健康食品は健康のために本当に必要なのか
健康食品がブームになるのは、自然食材は、人工的に合成された医薬品とは異なり、副作用がなく、安全で体に良いと一般に信じられているからである。しかし、自然だから安全で、副作用がないとは一概には言えない。薬のような効果を期待して特定の健康食品を偏食するよりも、通常の食材を食べることで、様々な栄養素の必要量を摂取する方が安全だし、経済的でもある。《健康食品を食べること》よりも《食品を食べることで健康になること》を考えた方がよい。[1]

世の中には「健康に良い」あるいは「××に効能がある」と宣伝されている食品がたくさんあるが、その宣伝の中には科学的なエビデンス(証拠・根拠)に基づかないものもある。権威ある科学雑誌に掲載されているからと言って、その論文に書いてあることが正しいとは限らない(実際、新しい研究によって訂正されることがある)が、利害関係にない第三者による統計学的に有意性が示された実験あるいは調査の結果は、どの食品をどれだけ摂取するかを判断する上で重要な手掛かりになる(少なくとも業者の宣伝や体験談よりも)。
このトピックでは、所謂「健康食品」にどのレベルのエビデンスがあるかを確認する。但し、ここで謂う所の「健康食品」は、保健機能食品を含めた幅広い意味を持ち、「健康に良い」あるいは「××に効能がある」と信じられている、医薬品以外のあらゆる食品やサプリメントを含むものとする。なお、私は医師でも栄養士でもないので、個々人に対するアドバイスはしません。本トピックはあくまでも一般的な情報に関する議論であり、食事療法の実践に関しては医師や栄養士と相談してください。
健康食品がブームになるのは、自然食材は、人工的に合成された医薬品とは異なり、副作用がなく、安全で体に良いと一般に信じられているからである。しかし、自然だから安全で、副作用がないとは一概には言えない。
1988年末から1989年6月にかけて昭和電工が惹き起こしたトリプトファン事件は、そのことを物語っている。この事件では、L-トリプトファンを含む健康食品を摂取した多くの人が、好酸球増加筋肉痛症候群となり、38名が死亡した。
L-トリプトファンは必須アミノ酸(体内で合成できず、外部から摂取しなければならないアミノ酸)の一つで、タンパク質を含むたいていの天然食材に含まれている。当初原因はL-トリプトファンではなく、製造工程で生まれる不純物と考えれていた。こうした思い込み自体が天然素材に対する信仰の表れである。
その後、昭和電工とは異なる製造法で作られたL-トリプトファンを含む健康食品が好酸球増加筋肉痛症候群を惹き起こしたことから、現在では、原因は不純物ではなく、L-トリプトファンの過剰摂取にあると考えられている[2]。
要するに、有用・必須の天然の栄養素でも、過剰に摂取すれば毒になりうるということである。自然信者は、特定の自然栄養素だけを集中的にとることが自然ではないということを反省するべきだ。この点、医師が適量を処方する医薬品の方がまだ安全である。開業医が薬価差益を求めて必要以上に出すということもありうるが、薬漬け医療が心配なら、勤務医に出してもらえばよい。彼らの報酬は定額なので、必要以上に処方するということはない。
健康食品がかえって健康を損なうという例は、L-トリプトファン以外にもいくらでもある。詳しくは『健康食品・中毒百科』などを参照されたい。この本には、健康食品を食べて健康被害が生じたたくさんのケースが紹介されている。
医薬品とは異なり、健康食品には、副作用がないというのも正しくはない。三七人参、ローヤルゼリー、コリアンダー、ウコン、エキナセア、コロハ、ザクロ、スピルリナ、ゼラチン、プロポリスなど、健康食品がアレルギーを惹き起こす例が報告されている[3]。
もしも健康食品の特定成分に本当に著しい効能があるなら、その成分が抽出されて医薬品になっているはずである。健康食品には医療保険が適用されないことをも考えあわせるなら、病気になった時は、健康食品には頼らずに、病院に行って薬を処方してもらった方が安全だし、経済的である。
もっともだからと言って、日常的な食事療法が無意味ということではない。病院は病気の治療をしてくれるが、予防まで完全に面倒を見てくれることはない。所謂生活習慣病のリスク要因を取り除く上で、食生活の改善は不可欠である。ただその場合でも、薬のような効果を期待して特定の健康食品を偏食するよりも、通常の食材を食べることで、様々な栄養素の必要量を摂取する方が安全だし、経済的でもある。
考えてみると、「健康食品」という呼称は、まるで他の食品は健康には役立たないかのようであるから、不適切である。《健康食品を食べること》よりも《食品を食べることで健康になること》を考えた方がよい。
人間にとって必須のオメガ3脂肪酸(Omega-3 fatty acid)は、α-リノレン酸(ALA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)で、ω-3位に炭素の二重結合を持つことから、そう呼ばれる。n-3脂肪酸(n−3 fatty acid)ともいう。α-リノレン酸は、エゴマ、アマ、アブラナ、ダイズなど種油に含まれる。ドコサヘキサエン酸は、まぐろ、かつお、あじ、さば、いわし、ぶりなどの所謂「背の青い魚」に含まれる。エイコサペンタエン酸は、ニシン、サバ、サケ、イワシなどの魚油に加え、えごま、亜麻仁、くるみなどにも含まれる。
オメガ3脂肪酸が栄養素として注目されるきっかけとなったのは、デンマーク領グリーンランドのイヌイット(エスキモー)人たちとデンマーク人とを比較した1960年代の疫学調査においてであった。イヌイットは主にアザラシや鯨肉や魚肉を食べ、ほとんど野菜を食べないにもかかわらず、デンマーク人と比べて血中脂質が低く、循環器系疾患の罹患率も低い理由がどこにあるのかを調査する過程で、彼らの主食に多く含まれていたエイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸に注目が集まった。今日、オメガ3脂肪酸は「血液をサラサラにする」ことで循環器系疾患の予防や改善によいと広く信じられている。
しかし、他方で、オメガ3脂肪酸に関するこれまでの48の無作為化比較試験(RCT)と41のコホート試験のメタアナリシスでは、オメガ3脂肪酸が、総死亡率、心筋梗塞や狭心症など心臓疾患の発生率を低減するという効果は認められなかった。
