アメリカが北朝鮮を攻撃する可能性

2005年5月13日

北朝鮮・核燃料棒取り出し!「レッドライン」に抵触か?”に対するコメント。もしも北朝鮮が核開発を行い、イランなどに輸出するようになったら、アメリカが北朝鮮を攻撃するのではないかという予測について。

Image by Peter Anta + Gordon Johnson + Alexander Antropov from Pixabay

1. アメリカは北朝鮮を攻撃するか

現役雑誌記者による、ブログ調査分析報道!』の2005年5月12日の記事によれば、ありとのことです。

ワシントンの国務省の幹部の一人は、「ライス長官も了解していますが、すでに米国は、『レッドライン』の通告を、当の北朝鮮につたえています。さらに、北朝鮮の最大の後見国である、中国、ロシアにも通告しています。非公式ですが、安全保障上は了解をえているとおもっています」というのだという。

これは噛み砕くと、レッドラインは、「核関連物質が第三国にわたる、予兆がある場合」といわれてきたが、そこには、暗黙の了解点として、「核実験」もはいっている。ま、この場合は辻野記者のかいている「作戦計画5029」か。

ま、いずれにしても「有無をいわずに米国は攻撃する」というものだ。

核保有国である中国、ロシアにとっても、北朝鮮が実質的な核保有国になることを、望んでいない。さらに、北朝鮮の核関連物質が第三国にながれることに対しても、望んでいない。つまり米国が主導するPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)を始動させるというのだ。

核拡散を防ぐという方針は、核保有国のエゴといわれようが、暗黙の了解だというのである。

米国にとって核拡散でおそれているのが、北朝鮮であるとともに、イランであるということは、公然の事実。「北朝鮮の核実験よりも、北朝鮮の核関連物質がイランに流出するほうが、より現実的で、よりナーバスな問題」(米国政府系シンクタンク)[1]

アメリカが北朝鮮を攻撃する可能性がしだいに高まってきました。アメリカは、北朝鮮そのものにはあまり関心がなく、むしろ外貨獲得に熱心な北朝鮮が第三国、特にイランに核兵器を売却することに懸念を持っているようです。

第一次世界大戦後にイギリスがイラクを建国して以来、スンニ派がイラク政治を支配してきたが、今後は、シーア派がイラクを支配することになりそうだ。周知のとおり、イスラム教徒は、スンナ派とシーア派に大別され、シーア派のイスラム教徒は、スンナ派と比べて、原理主義的・反欧米的・反帝国主義的傾向が強い。英米にとって、スンナ派よりもシーア派の方が好ましくないことは言うまでもない。

第二次世界大戦終了後、東欧から中国にいたる巨大な共産主義ブロックが出来上がり、英米は、この共産主義ブロックの「封じ込め」と「巻き返し」に苦労するわけだが、同様に、今回のイラク戦争終了後、イランからイラクを経てシリアにいたる巨大なシーア派ブロックが出来上がり、英米は、このシーア派ブロックの「封じ込め」と「巻き返し」に苦労しなければならなくなる。[2]

しかし、イランのような国家に核兵器が売られる以上に恐ろしいのは、核兵器がテロリストに売られることでしょう。イランが核兵器を持ったところで、使う可能性はあまり大きくありません。使えば、核で報復されるので、自殺行為になるからです。こうした核抑止力により、広島・長崎以来、核兵器は使われていないのですが、テロリストの場合、正体をはっきりさせないことにより、報復を恐れずに実行するということが考えられます。もっとも、テロリストにとっては、核兵器を使うよりも、原子力発電所を狙うほうが、簡単なのかもしれませんが。

アメリカは、北朝鮮を攻撃して、金正日体制を崩壊させた後、どうするつもりなのでしょうか。北朝鮮は、資源的に魅力がないので、イラク統治の方式はとらないでしょう。第二の独裁者が現れて、同じような問題が起きるかもしれません。

韓国が、所得水準が著しく異なる北朝鮮を統合するというのも難しいでしょう。ドイツが東西統合で大きな経済的負担を強いられたことを韓国人は知っていますから、韓国人は、統合に慎重なようです。また、中国は、北朝鮮という緩衝地帯を失うことに強く反対するでしょう。

