者によって増やされるエントロピーを下回らない限り、地球が死の星になることはない。

4. 参照情報

  1. “Bei näherer Betrachtung findet man aber, dass nicht das eigentliche Grundprincip von Carnot, sondern nur der Zusatz, dass keine Wärme verloren gehe, der neuen Betrachtungsweise entgegensteht, denn es kann bei der Erzeugung von Arbeit sehr wohl beides gleichzeitig stattfinden, dass eine gewisse Wärmemenge verbraucht und eine andere von einem warmen zu einem kalten Körper übergeführt wird, und beide Wärmemengen können zu der erzeugten Arbeit in bestimmter Beziehung stehen." Clausius, Rudolf Julius Emmanuel. “Über Die Bewegende Kraft Der Wärme Und Die Gesetze, Welche Sich Daraus Für Die Wärmelehre Selbst Ableiten Lassen.” First published: Annalen Der Physik 155, no. 3 (n.d.): 368–97. 1850. Reprinted: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. p.20.
  2. “La production de la puissance motrice est donc due, dans les machines à vapeur, non à une consommation réelle du calorique, mais à son transport d’un corps chaud à un corps froid” Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 10-11.
  3. Carnot, Nicolas Léonard Sadi. “Extrait de notes inédites de Sadi Carnot” in Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 92.
  4. トムソンも、翌年の1851年に「熱を全て仕事にすることはできない」というトムソンの原理を確立し、カルノーの理論とジュールの法則が統合できるという結論に至った。“It is impossible, by means of inanimate material agency, to derive mechanical effect from any portion of matter by cooling it below the temperature of the coldest of the surrounding objects.” Thomson, W. (1851). “On the Dynamical Theory of Heat, with numerical results deduced from Mr Joule’s equivalent of a Thermal Unit, and M. Regnault’s Observations on Steam". Transactions of the Royal Society of Edinburgh. XX (part II): §12.
  5. “Da nämlich auch ein Wärmeübergang ohne mechanischen Effect stattfinden kann, wenn ein warmer und ein kalter Körper sich unmittelbar berühren, und die Wärme durch Leitung hinüberströmt, so muss, wenn man für den Übergang einer bestimmten Wärmemenge zwischen zwei Körpern von bestimmten Temperaturen t und τ das Maximum der Arbeit erlangen will, der Vorgang so geleitet werden, wie es in den obigen Fällen geschehen ist, dass nie zwei Körper von verschiedener Temperatur in Berührung kommen." Clausius, Rudolf Julius Emmanuel (1850). “Über Die Bewegende Kraft Der Wärme Und Die Gesetze, Welche Sich Daraus Für Die Wärmelehre Selbst Ableiten Lassen.” in Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. p.49.
  6. Rudolf Clausius. “Über die bewegende Kraft der Wärme: und die Gesetze, welche sich daraus für die Wärmelehre selbst ableiten lassen." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 32.
  7. “die hinzugekommene freie Wärme und die zu innerer Arbeit, falls solche geschehen ist, verbrauchte Wärme umfasst" Rudolf Clausius. “Über die bewegende Kraft der Wärme: und die Gesetze, welche sich daraus für die Wärmelehre selbst ableiten lassen." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 33.
  8. “Die geleistete Arbeit ist nämlich von zweifacher Art. Erstens gehört eine gewisse Arbeit dazu, um die gegenseitige Anziehungskraft der Theilchen des Wassers zu überwinden, und sie bis zu der Entfernung von einander zu trennen, in welcher sie sich beim Dampfe befinden. Zweitens muss der Dampf bei seiner Entwickelung einen äusseren Druck zurückschieben, um sich Raum zu schaffen. Die erstere Arbeit wollen wir die innere, die letztere die äussere nennen, und danach auch die latente Wärme eintheilen." Rudolf Clausius. “Über die bewegende Kraft der Wärme: und die Gesetze, welche sich daraus für die Wärmelehre selbst ableiten lassen." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 23.