Of 15,159 titles and abstracts assessed, 48 RCTs (36,913 participants) and 41 cohort studies were analysed. The trial results were inconsistent. The pooled estimate showed no strong evidence of reduced risk of total mortality (relative risk 0.87, 95% confidence interval 0.73 to 1.03) or combined cardiovascular events (0.95, 0.82 to 1.12) in participants taking additional omega 3 fats. The few studies at low risk of bias were more consistent, but they showed no effect of omega 3 on total mortality (0.98, 0.70 to 1.36) or cardiovascular events (1.09, 0.87 to 1.37). When data from the subgroup of studies of long chain omega 3 fats were analysed separately, total mortality (0.86, 0.70 to 1.04; 138 events) and cardiovascular events (0.93, 0.79 to 1.11) were not clearly reduced.
このメタアナリシスには反論もある。以下の論文は、メタアナリシスにおける試験結果の扱いの不備(異常値の採用など)を指摘し、赤血球中におけるオメガ3脂肪酸のパーセンテージをオメガ3指数として、心臓疾患のリスクファクタとして有効であることを論じている。すなわち、この指数が8%以上なら、4%以下と比べて心臓疾患による突然死のリスクが90%も減るというのである。
Cardiac societies recommend the intake of 1 g/day of the two omega-3 fatty acids eicosapentaenoic acid (EPA) and docosahexaenoic acid (DHA) for cardiovascular disease prevention, treatment after a myocardial infarction, prevention of sudden death, and secondary prevention of cardiovascular disease. These recommendations are based on a body of scientific evidence that encompasses literally thousands of publications. Of four large scale intervention studies three also support the recommendations of these cardiac societies. One methodologically questionable study with a negative result led a Cochrane meta-analysis to a null conclusion. This null conclusion, however, has not swayed the recommendations of the cardiac societies mentioned, and has been refuted with good reason by scientific societies.
Based on the scientific evidence just mentioned, we propose a new risk factor to be considered for sudden cardiac death, the omega-3 index. It is measured in red blood cells, and is expressed as a percentage of EPA + DHA of total fatty acids. An omega-3 index of >8% is associated with 90% less risk for sudden cardiac death, as compared to an omega-3 index of <4%. The omega-3 index as a risk factor for sudden cardiac death has striking similarities to LDL as a risk factor for coronary artery disease. Moreover, the omega-3 index reflects the omega-3 fatty acid status of a given individual (analogous to HbA1c reflecting glucose homeostasis). The omega-3 index can therefore be used as a goal for treatment with EPA and DHA. As is the case now for LDL, in the future, the cardiac societies might very well recommend treatment with EPA and DHA to become goal oriented (e.g. an omega-3 index>8%).
