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言語の重要度ランキング

2009年5月9日

言語は、その話者の数、経済力、文化力などに応じて、重要度に違いがあります。このページでは、さまざまな基準による言語のランキングを紹介しながら、どの言語が最も重要であるかを考えます。コンテンツを何ヶ国語に翻訳しようか迷っているパブリッシャーや、第二外国語をどれにするか迷っている大学生は、参考にしてください。

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1. 話者の数

言語の重要度を決める要因にはいろいろなものがありますが、一つには話者の数があります。以下の表は、その言語を母語としている人口とその言語が公用語となっている国の人口のランキングです。

母語人口(左)と公用語人口(右)が上位20位の言語[1]
母語人口公用語人口
1中国語
(1,000)
1英語
(1,400)
2英語
(350)
2中国語
(1,000)
3スペイン語
(250)
3ヒンディー語
(700)
4ヒンディー語
(200)
4スペイン語
(280)
5アラビア語
(150)
5ロシア語
(270)
6ベンガル語
(150)
6フランス語
(220)
7ロシア語
(150)
7アラビア語
(170)
8ポルトガル語
(135)
8ポルトガル語
(160)
9日本語
(120)
9マレー語
(160)
10ドイツ語
(100)
10ベンガル語
(150)
11フランス語
(70)
11日本語
(120)
12パンジャブ語
(70)
12ドイツ語
(100)
13ジャワ語
(65)
13ウルドゥー語
(85)
14ビハール語
(65)
14イタリア語
(60)
15イタリア語
(60)
15韓国語
(60)
16韓国語
(60)
16ベトナム語
(60)
17テルグ語
(55)
17ペルシア語
(55)
18タミール語
(55)
18タガログ語
(50)
19マラータ語
(50)
19タイ語
(50)
20ベトナム語
(50)
20トルコ語
(50)

ヒンディー語などインド系の言語は、母国語人口が多いにもかかわらず、インドとパキスタンが英語を公用語にしているため、存在感がありません。

2. 話者の経済力

言語の価値は、言語の使用人口だけでは測ることができません。ビジネス的には、その言語の使用者の経済的豊かさも考慮に入れなければいけません。言語の使用者の総生産を言語内総生産(Gross Language Product)と言いますが、この尺度で、言語の重要性を測ると、上位10言語は、以下の通りとなります。

1994年のGDPをもとに計算された言語内総生産(Gross Language Product)の上位10言語(engcoモデルによる試算)[2]
順位言語名GLP($billion)
英語7,815
日本語4,240
ドイツ語2,455
スペイン語1,789
フランス語1,557
中国語985
ポルトガル語611
アラビア語408
ロシア語363
10ヒンディー語/ウルドゥー語114

engco は、これにさらに貿易額も加算して、各言語の国際的な重要度、グローバルな影響力を指数化しています。

グローバルな影響力を持つ上位10言語(1995年の英語を100とした engco モデルによる試算)[3]
順位言語名スコア
1英語100
2ドイツ語42
3フランス語33
4日本語32
5スペイン語31
6中国語22
7アラビア語8
8ポルトガル語5
9マレー語4
10ロシア語3

engco モデルは、データが古く、たとえ名目でGDPを評価したとしても、現在では、中国語の順位はもっと上であってしかるべきです。

以下のグラフは、1975年から2002年までの購買力平価(PPP)による言語内総生産のシェアの推移を表したものですが、2002年現在の順位は、1位が英語(29.3%)、2位が中国語(12.5%)、3位が日本語(7%)、4位がスペイン語(6.5%)、5位がドイツ語(5.5%)、6位がフランス語(4.6%)、7位がポルトガル語(3.3%)となっています。購買力平価による試算ですから、途上国に有利なのですが、このグラフを見ても、いかに中国語の割合が増えてきたかを確認することができます。

GDP by Language 1975-2002
1975年から2002年までの購買力平価(PPP)による言語内総生産のシェアの推移 [4]

3. 話者の文化力

次に文化的な重要度を見てみましょう。以下のグラフは、90年代初頭に、どの言語によって書籍が書かれたか、その割合を示した円グラフです。多い方から順に英語、中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、日本語となっています。

The Future of English?
1990年代初期における世界で毎年出版される書籍の言語別割合[5]

日本語よりも上位にある英語、中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語は、すべて、日本の大学での外国語教育でも定番の重要言語です。これらは、世界の六大言語と呼んでよいかもしれません。

次に、ウェブサイトのコンテンツの言語別分布を見てみましょう。やはり六大言語が上位六位を占めています。

オンライン上のウェブサイトコンテンツの言語別順位[6]
順位言語名百万PV
1英語68.4%
2日本語5.9%
3ドイツ語5.8%
4中国語3.9%
5フランス語3.0%
6スペイン語2.4%
7ロシア語1.9%
8イタリア語1.6%
9ポルトガル語1.4%
10朝鮮語1.3%