アメリカが空爆を行った後、中国が、義勇軍による援助と称して地上軍を投入し、裏切って北朝鮮幹部を拘束し、北朝鮮を中国領朝鮮族自治区にするという裏技もあります。多分、これが一番コストのかからない方法でしょう。しかし、中国はアメリカにとって潜在的な敵だし、その前に韓国が黙っていないでしょう。

2. 「現役雑誌記者による、ブログ調査分析報道!」について

現役雑誌記者による、ブログ調査分析報道!』は、「現役記者が雑誌で書くことのできない本音情報を、調査分析報道」している、充実した内容のブログです。もっと有名になっても良いような気がします。

「一日のユニークアクセスは、200-300。300台がいちばんよろしい。1000越えたら、勝手が書けなくなる」とは、ボスの命令。

うん?へそ曲がりなんだから。

ということで、一日のユニークアクセス数1000以内を目標します。[3]

ユニーク300台は、少し禁欲的すぎませんか。アクセスを制限しているのに、なぜ「人気blogランキング」のクリックを推奨するのでしょうか。

3. 追記(2019年)米国に残された戦略

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史上初の米朝首脳会談で握手するトランプ大統領と金委員長[4]

この記事を書いてから14年以上が経過し、その間、北朝鮮をめぐる情勢は大きく変わりました。2005年2月に核兵器の保有宣言を行った北朝鮮は、2016年1月、9月、2017年9月に、水素爆弾の実験を行い、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載できる小型水素爆弾の開発に成功したと発表しました2017年11月には、高度4500キロメートルに達してワシントンを射程に収める大陸間弾道ミサイル火星15の発射実験を行いました。さらに、2019年10月には、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、北極星3号の発射実験を行いました

北朝鮮は、核兵器保有国としての地位を着実に築いています。核兵器を保有した国どうしが直接本格的な戦争をした例はありません。国境紛争程度ならありますが、国家の存亡を賭けた本格的な戦いとなると、実際に核兵器が使用される可能性があるので、踏み切るにはリスクが大きすぎます。核とミサイルの技術をここまで向上させた北朝鮮を米国が軍事力で崩壊させることはほとんど不可能になったと言ってよいでしょう。では、米国には、自国の安全を守るためにどのような戦略が残されているのでしょうか。

2017年1月に就任したドナルド・トランプ米国大統領は、当初は北朝鮮に対して強硬な姿勢で臨んでいましたが、平昌オリンピック以降南北関係が改善したのをきっかけに、2018年6月にシンガポールで史上初の米朝首脳会談を行い、対話路線にかじを切りました。トランプ大統領は、以前は「ちびのロケットマン」と軽蔑していた金正恩朝鮮労働党委員長と「恋に落ちた」と言って、2019年2月にベトナムのハノイで、6月には韓国と北朝鮮の軍事境界線上にある板門店で会談を行いました。2019年10月現在、北朝鮮は国連の決議違反となるミサイル実験を繰り返していますが、トランプ大統領は、金正恩委員長を非難することを避けています。

なぜトランプ大統領はこれほどまで北朝鮮を甘やかすのかと首をかしげる人も少なくありません。従来、米国は、日米韓を連携させながら、北朝鮮に厳しく対処してきましたが、現在、日米韓の連携、すなわち北朝鮮包囲網が大きく揺らいでいます。2017年5月に韓国大統領に就任した文在寅は、もともと従北志向の政治家で、平昌オリンピック以降、北朝鮮との関係が改善したのをきっかけに親北反日の本性を露わにし、日韓関係は、日韓基本条約締結以降最悪の状態に陥っています。以前なら、日韓関係が悪化すると、米国が仲介役を買って出たものなのですが、トランプ政権は関係改善に乗り出しませんでした。

このため、韓国は米国に対しても不信感を抱くようになり、2019年8月に軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄しました。これにより米韓関係までが悪化してしまいました。文在寅の代弁者と目される外交ブレーンの文正仁大統領統一外交安保特別補佐官は、2045年までに南北統一を達成したいと述べると同時に、米韓同盟は核兵器の保有で必要なくなるという趣旨の発言をし、あたかも南北統一のために米韓同盟の破棄を望んでいるかのような印象を与えました。他方で、トランプ大統領は、韓国に要求する防衛費分担金総額を5倍以上に引き上げ、まるで韓国に同盟を解消してくれと言わんばかりです。実際、トランプ大統領は、大統領選挙戦中に在韓米軍撤退を示唆しシンガポールでの米朝首脳会談後もそうした考えを表明しました

