一票の格差を是正するにはどうすればよいか
2012年に行われた衆議院議員総選挙が無効という判決が出た。しかし、選挙をやり直さなくても、一票の格差が二倍以上という違憲状態をすぐに解消する方法がある。それは議員の一票に格差をつけるという方法である。議員の一票を平等に扱うのは、一見すると民主的だが、選んだ有権者の数が大きく異なる以上、民主的とは言えない。むしろ有権者の数に応じて議員の一票に格差をつけることで、有権者の一票の格差が是正するべきである。[1]

1. 第46回衆議院議員総選挙は無効
広島高裁は、投票価値の平等が守られていないことを理由に、2012年に行われた第46回衆議院議員総選挙が無効という判決を出した。この選挙では、千葉県第4区の選挙名簿登録者数が497,350人であるのに対して、高知県第3区は、205,461人で、前者は後者の2.42倍になる。2倍を超えているのだから、明らかに法の下の平等に反している。
再び司法が選挙の無効を言い渡した。前日の広島高裁判決に続き、昨年衆院選を無効とした26日の同高裁岡山支部判決は、無効の効力に猶予期間を設けず、議員に“即時退場”を迫る一段と厳しい内容。司法の指摘に真摯に向き合ってこなかった立法府に対し、再び最後通告を突きつけた。原告の弁護士らは「歴史的判決だ」と喜びを爆発させた。
「国会の怠慢だ」。判決で片野悟好裁判長は、昨年の衆院選までに格差是正に至らなかった国会に向けて、辛辣な言葉で批判。選挙区定数を「0増5減」とするなどの国会の対応については、「格差是正のための立法措置とは言い難い」と評価しなかった。
戦後初めて無効を言い渡した25日の広島高裁判決は無効による政治的混乱を考慮し、無効の効力は一定期間後に生じるとする「将来効判決」にとどめていたが、この日の判決は、判決が確定すれば即時無効を命じた。
判決は「投票価値の平等は最も重要」としたうえで、選挙を有効とすれば、長期にわたり国民の権利が侵害され続ける「弊害」が生じると強調。それに比べ、無効による政治的混乱は大きいとはいえず、猶予期間を設ける必要はないとの結論を導いた。
裁判所はこれまで選挙無効による弊害を重く見て選挙無効を回避し続けてきたが、今回の判決は、無効による弊害よりも、国民の権利侵害の方が重大だと指摘している。国会は一連の司法判断を重く受け止める必要がありそうだ。[2]
みんなの党の渡辺喜美代表は本日の党役員会で、「0増5減という弥縫策に頼るのではなく抜本改革を行い、早期に衆院を解散すべきだ」と主張しているが、民主党からはそういう声は聞かれない。2012年11月25日の投稿「選挙が違憲であることを主張するために出馬するのは自己矛盾的」で私は以下のように書いた。
政党の名前(2012年11月25日 16:18)選挙が違憲であることを主張するために出馬するのは自己矛盾的
ひょっとすると、民主党は、次の選挙で惨敗になって下野しても、無効判決が出て、すぐにまた総選挙のやり直しがあるから、短期的に党勢の立て直しができると考えて、あえて違憲状態での選挙を選んだのかもしれません(考え過ぎかな?)。
意図的だったかどうかはともかくとして、民主党にとって想定外だったのは、総選挙後自民党と民主党の支持率の差が開く一方になっているということだ。もし総選挙を今やり直したなら、民主党にとって結果はもっと悲惨なものになるだろう。
党利党略はともかくとして、一票の格差を是正するだけのために巨額の費用がかかる総選挙をやり直すことはできれば避けたい。そして、「弥縫策」ではあるが、総選挙をやり直さなくても、そして区割りの変更をしなくても、違憲状態をすぐに解消する方法がある。それは議員の一票に格差をつけるという方法である。
議員の一票を平等に扱うのは、一見すると民主的だが、選んだ有権者の数が大きく異なる以上、民主的とは言えない。むしろ有権者の数に応じて議員の一票に格差をつけることで、有権者の一票の格差が是正するべきである。それには、例えば、高知県第3区選出の議員の一票には係数1.00をかけ、千葉県第4区選出の議員の一票には係数2.42をかけてから集計すればよい。比例代表選出の議員には、小選挙区選出の議員の係数をかけた票数の合計×180/300を獲得議席数に応じて配分すればよい。集計に時間がかかると思うかもしれないが、現在の国会の投票は押しボタン式でできるので、集計は電算で簡単にできる。

票の重みが異なるのに全議員が同じ歳費を受け取るのはけしからんという批判も予想されるが、人口密度の低い選挙区では、有権者の声を聴いて回るのに費用がかかるから、それほど不当ではない。
私が提案する抜本的な選挙制度は、「民主主義はどうあるべきか」で書いたとおりであるが、この制度を実施するのは容易ではない。今すぐできる改善策としては、これが一番手っ取り早い。
自民党が講じようとしている応急処置 「0増5減」が早くも破綻している。
衆院選挙区画定審議会が3月28日に安倍晋三首相に勧告した衆院小選挙区の「0増5減」を含む区割り改定案で、「一票の格差」が実質的には2倍以上となる選挙区が多数あることが、産経新聞の調べで分かった。改定案は平成22年10月時点の国勢調査の人口を基準にしているが、各自治体が公表している今年1月の人口(速報値を含む)に基づいて格差を試算すると、改定案の人口上位10選挙区のうち8選挙区で「格差2倍以上」となる実態が浮かび上がった。
改定案では、一票の格差は最高裁の指摘する2倍未満の1・998倍に縮小したとされた。これに基づき、政府・与党は新たな区割りを定める公職選挙法改正案の早期成立を目指している。しかし、実態としては2倍以上の格差が残っており、今後の与野党協議の大きな論点となりそうだ。