これは2002年ごろのデータで、現在では、英語の割合はもっと減っていると考えられています。なお、ブログに関しては、日本語と英語が互角で、中国語が第三位となっています。これは驚くべき結果で、信用できないデータだという意見もあります[7]

The following charts show the relative volume of blog posts based on the primary language of the post, on a month by month basis.
2005年5月から2006年3月までの言語別ブログ投稿数の推移[8]

次に書く方から読む方に目を転じてみましょう。言語別のネットユーザ数の順位は、最新のデータによると、以下のようになっています。

Top 10 Languages
2008年における言語別ネットユーザ数上位10言語 [9]

2000年のデータと比べると、中国語、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語、ロシア語が600%を超える急激な成長により、上位に食い込んでいます。

但し、こうした新興国の言語は、一人当たりのGDPが低かったり、当局が自由なアクセスを制限したりするなどの理由で、この数字が示すほど、パブリッシャーから見て魅力的な言語ではありません。また、途上国ほど知識人の割合が少なく、知的コンテンツに関心を示さなくなります。このことは、ウィキペディアの言語別閲覧者数で確認することができます。

ウィキペディアにおける2008年5月から2009年4月までの言語別ページ閲覧数の月平均値[10]
順位言語名閲覧数(百万PV)
1英語5565
2日本語981
3ドイツ語947
4スペイン語587
5フランス語427
6ポーランド語325
7イタリア語294
8ポルトガル語224
9ロシア語188
10オランダ語140

六大言語のうち、中国語だけが圏外ですが、これは、中国政府がアクセスをしばしば遮断しているからです。もしもアクセスや投稿を完全に自由にしたら、中国語は、間違いなくランクインするでしょう。

4. 結論

世界的に重要な言語には二種類存在して、一つは、科学技術や文化の水準が高くて、学ぶに値するコンテンツが豊富にある言語で、英語、日本語、ドイツ語、フランス語といった先進国の言語は、この点で重要視されています。古典ギリシャ語やラテン語などは、死語であるのにもかかわらず、重要な古典を多くもつという理由だけで、今でも学習者がいるぐらいです。

これに対して、中国語(北京語・簡体字)、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語などは、それが話されている地域のほとんどが発展途上国で、学ぶべき水準の高いコンテンツがほとんどないにもかかわらず、話者人口が多く、今後の経済発展が期待されているがゆえに、重要な言語とみなされ、近年、特にビジネス関係者の間で熱心に学習されています。

このように、何が重要な言語であるかは、評価基準によって変わるものですが、それを承知で、あえて総合的な観点から、独断で重要な言語のランキングを作るなら、1.英語、2.中国語、3.日本語、4.スペイン語、5.ドイツ語、6.フランス語といったところで、これら六カ国語を世界六大言語と呼んでよいかと思います。

5. 追記(2010)今後の見通し

2010年に行われた、日米の18歳以上の男女1000人を対象にしたアンケートの結果によると、それぞれローカルな事情を反映しつつも、共に、英語、中国語、スペイン語の需要が将来増えると予想しています。たしかに、50年後には、日本語、ドイツ語、フランス語のステータスは、今よりも下がっているでしょう。

今後、どんな言語が重要になっていくのだろうか。「今後50年間で、需要が高くなると思う外国語」では、日本のトップは「中国語」で77.2%。以下、「英語」が67.6%、「韓国語」が16.0%、「スペイン語」が7.0%、「ヒンディー語」が6.7%、「ロシア語」が4.7%で続いた。BRICsのような新興地域で話されている言語が重要だと思っている人が多いようだ。

一方、米国のトップは「スペイン語」で67%。以下、「英語」が40%、「中国語」が34%、「アラビア語」が13%、「日本語」が12%、「フランス語」が8%で続いた。ロゼッタストーンでは「ヒスパニック系人口が増加している影響があるようだ」とコメントしている。[11]

6. 参照情報

  1. WIPジャパン. “世界の主要20言語使用人口“. 出典:ケンブリッジ大学出版局「THE CAMBRIDGE FACTFINDER」1993年刊.
  2. David Graddol (1997) The Future of English? The British Council.(オンライン版)p. 29.
  3. David Graddol (1997) The Future of English? The British Council.(オンライン版)p. 59.
  4. Mark Davis (2003) GDP by Language.
  5. David Graddol (1997) The Future of English? The British Council.(オンライン版)p. 9.
  6. Online Language Web Site Content Statistics, Original Source: Vilaweb.com
  7. Technorati: Big Business with Bogus Data.” iA.net 13. DECEMBER 2006.
  8. “The following charts show the relative volume of blog posts based on the primary language of the post, on a month by month basis." ― David Sifry. “State of the Blogosphere, April 2006 Part 2: On Language and Tagging" Sifry’s Alerts May 01, 2006.
  9. Internet Usage World Stats (2009) Top Ten Internet Languages.
  10. Wikipedia. “Page views per language per month."
  11. Business Media 誠「今後50年で需要が増す言語、米国人と日本人で違い」『ITmedia ビジネスオンライン』2010年09月15日.