  9. “Wenn irgend ein Körper sein Volumen verändert, so wird dabei im Allgemeinen mechanische Arbeit erzeugt oder verbraucht. Es ist aber in den meisten Fällen nicht möglich, diese genau zu bestimmen, weil zugleich mit der äusseren Arbeit auch gewöhnlich noch eine unbekannte innere stattfindet. Um diese Schwierigkeit zu vermeiden, hat Carnot das schon oben erwähnte sinnreiche Verfahren angewandt, dass er den Körper nach einander verschiedene Veränderungen durchmachen lässt, die so angeordnet sind, dass er zuletzt wieder genau in seinen ursprünglichen Zustand zurückkommt." Rudolf Clausius. “Über die bewegende Kraft der Wärme: und die Gesetze, welche sich daraus für die Wärmelehre selbst ableiten lassen." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 26.
  10. “It is impossible, by means of inanimate material agency, to derive mechanical effect from any portion of matter by cooling it below the temperature of the coldest of the surrounding objects." William Thomson. On the Dynamical Theory of Heat. Taylor & Francis (1852).
  11. ウィリアム・トムソンWikipedia. 2013年10月27日.
  12. “Diese letztere Constante ist also für die verschiedenen Gase in sofern verschieden, als sie ihrem specifischen Gewichte umgekehrt proportional ist." Rudolf Clausius. “Über die bewegende Kraft der Wärme: und die Gesetze, welche sich daraus für die Wärmelehre selbst ableiten lassen." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 24-25.
  13. Rudolf Clausius. “Über die bewegende Kraft der Wärme: und die Gesetze, welche sich daraus für die Wärmelehre selbst ableiten lassen." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 47.
  14. “Lorsqu’un gaz varie de volume sans changer de température, les quantités de chaleur absorbées ou dégagées par ce gaz sont en progression arithmétique, si les accroissemens ou les réductions de volume se trouvent être en progression géométrique" Nicolas Léonard Sadi Carnot. Réflexions sur la puissance motrice du feu et sur les machines propres à développer cette puissance. First published: 1824. p. 52-53.
  15. “In allen Fällen, wo eine Wärmemenge in Arbeit verwandelt wird, und der diese Verwandlung vermittelnde Körper sich schliesslich wieder in seinem Anfangszustande befindet, muss zugleich eine andere Wärmemenge aus einem wärmeren in einen kälteren Körper übergehen, und die Grösse der letzteren Wärmemenge im Verhältniss zur ersteren ist nur von den Temperaturen der beiden Körper, zwischen welchen sie übergeht, und nicht von der Art des vermittelnden Körpers abhängig." Rudolf Clausius. “Über eine veränderte Form des zweiten Hauptsatzes der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 133.
  16. “es kann nie Wärme aus einem kälteren in einen wärmeren Kärper übergehen, wenn nicht gleichzeitig eine andere damit zusam/nienhängende Aenderung eintritt" Rudolf Clausius. “Über eine veränderte Form des zweiten Hauptsatzes der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 134.
  17. “Aequivalenzwerth der Verwandlungen" Rudolf Clausius. “Über eine veränderte Form des zweiten Hauptsatzes der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 143.
  18. “eine uncompensirte Verwandlungen" Rudolf Clausius. “Über eine veränderte Form des zweiten Hauptsatzes der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 152.
  19. “auf die wirkliche Ausführung für einzelne specielle Fälle will ich hier nicht eingehen" Rudolf Clausius. “Über eine veränderte Form des zweiten Hauptsatzes der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 152.
  20. “Da ich nun in meiner früheren Veröffentlichung alles Hypothetische zu veriueiden wünschte, so schloss ich die innere Arbeit ganz davon aus, was dadurch geschehen konnte, dass ich mich auf die Betrachtung von Kreisprocessen beschränkte, d. h. von Vorgängen, bei denen die Veränderungen, welche der Körper erleidet, so angeordnet sind, dass der Körper schliesslich wieder in seinen Anfangszustand zurückkommt." Rudolf Clausius. “Über die Anwendung des Satzes von der Aequivalenz der Verwandlungen auf die innere Arbeit." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 243.
  21. Rudolf Clausius. “Über die Anwendung des Satzes von der Aequivalenz der Verwandlungen auf die innere Arbeit." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 253.
  22. “die innere und äussere Arbeit nicht wesentlich von einander verschieden sind" Rudolf Clausius. “Über die Anwendung des Satzes von der Aequivalenz der Verwandlungen auf die innere Arbeit." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 246.