試算によると、改定案で人口最少となった鳥取2区と最大の東京16区の場合、一票の格差は1・998倍から2・004倍に拡大。最大の格差が生じたのは兵庫6区で、1・986倍から2・036倍に広がっている。また、新たな区割りで2番目に人口が少なく、今年1月現在では鳥取2区よりも人口が減った福島4区を基準にすると、改定案の人口上位10選挙区のうち9選挙区が2倍を超えた。[4]
他方で、民主党は、与党時代の時と同様に、議員定数を削減するという「身を切る改革」を一票の格差の是正と抱き合わせにすることで、解散の時期を先延ばししようとしているようだ。たしかに、いま総選挙をやり直したら、民主党の議席はさらに減るだろうから、党利党略としては、理にかなっている。また、民主党は、小選挙区で大量に議席を獲得した2009年総選挙の時のマニフェストで、衆院比例代表を80議席削減することを掲げていたが、2012年の総選挙で、小選挙区選出の自党の議員が大量に落選したため、最近では、小選挙区を30議席、比例代表を50議席削減するという内容に主張を変えている。
公明とは、比例代表のウエイトが大きいので、比例代表の議員数を削減することには消極的である。自民党は、公明党に考慮して、比例代表の定数を30削減した上で、中小政党に60議席の優先枠を設ける案を出しているが、このような制度では、有権者の民意がますます歪められることになる。このような奇策を弄しなくても、多様な民意の反映という比例代表並立制の趣旨を損なうことなく、比例代表で当選する議員を、80人どころか全員削減する方法がある。私は、それを既に以下のように提案した。
それは比例代表の議席に議員を一人ずつ割り当てずに、党首の持ち票にするという方法である。例えば、ある政党の比例代表の数が19ならば、その政党の党首の投票は、20としてカウントされるという制度である。現在国会では、「身を切る改革」ということで、衆院比例代表定数の削減が提案されている。しかし、衆院比例代表定数を削減すると、中小政党が議席を獲得できなくなり、民意の反映が十分でなくなるという問題が生じる。比例代表議席持ち票制はこれらの問題をすべて解決することができる。すなわち、比例代表の議席に議員を割り当てないのだから、大幅に議員歳費を削減できるし、比例代表制度自体は存続するので民意の反映を歪めることもないし、ゾンビ議員復活阻止による議員の質の向上も期待できる。比例代表で当選しながら、党執行部に造反したり、離党したりするという問題も解決する。[5]
一票の格差の是正、議員歳費の削減、比例代表並立制の維持による多様な民意の反映といった現在焦点となっている選挙制度改革の諸課題を解決するには、議員の一票を平等に扱うというこれまでの慣行を打破しなければならない。そしてそれが、これら三つの問題を解決する、最も簡単で最も徹底的な方法の前提になる。
初めて返信いたします。永井先生の言説にはついては2年前から常に注目しています。永井先生の提案いつも感心させられています。今回の提案も議員のもつ一票の格差を是正し、議員定数をも減らせる妙案だと思います。このような目から鱗の解決案を政治家が実際に取り入れることを切に願います。
永井先生は、こうしてネットで不特定多数の読者に対して持論を展開する他に、もっと直接に政府や政治家に政策を提言されてはいかがでしょうか? 真に優れたアイディアは自然に広まる、あるいは取り上げられるということもあると思うのですが、時間がかかり過ぎるのではないでしょうか。
ここで書いたことは、「民主主義はどうあるべきか」で提案したハイブリッド民主主義の応用で、私としては、あくまでも過渡的な制度として提案しています。過渡的な制度の問題点としては、選挙区によって議員の政治力が異なるようになると、係数が低い選挙区ほど人気がなくなり、候補者の質も下がるようになるという点を挙げることができます。ハイブリッド民主主義では、より大きな政治力を持とうとする政治家の本性が、政策の質を向上させるように制度が設計されています。ハイブリッド民主主義を実現しようとするなら、憲法を改正する必要があるので、ハードルは非常に高いのですが、ネットを使った選挙活動が解禁されるなど、少しずつ素地が固まりつつあるのではないかという気がします。
さすらいの英語教師 さんが書きました:
永井先生は、こうしてネットで不特定多数の読者に対して持論を展開する他に、もっと直接に政府や政治家に政策を提言されてはいかがでしょうか? 真に優れたアイディアは自然に広まる、あるいは取り上げられるということもあると思うのですが、時間がかかり過ぎるのではないでしょうか。
かつて、小渕恵三さんが総理大臣で、公明党が発案した地域振興券の配布が議論されていた頃、以下のような政策提言の電子メールを書いて官邸宛に送ったことがあります。
永井俊哉 さんが書きました:
現在政府が受け入れる方向で検討中の商品券支給緊急措置法案について提案させていただきます。商品券を電子マネーで支給してはどうでしょうか。電子マネーは日本でも一部の地域で実験的に導入されているが、なかなか実用化されていません。今回の商品券支給は電子マネーを全国に普及させる絶好のチャンスです。ICカードのメモリに三万円をロードして国民に配ればよいのです。その三万円は、パソコンの試用版ソフトのように、一定期間が過ぎると自動的に消滅するようにプログラムすれば、国民はそれを早く消費に使わなければなりません。すると小売業者はそれを狙って電子マネー端末機を店に設置するようになります。期限付きの三万円は、各商店に設置された端末に読み取られ、ネットワークを通して政府のサーバーで無期限の金額データと交換されるようにするわけです。電子マネーの使い方と便利さを体得した国民が、銀行の電子マネー対応ATMで、預金の一部を電子マネーにリロードして使うようになれば、電子マネーの普及は成功です。現在自治省は住民票コードを導入しようとしていますが、電子マネーに住民票コードを付ければ、それは国民のIDカードとしても使えます。もし商品券を紙で配るならば、それは一時的な景気対策で終わってしまい、大きな経済的波及効果は期待できません。だが商品券支給が電子マネーの普及につながるならば、それは情報インフラの整備に貢献し、オンライン上の通販ビジネスを促進し、日本経済を活性化するでしょう。ぜひこの案を検討していただきたいと思います。
