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なぜいじめは起きるのか(小学生向け)

2011年1月7日

前作の「なぜ戦争は起きるのか(小学生向け)」が好評であったために、小学生向けシリーズ第二弾を書きました。大人の方は、「なぜいじめは起きるのか 」の方をご覧ください。なお、このページでフリガナを有効にするには、インターネットエクスプローラで見る必要があります。

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1. いじめとはカタルシスである

日本にっぽん小学校しょうがっこうでは、いじめがしばしばき、いじめをにして小学生しょうがくせい自殺じさつすると、マスコミがおおきくげ、そのつど学校がっこうでのいじめが世間せけん注目ちゅうもくあつめます。いじめは、学校がっこう以外いがいでも、いろいろなところきていますが、だい部分ぶぶんのいじめには、ある共通きょうつうてんられます。それは、自分じぶんたちの共同きょうどうたいなかに、自分じぶんたちとことなるひと異物いぶつ)がいるとかんじられるようになると、共同きょうどうたい多数たすうはその異物いぶつをゴミとして共同きょうどうたい外部がいぶへと排除はいじょしようとする傾向けいこうがあることです。

みなさんは、自分じぶん部屋へやがゴミでよごれていると、ゴミをてて、部屋へやをきれいにしたいとおもいますね。異物いぶつであるゴミを排除はいじょして、自分じぶん領域りょういきをきれいにし、さっぱりとしたすがすがしい気持きもちになることを心理しんりがくでカタルシスとんでいます。わたしたちのからだは、ウィルスや細菌さいきんといった病原びょうげんたい、がん細胞さいぼう他人たにんから移植いしょくした臓器ぞうきなどを自己じこ認識にんしきし、それらをほろぼそうとしますが、こういう免疫めんえき作用さよう生理せいりてきなカタルシスです。そして、いじめは、個人こじんてき心理しんり作用さようであると同時どうじに、共同きょうどうたいという拡大かくだいされた身体しんたいでの社会しゃかいてき生理せいり作用さよううこともできます。

2. 上村明子さんの場合

はなし抽象ちゅうしょうてきになったので、具体ぐたいてきれいでいじめの原因げんいんかんがえてみましょう。2010ねん10がつ23にち群馬ぐんまけん小学校しょうがっこう6年生ねんせいだった上村うえむら明子あきこさんが自殺じさつをしました。学校がっこうがわ否定ひていしていますが、いじめが原因げんいんであったとかんがえられています。明子あきこさんは転校生てんこうせいで、日本人にっぽんじん父親ちちおやとフィリピンじん母親ははおやからまれたハーフでした。このため、のクラスメイトから異物いぶつとして認識にんしきされやすかったとうことができます。

明子あきこさんのクラスは、学級がっきゅう崩壊ほうかい状態じょうたいでした。共同きょうどうたい秩序ちつじょみだれると、児童じどうは、自分じぶんたちとは異質いしつのものを排除はいじょすることであらたな自分じぶんたちの共同きょうどうたいつくり、秩序ちつじょ回復かいふくしようとします。容姿ようしとはことなる明子あきこさんは、格好かっこう標的ひょうてきとなりました。明子あきこさんのおとうさんによると、明子あきこさんは、同級生どうきゅうせいから「おまえかあさんゴリラがおだからおまえもゴリラだ」とか「くさい、こっちへるな」とかわれていつもひとりぼっちだったそうです。「おまえかあさんゴリラがおだからおまえもゴリラだ」は、“日本人にっぽんじん/混血こんけつ”というちがいを“人間にんげん/動物どうぶつ”というちがいへとえることで、明子あきこさんが異物いぶつであることを強調きょうちょうし、「くさい、こっちへるな」は、明子あきこさんをゴミとして排除はいじょしたいという欲望よくぼう表明ひょうめいしています。

明子あきこさんのクラスでは、給食きゅうしょくときなか児童じどうどうしがつくえせてべていました。これにより児童じどうたちがつくった自分じぶんたちの共同きょうどうたいが、えるかたちではっきりと表現ひょうげんされました。そして、明子あきこさんは、どのグループにもれてもらえず、ひとりで孤立こりつして給食きゅうしょくべていました。明子あきこさんは、くなる2にちまえ校外こうがい学習がくしゅうで、大声おおごえきながら「給食きゅうしょくをひとりでべている」と教諭きょうゆうったえ、自殺じさつする直前ちょくぜんには、母親ははおやに「学校がっこうくくらいならんだほうがまし」とっていました。明子あきこさんは、うったえをいてもらえないまま、母親ははおやのためにんでいたマフラーでくびをつって、12年間ねんかん生涯しょうがいじました。こうして、同級生どうきゅうせいのぞみどおり、明子あきこさんはクラスから排除はいじょされてしまいました。

3. いじめをなくすにはどうすればよいか

明子あきこさんのような悲劇ひげきをなくすにはどうすればよいでしょうか。いじめが異物いぶつ排除はいじょだとするならば、異物いぶつ排除はいじょしない、多様たようせい肯定こうていする価値かちかんつことが重要じゅうようだということになります。しかし、いくら学校がっこう先生せんせいが「多様たようせい尊重そんちょうしなさい」とっても、その先生せんせいとどかないところで陰湿いんしつないじめがおこなわれているいま現状げんじょうかんがえると、たんなる精神せいしんろんでは、根本こんぽんてき解決かいけつにはならないとわざるをえません。

いじめの問題もんだい解決かいけつするヒントはじゅくにあります。じゅく学校がっこうおなじような教育きょういく機関きかんですが、学校がっこうのようにいじめの問題もんだい深刻しんこくすることはほとんどありません。なぜならば、学校がっこうとはことなり、じゅく場合ばあい、いやになったらいつでもやめることができるからです。日本にっぽん小学校しょうがっこう中学校ちゅうがっこうでは、いじめられているからといって簡単かんたん転校てんこうしたりすることはできません。じゅくのように、学校がっこう自由じゆうえらぶことができるようにすることがだいいち必要ひつようです。

自由じゆう選択せんたくせいにすれば、学校がっこう閉鎖へいさてき共同きょうどうたいではなくなり、教育きょういくけるための手段しゅだんとして使つかわれる出入でい自由じゆうとなります。子供こどもたちは、いじめ以外いがい様々さまざま理由りゆうでも、学校がっこう変更へんこうすることでしょう。いろいろな学校がっこうで、いろいろな人々ひとびとせっすることで、子供こどもたちは自然しぜん多様たよう価値かちかんせっするようになります。多様たようせい尊重そんちょうは、言葉ことばっても理解りかいしてもらえません。実際じっさい多様たよう価値かちかん体得たいとくしなければいけません。学校がっこう自由じゆう選択せんたくせいは、たんにいじめから脱出だっしゅつする手段しゅだんあたえるだけでなく、いじめの温床おんしょうである共同きょうどうたい閉鎖へいさてき同一どういつせい打破だはするというてんでも、いじめの問題もんだい解決かいけつするじょう有効ゆうこうなのです。