そのため、将来北朝鮮主導で朝鮮半島が赤化統一されるのではないかと日米の良識派(外交・防衛のエスタブリッシュメント)は懸念しています。しかし、朝鮮半島の赤化統一が本当に日米にとって脅威になるのかどうかは、改めて考え直さなければなりません。中国や北朝鮮の脅威に備えるには、日米韓の緊密な連携が必要という良識派の「良識」は本当に正しいのでしょうか。

ここで参考になるのが、663年の白村江の戦です。日本にとって伝統的な友好国であった百済が唐と新羅によって滅ぼされ、危機を感じた中大兄皇子は、百済を再興しようと軍を派遣し、大敗しました。しかし、友好国だった百済が消滅したことは、日本に安全保障上の危機をもたらしませんでした。高句麗、百済、日本という共通の脅威がなくなった唐と新羅は、その後朝鮮半島の支配をめぐって対立を深め、両者が協力して日本に侵入するということはありませんでした。

もしも米韓同盟が破棄され、朝鮮半島が金正恩によって赤化統一されたら、金正恩にとっての最大の軍事的脅威は、海を隔てて存在する日米ではなくて、陸続きに存在する軍事大国、中国になります。もともと金正恩と習近平は仲が良くなく、米国という共通の脅威が存在する間は協力していますが、それがなくなった途端、再び関係が悪化する可能性があります。

過去には、元寇のように、中国と朝鮮が一緒に日本を攻撃したことがありました。しかし、元寇の時には、元が高麗を完全に服従させました。赤化統一した朝鮮は、核兵器もミサイルも持っているので、米国が完全に屈服させることができないのと同様に、中国も完全に属国化することはできません。だから元寇のようになることは想定しにくい。金正恩からすれば、台湾や日本が次々に中国の手に落ちれば、「次は自分の番」となるので、中国の覇権の拡大にはむしろ抵抗するでしょう。

おそらく、日米韓の連携を説く良識派は、こうしたシナリオは楽観的過ぎると言って反対するでしょう。日本が日清戦争に勝利した後、ロシアの南下という脅威に晒された時も、当時の日本の指導者たちは、朝鮮半島を緩衝地帯として維持することが日本の安全保障になるという今の良識派と同じことを考えました。日本は、多大な犠牲を払って日露戦争に辛勝し、朝鮮の利権を守りました。しかし、日韓併合をしたことで、朝鮮を守るために満州国を建国し、満州国を守るために中国と戦争をし、日中戦争に勝利するために英米と戦争するという底なし沼に足を突っ込むことになりました。むしろ日露戦争を回避し、朝鮮半島はロシアにやった方がその後の日本にとって良かったのではないかというのが私の考えです。

トランプ大統領が、日本の歴史から教訓を得たとは考えにくいですが、それより確実に教訓を得たと考えることができる同時代の身近な戦争があります。ベトナム戦争です。ベトナムが赤化統一されると、他の東南アジア諸国も次々と共産主義化してしまうというドミノ理論に基づき、米国は南ベトナムを支援しました。それにもかかわらず、米国は敗退し、南ベトナムは滅亡しました。この戦争は、米国民にとってトラウマとなっている戦争です。なぜ世界最強の軍事大国がアジアの小国に敗れたかといえば、米国が支援した南ベトナムがあまりに無能であったからということを第一の理由として挙げることができます。米国がベトナム戦争から得た教訓は「無能な南は援助するな」でした。トランプ大統領が、無能な文政権を見限るのも故無しとしないのです。

ベトナム戦争に敗北したころ、多くの人はこれで米国の覇権は終わったと思いました。しかし、実際はそうなりませんでした。崩壊したのはソ連の覇権の方でした。ベトナム戦争での米国の敗退は、1968年にリチャード・ニクソンが、ベトナム戦争からの「名誉ある撤退」を公約に掲げて当選したことで事実上決まりました。すると、これまで潜在的な対立を抑えてベトナム戦争で協力してきたソ連と中国が、1969年3月に珍宝島で軍事衝突しました。これを好機に、ニクソン大統領は、大統領補佐官のヘンリー・キッシンジャーを使って、「名誉ある撤退」を実現しようとしました。