すると、官邸から短い返事が返ってきました。本当に本人が書いたものかどうかはわかりませんし、採用されることはもちろんありませんでしたが、返信が来たことに正直言って驚きました。小渕恵三さんは、誰もが会うことができる政治家になろうと学生時代の頃から決心していたそうで、一般人によく電話をかけまくったことから、「ブッチホン」という言葉すらできたぐらいです。だから、本当に本人が読んだのかもしれません。しかし、小渕さんのような政治家は例外的で、普通の政治家の先生に提案のメールを書いても、たいていは読んでもらえないし、ましてや採用されることはないというのが現状です。
そもそも、直接政治家を動かすことで政治を変えるのではなくて、言論の力で世論を変え、そして、世論に敏感な政治家を間接的に動かすことで政治を変えるというのが民主主義の本来の方法だと思います。そういう方法だと時間がかかるというお考えのようですが、現在のようにインターネットが普及し、ソーシャルメディアが発達している時代では、良いアイデアは、ソーシャルメディアを通じてすぐに拡散するし、政治家も、今後は、ネットで形成される多数派の意見を無視することができなくなるでしょう。だから、私としては、政治家と直接コンタクトを取るのではなくて、ネットで多くの人に引用してもらえるようなアイデアを出すことを目指していきたいと思います。
今回衆議院選挙は、憲法違反の判決が出た。実に結構なことで、日本にも「司法」が存在しているみたいだ。 ところが、なぜか選挙改革は、ありえない展開をしている。これは、クーデターである。国家テロである。ここで、はっきりしたのだが、「憲法違反」には、実質罰則がないと、少なくとも国会の先生たち=テロリストはそう信じているらしい。 これほどの犯罪を犯しながら、まるで、危機感が感じられない。憲法改正大賛成である!! 格差是正に抵抗する勢力に対して、国家反逆罪で、最高刑を求刑するよう憲法を改正しよう!!
ずいぶん過激な意見が出てきたようですが、自民党が、47都道府県に1議席を割り振る1人別枠方式を温存し、一票の格差の抜本的是正に取り組まないのには、それなりの理由があるのでしょう。典型的な理由は、完全に人口比例で議員を選ぶと、地方軽視の政治となり、それが地方の過疎化を促進するので、悪循環になるというものです。国会議員は、国の代表であって、地域の代表ではないというのが建前ですが、実際には、この建前とは異なり、地元のための予算の獲得することが国会議員の仕事であるかのような様相を呈していたことは事実です。一票の格差の是正は地方の切り捨てになるという危惧はそうした現状を前提にしているのでしょう。
しかし、これまで都市で集めた税金を農村にばらまくという「地方重視」の政治をしてきたにもかかわらず、地方が衰退する一方であった過去をよく反省するべきです。過疎化を解消しようとするならば、地方を都市の住民が住みたいと思うような場所にしなければなりません。ところが、これまでの「地方重視」の政治は、そうした都市の住民の声を無視してきました。また地方経済を活性化させたいのであるならば、地方を企業が進出したいと思うような場所にしなければなりません。ところが、これまでの「地方重視」の政治は、都市に本社がある民間企業の考えを無視してきました。「地方重視」の政治を否定しなければ、地方重視の政治は実現しないでしょう。
過疎化する選挙区は、選挙が楽チンなんだ。 補助金とかで選挙民を、買収、誘惑するのなぞたやすいこと。しかも、少々出来が悪くても、他に対抗馬などいないに等しいから、「そこそこ」愛想よければ世襲でいいよ世襲でとなる。過疎化は、高齢化でもあれば、固定化でもあるのでますます政治的には計算可能な安定議席となり、本格政権を目指すならおいしい話だ。与党で当選を五回もすれば、大臣、さらにキャリアを積めば運がよければ総理大臣になれる。安倍も石破も地方議員だ。確かに世襲で地方の先生たちが、選挙制度の改革などやる理由はどこにもない。
憲法違反で当選した正統性のないゴロツキが、憲法改正などといういうのだから、世も末だ。 自民党は、抜本的な選挙改革をし、違憲状態解消のため衆参両院選挙をすれば今以上に議席を伸ばし、単独で衆参両院での憲法改正の発議も可能だ。なぜやらないのか全く理解に苦しむ。
そうすれば堂々と自主憲法でもなんでも好きに出来る。安倍の憲法改正は本気ではなさそうだ。中身も信念もないアホが格好つけてるつもりなのだろう。信念なき政治家の典型。小手先で手続きを変え、維新なんぞとちょこちょこ手を組んだところで、憲法改正などできるわけが無い。
アベノミックスの神通力を最大限生かす、勝ち筋を書くライターがいないのが不思議といえば不思議。
もっとも、長期的にみれば、抜本的な選挙改革は自民党を弱体化させることになりそうではある。
ついでに一つ思いついたのだが、当選回数を大臣の資格要件にする自民党の「不文律」も憲法違反の疑いがある!これが抵抗の一番の要かもしれない!!