とりあえず、オメガ3脂肪酸が血液をサラサラにするという説は信じてよいようだ。日本では、エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を関与成分とする食品が、中性脂肪を低下させる特定保健用食品として認められている。しかし、これらは、トクホから摂取しなくても、すでに紹介した食材から得られる。
血圧を下げることが目的なら、数ある「背の青い魚」の内、いわしを食べるとよい。いわしは、エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸を含む以外に、サーデンペプチドとカルシウムを多く含むからだ。焼いて食べてもよいのだが、焼くと重要な栄養素が失われるので、煮た方がよい。煮るのが面倒なら、骨ごと煮込んだ缶詰で食べるという方法もある。
サーデンペプチドの主成分バリルチロシンは、アンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡに変換するアンジオテンシンⅠ変換酵素(ACE)を阻害することで、血圧を降下させる[4]。このため、バリルチロシンを含む食品が特定保健用食品として認可されている。
イワシには、可食部100g中に70mgのカルシウムが含まれている。また、圧力鍋で煮込むと骨まで柔らかくなるので、骨ごと食べることができる。カルシウム摂取が不足すると、副甲状腺ホルモンが分泌され、骨からカルシウムが溶け出し、血液中のカルシウム濃度を正常に戻そうとする。同時に、副甲状腺ホルモンには、カルシウムを細胞内に取り込む働きもあるため、血管の筋肉である平滑筋にカルシウムが入り、筋肉を収縮させ、高血圧を帰結する。 また血中に溶けだしたカルシウムが血管へ沈着し、石灰化することで、動脈硬化を引き起こす。実際、食事からのカルシウム摂取量が平均513 mg/日の群と比較して、820 mg/日の群では心筋梗塞の発症リスクが低かったとするコホート試験の結果がある[5]。
カルシウムならサプリメントで摂取した方が手っ取り早いと思うかもしれない。しかし、サプリで過剰に摂取すると、健康を損なうという事例が多数報告されている。これに対して通常の食材では、満腹という限界によって過剰摂取が制限される。また、サプリに栄養補給を依存しようとすると、まだその働きがよくわかっていない有用な栄養素が不足するリスクがある。こうした理由から、サプリよりも通常の食材で栄養を補う方がリスクが小さいと言える。
ライオン株式会社が発売している特定保健用食品の飲料『トマト酢生活』の関与成分は酢酸で、「本品は食酢の主成分である酢酸を含んでおり、血圧が高めの方に適した食品です」という保健機能が表示されている。食酢を配合した飲料に降圧効果があるとする報告があり[梶本修身, 大島芳文, 多山賢二. “食酢配合飲料の正常高値血圧者および軽症高血圧者に対する降圧効果.” 健康・栄養食品研究 6, no. 1 (2003): 51–68.]、このため、酢酸を関与成分とする食品が特定保健用食品として認可されている。酢酸が細胞に取り込まれると、血管拡張作用を有するアデノシンにATPが代謝されるからと考えられている。しかし、血圧を下げるのは、食酢だけではない。トマト由来のGABA、グルタミン酸、カリウムが降圧効果を持っている。
GABA とは、γ-アミノ酪酸(Gamma-AminoButyric Acid)のことである。GABA は、抑制性神経伝達物質で、交感神経抑制作用、抗利尿ホルモン分泌抑制作用があり、この作用が血圧を下げると考えられている。GABA を含む発酵乳製品の摂取が、軽症高血圧/正常高値血圧の患者の拡張期/収縮期血圧を低下させたという報告がある[6]。このため、GABA を含む食品は特定保健用食品として許可されている。トマトには、100g につき 62.6mg の GABA が含まれているが、じゃこには、750mg も含まれているので、GABA だけが目当てなら、ちりめんじゃこ(シラスを乾燥させたもので、鰯の稚魚という点では同じ)を食べた方が多く取れる。