  23. Rudolf Clausius. “Über die bewegende Kraft der Wärme: und die Gesetze, welche sich daraus für die Wärmelehre selbst ableiten lassen." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 24.
  24. “Das Gesetz spricht nicht von der Arbeit, welche die Wärme thut, sondern von der, welche sie thun kann" Rudolf Clausius. “Über die Anwendung des Satzes von der Aequivalenz der Verwandlungen auf die innere Arbeit." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 251.
  25. Rudolf Clausius. Die mechanische wärmetheorie. 1876. p. 223-228.
  26. Rudolf Clausius. Über verschiedene für die Anwendung bequeme Formen der Hauptgleichungen der mechanischen Wärmetheorie In: Annalen der Physik und Chemie. Band 125. Barth Leipzig (1865). Vorgetragen in der naturforsch. Gesellschaft den 24. April 1865.
  27. “den Verwandlungswerth der im Körper vorhandenen Wärme" Rudolf Clausius. “Über verschiedene für die Anwendung bequeme Formen der Hauptgleichungen der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 2. 1867. p. 32.
  28. “die Disgregation des Körpers" Rudolf Clausius. “Über verschiedene für die Anwendung bequeme Formen der Hauptgleichungen der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 2. 1867. p. 33.
  29. Rudolf Clausius. “Über die Anwendung des Satzes von der Aequivalenz der Verwandlungen auf die innere Arbeit." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 1. 1864. p. 248.
  30. “Clausius saw the disgregation as a concept more fundamental than the entropy, since entropy was to be interpreted physically with the help of disgregation." Martin J. Klein. “Gibbs on Clausius." Historical Studies in the Physical Sciences 1 (1969): 127-149.
  31. Rudolf Clausius. “Über verschiedene für die Anwendung bequeme Formen der Hauptgleichungen der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 2. 1867. p. 37.
  32. “Sucht man für S einen bezeichnenden Namen, so könnte man, ähnlich wie von der Grösse U gesagt ist, sie sei der Wärme- und Werkinhalt des Körpers, von der Grösse S sagen , sie sei der Verwandlungsinhalt des Körpers. Da ich es aber für besser halte, die Namen derartiger für die Wissenschaft wichtiger Grössen aus den alten Sprachen zu entnehmen, damit sie unverändert in allen neuen Sprachen angewandt werden können, so schlage ich vor, die Grösse S nach dem griechischen Worte ἡ τροπή, die Verwandlung, die Entropie des Körpers zu nennen. Das Wort Entropie habe ich absichtlich dem Worte Energie möglichst ähnlich gebildet, denn die beiden Grossen, welche durch diese Worte benannt werden sollen, sind ihren physikalischen Bedeutungen nach einander so nahe verwandt, dass eine gewisse Gleichartigkeit in der Benennung mir zweckmässig zu sein scheint." Rudolf Clausius. “Über verschiedene für die Anwendung bequeme Formen der Hauptgleichungen der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 2. 1867. p. 34.
  33. Aristotle. Metaphysics.Book 9, section 1047a.
  34. Thomas Young. A course of lectures on natural philosophy and the mechanical arts. Lecture 8. p. 78.
  35. “Die Energie der Welt ist constant. Die Entropie der Welt strebt einem Maximum zu." Rudolf Clausius. “Über verschiedene für die Anwendung bequeme Formen der Hauptgleichungen der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 2. 1867. p. 44.
  36. 山本義隆. 『熱学思想の史的展開』現代数学社 (January 1, 1987). p. 482.
  37. 山本義隆. 『熱学思想の史的展開』現代数学社 (January 1, 1987). p. 481-482.
  38. “Sie [die Disgregation des Körpers] hängt von der Anordnung der Bestandtheile des Körpers ab, und das Maass einer Disgregationsvermehrung ist der Aequivalenzwerth derjenigen Verwandlung aus Werk in Wärme, welche stattfinden muss, um die Disgregationsvermehrung wieder rückgängig zu machen, welche also als Ersatz der Disgregationsvermehrung dienen kann." Rudolf Clausius. “Über verschiedene für die Anwendung bequeme Formen der Hauptgleichungen der mechanischen Wärmetheorie." In: Abhandlungen Über Die Mechanische Wärmetheorie. Vol. 2. 1867. p. 33.