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NHKはどのように民営化するべきか

2005年12月23日

NHKは国営放送ではないが、放送法が受信設備を設置した者にNHKと受信契約を結ぶ義務を定めているので、国営に近い公共放送である。このような特権を正当化する理由はあるのか。現行の受信料徴収方法でなければ、NHKが提供しているような番組は提供不可能なのか。NHKを純粋に民営化し、市場原理を導入することにどのような問題があるのかといった問題を考えたい。

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1. 問題提起:NHKは営利企業の放送と異なるのか

はーふ・しりあす:NHKは「公共放送」なんです」に対するコメント。NHKは国営放送ではないが、受信機所有者から受信料を徴収する権利を与えられた国営に近い公共放送だです。これを民営化し、市場原理を導入することにどのような問題があるのか考えましょう。

見比べてみれば一目瞭然ですが、NHKでは福祉や健康、科学や文化に関する番組が非常に多いことがわかります。はっきりいって、これほどの大量の低視聴率番組を、民放が流すことは考えられないし、絶対に8時台なんて時間には放送されないでしょう。こういった番組を必要とするのは、決してマジョリティではなく、視聴率を稼ぐことは出来ないことが確かだからです。

ブログなどでも「民放とNHKの番組に、もはや大した差は無い」という意見は散見されますが、こうして比べてみれば、明らかに大きな差異があることは明白です。たしかに、民放でも、NHKに勝るとも劣らない良い番組もありますし、NHKが不得意な分野もあります。が、絶対量でも、放送される時間帯などでも明らかな差異があるのは認めるべきでしょう。そしてこれらは、民放ではやはり実現できないということも、多くの人は素直に感じていることです。[1]

たしかに、NHKのような有料テレビで放送されているような番組を、民放の無料テレビで放送することはできません。しかし、だからと言って、なぜNHKを民営化するべきではないという結論が出てくるのでしょうか。もしも、民間では有料テレビが実現できないのであれば、この主張は理解できますが、実際には、有料の衛星テレビ放送が、純粋な民間営利企業によって行われています。

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渋谷区神南にあるNHK放送センター[2]

私は、昔、スカパーのヒストリーチャンネルやディスカバリーチャンネルを見ていました。これらの放送局は、月額たったの525円で、NHKの教養番組と変わらない質のドキュメンタリーを放送しています。NHKを民営化することができるかどうかを論じるのであれば、国営有料放送を、民間無料放送と比べるのではなくて、民間有料放送と比べるべきです。

私は、NHKラジオ第一放送だけを国営にして、そこで災害情報(テレビは災害時に弱いので、ラジオのほうがよい)や国会中継(ウェブカメラを設置して、ネットで見ることができれば、それで十分かもしれない)や政府広報など、政府ならではの番組を放送し、それ以外はすべてチャンネルごとに分割民営化するべきだと思っています。もちろん、受信料の強制徴収なども廃止するべきです。

2. 追記(1)公共性という幻想

コメントに反論があるようなので、それに対して答えます[3]

繰り返しますが、NHKは「公共放送」であって、「有料放送」ではありません。どう違うかといえば、「有料放送」は、どこまでいってもお金を払う人のためのもの、公共放送とは、公共のためのものなのです。[4]

NHKも、受信料を払わない人には冷たいです。

NHKは12日、公開番組の観覧募集を受信料負担者に限定する優遇策を導入すると発表した。歌謡番組を中心に来年3月までに1本、2006年度に10本程度の番組で導入し、受信料の不払い増加の抑制に結びつける。視聴者の反応をみながら、07年度以降、さらに導入番組を増やすかどうかを今後検討する。[5]

この記事から判断すると、テレビを所有していないなど、正当な理由があって払っていない人も、排除するようです。

実際、NHKは福祉情報番組や教育番組に非常に時間を割いています。ごく小数の人しか見なくても、それがお金を持たない、あるいは払えない人であっても、「公共」のために必要であると考えれられるものを放送しています。実際、NHKには受信料を免除する制度もあるわけです。[6]

低所得者のための受信料免除など、社会福祉的な役割を、民間の営利企業では果たせないと言いたいのでしょうか。そう主張する前に、国家でなければ、社会福祉の機能を果たすことができないのかどうかを考えてください。私は、民間の保険会社が、社会福祉の機能を代替することができると考えています。詳しくは、「社会福祉は必要か」をご覧ください。

戦前の「滅私奉公」の精神が国家を滅ぼし、戦後の利己主義が日本に繁栄をもたらしました。公共の利益を追求すると、公共の利益が損なわれます。公共性を否定することこそが、公共性の肯定になるのです。

3. 追記(2)NHK擁護派との泥沼論争

論争の続きです。

学習塾ではなく勉強室にすればいい、といって、学習塾の不要論を唱えるのと同じ理屈で、公共放送は不要であると言おうと、あまり説得力はありません。[7]

学習塾は公共の教育機関ですか。喩えとして説得力がありません。

貴方が「こうすればいい」という構想を持つのは立派ですが、かつて「共産主義」という構想が「実証段階」で見事に立ち行かなくなったように、客観的な事実を無視した構想がたどる運命は決まっています。[8]

あなたの主張のほうがよっぽど共産主義に近いと思います。ちなみに、GHQのうち、アメリカは民間放送だけで良いと主張したのに対して、国営放送の必要性を説いたのはソ連で、戦後NHKが公共放送として存立できたのは、もっぱらソ連の共産主義のおかげといってよいでしょう。

自分としては、ディスカバリーチャンネルなどを「NHKの教養番組と変わらない質」ということにはまったく賛同いたしかねます。[9]

例えば、NHKの「その時歴史が動いた」とか、明らかに大衆迎合的な低レベル番組だし、あれなら、ヒストリー・チャンネルのいくつかの良心的な番組のほうがましだと思います。この他、クイズ番組とか、NHKの低レベルな教養番組は枚挙に暇がありません。