食事による蛋白質の総摂取量に占めるグルタミン酸摂取が4.72%高いと、平均収縮期血圧が1.5~3ポイント、平均拡張期血圧が1~1.6ポイント低いことが示されている[7]。野菜の中で最もグルタミン酸を多く含むのはトマトだが、昆布はトマトにくらべ16倍ほど多くグルタミン酸を含む。だから、昆布を食べた方がグルタミン酸をたくさん取ることができる。昆布が苦手なら、とろろ昆布(昆布を酢に漬けて柔らかくして、削ったもの)を食べるとよい。
カリウム摂取量が多い成人の人ほど、収縮期、拡張期血圧が低いということが、システマティックレビューとメタ解析によってわかっている[8]。このことは、血圧を下げるには、塩分を控えなければならないことと同じく常識に属することである。ナトリウム濃度が上昇すると、ナトリウム濃度を下げようと水が入って血液量が増えるので、血管内の圧力が上がり、血圧が高くなる。ナトリウムとカリウムは体の中で拮抗的に働いているので、これを防ぐには、ナトリウムの摂取量を減らすと同時に、カリウムの摂取量を増やせばよい。トマトには、100g あたり 210mg のカリウムが含まれているが、昆布には、5300mg も含まれている。とろろ昆布でも、4800mg である。カリウムに関しても、トマトより昆布である。
トマト酢生活は、30瓶で5040円もするらしい。こんな高額な商品を買わなくても、食事に酢とトマトを取り入れれば、同じ効果が得られる。酢に関しては、魚にしょうゆをかける代わりに、酢をかけて食べればよい。しょうゆは塩分が多いので、しょうゆや塩の代わりに酢を調味料として使えば一石二鳥である。トマトに関しては、生のまま食べるのが苦手(ないし面倒)という人は、トマトジュースやトマトが大量に入った野菜ジュースを飲むことで必要な成分を摂取することができる。またトマトの降圧成分である GABA、グルタミン酸、カリウムをたくさん取りたいなら、ちりめんじゃこや昆布を食べるという方法がある。
健康志向の高まりで機能性ヨーグルトがよく売れている。特に今のように寒い季節になると、いくつかのテレビ番組で「NK活性増強効果があり、インフルエンザ罹患リスクを低減する」と紹介された明治ヨーグルトの R-1 がよく売れる。しかし、本当にこのヨーグルトには、1本126円(税別希望小売価格)もの価値があるのだろうか。
R-1 という商品名は、この商品に使われている乳酸菌、Lactobacillus bulgaricus OLL1073R-1 に由来する。Lactobacillus bulgaricus OLL1073R-1 産生のEPS (Exopolysaccharide 菌体外に産生する多糖体)が、人に対して免疫賦活作用があるとするエビデンスとしては、以下の二つがある。
- Makino, S., S. Ikegami, H. Kano, T. Sashihara, H. Sugano, H. Horiuchi, T. Saito, and M. Oda. “Immunomodulatory Effects of Polysaccharides Produced by Lactobacillus Delbrueckii Ssp. Bulgaricus OLL1073R-1.” Journal of Dairy Science 89, no. 8 (2006): 2873–81. doi:10.3168/jds.S0022-0302(06)72560-7.
- Makino, Seiya, Shuji Ikegami, Akinori Kume, Hiroshi Horiuchi, Hajime Sasaki, and Naoki Orii. “Reducing the Risk of Infection in the Elderly by Dietary Intake of Yoghurt Fermented with Lactobacillus Delbrueckii Ssp. Bulgaricus OLL1073R-1.” British Journal of Nutrition 104, no. 07 (2010): 998–1006. doi:10.1017/S000711451000173X.
