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物理学とその技術的応用に関する記事。

2014年6月18日

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ジョージェスク・レーゲンは、地球のような閉じたシステムでは、物が散逸するエントロピーは不可逆的に増大するという「熱力学第四法則」により、地球上に住む私たちは熱死ならぬ物死を先に迎えると予言し、さらに、リサイクルによって持続可能な経済を実現しようとすることは永久機関を作ろうとする行為であり、リサイクルによって物死を回避することは不可能であると主張した。しかし、ジョージェスク・レーゲンが謂う所の熱力学第四法則は物理学的に間違いであり、リサイクルをすること、すなわち熱のエントロピーを増大させることで物のエントロピーを縮減し、熱のエントロピーを宇宙に捨てることで地球内における物のエントロピーを低く維持し続けることは、原理的には可能である。

2014年4月21日

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クラウジウスは近代熱力学の創始者の一人であり、「エントロピー」という用語の発案者であるが、この言葉を創る前は「変換の等価値」という呼称を用いていた。今日物理学の専門用語として使われているエントロピーは、交換の対価という経済学的な発想から生まれた概念であった。そもそも熱力学自体が、蒸気機関の熱効率の向上という経済的な関心から生まれた物理学の分野であり、半分物理学であるが、半分経済学でもあるような学問なのである。クラウジウス自身、そのような問題意識はなかったとはいえ、今日、エントロピーという概念は、地球の資源問題や環境問題を考える上で重要にもなっている。

2014年2月11日

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槌田敦著の『熱学外論』という奇妙なタイトルは「熱学概論」の間違いではなくて、彼の父、槌田竜太郎が書いた『化学外論』を真似たもので、聖書の正典に対する外典のような位置付けであることを意識した書名である。異端の書であるがゆえに、間違いも少なくないが、傾聴するべき問題提起も多いので、この書で提示された「生命・環境を含む開放系の熱理論」を批判的に吟味してみたい。

2013年11月26日

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世界中の物理学者が万物の理論が追い求めている。物理学の最先端は、素人には理解しがたいが、そんななか、ブライアン・グリーンが一般向けに分かりやすい本とドキュメンタリー・ビデオを出版している。このページでは、それらを参考に、超ひも(超弦)理論、時間と空間、量子跳躍、マルチバース、人間原理といった物理学のテーマについて考えてみたい。

2013年8月29日

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ガリレオは、アリストテレスの解釈ばかりをしていた中世のスコラ学者とは異なり、実験と観察を行うことで、古典力学の基礎となる力学法則を独自に発見したとかつて思われていた。たしかに、ガリレオは、自分をそのように見せようとしていたのだが、実際には、ガリレオによる落体の法則の発見は、14世紀のスコラ学者であるマートン学派が発見したマートン規則やオレームによるこの規則の応用によって御膳立てされていた。彼らはガリレオとは異なり、たんに思想実験をしただけで実証実験を行ったわけではなかったが、そもそも、ガリレオから始まるとされる十七世紀科学革命とは、力学と天文学の分野におけるアリストテレス=トマス・パラダイムからプラトン=アルキメデス・パラダイムへの転換であり、プラトン=アルキメデス・パラダイムのイデア先行的な考えからすれば、たんに数学的な思考実験しかしなかったからといって、マートン学派やオレームがこのパラダイム転換の先駆者ではなかったとは言えない。

2013年3月12日

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古来より磁力や静電気力はオカルト的な遠隔作用として認識されており、魔術を禁止するキリスト教の力が強かった時代に磁力や静電気力の研究は廃れた。しかし、ルネサンス期以降、敢えて魔術に取り組む研究者が現れ、彼らが近代的な電磁気学や力学の基礎を築いた。ニュートンやクーロンは、万有引力や電磁気力を遠隔作用と認識していたが、今日それらは近接作用で説明されるようになった。この電磁気学の歴史から私たちが学ばなければならない教訓は、オカルト的であることを理由にオカルト現象の研究を拒否することはするべきではないが、遠隔作用を遠隔作用のまま肯定することはオカルティズムであって科学ではなく、遠隔作用は近接作用によって説明されなければならないということである。