ghostbusters さんが書きました:
長期的にみれば、抜本的な選挙改革は自民党を弱体化させることになりそうではある。
私は必ずしもそうはならないと思っています。現在安倍総理は TPP 参加を目指していますが、農協に TPP 参加反対を約束して当選した農村部選出の自民党議員が慎重な構えを示しています。TPP に参加しようとするならば、こうした議員の勢力を削がなければなりません。だから、一票の格差を解消し、その結果、農村部選出の議員の定数を減らし、その上で、TPP 参加の是非を問うことを争点にして解散総選挙に踏み切れば、安倍路線を内心快く思っていない党内の抵抗勢力を一掃することができます。これはかつて小泉が郵政選挙でやったことと同じです。選挙前、これで自民党は弱体化すると多くの政治評論家が予想しましたが、実際には、自民党の権力強化につながりました。安倍も度胸があるなら、これぐらいのことはするべきでしょう。
一票の格差の是正という意味でなら、より深刻なのは国連ではないかという気がする。そもそも国連には違反できそうな「憲法」がなく、永遠に格差が解消されそうにない。人口比に応じて永井氏の提案通り重みづけすれば、さぞ民主的な国連に生まれ変われるというものだ。国連の権力の正統性が全人類的に確保されるだろうし、国際社会の成熟も促進されるだろう。これこそまず実現されるべきではないか!もっとも、当初喜ぶのは中国だけだったりするとは思うが!
国連は政府ではありません。だから、私たち個人に対していかなる命令もすることはできません。せいぜい加盟国の政府に対して勧告をすることができるだけです。国連人権理事会は日本に対して様々な勧告を行っていますが、それを受け入れなければならない義務はありません。日本政府には国連から脱退する権利すらあります。だから、人口に比例した代表を国連に送る必要はないのです。
安倍晋三は、普遍的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済)に基づく外交を提唱している。この普遍的価値は当然、国内はもとより、国際社会でも実現されるべきものなのだろう。国連は確かに国家ではないが、経済制裁や平和維持活動を決議し実行するし、技術的経済的な援助もする。行政指導ではないが、勧告とかもする。IAEAのように立ち入り検査もする。お友達クラブとは若干異なる。飽きたから、脱退します。気が向いたのでまた入りますというものではないだろう。
しかし、価値観外交が安部のいつもの空疎な枕詞や猫騙しだということは、ほぼ明白なように思える。国内でも憲法違反状態を放任するつもりは明らかだし、国際連合のより民主的な運営に腐心する様子も無い。戦勝国でもないのに、常任理事国になれる訳もないのだが袖の下かうまいこと言って常任理事国入りを狙うしかノウが無いように思える。民主主義というなら、当然多くの人の支持を集める代表が特権的な権利と義務を負うべきだろう。もっとも、中国共産党が人民の民主的代表であるとは到底思えないのではあるが。
他国からのあるいは他国への制裁や援助は、国際連合や国際連盟が存在する前からあるのだから、それらは、国連の権力の大きさを物語るものではありません。国連がある今でも、それらを決めるのは主権国家の判断であって、国連に強制力はありません。人口に比例した代表を送れるのは主権国家までで、そこから先は力がものをいうパワーゲームの世界です。そして、そのパワーは、人口に単純に比例せず、経済力や科学技術力に大きく依存します。この限界は、しかしながら、民主主義の限界ではありません。民主主義には衆愚政治という危険性がありますが、衆愚政治を防ぐ機能を持っているのがその限界なのです。愚かな判断を下した民主主義国家は、パワーゲームの中で淘汰されます。そうしたリスクがあるからこそ、民主主義の有権者は、自分の利益だけではなく、国家全体の経済力や科学技術力の向上をも考えて投票するようになるのです。これに関しても、「民主主義はどうあるべきか」を参照してください。
ghostbusters さんが書きました:
安倍晋三は、普遍的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済)に基づく外交を提唱している。この普遍的価値は当然、国内はもとより、国際社会でも実現されるべきものなのだろう。
安倍晋三が考えている、普遍的価値(自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済)に基づく外交というのは、その価値観を共有する米国、オーストラリア、東南アジア、インドと連携し、その価値観を共有しない中国や北朝鮮を包囲殲滅しようとする遠交近攻策です。冷戦時代に米国が行った封じ込め政策や巻き返し政策に近いと言ってよいでしょう。まさにパワーゲームそのものです。
確かに、永井氏の言う通り、ドイツなんかそんな感じがする。ヒットラーに入れ込んでみたものの蓋を開けたらトンでもないことになってしまった。下手すれば、日本みたいに原爆を落とされるとこだった。自国にいる優秀な人材を見出し、育て、彼等に効率よく働いてもらう仕組みを作れない国や政権が、戦争に負け、衰退し、淘汰されるのは確かに結構なことだと思う。日本が自殺天国なのも実に説得的だ。
中国も北朝鮮も選挙をしないので、この議論以前の政権だとは思うが、やはり淘汰されるべきものなのか?当事者達は、民主主義よりさらに普遍的価値を実現しようとしていると主張してはいる。何とか独裁とか。民主主義が内輪でマシとは思うが、それ以外の可能性がまったくないとも言えない気がする。普遍的というのが、なんとも引っかかる日本語という壁のお陰で、安く優秀な人間をとりあえず囲い込めている日本に対して、中国や韓国が企業買収やヘッドハンティングで攻勢をかけているという話を聞くとなんとも情けない話だと思う 。このいままでは、淘汰されるね。