このうち医学的に重要なのは、後者の方だが、この佐賀県有田町と山形県舟形町で行ったアンケート調査の結果は、エビデンスとしては弱く、特定保健用食品としてすら認められていない。
R-1 ほど有名ではないが、雪印メグミルクが販売している「ナチュレ 恵」に含まれている Lactobacillus gasseri SBT2055(ガセリ菌SP株)と Bifidobacterium longum SBT2928(ビフィズス菌SP株)も、NK 細胞の活性を上昇させることで免疫を活性化させるという発表がある[9]。ガセリ菌SP株とビフィズス菌SP株は、特定保健用食品の関与成分として認められているが、この機能に対してではない。エビデンスのレベルは、R-1 よりもさらに低い。しかし、どのみち免疫性向上に関するエビデンスが不十分であるなら、R-1 よりも安い(しかも他の機能では、特定保健用食品としてその効果が認められている)徳用ヨーグルト(恵以外にもいろいろある)を買った方が、コスト・パーフォーマンスが良いのではないか。
それにもかかわらず、多くの人が今なお R-1 を買い続けるのは、テレビ番組が特集したからだろう。テレビ番組によって「××は健康に良い」と紹介されると、一斉にそれを買いに走る人が多いが、実際には、効果が無かったり、それどころか健康に有害であることすらある。2000年にテレビで健康法として紹介されて惹き起こされたシイタケ皮膚炎や、2006年にダイエット法として健康情報番組で紹介されて惹き起こされたインゲン豆中毒などがそうである。テレビ番組の制作者に特段の医学的知識があるわけではないので、番組で取り上げられたからといってそれを鵜呑みにすることなく、本当にエビデンスがあるかどうかを自分で調べた方がよい。
R-1 とともによく売れているもう一つの機能性ヨーグルトとして、明治プロビオヨーグルトLG21がある。慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌などの原因となるとされるヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori 通称ピロリ菌)を抑制作用があるとする報告がある[10]。しかし、これもエビデンスとしては弱く、LG21 は、特定保健用食品としてすら認められていない。
ピロリ菌に悩まされている人は、こういう効果が不明で割高なヨーグルトに金をかけるぐらいなら、ピロリ菌の除菌治療を受けた方がよい。2013年2月21日から、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に加えて、慢性胃炎の治療に対しても、除菌治療薬の使用が健康保険の対象となった。治療としてではなくて、予防としてなら、LG21 を飲むことにも意義があると思うかもしれないが、ブロッコリー・スプラウトを食べることでも防げるという報告もある[11]。両方ともエビデンスは弱いが、ブロッコリー・スプラウトの方が安くつきそうだ。
1. 付録:糖尿病の治療のための糖質制限について
ここでの議論は、システム論フォーラムの「糖尿病の治療のための糖質制限について」からの転載です。

糖質(白米、麺類等)を摂取すると、血糖値が急上昇する。他方で、脂肪、蛋白質を摂取しても血糖値は上昇しない。だから、糖質の摂取を制限し、そのかわりに脂肪、蛋白質を摂取することは、糖尿病の治療に有効である。
ところが、日本の医学界の主流は、糖質制限食を排斥し、あくまでカロリー制限とインシュリン注射に拘っている。
これは、製薬会社から医師に黒いカネが流れているからだ。
抗がん剤でも同じ構図がある。白血病以外のガンに、抗がん剤は一切効かない。
厚労省が実施する特定健診・特定保健指導もいかがわしいですよ。厚労省のメタボリックシンドロームの診断基準は、以下の通り。
- 腹囲:男性 85cm以上、女性 90cm以上
- 血中脂質:中性脂肪 150mg/dL以上、HDLコレステロール 40mg/dL未満のいずれかまたは両方
- 血圧:最高血圧130mmHg以上、最低血圧85mmHg以上のいずれかまたは両方
- 空腹時血糖値:110mg/dL以上
1と2-4のうち2つ以上の項目があてはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。
しかし、身長とは無関係に腹囲だけでメタボかどうかを判定することは海外では行われておらず、また、海外で高血圧症と診断される「最高(収縮期)血圧140mmHg以上/最低(拡張期)血圧90mmHg以上」という基準、および糖尿病と診断される「空腹時血糖値126mg/dL以上」という基準より低めの数値がメタボリックシンドロームの診断基準となっています。このような診断基準では、メタボでない人がメタボと診断されます。以下のコラムにあるように、特定健診・特定保健指導の目的は、生活習慣病の予防ではなくて、厚労省の利権を作ることにあるようです。
特定健康診査―メタボリックシンドローム― (date) 2008年9月 (media) クリニック西川 さんが書きました:
厚労省が採用したメタボリックシンドロームの判定基準は日本肥満学会が中心になって日本内科学会が2005年に策定したものですが、この基準は国際的にも認められていないし、国内でも研究者の間で考えが異なっていて、甚だ科学的な根拠に乏しい基準値なのです。
男の基準値が女の値より小さいのはこの日本の診断基準だけです。WHOの診断基準、国際糖尿病連合(IDF)の診断基準、アメリカの脂質研究者グループ(NCEP-ARPⅢ)が作成した診断基準などなどいずれを見ても、男性の腹囲基準値のほうが女性のそれよりも大きい値になっています。
素人が考えたって、男性が85cmで女性が90cmという基準が現実離れをしていることはすぐに分かるにもかかわらず、国は国内外から批判の多いこの基準にこだわり続けました。