「名誉ある撤退」というのは負け惜しみのように聞こえますが、その後の歴史を見ると、米国は戦争には負けたけれども、外交では勝ったと言うことができます。中国はソ連に対抗するために、米国に接近しました。1971年にキッシンジャーは周恩来と秘密会談をし、ベトナム戦争不介入の言質を取りつけたことが、翌年2月のニクソン訪中と米中共同声明につながりました。米中同盟ができることを恐れたソ連は、米国に接近し、5月に戦略兵器制限交渉 (SALT)に合意するともに、ベトナム戦争終結を仲介しました。中ソという後ろ盾を失った北ベトナムは和平に応じざるをえなくなり、1973年1月にパリ和平協定が成立し、米国はベトナムという泥沼から「名誉ある撤退」をすることができるようになったという次第です。

パリ協定後、協定に反して北ベトナムは南ベトナムを滅ぼしましたが、米国はもはや介入しませんでした。米国による封じ込め・巻き返し戦略が破綻したのにもかかわらず、否むしろそれゆえに、ドミノ理論が想定したような共産主義化のドミノは起きませんでした。1975年から77年にかけてソ連が支援するベトナムと中国が支援するカンボジアという共産主義国どうしが戦争を行い、ベトナムが勝利すると、中国が報復のためにベトナムを攻撃する中越戦争が起きました。米ソの代理戦争に代わって、中ソの代理戦争が起きたのです。米国は、弱い方の中国を支援し、バランスを取りました。米国からすれば、自国兵士に大きな犠牲を出すことなく、レッド・チームを弱体化させることができたのですから、これほどおいしい話はありません。

一般的に言って、右翼が外ゲバ志向であるのに対して、左翼は内ゲバ志向です。左翼は、共通の敵がいる間は、大同団結していますが、共通の敵がいなくなると、些細な路線の違いから内ゲバを発生させ、それが内紛、内部抗争へと発展して自壊します。現在の旧共産圏もこのDNAを引き継いでいるでしょうから、その本性をうまく利用すればよいということになります。ビジネスマン出身のトランプ大統領が、「自由」だの「民主主義」だのといった歯の浮くような理念を口にして封じ込め・巻き返し戦略をするよりも、戦略的撤退と個別的取引によりレッド・チームの内ゲバを誘導し、弱体化させるという、よりコスト・パフォーマンスが優れた戦略を選ぶのは自然なことです。

ベトナム戦争以降、米国は大規模な戦争を自粛していましたが、ブッシュ親子が再び戦争ケインズ主義的な政策に転換したことで、米国は、イスラム教過激派と、ちょうどかつてのベトコンとの戦いと同様の泥沼の戦いを強いられるようになりました。ニクソン大統領がベトナム戦争の泥沼から米国を抜け出させたようなやりかたで、米国を世界の警察から引退させようというのがトランプ大統領の目論見なのでしょう。トランプ大統領が、朝鮮戦争を終結させるつもりで開いた第二回米朝首脳会談をベトナム戦争を連想させるハノイで開催したのも、非公式ながらキッシンジャーを外交顧問として重用しているのも、朝鮮戦争後の成功体験に基づいて、二匹目のドジョウを狙っているからと説明することができます。

もちろん、柳の下にいつもドジョウがいるわけではないし、トランプ大統領の思惑通りにうまくいくかどうかはわかりません。それでも、一方で中国の台頭を抑えたい、他方で戦争は回避したいという米国民のわがままな要求を実現しようとするなら、ニクソン大統領が使った裏技に頼る他ありません。ニクソン大統領がウォーターゲート事件で弾劾されそうになって辞職したように、トランプ大統領もウクライナゲート事件で弾劾されるかもしれません。だから、トランプ外交がうまくいくかどうかという以前に、トランプ外交がこれからも続くかどうかも不確実ですが、ともあれ、「中国や北朝鮮の脅威に対処するためには日米韓の緊密な連携が云々」とお題目のように唱えている良識派のエリートたちがトランプ大統領の深謀遠慮を理解していないようなので、なぜトランプ大統領が、一方で中国と覇権争いをしながら、他方で同盟関係を軽視するという矛盾しているようにも見える外交を行っているのかを理解しておく必要があります。

4. 参照情報