自民党議員の中には、一票の格差を容認する人も少なからずいるようです。
衆院の憲法審査会は十一日、第六章「司法」を議論した。この中で、自民党議員が、先の衆院選での「一票の格差」をめぐり、全国の高裁で相次いだ違憲・無効判決に対し、相次いで異論を唱えた。
自民党の中谷元氏は、選挙に関する事項は法律で定めると規定した憲法四七条を挙げ「選挙制度は憲法が直接法律に委ねている。適合するかの判断は第一義的に国会に委ねられる」と指摘し、司法が選挙制度に異論を唱えることに反発。「選挙区は人口比のみでなく、地勢や交通事情を総合的に考慮して定められるべきだ」と一票の価値だけで制度を評価すべきではないとの考えを示した。
同党の土屋正忠氏も「『鳥取と東京に一票の格差があるからけしからん』という声を、聞いたことがない。国民感覚を代弁しているのか」と高裁判決を批判。憲法の解釈についての判断を下す憲法裁判所の設置を提唱した。
同じく同党の高鳥修一氏は「判決は重く受け止めなければならないが、裁判所の判断には誤りがないことが前提になってしまっている」と、司法に対するチェック機能強化を求めた。
最高裁は二〇一一年三月に衆院の選挙制度が違憲状態と判断。国会はその状態を二年近く放置したまま昨年末の衆院選を行った。そのことが今年に入ってからの一連の高裁判決につながっているが、そのことに対する反省の弁は、同党議員からは、ほとんど出なかった。[6]
今回の違憲判決に対する自民党の「先生方」の御意見を伺うと、司法が選挙区の区割りに口出しするのは、「憲法第47条違反」であるということのようだ。
それは、そうかもしれないが、ならばそのことを「国会」として司法に訴えるのが筋だろう。司法の判断が絶対ではないのだから、信念があるなら今回の違憲判断は憲法に対する司法の逸脱、越権行為として最高裁判所で直ちに争うべきだ。それをしない以上、この理屈は本気でもないし、政治信念からでた言葉でもなかろう。ちょっと屁理屈をこね、口先で己が利害を誤魔化そうとしているとしか思えない。やらない理由として想定される反論は、「裁判で負ける」からだろう。最高裁判所に持ち込んで勝てるなら、先生方もやるはずだ。しかし、どう考えても勝てない。そこで、言ってみるだけにしておくことにしたようだ。
ほとんど形式的で盛り上がらないことこの上ない制度ではあるが、ご存知とは思うが衆議院の先生方の選挙と同時に最高裁判所裁判官国民審査というものがある。前回衆院選挙で、選挙無効の違憲判断をしない裁判官は、罷免すべきという新聞広告があった。なるほどと思い、私も全部罷免に丸をつけた。その甲斐あってか今回の違憲判決になった。実に結構な制度である。
最高裁判所の裁判官は、国民から司法判断を直接委託されているわけではないが、罷免されていないのだから大半の国民からの支持は「直接」取り付けている。最高裁判所の裁判官は実に正統な司法権力なのだ。日銀総裁のような国会の同意など必要ない。
自民党は、自主憲法制定において、最高裁判所の裁判官は、国会の同意は必要とするとでも改正すべきではないのか?
そこまでの、見識も度胸もないのなら、ちゃんとしろよチャンと、思いつきでべらべらしゃべるとみっともない。もっとも私も似たようなものではある。
以下の記事によると、特別交付税(災害などの緊急時に国が交付する地方交付税)と農林水産費と普通建設事業費は、一票が重い選挙区ほど多く手厚くばらまかれるとのことだ。こうしたことを考えるなら、やはり一票の格差は法の下の平等という憲法の理念に反していると言える。
こうした定数不均衡が予算や歳出などの政策にどのような歪みをもたらしているのかを明らかにするために、衆議院については全国の1700余の市町村に対する補助金や交付税、及び同市町村における歳出に関するデータを収集して小選挙区単位に集計し直し、各小選挙区における一票の格差との間に関連がみられるかどうかを明らかにした。
その結果、様々な補助金や交付税、及び歳出項目のうち、2度の衆院選における小選挙区の一票の重さとの間に関連がみられたのが、特別交付税及び農林水産費と普通建設事業費であった。例えば、2005年衆院選及び2009年衆院選の小選挙区における一票が重い選挙区(つまり、人口に比して過剰代表されている選挙区)ほど、農林水産費や普通建設事業費が多く支出されている。[7]
憲法違反状態で選挙が行われる。先生方が、当選する。これだけでも由々しき事態ではあるのだが、その違憲状態で選ばれた先生方の圧力に屈して、行政が予算配分に関して裁量権を乱用していることが明らかだ。違憲状態であることを知らないわけでもなかろう中央官僚は、あらゆる圧力に抵抗し、人口比に応じた予算配分を心がける義務がある。
私は、純真なので、人口比に応じた予算配分をたたき台にして、予算が配分されているものと信じていた。中央官僚は頭の良さそうに見える人たちなので、比例配分とかいう高等数学に通じておられるものと推察してもいれば、期待もしている。純真な国民の期待を裏切らないように、しっかり行政をしていただきたいものだ。それが嫌なら、豚箱にでも入って、一から出なおして下さい。やっていることは、業務上横領と変わらない。自覚してますか?自覚。そういえば、自治官僚が中央とのパイプを強調し、国会議員とか知事に立候補する。これは裁量権を乱用しましたこれからも頑張って横領しますという「自白」ですか!?後ろめたいとは思わないところが、実に図太く恥知らずなので地元としては期待してしまうのだ。アブナイ「先生」ほど、仕事はできるという構図。国民ために塀の中に落ちてください。よろしくお願いします。 刑務所に重点的に予算配分したりして!頭のいいヤツにはかなわないね