この健康診査制度の具体的な方策を検討するための審議会は「標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会」と称するもので、座長は久道茂という東北大学の公衆衛生の教授を務めた医学者です。実際に患者さんたちの診療経験の乏しい基礎医学者です。
また、この検討会の委員には男85cm、女90cmという基準を作った張本人の現住友病院長の松澤祐次という医師も当然名前を連ねていました。彼が診断基準作成に当たって集めた標本数はきわめて少なく、女性にいたってはたった194名のデータでしかありません。検討会では他委員からの異論も少なくなかったようですが、久道と松澤の二人で押し切ってしまったようです。
政府はあらゆる分野の法、政令、省令などを策定する過程で、有識者による検討会とか審議会とかを招集します。第三者による学問的、客観的な検討を重ねた結論であるという大義名分を作るための手段であり、結論は最初から役人が作成した原論に落ち着くようになっています。
やらせ問題が表面化した、国民を対象として行われる「ヒアリング」と同様に、国民からの反論や不満をかわすためのガス抜き装置です。召集される委員の選定は役人に委ねられていますから、行政とのパイプが太くて、行政の言うことを素直に聴いてくれる御用達学者が集められることは火を見るより明らかです。
特定健診施行に関する幾つかの検討会もこれまでの例にもれず、厚労省の原案通りの結論になりました。
[…]
相次ぐ不祥事の発覚で10月に解体される社会保険庁は「日本年金機構」と「全国健康保険協会」という二つの法人に引き継がれますが、このうち全国健康保険協会が政府管掌保険を管理することになり、政府管掌健康保険組合のメタボ健診はここが管理することになります。
この協会は現在の社保庁職員が約1,300人雇用される予定です。要するにこの時期にごり押しして実施した特定健康診査・特定保健指導は、厚労省や旧社保庁の新しい天下り先を確保して、そこへ利権を流入させる仕組みの一環であるとも考えられるのです。
はじめまして。糖尿病の話しに対する意見を聞きたいのですが、メタボの話しになるのはなぜでしょうか??他にもこういう実態があるよと言うような感じですか?
もともとは糖尿病患者のための食事療法だったのが、ダイエット方法として喧伝されるようになったのは、糖尿病患者よりもメタボの人の方が圧倒的に数が多く、後者をターゲットにした方が商業的に成功するからです。なお、糖質制限がダイエットとして有効なのは、男性に限られる。糖質制限を行うと、男性の体は、内臓脂肪をグルコースに変えて血糖値を上げようとするので、内臓脂肪が減るが、女性の場合はエストロゲンがあるために、血糖値を上げるために皮下脂肪が使われず、代わりに筋肉や、皮下脂肪以外の脂肪(バストなど)などが使われてしまう。
糖質制限には賛否両論があり、反対派は、糖質を減らしすぎは、筋力低下、骨粗鬆症、動脈硬化を引き起こすと警告しています[12]。もちろん、これは減らしすぎた場合(特に女性や高齢者の場合)の話であって、糖質の過剰摂取を抑制することはメタボな中年男性にとっても必要なことです。
但し、その場合でも、代わりに摂取するたんぱく質の種類には注意する必要があります。ハーバード大学のファングらによるコホート研究では、動物性タンパクの摂取量が多い低炭水化物食のグループの死亡危険率(hazard ratio)が 1.23 であったのに対して、植物性タンパクの摂取量が多い低炭水化物食のグループのそれは、0.80(心臓疾患に限定すると 0.77)であったとのことです[Fung, Teresa T., Rob M. van Dam, Susan E. Hankinson, Meir Stampfer, Walter C. Willett, and Frank B. Hu. “Low-Carbohydrate Diets and All-Cause and Cause-Specific Mortality: Two Cohort Studies.” Annals of Internal Medicine] 153, no. 5 (September 7, 2010): 289–98. doi:10.7326/0003-4819-153-5-201009070-00003.。
男性の2型糖尿病患者に対しても、似たような結果が出ています[De Koning, Lawrence, Teresa T. Fung, Xiaomei Liao, Stephanie E. Chiuve, Eric B. Rimm, Walter C. Willett, Donna Spiegelman, and Frank B. Hu. “Low-Carbohydrate Diet Scores and Risk of Type 2 Diabetes in Men.” The American Journal of Clinical Nutrition] 93, no. 4 (April 2011): 844–50. doi:10.3945/ajcn.110.004333.。ですから、糖質制限をするにしても、動物の肉ばかり食べていないで、納豆や豆腐など植物性のたんぱく質を多くとることを心掛けなければなりません。
植物性のたんぱく質をたくさん摂ればいいということではありません。たんぱく質の過剰摂取は腎臓に負担かかりますし、食事は偏りなく摂取するのが一番です。糖質を完全に制限するのではなく、量を減らしたりするとか。
「制限」とはある枠の中におさえるという意味で、例えば、「医者に飲酒を制限される」は「医者に飲酒を禁止される」とは異なって、ゼロにするということを含意していません。私が必要と判断した糖質制限とは、既に書いたとおり「糖質の過剰摂取を抑制すること」という意味でしかありません。