2007年5月13日

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汚いかきれいかという判断は価値的で主観的であるが、これを物理学的、かつ定量的に表現することは可能だろうか。私たちは、不正を「汚い行為」と表現することもあるが、こうした非物理的な汚(けが)れは、物理的な汚(よご)れと何らかの共通点を持っているだろうか。そして、汚れを清めることにはどのような共通点があるのだろうか。

2006年9月14日

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多くの人は、ごみをリサイクルすれば、ごみが減り、資源が有効に活用され、環境がきれいになると思っている。しかし、リサイクルは、往々にして、ごみを減らす以上に増やし、資源を食いつぶし、環境を悪化させる。なぜこのようなことが起きるのか、そしてこの問題を解決するにはどうすればよいのかといった問題をエントロピーの観点から考えてみたい。

2006年7月19日

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天然資源の枯渇と資源環境の破壊は、急速に拡大を続ける私たち生命の存続を脅かしている二つの大きな問題である。これらの二つの問題は、そして生命を維持する問題自体も、実際には、エントロピーの問題という一つの問題に収斂する。資源問題と環境問題の本質が、そして二つの問題を解く鍵が、いかにしてエントロピーを減らすかにあることを示したい。

2005年8月24日

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無形化世界とは、1970年代以降の情報化の時代を迎えた世界のことである。冷戦も雪解けを迎え、古典的な有形の戦争が減る中、経済戦争や知的ヘゲモニーの争奪戦やメディア合戦といった目に見えない形での戦争が熾烈になっていく。これらの無形の戦争は、別の手段を以ってする有形の戦争の継続に過ぎないのか。長沼伸一郎の『無形化世界の力学と戦略―理系からの解析は戦略と地政学をどう変えるか』を読みながら考えよう。

2001年11月3日

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アンデルセンの童話に『マッチ売りの少女』という話がある。あの物語に出てくる少女がなぜ死んだかをめぐって、物理学者たちが、10年にわたって熱い論争を繰り広げたことがあった。はたして、少女は、エネルギーが足りなくて死んだのか、それともエントロピーが増大して死んだのか。

2001年10月27日

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この宇宙には、なぜ私たち人間のような理性的な存在者がいるのだろうか。人間は偶然この世に現れたのか、それとも現れるべくして現れたのか。人間が存在しない世界は可能だったのか。

2001年10月20日

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近代西洋哲学では、一つしかない世界に複数の認識があることが神ならぬ人間の認識の有限性であるとされてきたが、多世界解釈に従うならば、世界が複数存在するにもかかわらず、世界は一つしかないと考えている、あるいはそう考えなければ生きていけないことこそ人間の有限性だということになる。

2001年9月22日

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エントロピーは複雑性の対数である。定性的にはエントロピーは、複雑性と同様に、不確定性、乱雑さ、無秩序の度合いであるのだが、定量的には対数であるから、複雑性とは同じではない。一般的に言って、私たちの感覚は、刺激の物理量そのものよりもその対数に比例する。だから、一見私たちの感覚を超越した抽象的な概念と思われるエントロピーも、実は私たちの感覚の本性に忠実な尺度であると言うことができる。

2000年11月19日

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私たちは、自分たちが三次元の空間の中で生きていることを自明だと考えているが、しかし三次元の空間は、決して直接的に知覚されるわけではない。なぜ私たちは空間を三次元と解釈するのか。

2000年6月3日

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「環境に優しい」と自称する企業が、「わが社は、ごみを一切出さないゼロエミッションリサイクルを実現している」と宣伝するのを耳にすることがある。しかし、厳密に言うならば、ゼロエミッションのリサイクルなどは物理的に不可能である。物理的に可能で環境保全になる循環型社会とはどのようなものかを考えよう。

2000年5月6日

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熱力学には二つの基本法則がある。熱力学第一法則は「エネルギーは保存される」、第二法則は「孤立したシステムにおけるエントロピーは減少しない」というものである。熱力学第二法則を、熱力学の範囲を超えて拡張してみよう。