貴方の考えが正しければ、すでに福祉、教育といった公共性の高い番組が、相当量のコンテンツとして存在し、必要なところに供給されていなければならないのですが、それがNHK以外には実在していないというのが私の見解です。違うというのでしたら、客観的な根拠を提示してください。[10]

スカパーには、福祉に関しては、「医療福祉チャンネル774」があるし、NHK的な語学番組としては「GLC 24時間英会話チャンネル」とかあるし、大学あるいは大学院レベルの教育番組としては、「放送大学CSテレビ」とかがあります。もしも、大学が営利企業になれば、放送大学が今無料でやっているような講義を、一般向けに有料で衛星放送やネット放送でやるようになるでしょう。

戦後、日本経済を成長させてきたのは、技術者や経営者たちの、自己犠牲的とも言える努力の結果であり、これは十分「公共心」といってよいもので、「利己主義」とはとんでもない見解です。そう思うのであれば、なぜ日本ではビルゲイツのような大金持ちが出てこなかったのか、それを客観的に論じてください。[11]

「プロジェクトX」の見過ぎですね。日本人は、戦前は国のために、戦後は会社のために働きました。そして今では、自分のために働いています。個人レベルでの大金持ちも現れ始めています。個人の自立と選択の自由の拡大は、文明の成熟を測る物差しです。

4. 追記(3)放送への市場原理の導入

論争の続きです。

あなたも、リンク先でおっしゃるように公共的なことに関してはだれかが費用負担をしなければいけないことは認めておいでですね。そんな中で、あなたは社会保障制度に変わり、保険の加入を義務付ければよいといわれる。では、公共放送をどうするかといえば、同じように考えれば公共的なコンテンツを提供するところと、契約を交わすことを義務付けますか。受信料制度そのものですね。[12]

地上波テレビは、社会保障とは異なって、生きていく上で必須ではないから、義務化する必要はないのですが、もしも、私の社会保障制度の改革案と同じことをNHKに当てはめるなら、NHKは、番組制作には一切関与せずに、放送サービスだけを提供し、放送枠をオークションで番組制作会社に売却し、視聴者は、好みの番組と個別的に契約を結んで、金を払うということになります。これなら、今よりも、市場原理が機能します。もっとも、地上波テレビは、物理的にはまだ参入の余地があるようだから、チャンネルそのものを増やすことで、選択肢を増やすこともできます。

視聴料は月額2100円ですね。法人は免除どころか、5250円に値上げですね。内容も、NHKの福祉情報番組や健康番組とは、対象が違うようですし。

これで、私の言うところの「相当量のコンテンツとして存在し、必要なところに供給されていなければならない」ということに答えているとお思いでしょうか。こんな番組を、腰痛に悩むおじいちゃんおばぁちゃんが見ることが現実として出来るのですか?

そうお考えだというなら仕方ありませんが、仮にNHKがなくなったときに、これまでNHKから得られた情報がどれほど制限されてくるのか、必要とする人たちにどれほどの負担が求められるのか、逆にはっきりするというものです。[13]

この番組の料金がなぜこんなに高いか、理由がわかりますか。もしも、視聴者の数が、もっと多ければ、料金を安くすることができけれども、NHKが客を奪っているから、それができないのです。もしも、あなたが仮定するように、NHKがなくなり、この番組が、今のNHKと同様に、地上波で見ることができるなら、もっと視聴者が増えるでしょうし、そうなれば料金も下がり、さらに一般向けの番組も作り、それがさらに視聴者を増加させるという好循環を生みます。

利己主義と経済成長が相反するものだということを示す材料として、日本の繁栄を築いた「高度成長期」には不思議と「個人レベルの金持ち」はあまり現れず、日本が低成長、マイナス成長に陥って以降、「個人レベルの金持ち」がうじゃうじゃ出てきたことを挙げればよいでしょうか。[14]

あなたは、高度成長期に成功した方法が今でも有効と考えているのでしょうか。日本が貧しかったころ、画一的商品を大量生産するという社会主義的生産様式が有効でした。しかし、豊かになると、人々は、必要最小限以上の商品を求めるようになります。消費者の選択の自由と商品の多様化が必要になってきます。この意味で、NHKの今のやり方は歴史的使命を既に終えたと言えます。

日本が現在経済的に停滞している原因の一つは、過去の成功神話に固執し、社会主義的な制度の改革を怠っているところにあります。民間企業では、改革は進んでいるものの、公共セクターや規制に守られた保護産業は、旧態依然たる状態で、これが日本経済の足を引っ張っています。今日本に必要なことは、開発独裁体制から脱却し、可能な限り、市場原理を導入することです。

消費サイドのセグメント化に対応して、生産サイドの利害単位も分割するべきでしょう。自国のため→自社のため→自分のためというように、利己主義の「己」の範囲を狭めなければなりません。

利他主義は、道徳的理想であって、現実ではありません。理想だけで社会制度を作ると失敗します。利己主義という現実を否定するのではなくて、むしろそれをうまく利用して公共の利益に結びつけるのが、市場原理です。

5. 参照情報

関連著作
注釈一覧
  1. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  2. Rs1421. “NHK放送センター、東京都渋谷区神南." Licensed under CC-BY-SA.
  3. その後『はーふ・しりあす』側にあったコメントは削除されたようです。
  4. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  5. NHK、番組観覧募集を受信料負担者に限定の優遇策" NIKKEI NET. 2005/12/12.
  6. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  7. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  8. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  9. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  10. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  11. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  12. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  13. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.
  14. flight009. “NHKは「公共放送」なんです”『はーふ・しりあす』2005-12-11 00:17.