なお、動物性たんぱく質を植物性タンパク質で完全に置き換えることはできないので、これもバランスが重要ということになりますが、現代の私たちの食生活では、前者が後者よりも多いので、意識的に前者を減らし、後者を増やすことを心掛けた方が、バランスが良くなります。
糖質制限食の批判者に糖尿病の専門医が多いことから、糖尿病の専門医は、自分たちの仕事がなくなることを恐れて糖質制限食批判をしているのではないのかという見方があるが、日本の農政が優先的に保護してきた米農家を守るためという見方もあるようだ。たしかに、『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』といった本が売れて、それを実践する人が増えれば、日本の米農家は大きな打撃を受けるだろう。
糖質制限が普及すると困る人について調べていたらすごいことになってきました|低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクター さんが書きました:
日本でもアメリカと同様に1980年過ぎから「脂質摂取を減らして糖質摂取を増やす」という行政の音頭取りが始まっています。
(そしてそれは下がってきたコメの国内消費を増やしたいという、国民の健康とは関係のなさそうな、農林省官僚による主導が大きいのです。)
医学的エビデンスではなくて、官僚のみなさんの机の上で決まった栄養指導が糖質60%の食事指導なのですね。
福岡県福岡市の久山町で、糖質を60%にする栄養を指導を行った結果、男性糖尿病有病率は23.6%となり、同じ年の日本人全体の男性糖尿病有病率の15.6%に比べて、格段に高くなった(女性でも程度の差はあれ、全国平均より多い)。日本糖尿病学会が推奨する糖質60%のガイドラインは、消費者の健康のために設定されたものではないようだ。
2. 参照情報
- ↑この記事は、システム論フォーラムの「健康食品は健康のために本当に必要なのか」からの転載です。
- ↑Smith, M. J., and R. H. Garrett. “A Heretofore Undisclosed Crux of Eosinophilia-Myalgia Syndrome: Compromised Histamine Degradation.” Inflammation Research: Official Journal of the European Histamine Research Society 54, no. 11 (November 2005). 435–50. doi:10.1007/s00011-005-1380-7.
- ↑健康食品の正しい利用法. 厚生労働省. p.7
- ↑Kawasaki, T, E Seki, K Osajima, M Yoshida, K Asada, T Matsui, and Y Osajima. “Antihypertensive Effect of Valyl-Tyrosine, a Short Chain Peptide Derived from Sardine Muscle Hydrolyzate, on Mild Hypertensive Subjects.” Journal of Human Hypertension 14, no. 8 (August 1, 2000). 519–23. doi:10.1038/sj.jhh.1001065.
- ↑Li, Kuanrong, Rudolf Kaaks, Jakob Linseisen, and Sabine Rohrmann. “Associations of Dietary Calcium Intake and Calcium Supplementation with Myocardial Infarction and Stroke Risk and Overall Cardiovascular Mortality in the Heidelberg Cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition Study (EPIC-Heidelberg).” Heart (British Cardiac Society) 98, no. 12 (June 2012). 920–25. doi:10.1136/heartjnl-2011-301345.
- ↑Inoue, K., T. Shirai, H. Ochiai, M. Kasao, K. Hayakawa, M. Kimura, and H. Sansawa. “Blood-Pressure-Lowering Effect of a Novel Fermented Milk Containing Γ-Aminobutyric Acid (GABA) in Mild Hypertensives.” European Journal of Clinical Nutrition 57, no. 3 (2003). 490–95. doi:10.1038/sj.ejcn.1601555.
- ↑Stamler, Jeremiah, Ian J. Brown, Martha L. Daviglus, Queenie Chan, Hugo Kesteloot, Hirotsugu Ueshima, Liancheng Zhao, and Paul Elliott. “Glutamic Acid, the Main Dietary Amino Acid, and Blood Pressure” Circulation 120, no. 3 (July 21, 2009). 221–28. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.108.839241.
