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砂漠化の原因と対策

2005年9月8日

現在、地球では、毎年600万ヘクタールもの土地が沙漠になっているという。地球の沙漠化の根本的な原因は何か。沙漠化を阻止するにはどうすればよいのか。赤木祥彦が『沙漠化とその対策―乾燥地帯の環境問題』で挙げている諸原因を整理しながら、考えよう。

Photo by Fernando Paredes Murillo on Unsplash

1. 沙漠化の原因は何か

赤木は、沙漠化の原因として、直接土地に働きかえる誘因と、その誘引に圧力をかける素因を区別し、誘因として、

  1. 過伐採
  2. 過放牧
  3. 過耕作
  4. 表層細粒物の移動
  5. 塩害

の五つを挙げ、素因として

  1. 干ばつ
  2. 人口過剰
  3. 経済・政治政策の失敗

の三つを挙げている。

赤木がやるように、雑多な原因を列挙しても沙漠化の本質はつかめない。各事象がどのような因果関係でつながっているのかを把握しなければならない。そのためにも、根本的原因と副次的原因の区別が必要である。

2. 沙漠化の副次的原因

2.1. 干ばつ

まず、赤木が素因の一つとして挙げている干ばつは、本当に根本的な原因なのかを疑わなければならない。干ばつが起きるから沙漠化が起きるというよりも、沙漠化が起きるから干ばつが起きるのではないか。

植物は、地中の水分を空中に蒸散する。そして、空中に放出された水蒸気が、雨となって、地面に戻ってくる。河川・湖沼・海洋の近くでは、直接水面から水が蒸発するが、これらから遠く離れた内陸部では、植物が、水の循環の主役である。したがって、植物が消滅する沙漠化が干ばつの原因になっていると考えることができる。

2.2. 表層細粒物の移動

次に、表層細粒物の移動であるが、これは、赤木の説明によると、水食や風食による土壌流出や砂丘の移動のことである。これらも、砂漠化を加速させる副次的要因であって、砂漠化の根本的な原因ではない。

水食による土壌の失亡量は、過放牧による裸地では146.2トン/ヘクタールであるが、放牧されたことのない疎林地では、0トン/ヘクタールである。ここからわかるように、植被が後退すると、水食により土壌が流出し、それによって、さらに植被が後退するという悪循環が生じる。風食についても同じことが言える。

砂丘が移動しても、それによって砂漠が無制限に拡張されることはない。植生が健全なら、移動してきた砂を有機土壌化することもできる。また、砂丘の移動は、必ずしも自然現象ではなく、家畜が同じルートを歩いて、踏み分け道を形成することで、土壌構造が破壊され、砂丘の移動が起きることもある[1]

2.3. 塩害

塩害は、沙漠化の原因というよりも、沙漠化を阻止しようとする灌漑の失敗例として知られている。

ほとんどの堆積岩は、海底堆積物が固化したものであるから、塩類が含まれているものであるが、水系に近い堆積岩では、塩類は雨水によって洗脱される。ところが、水系から遠く離れた内陸の乾燥地帯では、塩類が洗脱されることなく、盆状の基盤に残留している。

そういう乾燥地帯で、灌漑を行い、大量の水を散布すると、灌漑用水は、いったんは土壌中の塩類を溶かしながら下方へと浸透するが、やがて毛管現象により上昇し、地表面にまで来ると、水分が蒸発するので、塩類だけが残る。そして、地表面に塩類が残留すると、強い浸透圧により、植物は根から水を吸収できなくなり、枯れてしまう。これが塩害である。

3. 沙漠化の根本的原因

砂漠化の直接的原因の中で最も大きな役割を果たしているのが、過放牧(34.5%)、その次は、過伐採(29.5%)、その次は過耕作(28.1%)である[2]。過放牧がもっとも主要な原因であるのは、沙漠化直前の土地では放牧ぐらいしかできないためと考えることもできる。実際には、森林→過伐採→畑→過耕作→草原→過放牧→沙漠という経過をたどっている場合もあるだろう。

過伐採にせよ、過耕作にせよ、過放牧にせよ、その原因は、人口増加にある。そして、人口増加の原因は近代資本主義にある。因果関係をまとめると、次のような図になる。

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近代化がもたらす地球の沙漠化

赤木は、「経済・政治政策の失敗」として、社会主義的あるいは開発独裁的な政府の失敗とアメリカの沙漠化に見られる市場の失敗を挙げているが、どちらも近代資本主義的な拡大再生産によって植物から過剰に資源を奪った結果である。。

私は、資本増殖のオートポイエーシスという点で、社会主義経済と市場経済(狭義の資本主義経済)との間には違いがないと主張した。

社会主義(共産主義)と資本主義との違いは、市場経済を認めるか否かにあるのだが、語源的観点からすれば、資本主義的経済が市場原理に基づかなければならない必然性はない。近代は総じて資本主義の時代であったのであり、市場経済も社会主義経済も、特権階級が富を蕩尽して、生産力を増大させようとはしなかった前近代社会とは異なるという意味で同じ近代資本主義経済なのである。[3]

システムは、環境にエントロピーを捨てることで自らを維持している。したがって、人間システムが増大すればするほど、環境におけるエントロピーが増大し、他の生物が存続するための低エントロピー資源が少なくなる。地球の沙漠化の問題の本質もここにある。

4. 参照情報

関連著作
注釈一覧
  1. 赤木祥彦『沙漠化とその対策―乾燥地帯の環境問題』東京大学出版会 (2005/1/1). p. 155-156.
  2. UNEP Executive Director. Status of Desertification and Implementation of the United Nations Plan of Action to Combat Desertification Nairobi : UNEP, 15 Oct. 1991. p.25.
  3. 永井俊哉「資本とは何か」2001年5月5日.