小林良彰は、有権者数ではなくて投票者数に応じた代表を選ぶべきだと主張している。
これまで定数は人口に応じて配分されてきたが、本来の意味では、人口の格差ではなく一票の格差こそを是正すべきではないか。仮に、投票率40%と80%の選挙区があるとすると、人口あるいは有権者人口に応じて定数を配分した場合、投票率40%における一票の価値が80%における一票の価値の2倍になってしまう。すると、いくら人口や有権者人口に応じて定数を定めても、別の意味での一票の格差が生じることになる。したがって、投票に応じて定数を定める方式が求められる。[8]
しかし、高齢者の投票率が高く、若者の投票率が低いという現状(日本だけでなく、世界全体でみられる傾向)を考えるなら、有権者数ではなくて投票者数に比例した数の代表を選ぶという制度は、高齢者を優遇し、若者を冷遇する現在の政治の傾向にさらに拍車をかけることになる。小林は、大量の無投票があることを前提に制度設計をしているが、その前に、無投票をゼロにするような制度を考えるべきではないのか。私がハイブリッド民主主義を、未成年者も含めて可能な限りすべての国民の利害が政治に反映されるように設計したのは、世代別の不公平を是正したいという思いからである。
小林良彰の投票率に応じた格差是正というのは、意外な視点でびっくりした。 よく言われるのは、低い投票率だと組織票がモノをいい、高投票率だと浮動票が選挙結果を左右する。天気がいいと投票率が上がるので、組織票頼みの公明党とか自民党は不利とか言ったりする。組織票は、個人の判断を組織の指導部に委譲している状態で、組織への依存というか帰属が強い人は言われたまま投票するだろう。組織が強力であればあるほど、個人の判断の入る余地は無くなる。組織の力は、予算の分捕り能力がその源泉なので、与党よりに組織の決定をすることになる。結局、勝ち馬に乗りたいのでとりあえず、与党に優位だろう。政策の吟味とかの手前で、実質的な判断は官僚任せで政治は数あわせと、地元か組織の陳情の取り持ちにしか過ぎなくなる。多くの個人が政策を吟味し、官僚の決定に影響力を及ぼしたいと政策を吟味して投票した場合は、浮動票なので高投票率になるが、さほど評価されずと、上から言われるまま投票する低投票率の場合は、評価が高くなる。これは、投票率による格差だろうということか?一理ある気もする。
しかし、一方で人口比に応じた議席配分も妥当な気がする。「人口格差」と「組織格差」が絡んでいるので、選挙区いじりはうまく行かないのではあろう。田舎の組織の代表は、「現状維持」「是正絶対反対」で議論にならないだろうからな。残念ながら、議論以前の議論で終わる。つまりお茶を濁すだけで終わりそうな気配だ。
今の選挙は、5人いるバカの中から1人を選べ、というようなもの。投票なんかに行かなくていいんです。
ペンペン さんが書きました:
今の選挙は、5人いるバカの中から1人を選べ、というようなもの。投票なんかに行かなくていいんです。
5人もいるなら、恵まれている方でしょう。小選挙区の欠点の一つは、選択肢が少なくなることです。昨年の衆議院選挙の時、私のところの選挙区(愛知県第6区)では、丹羽秀樹(自由民主党)、天野正基(民主党)、水野智彦(日本未来の党)、柳沢けさ美(日本共産党)の四人が立候補したけれども、保守主義者一人とリベラル三人という選択肢は、私には魅力的ではありませんでした。大阪府第6区はもっとひどくて、伊佐進一(公明党)、村上史好(日本未来の党)、北原洋子(日本共産党)の三人から選ばなければなりませでした。この三党の支持率を全部合わせても10%程度でしょうから、大半の有権者は消去法で選ばざるを得なかったことでしょう。選択肢の少なさという点で記録的なのが、2009年の総選挙時の栃木県第3区で、渡辺喜美(みんなの党)と斎藤克巳(幸福実現党)の二人しか立候補しませんでした。この時の渡辺の得票率95.3%は、小選挙区制度採用以降の最高記録なのだそうですが、白票や無効票も多かったらしい。現在の選挙制度には一票の格差だけでなく、選択肢の数の格差という問題もあると思います。
棄権あるいは無効票の存在は、民主主義の空洞化を招来する。当然、民主主義における全ての政党は、棄権あるいは無効票を阻止する義務がある。寝ぼけたことやってからこうなるのだ。 どうせ政治家なんて偽善者で、クズかカスしかいないのだから投票は無駄で無益。投票なんてお腹がすくだけ損。どうでもいい。どこに投票しても政治はどうせ変わらないという諦め。 期待を裏切られれば、純真な人はそう思って当然だろう。もちろん中には、私のように、今日は雨なので億劫。で投票はしないというどうしようもない輩もいる。
そこで思いついたのだが、棄権あるいは無効票があるレベル以上である場合、選挙は無効にしたらどうだろう。政党により魅力的な政策や人物に差し替える義務を課すのだ。憲法改正なんぞより、はるかに重大な画期的政治改革になると思う。
そうそう、ついでに雨の日は「延期」にして欲しいとは思う 。足元が悪いので
インターネットが政治に浸透すればするほど、政治に対する無関心と不関与は減ることでしょう。私が理想として掲げているハイブリッド民主主義のような制度は、すぐに実現できるものではなく、漸次的な改革によって少しづつ近づいていくことができるものです。インターネットの政治への浸透は、以下のようないくつかの段階を経て深まっていくものと予想されます。