- ↑Aburto, N. J., S. Hanson, H. Gutierrez, L. Hooper, P. Elliott, and F. P. Cappuccio. “Effect of Increased Potassium Intake on Cardiovascular Risk Factors and Disease: Systematic Review and Meta-Analyses.” BMJ 346, no. apr03 3 (April 3, 2013). f1378–f1378. doi:10.1136/bmj.f1378.
- ↑2012 ISNFF Conference and Exhibition
- ↑Sakamoto, Ichiko, Muneki Igarashi, Katsunori Kimura, Atsushi Takagi, Takeshi Miwa, and Yasuhiro Koga. “Suppressive Effect of Lactobacillus Gasseri OLL 2716 (LG21) on Helicobacter Pylori Infection in Humans.” Journal of Antimicrobial Chemotherapy 47, no. 5 (May 1, 2001). 709–10. doi:10.1093/jac/47.5.709.
- ↑Galan, Mark V., Arfana A. Kishan, and Ann L. Silverman. “Oral Broccoli Sprouts for the Treatment of Helicobacter Pylori Infection: A Preliminary Report.” Digestive Diseases and Sciences 49, no. 7–8 (August 2004). 1088–90.
- ↑「専門家が警告 大ブームの「食事は炭水化物抜き」が一番危ない 糖質制限ダイエットで「寝たきり」が続出中!」現代ビジネス [講談社]. Accessed November 1, 2014.
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コメント一覧
シンギュラリティの提唱者であり、現在グーグルの技術責任者でもあるレイ・カーツワイルはアンチエイジングのために一日200錠のサプリメントを飲んでいるとか。これはさすがにやりすぎだと思うのですが、アンチエイジングのように単なる健康とは少しニュアンスの違う積極的な老化対策のような文脈の中においても、バランスのいい食事さえしていればサプリメントは不要だと考えますか?成長ホルモンなどは直接投与では副作用もありますが、サプリメントなどから分泌を促すというだけなら、一見アンチエイジングに効果的とも思えるのですが。
サプリメントは、通常の食事では得られないほど大量に特定の栄養素を摂取するために使われる物で、そうでない場合は、食物を通じて摂取する方が安全かつ経済的です。私達が食べる食物の中には、まだその機能が未知の重要な栄養素があるかもしれないので、リスク分散のために様々なものを食べることは「無知の知」という点からして賢明なことです。なお日本には、毎日300錠のサプリメントを摂取するというレイ・カーツワイルを凌ぐ強者がいます。
実はサプリメントのビタミンミネラルは飲み物のビタミンミネラルより吸収されにくい水分不足で大腸で吸収されにくい
実はサプリメントで特定の栄養素ばかりとるのはかえって危ない栄養素は独立しているのではなく古典的な栄養素のタルの考え方は間違いで全ての栄養素が不足している場合特定の栄養素ばかりとるのはかえって欠乏症の危険性が増える
眼精疲労には『キューピーコーワ アイ プラス』が特効薬です。参天製薬の目薬よりも、よく効きます。本当は、パソコンで卑猥な動画を視聴しなければよいのですが、ボクは人格障害で 友人が一人もおらず、それだけが唯一の娯楽のため、やめることができません。
漢方薬は長くのみ続けなければ効かないというお考えがありますが、そうではありません。「体質改善」に使う薬の多くはそうですが、中には直ぐに効果を示す薬もあります。
漢方治療では、体質と病気の進み具合(「証」と言います)を考慮して薬を処方します。西洋薬と同様に病名だけで使えるものもありますが、多くは「証」に合わせて投与することになります。
そのため、副作用は現れにくくなっています。また、妊娠中でも安心して使える薬もあります。
西洋医学と東洋医学にはそれぞれ長所・短所がありますが、それを踏まえて上手に使い分けていくことができます。
例えば、中国の野生黒霊芝(レイシ)を聞いたことがあるでしょうか。それでは、この破壁霊芝胞子粉というものを聞いたことがあるのですか。
破壁霊芝胞子粉とは身体への吸収をよくするため、胞子の外殻を細かく砕く「破壁」という最新の技術で作られたもので主成分の霊芝胞子は霊芝のエッセンスと言われ、霊芝が成熟するころ菌傘に現れる褐色の粉末のことです。
また、単独の黒霊芝(レイシ)あるいは破壁霊芝胞子粉は薬品として治療することは少ないです。通常は食べ物として療養保健に用いられることもあるので、漢方には「食療」ということです。処方薬(色々な漢方生薬が一緒に使用する)しか薬品として治療していないのです。