第一段階:インターネットで選挙活動ができるようになる(2013年の参議院選挙で実現)
第二段階:議員を選ぶ選挙での投票がインターネットでできるようになる(近い将来実現しそう)
第三段階:憲法改正のための国民投票がインターネットでできるようになる(安倍政権でこのあたりまで実現できるか)
第四段階:議場にいない外遊中の議員もインターネットで投票できるようになる(多忙な議員の都合で実現しそう)
第五段階:憲法改正以外にも議員が提示した法案に関して国民投票がインターネットで行われるようになる(最初はたんに投票結果を参考意見として聞くために行われる)
第六段階:常設のバーチャル議会がインターネット上に設置される(これも最初はたんに議決を参考意見として聞くために設置される)
第七段階:リアルの議会が廃止され、バーチャル議会がその役割を果たすようになる(間接民主主義の終焉を帰結する革命)
第六段階と第七段階との間にある溝は深く、ここに最後にして最大のハードルがあると思います。既得権益を手放そうとはしない議員にとって許容できるのはせいぜい第六段階まででしょうから、「衆愚政治になる」といった批判が出てきて、このあたりで頓挫してしまうかもしれません。
宝くじを買うヤツとか選挙の投票に行くヤツは、確率や期待値の概念を理解することができないバカ
1票の格差が最大2.43倍だった2012年12月の衆院選の無効を求めた訴訟の上告審判決が2013年11月20日に最高裁大法廷で言い渡された。判決は「違憲状態」で、「違憲」や「無効」といった厳しい結果にはならなかった。
20日の最高裁判決は、各地の高裁が国会の怠慢を厳しく批判して違憲としたのに比べると、国会に寛容な姿勢を示したとの印象がぬぐえない。
1票の格差を巡る審理は(1)憲法が求める投票価値の平等に反する(違憲状態)かどうか(2)違憲状態の場合、合理的な期間内に是正がされなかった(違憲)かどうか(3)違憲の場合、選挙無効とするか、違憲宣言にとどめるか――との順序で進む。
各高裁、最高裁とも(1)は「反する」と判断したが、(2)に対する評価の違いで結論が異なった。
各高裁は今回、2009年衆院選を違憲状態とし、格差の要因となっている「1人別枠方式」の見直しを求めた11年3月の最高裁判決を踏まえ、「合理的期間」と「是正」に厳しい目を向けた。11年判決から12年衆院選まで1年9カ月。「任期のほぼ半分にあたる期間、是正を放置した」(広島高裁岡山支部)などと判断。0増5減も「びほう策にすぎない」(福岡高裁)と位置付けた。
これに対し、今回の最高裁判決は「是正期間は単純な長短だけでなく、必要な手続きなどを総合考慮して評価すべきだ」と、国会の裁量権を広く認める考え方を示した。0増5減で格差が2倍未満に縮小した点も重視。急な解散がなければ衆院議員の任期は8月までだったことを考慮し「一定の前進」と評価した。
衆院選で過去、最高裁が違憲判決を出したのは中選挙区制度だった1972年と83年の2回。都市圏への大幅な人口流入が起きたことが影響し、最大格差が4倍台に拡大した時期で、違憲判決の後の選挙ではいずれも格差が大幅に是正された。
今回、違憲判決が回避されたことで、是正機運が緩むと懸念する声もあるが、最高裁は「1人別枠方式の構造的な問題は最終的に解決されていない」と指摘。「裁判所が違憲状態と判断した場合、国会は是正する責務を負う」と明言している。[9]
最高裁が指摘するように、一人別枠方式を形式的に廃止しても、区割りが今のままなら、問題は何も解決されていることにはならない。0増5減の弥縫策では、次の選挙では再び格差が2倍以上になるだろう。
この判決に対する各党の反応は以下の通り。
自民「今の制度是正していきたい」
自民党の石破幹事長は国会内で記者団に対し、「司法と立法の関係によく配慮された判決であり、その意図を強く受け止め、1票の格差のさらなる是正に向けて努力しなければいけない。現行制度を基礎とした自民党と公明党の案を実現し、『0増5減』からさらに進んだ形で法の下の平等を実現するとともに、選挙結果が多数党により強く出る今の制度を是正していきたい」と述べました。そのうえで石破氏は、「選挙制度改革は、自民・民主・公明の3党の枠組みが基礎であり、近いうちにこの問題について、3党の幹事長会談を開きたい」と述べました。
民主「格差是正にさらに力を」
民主党の海江田代表は東京都内で街頭演説し、「安倍総理大臣は1年前、当時の野田総理大臣との間で行われた党首討論で、国民に対して議員定数を削減をすると約束したが、いつまでたってもやらない。『0増5減』は、まったく何もしないよりはいいかもしれないが、根本的な1票の格差の是正にならない。私どもは、定数を削減して、そのなかで1票の格差を是正する努力をさらに力を入れてやっていく」と述べました。
維新「一刻も早く抜本改革を」
日本維新の会の松野国会議員団幹事長は、NHKの取材に対し「立法府に身を置く者として大変残念であり、判決を重く受け止めたい。維新の会は、衆議院の議員定数を144削減し、一票の格差を最大で1.45倍に抑えた選挙制度の改革案を国会に提出しているが、与野党問わず、一刻も早く選挙制度の抜本改革に取り組むべきだ」と述べました。
公明「改革議論加速を」
公明党の山口代表は記者団に対し、「国会として0増5減に取り組んだことが一定の評価をされ、違憲や無効という結論にはならなかったが、判決には違憲や無効に言及する厳しい反対意見も付されており、最高裁の判断は厳しく受け止めないとならない。立法府として、これから主体的に選挙制度の改革の議論を加速させ、結論を出さなければならない」と述べました。
みんな「正さなければならない」
みんなの党の渡辺代表は、NHKの取材に対し、「前回の衆議院選挙と同様、違憲状態は続いているという判断であり、国会はこうした状態を正さなければならない。最も理想的なのは、1票の格差がない、全国集計の比例代表制だが、小選挙区制度を残すならば、100歩譲ってみんなの党が求める『18増23減』の是正策を講じるべきだ」と述べました。
共産「民意反映される制度に」
共産党の山下書記局長代行は記者会見で、「判決は、違憲状態を放置することはできず、0増5減では抜本的に解決できないということを踏まえたものになっている。抜本的な選挙制度の改革が必要で、われわれは小選挙区制度を廃止して、比例代表を中心にした、民意が反映される制度にすることを改めて求めていきたい」と述べました。
生活「司法判断極めて重い」
生活の党の小沢代表は、「『違憲状態』という司法の判断は極めて重い。『0増5減』の取り組みも、各都道府県に1議席を優先して割り振る『1人別枠方式』が基本的に維持されていて、憲法が求める『投票価値の平等』に到底、応えるものではない。『違憲状態』を解消するために、国会は選挙制度の抜本改革に早急に取り組まねばならない」という談話を発表しました。
社民「抜本改革が急がれる」
社民党の吉田党首は記者会見で、「立法府に身を置く者として、判決を重く受け止め、真摯に反省しなければならない。『0増5減』は、1票の格差を根本的に解決したことにはなっていない。現行の小選挙区制度は、民意を切り捨てることにつながっているのは明白であり、1票の格差を是正するためにも比例代表選挙を中心とした、抜本的な改革が急がれる」と述べました。[10]
各党の反応を見て気が付くことは、選挙制度を改革した後に速やかに解散総選挙を行うべきだと主張している政党が一つもないことである。衆参で過半数を占めている与党が解散総選挙を急がないことは当然としても、野党が解散総選挙を求めないのは珍しい現象である。本来、野党は、自分たちが敗れた選挙が無効になれば、喜ぶはずなのだが、そうではないのは、2012年の総選挙の時と比べて、状況が野党にとってさらに厳しくなっているからである。
2013年11月の時事通信の世論調査によると、各党の支持率は、自民党が25.8%、公明党が3.3%であるのに対して、民主党は3.2%、日本維新の会は1.9%、共産党が1.6%、みんなの党が1.5%、社民党が0.6%、生活の党が0.4%で、2012年の総選挙の時と比べて、野党の支持率の合計が与党の支持率の合計よりもずっと小さくなっている。自民党と公明党が選挙協力を行い、野党がバラバラに戦えば、野党の議席は今よりもさらに減るだろう。与党も野党の解散総選挙を望んでいない以上、早期に選挙制度改革を行って、解散総選挙を行うという可能性はほとんどなくなったと言ってよい。
2. 参照情報
- 待鳥聡史『代議制民主主義「民意」と「政治家」を問い直す』中央公論新社 (2015/11/25).
- 今井一, 『国民投票の総て』制作・普及委員会『国民投票の総て 増補 電子書籍版』小学館 (2018/8/31).
- 甘野雅彦『ぼくらの直接民主主義!: ロストジェネレーションが語る明日の日本』七つ森書館 (2019/2/27).
- ↑ここでの議論は、システム論フォーラムの「一票の格差を是正するにはどうすればよいか」からの転載です。
- ↑“議員に「即時退場」迫る 1票の格差、再び無効判決"『日経新聞』2013年3月26日.
- ↑“Chamber of the House of Representatives" by Kim Ahlström. Licensed under CC-BY
- ↑「すでに2倍超「0増5減」新区割り案 1月現在の人口で試算」『産経新聞』2013年4月1日.
- ↑永井俊哉「チルドレン議員の大量当選は有害か」2012年6月28日.
- ↑“「一票の格差けしからん」聞いたことない! 自民から異論続々“『東京新聞』2013年4月12日.
- ↑小林良彰「民主主義を機能不全に陥らせた 「一票の格差」がもたらす3つの弊害」『ダイヤモンドオンライン』2013年4月12日. p. 3.
- ↑小林良彰「民主主義を機能不全に陥らせた 「一票の格差」がもたらす3つの弊害」『ダイヤモンドオンライン』2013年4月12日. p. 5.
- ↑“最高裁、格差是正の継続迫る1人枠の問題「未解決」“『日本経済新聞』2013/11/21.
- ↑“違憲状態判決 各党受け止めNHKニュース.“『NHKニュース』2013年11月20日.
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法の下の平等は、地方でも、都市部でも、税金は同じように納税している。収入に掛ける率が同じならば、生活も、同じようになるのが、平等ではないか。現実を見ると、地方に行くと、どれだけ不便な生活をしているか、一票の格差を言っている人は、地方に行って一度生活をしてみればよくわかる。例を挙げのなら、丹後半島で生活をしている人が、海外旅行に行くのに、飛行機に乗るのにバス鉄道を乗り継いで、5時間もかかる。だから本当に地方再生を、するなら、議員の数を、47で割り、出た数を割り当てるのが、法の下の平等平等だ。一票の格差をうるさく言うならば、その人が地方に移住して、一票の格差を、是正すればよい。法の下の平等は、難しいものだ。
地方は交通が不便な分、住居コストが安いから、トータルで見ると都市よりも恵まれていないとは言えません。